悪役令嬢転生かと思ったらゾンビパニックかい!   作:レッドアリーマー

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消滅!

 ガコ、という音を立てて開くは床板……というか大理石っぽいパネル。

 一気に溢れ出してくる湿った空気と混じりけのない魔力。……盲点、というかまぁ知識がなかったが故ですけれど、思ってもみませんでしたわ。

 

「考えてみれば当然ですわよね。魔法陣……設置はまぁ可能でしょうし、それを後から炸裂させることはできても、遠隔で魔法を使うことはできない」

 

 なんだかんだ言ってこの世の法則の一つかもしれない。

 仕込んでおいて、それが後から、ということはある。私の夢に現れたラファ……及びそれを可能としたゴルズィオの仕込みのように。

 けど、基本はその場にいなければ魔法を使うことはできない。どんな種類の魔法でもそれは同じ。あるいは"或る万能"ですらそうなのかもしれない。

 例外はフナリエ老の人形で、今回の絡繰りもまた同じ。

 

 だから、『長老球(エルダーコア)』の破壊の際も、『不死根(デッドレス)』生成の際も、百代魔王とその姉の関係性を複雑にした際も……敵は近くにいたのだ。

 

 魔王城地下。過去、『魔物実験室2-3』と呼ばれていた場所。

 別の世界で私が埋め立て地にした場所だというのなら、この世界の過去に来た私も何かしらを行っていておかしくない。

 ゴルズィオの空間が『行く末の鍵』の材質で開いたことで勘違いしたけれど、因果関係が逆だった可能性もある。つまり、あの鍵に合致する錠前が最初からあって、ゴルズィオがそれを参考に隔離空間を作り上げた、と。

 自分で言うのもなんだけれど、複雑怪奇でどんでん返しを行うような「仕掛け」を私が思いつくとは思えない。そんなものを託すとは思えない。

 だから、複雑怪奇でもなければどんでん返しもないし、そもそも仕掛けなんかではなかったものなのではないか、と。

 

 それはあった。

 散らかった空間。どこか懐かしい生体ポッドの残骸と……動物用のケージ。

 

 そして。

 

「あら、小さなトカゲさん。外へ繋がる道が先程の床板しかなかったはずのこの空間で、何をされているのかしら」

「迂遠な回り道がお好みかな、ラファ・ダルクエルデ」

「いいえ。でも、初めましてなのですから、自己紹介はしていただきますわ」

「無論だとも。わたしの名前はヴェルデライン。そうだね、少し長生きなだけのトカゲさんだ」

 

 まるで石像のように不動のまま扉を見つめていたトカゲ。

 彼、あるいは彼女はそうして朗々と語り出す。

 

ヴェルデライン(思うままに)。なんとも私のつけそうな名前ですけれど、この推理は合っていますの?」

「ああ。わたしの名前はあなたにもらったよ、ラファ・ダルクエルデ」

「私は何を思ってあなたに『行く末の鍵』を託したのですの?」

「順を追って話そうか。まず、そうだな。わたしはここで人間による非道な実験を受けていた。わたしそのものでなくとも、似た境遇の動物には出会ったのではないかな」

「ええ、出会いましたわ。……ああ、なるほど。あちらの世界にあなたはいませんでしたけれど、であればあちらの世界ではドラゴン以外の種が同じような立場になるのですね」

「そうだろうね。あそこで研究されていたことは生命の限界突破……不老長寿や肉体規模の拡張だったから」

 

 幻想に語られるような種の生き物。あの時ゾンビの実験に使ったのがウサギでなければ、あるいはあのウサギの子孫はカーバンクルにでもなったのかしら。

 犬ならフェンリルとか、猫なら……バステトとか? 

 ドラゴンに託されたからドラゴンの祖を探していましたけれど、ここも因果関係が逆でしたのね。あの場にいたすべての動物がその可能性を有していたと。

 

「これは憶測だけれど、あなたが赴いた世界には、実験体の中に人間がいなかった。そうなのではないかな」

「そうですけれど……。……え、もしかして」

「そう。この世界にはいた。トカゲの一匹も人間の一人も実験体にならなかったその世界と違い、この世界ではトカゲの一匹と人間の子供の一人が実験体になっていた。そのどちらもがラファ・ダルクエルデに救出されたけれど、どちらも手遅れだった」

 

 その子供の名前は。

 

