悪役令嬢転生かと思ったらゾンビパニックかい!   作:レッドアリーマー

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縁滅!

 伝達を司る風の魔力。その性質を他の魔力に適合させる、という役割を果たす装置に対し、「ん゛ん゛っ」と咳払いをする男性が一人。

 彼は自らの周囲にいる者……年若い男女ら数名を眺め、一つ呼吸を置いてから──集音器を手に取る。

 

「はじめまして、カカラパラゾの貴族諸君。いやお久しぶりと言った方が良いかな。滲み出る侵蝕への対応に追われてそれどころではないだろうから片手間に聞いてくれると助かるが──『中央制御室』並びに『永世盤久の宝珠』は我々が占拠した。壊されたくなくば、」

「"あーあーテステス。なるほど可聴音に関する魔力を応用していますのねコレ。面白いアプローチですわ~"」

「……なんだ? ノイズか?」

「"お生憎様、あなた方の出す声明は外に漏れなくってよ。闇属性魔法サイレンス……対象に沈黙を付与する魔法ですけど、これの対象を単体から範囲にしたものがこちらになりますわ"」

 

 音は、声は、そこかしこから聞こえてきていた。

 集まっていた若者たち……彼ら『アムエナの亡霊』のうちの一人が「げ」という顔をする。声明文を口に出そうとしていた男性がそれに気付くことはなかったけど、声の方は止まらない。

 

「"あなた方の事情、背景、歴史、喜怒哀楽、悲喜交交……まぁなんぞかあるのでしょうけど、興味ありませんの。即刻中止なさって? それができぬというのなら、じっくりコトコト殺しますわ~"」

「聞いて察するに少女と見たが、君だけかね、カカラパラゾより出てきた衛兵は」

「"ええ、私だけですの。さ、悪ふざけはとっととやめてくださいまし。宝珠はアーティファクト。破壊なんてできませんので、それを人質にするのはあまりに悪手ですわ"」

「──ふ。大方学園で優秀な成績でも収めているのかな。それだけで世界を知った気になっていると見た。──残念だがお嬢さん、世界には君の知らないことがたくさんあるのだよ」

「"どーせハッタリですわ? 余人には破壊できぬからアーティファクトなのですわ? 他者が簡単に破壊できるようならもっと警備が厳重になっているはずですわ~"」

「破壊方法が知られていないから警備ゴーレムだけでいいという判断なのであって、破壊の難度は警備とは関係のない話だ、お嬢さん。……ふふ、このまま講義を続けていてもいいのだが、こちらにも時間的都合というものがある。さ、魔法を解除したまえ。我々は本気で宝珠を破壊する気だ──君の甘い判断が国というものを損なう可能性があるという現状を理解してほしい」

「"こんな悪戯に付き合ってあげられるほど大人たちも暇ではありませんわ。況してや今、滲み出る侵蝕との戦いで大変なのですし"」

「……全く、頑固なお嬢さんだ」

 

 やれやれと肩を竦めて集音器から離れる男。そのままの足で向かうは『永世盤久の宝珠』のもと。

 途中、声を聞いてからずーっと俯いてはぶつぶつ独り言を言っている青年の前を彼が通り過ぎたけれど、何か触れることはなかった。

 

「いいかね、アーティファクトというのは言ってしまえば人知の及ばぬほどに圧縮された魔力塊だ。ゆえに自らの持つ魔力と同種の魔力には崩されやすいという欠点が存在する」

「"あら、カカラパラゾが誇る聖ランパードーア学園の首席たる私にアーティファクトの講義ですの? ええ、それくらい知っていましてよ。『無尽蔵のエネルギーを放出し、自己保存を行い、且つ自己のエネルギーの対象にならない物体系』……これがアーティファクトの定義ですわ。そしてだからこそアーティファクトは不壊ではなく、自己の放つエネルギーと同系のエネルギーへの防御手段を持たない"」

「なんと、素晴らしいじゃないか。そうか、カカラパラゾの教育水準はそこまで上がっていたか。それは知らなかった。……だが、そこまで理解していてなぜ『永世盤久の宝珠』が無事だと思うのだね?」

