ツインターボに脳を焼かれたウマ娘は、大逃げで世界一を目指す 作:223系新快速
今回から、パンサラッサは自分の道を歩み始めます。
パン「オクトーバーSを勝ったのに、またメンタルトレーニングッサ?」
南坂「ええ。パン君が今後も大逃げを続ける上で、自信を確信に変えるために、必要なことです。ですが、これについては、一度大逃げを自分の意志で選択した上で勝利しない事には、机上の空論ですから。」
パン「は、はい、それで?」
南坂「まず大事なのは、大逃げというのは、不器用な気性難しかいないということです。」
いきなり訳の分からない言葉が飛び出す。因みに、南坂トレーナーは最近パンの事をパン君と呼ぶようになった。
パン「そ、そんな、ターボ師匠にエース先輩、パーマー先輩と、皆頼りになる先輩ばかりッサ。」
南坂「確かに普段はそうかもしれません。ですが、レース中になると、様子が変わります。皆、大逃げしか出来ない、不器用な性格なんですよ。」
パン「ええーっ!?」
南坂「思考が狭まって、自分の走りしか考えられなくなる。ターボさんも、走っている最中は周りのウマ娘が怖くて、だからあんなに大逃げをしているんですよ。」
うーん、でも、パンはそういう感覚はない。
南坂「ええ。それが普通なのですが、こと大逃げに関しては、それが逆に勝利への足かせとなるのです。常識とは真逆の走りをするが故に、常識が邪魔して思い切った走りが出来ない。」
パン「うう、そういわれると、これまでの迷走が全部説明出来てしまうッサ…。」
ネイチャ「成程、なまじ精神的に余裕がある分、躊躇いが生じて速度を無意識に落としてしまう訳ですかー。デバフを使って周りを委縮させる私とは逆ですなー。」
南坂「確かに、その通りですね。」
イクノ「ですが、こうして説明するということは、対策の方法があるということですね。」
南坂「ええ。その肝は、レースではなく、タイムトライアルとして捉えることです。」
パン「え、ええっ!?」
南坂「自分以外の全ての出走者の存在を脳内から消し去り、とにかく自分が出せる最速タイムでゴールを駆け抜ける。そういうレースをすれば、パン君は自分の走りが出来ますよ。」
タンホイザ「勝てる、とは言わないんだ。」
南坂「勝つことを意識したら、パン君は自分の走りが崩れますからね。」
ネイチャ「じゃあ、並走トレーニングは不要ってこと?」
南坂「ええ、そうですね。むしろ、変な癖がつくので有害ですらあります。」
それを聞いて黙り込む。
南坂「パン君?」
パン「トレーナー、トレーナーが今言ったこと、どれも何となく感覚では分かっていた。でも、それを言語化して確立する事は出来ていなかった。だから自分から提案する自信が持てなくて、結果も出なくて、自己嫌悪に陥っていた。もう、こんなことはしたくない。」
南坂「その感覚、忘れないでください。」
パン「え?」
南坂「最高の効率を常に維持するには、環境が良いだけでは十分ではありません。自分の精神状態が原因で、最善を尽くせないもどかしさを実感しているからこそ、そうならないように常に全力を出し、後悔しないようにするのです。」
パン「わ、分かったッサ!」
◇
パン「い、言うのは簡単だけど、やるのは簡単じゃないッサ…。」
漫画やアニメだとサラっと流されるけど、ここがキツイ。
イクノ「サラっと流せるのが、努力を厭わない人間です。努力出来るのも才能の内ですよ。」
パン「本当ッサ!?」
イクノ「本当です。努力する際には辛いことが沢山あります。脳構造が苦痛に耐えられるか否か、分泌される物質の多寡などで決まります。」
パン「努力しないのは甘えだっていうのは成功者の詭弁ッサ?」
イクノ「どちらかというと社会構造の問題ですね。成功者は皆努力しています。」
◇
1か月経ち、福島記念。ここは、ターボ師匠がラジオたんぱ賞と七夕賞を勝った場所。
パン「さあ、今日も逃げるッサ!」
「「「「「見せて(貰うわ/くれよな/貰うっしょ)、新時代の大逃げを!」」」」」
パン「え?」