「その子供の名前は、ゴルズィオ。ゴルズィオ・ヴィリジオニティカ。長い年月をかけて【愚悪賢者】の称号を手に入れた嫌われ者」

「……過去の私は、彼を見て、あるいは名前を聞いて、何も言いませんでしたの?」

「あなたがあの時に話した言葉をそのまま伝えよう」

 

 *ゴルズィオ……ね。それはなんとも数奇な運命ですわ。ええ、とても。今は何も知らぬ子供とても、今後を考えるのなら殺すべき……いえ、そうですわね。ええと、まぁ、そこにいる動物の皆様方にこれを託しますわ。

 *今の知能で理解できるかはわかりませんけれど、彼の牢を開けるための鍵ですの。行く末の鍵、とでもいうべきもの。これを開くことで遥か未来の世界には渾沌と災厄が齎されるでしょうけど、今の彼にその気もその力もありませんし、どーせあなたたちが全て死滅したあとの話ですわ。だからどうぞ無責任に無遠慮に決めてくださいまし。

 *どうしても決められなかったら……まぁ未来の私にでも返してくださいな。何がどう転ぼうとも、私ならなんとかしますわ。その辺、絶対の自信がありますの。世界を違えど時間を違えど私ですからね。私は必ずなんとかしますのよ。

 

「……」

「結果から言えば、わたしたちは誰も牢の鍵を開けなかった。知能が無かったからではない。その後も何度か訪れる機会があって、開ける機会があったのに、わたしたちはこれを拒否した」

「……それは、なぜ?」

「子供ながら……彼に、どこか得体の知れない部分があったから、だろう。わたしたちは怯えたのだ。怖がった。だから彼を閉じ込めておくことを良しとした。……あるいは、そのことで……彼は世界を恨んだのやもしれない。今の世界を形作ったのは、回りまわって、わたしたちなのかもしれない」

「いえ、責任はその場で抹殺しなかった過去の私にあるので罪悪感を覚える必要はないのですけれど。……なるほど、そうして……次代に、次代にと託すことにしたのですね、判断を」

「ああ。いつしか言葉は形を失い、鍵だけが託された。いつかあなたに返すように、という文言と共に」

 

 真相はたったそれだけ。

 けれどたったそれだけをそれだけでなくできる力が子供にはあった。あってしまった。

 

「牢の鍵は終ぞ開けられなかったけれど、牢そのものはいつの間にか破られていた。わたしがドラゴンの祖としての全てを終え、ここへ舞い戻った時にはもう彼はいなかった。それでもここを眺め続けようと思ったのは……いつか帰ってくるあなたへ謝罪をするためか、あるいは良心を痛めた彼が戻ってくることを期待したのか」

「希望的観測が過ぎますわね。そして今日新事実が発覚する、と。──牢は破られてなどいなかったのですわ」

「どうやら、そうらしいね」

 

 私達の目線の先にいるのは……少年だった。子供だった。

 動物を閉じ込めるためのケージに入って、手枷足枷を嵌められて……ニヤニヤと上がった口角を崩さない少年。

 

「昔話は終わったかナ☆」

「ええ、終わりましたわ。お待たせいたしましたの」

 

 ゴルズィオ・ヴィリジオニティカ。『愛されるが故に死して』の三大悪役が一人。

 彼が、そこにいた。

 

 

 ふぅ、と溜息を吐く少年。

 

「まずだけド☆ 別に君達のことは恨んでいないヨ☆ むしろ賞賛したいくらいサ☆ 動物の身でよくぞこの身の悍ましさを感じ取っタ、ってネ☆」

「姿を消していた理由ですけれど、光魔法インビジブルですわね?」

「この魔法にそんな名前をつけて光属性持ちだけしか使えないようにしたのはキミたちだけどネ☆ ボクが幼き頃に触れた"或る万能"からすれバ、姿を視えなくする程度は造作もないことなんだヨ☆」

「ふぅん。まぁなんでもいいですけれど。さて、まぁここから何をされても面倒ですし、殺しますわ。遺言は?」

「特にハ☆ キミから聞きたいことハ?☆」

「うーん。そうですわね。ヴィリジオニティカ、ってどういう意味なんですの?」

「綴りはVilizionitcaだヨ☆」

「……成程、皮肉ですわね。自分で考えたんですの?」

「世界をめちゃくちゃにするには良い名前だろウ☆」

 

 Vilizionitica。文明(Civilization)をバラバラにするには……確かに完璧な名前だ。彼の名前がゴルズィオ(耕す者)であることも含めて。

 ……これ以上は掘っても何も出てこないか。

 