「"『永世盤久の宝珠』はエネルギーを放っているアーティファクトではないからですわ。むしろ吸引している宝具。だからこそ破壊の手段はありませんの"」

「ほう……ほうほう! 良いじゃないか、続けてみたまえ。『永世盤久の宝珠』がいったいなにを吸引していると?」

「"魔力ですわ。カカラパラゾでしか貴族は生まれない。複合属性を持つ者が生まれない理由が血筋に依るものだとしても、平民からは単一属性持ちさえ生まれない……そんなことがあるのはおかしいのですわ。没落した貴族も沢山ありますし、それこそアムエナのような他国も存在するのに、カカラパラゾだけに貴族が集中する。その理由はカカラパラゾ外の属性魔力を宝珠が吸っているから"」

「そうとも、酷い略取だ。カカラパラゾはまるで自らこそが魔力の主だと言わんばかりの独裁をしている」

「"弱きが力を持つことを許さなかっただけですわ。とはいえ、独占を行ったが故に選民思想にあふれてしまったことは悲しいことですけれど"」

 

 男もまた教職か、元教職だったのか。メンバーらが「あー教授モード入っちゃったよ」なんてボヤキを零すくらいには、彼がそういう地位にいたことは周知の事実らしかった。

 

「……脱帽だ。素晴らしい。お嬢さん、私は君を見くびっていたし侮っていた。先程教育水準とは言ったが、君の賢さは君に限定されるものだろう。カカラパラゾの大人たち……貴族のほとんどは君の賢さに及ばぬところにいる。成程、我々の動きを察知できて、止めに来ることができたのが君だけである理由も得心が行くというもの」

「"お褒めにあずかり光栄ですわ。けれどテロリストに褒められたって誇れませんの。さ、破壊の手段がないと再認識できたのでしたら、こんなハッタリとっとと、"」

「だが、それでも狭い世界だ。──聞いたことはないかな、『永世盤久の宝珠』が人造のアーティファクトであるという噂を。自然に出来たアーティファクトであれば君の理論も通ったかもしれないが、人造のアーティファクトには共通してある弱点が存在する。それはメンテナンス用の抜け道だ。製作者しか知り得ぬ魔力と手法であれば、一見して破壊不可なアーティファクトを作り上げることができる」

「"……そ……そんなはずがありませんわ。『永世盤久の宝珠』はカカラパラゾの建国より存在するアーティファクトですのよ。そんな……そんな昔のものが人工物なら、とっくに壊れたりおかしな挙動を見せていても不思議ではないですの"」

「そうとも。故にこそそのメンテナンス作業員たちはカカラパラゾの外、数多ある衛星都市の中に身を潜めてきた。魔力を有せども使うことのない平民として。──彼らの名を、ノルブカクルトと言う。同時に私達一族の姓でもあるものだ」

「"──……"」

「驚いて声も出ないか。まぁ無理もない。まさかカカラパラゾの最重要アーティファクトのメンテナンス作業員がアムエナにいた、などと……あり得ない話だ。貴族の腐敗、王位の偽証を見抜けぬままに過ごしてきた君達にとっては受け入れ難い事実でもあるのだろう。──だが、事実は事実なのだよ」

 

 男は……黄金とも白銀とも取れぬ魔力を手に纏い、『永世盤久の宝珠』へ手を伸ばす。

 異彩な力場を持つそれを、ゆっくりと伸ばしたその手で……掴み取った。その手から不思議な色をした魔力を()()()()、その力を以て掴んだようにも見えた。

 

「見えるかね、お嬢さん。これが──」

「もー、早くしてほしいですの。その手法が見たくて茶番に付き合っただけですのに、本気にしちゃうんですから」

「!?」

 

 いた。

 そこかしこから聞こえてくる声と同じ声色。だけど、普通に、なんでもない顔で、男性の目の前に。

 月色の髪とガーネットの瞳を持った少女が一人。

 