ターボ「皆来てくれたんだな!」
パン「え、嘘!?」
大逃げをする先輩がずらりと揃っている。ターボ師匠はもちろんのこと、エース先輩、パーマー先輩、ヘリオス先輩、スズカ先輩、タップダンスシチー先輩。
パン「パンの事を応援に!?」
エース「勿論だ、チーム『大逃げの会』にとっては久々の新規加入メンバーだ、逃すわけがない。」
スズカ「ターボの弟子が、ターボばりの大逃げを見せてくれるなら、見るしかないわ。」
ヘリオス「ウェーイ、バイブスかましてこー!」
パン「先輩…、じゃあ、行ってくるッサ!」
パーマー「いやー、気合入っているねえ。こりゃ期待出来るね。」
『おおっと、今日出走のパンサラッサの周りに、G1級ウマ娘が揃っています。カツラギエース、メジロパーマー、ダイタクヘリオス、サイレンススズカ、タップダンスシチー。いずれも大逃げで名を馳せたウマ娘です。』
『誰か応援したいウマ娘がいるのかもしれませんね。それはそうとしてゲート入りです。』
先輩がいるとか、そういうのは関係ない。ただ、自分の走りをするだけ。そういう理由で走り方がブレるのなら、それはパンの走りじゃない。
『スタートしました!』
スタートする。後ろの足音も影も気配も、一切気にしない。ただ、自分のペースの維持だけを考える。
『8番パンサラッサが先頭に立ちます。3バ身後ろにはステイフーリッシュ。』
1ハロン12秒を切るペースで走る。
『1000m通過タイムは57秒3!』
よし、ターボ師匠とほぼ同じペースだ。このままのペースを維持して、最後まで逃げ切る。
「ちょ、ちょっと、まだ逃げるの!?」
「む~りぃ~!」
パンについてきた先行勢は皆アップアップだ。
『第四コーナーから直線へ、さあ先頭は8番パンサラッサ、リードは8バ身、後ろから追い込んでくるが、これはパンサラッサだ、鮮やかに逃げ切って4バ身差でゴールイン!鮮やかに、迷いなく、逃げ切ったー!』
やった、大逃げで勝てた。その事実に、感無量になる。入学してから3年、ずっと自分のスタイルに迷い藻掻き続け、漸く確立した自身のスタイル。
◇
ターボ「パン、やったな、やったな!」
パン「師匠と同じく、大逃げで勝てたッサ!」
師匠と抱き合って喜ぶ。そこに先輩達が駆けつけてくる。
パーマー「パンサラッサ最高!見ててバイブスぶち上った!」
パン「はい、パーマー先輩!」
スズカ「私とはちょっと違うけど、でもいい逃げだったわ。今度並走しない?」
パン「はい、スズカ先輩!」
ヘリオス「パン、これ見て!」
パン「ヘリオス先輩?」
ヘリオス「SNSでパンの事を呟いたらバズって、『第二のツインターボ』がトレンド入りしてる!」
パン「じゃあ、パンの走りは皆に認められたってことッサ!?」
ヘリオス「そういう事!有マ記念出走も夢じゃない!」
パン「ターボ師匠も出走した、夢のグランプリに、パンも…!」
有マ記念は、一年を締めくくるお祭りレースだ。それに出られると考えただけでワクワクする。
ネイチャ「はいはい、夢を見るのはいいけど、まずはウイニングライブをしっかりやること。センターを務められるのなんてめったにないんだから。」
パン「わ、分かったッサ!」
前回のオクトーバーステークスに続くセンターだけど、重賞は観客の数も気合の入り方も全然違う。気合が入り過ぎて、Make debut! を歌い切り、控室に戻ってきたときにはもうヘロヘロだった。
パン「つ、疲れたッサ。勝った者は負けた者の分の思いを背負う必要があるというけれど、ここまでとは思わなかったッサ。」
ネイチャ「ま、それが出来るのがキラキラのウマ娘ってこと。例え自分がそうじゃなくても、勝者の責任は皆等しく受ける。これまでも、これからもね。」
漸くパンサラッサのアイデンティティである大逃げ確立です。ところで、ウマ娘の小説では掲示板方式が流行っていますが、必要でしょうか?必要であれば、他の作品をベースに作成します。
後、タップダンスシチーだけ台詞がありませんが、彼女には彼女にしか出来ない役回りがあるのでご安心を。