 ショベルで牢をこつんと叩けば。

 牢の錠が開く。じゃあ後は。

 

「油断し──」

「生きとし生けるもの、すべてを代表するほど驕ってはいないが……少なくとも世界の半分を代表するものとして、貴様の魂を討たせてもらう」

「──たのは、ボク、だった……カ」

 

 刺さる。

 魔剣ソウルアティアが少年に……少年の魂に。

 

「……ちェ。やっと……色々なものを……この手で、触ることができると……思ったのに、ナ……☆」

「私が私である限り、生まれ変わりは否定しませんわ。次は力無き誰かに生まれ変わって、花や蝶でも愛でていなさいな」

「ああ、それハ──なんとも、つまらなそうな──あかるい、みらい、ダ」

 

 こうして。

 幾星霜にも及ぶ【愚悪賢者】の暗躍はここで終わる。

 彼の世界が真っ暗だったのも。彼の世界が錠で封じられていたのも。彼が世界にアンデッドを満たしたのも。

 すべては「彼の知る世界」がそうであったため。賢明な動物たちの判断のため。

 そして私の……気紛れのため、か。

 

 ……ならば正史の彼は──。

 

 

 で。

 

「私の手柄を横から掠め取った元凶クソ魔王はなーんで私を運んでいますの?」

「第一に、あそこは私の城だし、第二に、私は元凶ではなかった。何を言われる筋合いもない」

「ふん。ゴルズィオの牢が破られるまで手も足も出ないからってずっと息を潜めていた臆病者の言葉なんて聞こえませんわ」

「そうだな。おかげで聞きたくもない令嬢の本名まで聞こえてしまったよ」

 

 飛翔中なう。

 ……何か知らないけど、あの後私は魔王に魔法的グラブで掴まれて持ち上げられて運ばれている。王都へ返してくれるのかと思いきやそういうわけでもないようだし、かといって魔王城やどこぞの部族の里に向かっているわけでもないようだし。

 なんなんだいったい。

 

「あらそうですの。調べたらサクっとわかるでしょうし、知っていたんじゃありません?」

「無論、ほぼ確信には至っていた。だが本人の口から名を聞いていないのでな。ほぼはいつまでも取れなかった」

「あらそうですの~。じゃ、改めて。私はダルクエルデ公爵家令嬢、ラファ・ダルクエルデですわ。以降お見知りおきを」

「良い名前だと、初めて言おう。そして、なれば名乗りを返す。私はシェディン・バクム・エメトゲル=ナナ=ペレトメギスカト。【蒼耀の魔王】、【世界を受け入れた者】など称号は様々あるが、貴様の前では【歴代最弱】で問題ないだろう」

「あらそ……え、ペレトメギスカト?」

「む? ああ、そうだが」

 

 ……確かクオンの名前が……クオン・エメトゲル=ナナ=ペレトメギスカト、だったはず。

 クオンの子孫? 魔王が? ……いやいや、彼女のいるいないが世界を別ったのですから、まぁこちらの世界の……エメトゲル、ないしはメギスカト家の子孫なのでしょうけれど。あちらの世界ではクオンの代で没落した、失踪した的な話をしていましたし、こちらの世界ではしなかったとかそういうこと……もしくはしたけど名前は廃れなかったみたいな……いやいや。

 だとすると魔王が人間の子孫ということになりますわ? それも……カカラパラゾの貴族の。

 

「あなた……親は誰ですの? というかいますの?」

「どちらももう死したが、いた。なんだ、私が虚空から滲み出たようにでも思っていたのか?」

「いえ……まぁ……」

 

 まぁ……だとしてなんだ、だけど。

 エメトゲル、メギスカトの誰かがカカラパラゾを出て……魔族、滲み出る侵蝕と番ったか、侵食されたか。

 ……だから魔王は闇属性しか使えない、とか。人間が混じっているから太古崩壊のあおりを受けている……?