「しかし成程ですわ? 宝珠を支える黄金と白銀の手。これ、余剰魔力と極限状態の魔力のことだったんですのね。その二つだけが唯一肉眼で視認し得る魔力。そして他の魔力は自らの魔力で視力を強化しなければ視認できませんの。この視力の強化に使う魔力が『永世盤久の宝珠』の持つエネルギーの正体。身体強化の魔力と等号で結ばれないのが悪辣ですわ」

「な、な、な──」

「ああ、宝珠の破壊でしたか。どうぞお好きになさって? 私も一度は破壊しようとしましたのよ、それ。けれどやり方がわかりませんでしたの。だから、答えを教えてくださってありがとうございますわ。──そして」

「っ!?」

 

 大きく後退する男性。その腕には、決して浅くない傷が刻み込まれている。

 

「あら……演説だけするリーダー格かと思いきや、案外動けますのね。では改めて。なんだか聞き流されていたのでもう一度一言一句違わずに言いますけれど──あなた方の事情、背景、歴史、喜怒哀楽、悲喜交交……まぁなんぞかあるのでしょうけど、興味ありませんの。即刻中止なさって? それができぬというのなら、じっくりコトコト殺しますわ~」

 

 アムエナの亡霊に向けられるはショベル。 

 武器ですらないソレに、しかし冷汗の止まらぬ彼ら。

 

 少女一人に。農具一つに。

 

 死を感じて、仕方がない。

 

「っ……ええい、それこそハッタリだ! 相手は学生一人、何を恐れること、」

 

 言葉が最後まで紡がれることはなかった。

 その大きく開けた口にショベルが入ったから。入って、()()()()()()と頬を引き千切って、()()()()と顎を砕いて。

 彼らの知らぬ話がだけど、それは彼女がこの時代へ来てすぐの頃、滲み出る侵蝕相手にやったことと同じ。

 ただ此度の相手は言葉だけ真似した魔族でも、況してやアンデッドでもないのに──容赦がない。

 

 大きく血を噴き出して倒れるは元リーダー格らしき男。

 当然のことのように、そして簡単なことのように、転がる宝珠を男がやっていたのと同じ手法を用いて掴んだ少女は。

 

「デモンストレーションですわ~!」

 

 その宝珠に、ピシッと罅を入れた。

 

「──は。……は!? はぁ!? あ、あんたそれ、壊し……はぁ!?」

「あらその声は。ハロー、さっきぶりですわね」

「アンタ……頭おかしいのか!? グエインを殺したのだってそれを守るためじゃなかったのかよ! なんで自分で罅入れて……」

「だから言ったじゃありませんの。茶番だって。あとカカラパラゾの貴族ではないって。あ、聖ランパードーアの生徒というのは嘘ですの、謝りますわ?」

 

 罅は更に大きくなる。

 段々と、それは、だから──修復できないほどに。

 

「それにしても、リーダー格が殺されて恐慌に陥ることもなければ飛びかかってくる方もいないとは、案外嫌々付き従っていた感じですの?」

「そんなことは……ないさ。ただみんな、腰が抜けてるっつーか……理解できねえっつーか」

「そんなことがないのなら、殺しますわ」

 

 寄って。

 今の今まで少女と会話をしていた若い男性の喉がショベルによって断ち切られる。

 二の句が継げぬ様子で口をぱくぱくさせて、そして瞳をぐりんと上に上げて倒れる青年。

 

「戦場にいるのは敵か味方かその二択のみですわ~」

 

 ようやく追いついてきた現実感に逃走か戦闘のどちらかを選んだアムエナの亡霊たち。

 彼らがどちらを選んだのかは知りようが無い。

 だって……少し経った後、その施設から出てきたのは少女だけだったから。

 

 アムエナの亡霊は、誰にも認知されることなく散ったのである。

 

 

 さて──今現在、カカラパラゾでは滲み出る侵蝕……魔族による大規模侵攻が起きている。

 戦える者はほとんどが出払っていて、内側には戦えないか、戦う意思はあっても基準値に満たぬ者しかいない。

 だから少女の行動は英雄的だったと言える。テロリストを声明の段階で潰し、全滅にまで追いやった。讃えられて良い功績だ。

 