 

「相も変わらず失礼な娘だな。……そろそろ着くぞ」

「で、それで、私はなぜ運ばれていますの?」

「見ろ」

 

 降ろされた。降ろされた場所は……崖、かしら。草木の一本もない荒れ果てた場所。

 それと……大海原より昇ってくる太陽。

 

「娘。いや、ラファ・ダルクエルデ。貴様が世界に齎したものだ。その目に焼き付けろ」

「……あなた、案外ロマンチストなんですのね」

「言っていろ」

 

 夜明けだ。ただ陽が昇るだけの光景は、確かに、世界の夜明けではあるのやもしれない。

 ……で、これを私に見せて何になると。感傷的に「きれい……ですわ……」とか言ってほしいのだろうか。だとしたらお門違い甚だしい。私という存在を何もわかっていない。

 

「貴様が真に世界を導く王となるというのなら、暗い部分や悲しい出来事だけと向き合っていないで、希望や歓喜にも目を向けろ。それも等しく世界の一員なのだから」

「……それ、魔王がする発言ですの?」

「わからないか?」

 

 言って。

 私の前に来て……膝を突く魔王。

 いや、彼だけではない。崖の裾野、遥か後方。

 ドラゴンやリザードマンを含めた……数多の異形たちが私へ向かって膝を突いている。その先頭にいるのは見知った魔族たちだ。

 ブラッド・フラット。エルレビ。ノギオン。アヌエ=ギリ=ラプタンバトラ・フナリエ。

 

「魔族と人間に相互理解はあり得ない。それは今でも変わらない。お互いを害し合い、お互いを貶めあう。手を取りあえる要素はいくらでも転がっているのに、本能がそれを拒否する。──だが、別々の場所から同じ王を仰ぎ見ることはできる」

 

 ──"我々もまた"、"あなたの言葉を待とう"。

 

「……。申し訳ありませんけれど、形だけの王にも人間を快く思わない方からの忠義にも興味がありませんの。私はこれから世界を救いますし、その絶対的な存在を以て人も魔族も魔物さえも統べるつもりですけれど、王と仰ぎ見るかどうかはあなた方の勝手ですわ。同調圧力で嫌々頭を下げているだけの方々は好きに暴れてくださいな。止めませんし咎めませんわ」

 

 ゆえに、と。

 

「そう言われても尚……こんな小娘に、人間の中でも矮小且つ愚かな子供に全存在を預けられるというのなら、その魂くらいは私が導いてあげますわ。必要なら守ってもあげますわ。だから……まぁ、そうですわね」

 

 眼前に突き刺すはショベル。私を象徴するもの。どんな壁をも掘り進み、どんな障害をも叩き切る在り方。

 

「人魔を統べる夢を抱くことくらいは、してあげてもいいですわ」

 

 立ち昇るは──歓声。いや、怒号か?

 ……こんな大立ち回りする予定ありませんでしたのに。

 ホント、余計なことをしますわね、魔王も魔王軍も。私が背負うなら朝日ではなく月夜でしょうに。その辺含めてナンセンスですわ~。

 

 

 その後、改めてやってきたのは底なし沼。

 そこに封印・安置の為されている『不死根(デッドレス)』のもと。

 ゴルズィオはいなくなったけれど、一度アーティファクトとして成立したものはそう簡単には消えない。けれど一度破壊が始まれば直す者はもういない。

 

「ほほほ……では、ゆくぞ」

「タイミングはアンタに任せるわ」

 

 精神統一をする。

 魔法。術者の想像力を食らった魔力が現実を侵食して「その通り」にする技術。

 未だ全てが発掘されることのない"或る万能"から見つけ出された式を基に公式を抜き出して使われる学問。

 

 これより行うは外道。因果の逆転。

 目の前に作り上げられた祭壇。そこに横たえられているのは──少年、ゴルズィオ・ヴィリジオニティカ本体の身体。

 彼は言っていた。彼の使う魔法はそのどれもが"或る万能"より生じたものであると。そして、認識を歪めているのは私達(そちら側)であると。

 なれば見せてもらおう。

 

「解析開始」

 

 やることは魔王城地下の魔法陣解析と同じ。

 既に存在している回路に魔力を走らせ、その形を知る。

 他者の想像を想像し直し、創造に使われた魔法を創造する。

 回路といっても「そこにしか流れないもの」ではない。簡単にコースアウトをするし、コースアウトしたことが容易にはわからないから……一歩一歩検算と検証を繰り返しながらその網を作り出していく。

 

 これら作業は"特定の魔法"相手なら一人でも可能だったけれど、"或る万能"相手は私だけじゃ無理だ。だからフナリエ老とエルレビにも手伝ってもらう。

 エルレビには私が辿った魔力の記録を、フナリエ老にはコースアウトをしていないかの検証を。

 