 それだけならば、だが。

 

「……リベルタ様、クオン様。残念ですが、時間にございます」

「え……トァン、さん?」

「あれ、ラファと一緒にいたんじゃ」

「リリーガ様より賜りました未来視の結果を伝えるため私はここにいます。"あの娘、本気でやるのねこれ。……はぁ。トァン、あの二人に伝えて。リベルタはある意味でクオンのお手本よ。クオン、魂が抑えきれなくなったらリベルタを参考になさい"──以上」

「どういう──」

 

 カッ! と……一筋の光が天を割る。

 カカラパラゾの中心から天へと向かったその光。

 

 全ての色を束ねた色味の光はしかし別れ、分かたれ、ガラスの割れるような音を立てて散乱していく。

 

「──ギ」

 

 その漏れ出でた苦悶の声。それが自らの出した音だと気付くのに数秒をかけるクオン。

 

「クオン!?」

「私はこれにて失礼いたします。クオン様、リベルタ様。良き()()をお過ごしくださいませ」

 

 苦しみだった。軋みだった。

 けれど、何が苦しいのか、何が軋んでいるのか、クオンには判別がつかない。 

 

 いや、いや。

 彼女が持つ視点を少し外してみれば、わかる。

 これは──魂の苦悶だ。

 

 肉体に収まる属性という名の「余分な魔力」に魂が圧迫され、苦痛に喘いでいるのだ。

 

 言われた言葉を、文字列を参照する。リベルタの魂を見る。

 在り方は……それはクオンのものではなかったけれど、確実に理解ができる。

 単一属性、光属性だけを持ち、そして……何があっても立ち止まることのできないその性質。そうならなければならなかった理由。

 見る。視る。観る。

 観察し、視認し、見分する。

 

 そうして。

 

「……っはぁ、……落ち着いた」

「大丈夫……?」

「なんとかね」

 

 けれど危なかったと周囲を見るクオン。

 なんとか落ち着きはしたけれど、もし周囲に魔族がいたらと思うと。

 

「戦場が……大変なことになっているかも」

「確認しにいかないと!」

 

 もしこれが戦場でも起きていたのなら、恰好の的が過ぎるから。

 

 果たして。

 

「……どういうこと? みんな……停まってる?」

「これは……」

 

 まるで、時間が停まったかのような光景だった。

 クオンと同じように光の奔流に飲まれ、苦しむ貴族たち。それを好機と見て飛びかかろうとしている魔族たち。

 しかしその双方が凍り付いたかのように止まっている。

 

「長くは保ちませんのよ。なんで、運ぶの手伝ってほしいですわ」

「え……あ、ラファ」

 

 二人が振り返れば……その止まったままな魔族を担いで運んでいる少女の姿が。

 

「えっと……何やってるの?」

「見てわかりませんの? 運搬ですわ」

「いやそれはわかるけど」

「『永世盤久の宝珠』の破壊によって起きた世界崩壊。その内の一つが属性解放……人間の扱える属性数が減ることでしたわ。けれど、それ以外にも効果がありましたの。それが時間の凍結。正確に言うと時間流が間欠状態になった……とでもいうべきでしょうかね。四騎士はその隙間を縫って歩いていますし、その辺の話は聞いたことがあるのでは?」

 

 いつも唐突だしいつも効率を求めるラファであるが、今日は特に激しいな、とはリベルタの談。

 ただ時間流に関わる話は確かに聞いたことがあった。エスタたちは長い間をずっと生きているのではなく、現れたり消えたりすることで旅を続けているのだと。

 

「これは非常に長い年月をかけないと安定化しませんので、しばらくは対策も取られないでしょう。ほら、時間の流れていない内に魔族たちを運び出しますわよ」

「……なんで?」

「なんでって、時間が停まっているから殺せないのですわ。だからどこかに埋めるなりなんなりして封印するのです」

「ラファって基本パワーだよね」

「はい?」

 