 だとして進むべき方向もわからないようでは何千年かかるかわからない。

 けれど……お父様との話し合いのおかげで、進むべき道はもう定まっていた。

 リリーガのくれたアンデッドのサンプルデータ、そしてお父様の有していた知見から、アンデッド視界に関する魔力は闇属性と土属性、火属性の中間魔力だと推測された。また、三属性の完全な中間ではなく、闇属性が半分を占めるはずだ、ということも。

 

 その魔力の導くままに解析を行う。自身の視界には黒網洞窟の中で見つけた魔力による強化を宿して。

 

 果たして何時間が過ぎただろうか。

 流す量は微量であるとはいえ、私個人の魔力量は多いとは言えない。そろそろそれも尽きてきた……という頃合い。

 

「*いるかい、魔力回復ポーション」

「!」

「*ああ、反応しなくて大丈夫だよ。ボクの姿は周囲の魔族には見えていないから反応しても意味無いし」

 

 隣にいた。確かにここはフィールド扱いだろうから彼が現れてもおかしくはないけれど……。

 クランパネリテ。本来の道化。

 

「*ボクは商人だからね。お代を貰わなきゃ商品は渡せない。だから……いるかい、とだけ聞こう」

 

 ……寄越せ、ですわ。

 

「*思うようにならない御令嬢だね、本当に。……真なる平和が訪れたら、旅路の旗の彼を探すといい。ボクも彼も、そして『勇者の魂』もそこにいる」

 

 彼……ルドガーは生きていますの?

 

「*あと一日長引いたら終わっていた。食料は尽き、他者を思いやる心も尽きて、彼のいる村は自滅の道を辿っていた。キミは救ったんだよ、彼らも」

 

 ふん、勝手に救われただけですわ。そこまで恩着せがましいつもりはありませんの。

 

「……これは勝手な罪滅ぼしさ。【愚悪賢者】に出会ってしまった時、彼から逃げるためにキミの名前を出した。彼との間に結ばれた契約は、キミが彼を殺すことで破棄された。つまり、お代はいらないってことだよ、()()()()

 

 クランパネリテらしくない無造作な仕草と共に口へ突っ込まれる瓶。

 とくとくと流れ込んでくるは……とんでもなく不味い青の液体。うげぇ、これ人間が飲んでいいものですの……?

 

 飲み干した頃にはクランパネリテの姿は無く、ポーションの瓶まで無い。

 彼がいたことを証明するのは、とんでもなく回復した私の魔力のみ、か。

 

「これ娘子、集中力を切らすでないわい」

「……アンタ、ブラッドの仲間入りしたわけ? 土壇場で魔力が増えるとか……ウィッチからしたら垂涎モノなんだけど」

「くだらない罪滅ぼしがあっただけですわ。っぺ……あー、最近マズいものばっかり口にしていますわね。早く美味しいものが食べたいですわ」

「じゃから集中力を──むぉ!?」

 

 過去で食べた美味しいものを思い出してお腹が空いて、お腹がすいたら苛々してきたのでちまちました作業をやめる。

 これ以上は先を絞るのをやめて、全方位カバーでいきますわ。

 

「ちょっと、そんな乱暴な魔力制御……ちょ、これ、うそ……」

「む、娘子!? これじゃ、これが"或る万の──」

「見つけ──ましたわぁぁああああ!! あー、長かった! 長かったですけれど、そら! ブラッド! シェディン! ノギオン! 加えて力自慢の魔族たち!! 出番ですわぁぁあああああ!」

 

 ぎゃーぎゃーうるさいエルレビとフナリエ老を振り切って、複製した魔力を中空に持ち上げる。

 不死根に使われている魔力。そしてそれを破壊するための公式。ゴルズィオ・ヴィリジオニティカの肉体でフィルタリングした"或る万能"のひとかけら。

 

「──待ってたぜ、新魔王! いくぞォてめぇらァ!!」

「いや待てブラッド、別に私は魔王の座を退いたわけでは」

「エンチャント一番槍貰いィ! からのォ──赫焔灼烙!!」

「続け、リザードマンの誇りにかけて!」

「ここで行かぬはドラゴンの名折れだろう──」

「いや待て盟友の方々、『不死根(デッドレス)』はそこまで大きなアーティファクトではないから巨体のあなたたちがそう殺到しては」

「ごたごたうっさいですわ! ナイトクロー・エンテレケイア!」

 

 そんなんだから最弱魔王! それをやったらどうなるかより前に──鬱憤を晴らす!!

 人間とか魔族とか関係なく、知性体ならまずやるべきこと! ですわ!!

 

「こ・わ・れ・ろぉぉおおお!!」

 

 ですわ~!!

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