 ただ、どうにもそれが一番安全な方法……カカラパラゾを守るために必要なことであるようだったので。

 

 少女三人、ひたすらに運搬を続けること一時間ちょっと。

 魔力による身体強化込みで、カカラパラゾを襲撃しにきていた全ての魔族の運び出しに成功したのである。

 

 

 ゴロゴロと音を立てて埋められていく凍結した魔族。

 

「こんなところあったんだ」

「元はカカラパラゾ保有の実験室だったらしいですわ」

 

 そう、ラファがリリーガと出会ったそこ……彼女が掘り進めた縦穴を拡張し、そこへ魔族を落として、そして埋める。

 素晴らしいまでの非業があまりにもな効率で行われた。

 

 最後に鉄扉を閉めて。

 

「一応これも錠……ですわね。鉄ですけれど」

「なんの話?」

「いえ」

 

 それで、終わり。

 勿論埋め立てた程度じゃ魔族は這いあがってくるだけだろうけど、後の説明はクオンとリリーガで行える。

 なれば。

 

「……お別れ?」

「ええ。不可能でしょうから、また、とは言いませんの」

「……そっか」

 

 別れだ。

 クオンと、ラファとリベルタ。

 もう、用が無い。

 

「『聖杖レムリアティア』」

「え?」

「私達の世界の初代勇者が使っていたという杖ですわ。……初代魔王は私が倒してしまいましたし、あなたが頑なに剣を使うというのなら止めませんけれど、そういう道もあるのだと理解なさい。私があなたに教えたのは剣ではなく心構え。どう活かすかはあなた次第ですわ」

「クオン、これから色々大変だろうけど……応援してるから! それで、私も……頑張るから、応援してほしいな」

「……二人とも、いきなりの別れに順応しすぎ……私、まだなんて言っていいかわかんないって」

「あー、それは、私達の世界、私達の時代が突然と唐突に塗れているから、カモ……」

 

 まー突然のゾンビパニックの世界ですからねえ。ダークファンタジーとはいえ乙女ゲームの世界ですのよここ。わかってますの?

 

「湿っぽさとか感動的とか期待されても困りますわ。ですから──」

 

 アティアの翼を背から生やし、闇の魔力を全開にしてそのオーラを宿し、そしてそして、ショベルをクオンへ突きつけて、言う。

 

「改めて。私の名はラファ・ダルクエルデ。アンデッドに塗れた世界の王となりて、世界をあるべき姿に戻さんとする公爵令嬢ですわ」

「あ……じゃあ、私はリベルタ・オスロ・ナムトカルガ。世界の真実を見つけて、困った問題児たちの正解を見つけて、私自身のやるべきことを見つけようとする、最新の勇者!」

「──で、あなたは?」

 

 問いに。

 居住まいを正して。

 

「クオン・エメトゲル=ナナ=ペレトメギスカト。【極剣の御姫】、見通しの姫巫女……師匠の弟子にして、リベルタの旅仲間で、……初代勇者、か」

「肩書きはどーでもいいですわ。あなたの目的は? 野望は? 夢は?」

「夢……は」

 

 少女は今までを振り返る。

 

 そして、その道のり(思い出)に錠をかけた。

 

「無い。から、探す! 他者を嫌って下に見る前に、自分を見つめて上に行かないと。──私も王様、目指してみようかな」

「良いじゃありませんの。それとなく応援していますわ」

「私も勇者頑張るから、頑張って……うーん、違うな。元気でね!」

「うん、二人も。……歴史とか知ったことじゃないから、二人の名前は私の伝記にちゃんと書き残すから。こっちの世界の未来で二人が生まれた時、大混乱になると思うけど、いいよね」

「どーせならあることないこと書いちゃえ、ですわ~」

「ま、まぁ他人事だからなぁ……」

 

 それでは。

 

 これにて──過去編を綴る羽根ペンを置くとしよう。

 あの子が無事帰ってこられたかどうかは、私が綴るべき未来()の話なのだから。

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