スズカです。まちがいなく。
俺はスズカさんが、サイレンススズカが好きだ。
走っている時のかっこいいスズカさんが好きだ。あの触れたら崩れそうな儚い雰囲気が好きだ。そんな雰囲気を出しておいてポンコツさ加減がかなり強めなのが好きだ。スペちゃんと一緒にいる時のスズカさんの顔は国宝級の名画すら劣って見える。
ともかく、ビジュも性格も何もかも、ウマ娘プリティーダービーという作品の中で一番好きなのだ。
流行病で色々ストップし、心の底から絶望した俺に一時の安らぎを与え、オタク(もっとも、にわか中のにわかだが)に引き込んだのが彼女だったのだ。
スズカさんが映るモニターに齧り付く日々を送った。他にすることもないし、アニメを浴びるように視聴し、アプリでは惜しみなく軍資金を投入してスズカさんへ捧げたものだ。
だが、俺は欲深い人間で、日を追うごとに、画面を眺めているのが辛くなった。どれほど俺がスズカさん好きでも、それが届かないというのが空虚だった。
いくら俺がスズカさんに手を伸ばしても、モニターがそれを阻む。スズカさんが俺に笑顔を向けることはない。当たり前のことだ。だが、俺は狂っていたんだろう、それが我慢ならなかった。
ある時、ゴミだらけの部屋を見回して、俺は決意した。人は高いところから落ちると、途中で意識を失うという。それを利用した。
目を覚ますと、何もないのに全てあるというべきか。そんな不思議な感覚を覚えた。全てが白に塗りつぶされた空間に、立っているような浮いているような感覚だ。
そこで、俺は生まれて初めて神(姿形はわからなかった)を見た。それが神だと実証されたわけでは無いが、それは神だったのだ。科学の発展した現代で生きていた俺にはまさしく青天の霹靂。無い腰を抜かしたことを覚えている。
神が俺の前に現れたとなれば、さて、今までの所業を謗られなじられるのかビクビクしていると、神は何故だか、私を褒め称えた。これは今でも疑問に思うことがある。私は迷惑をかけた方が大きいと思っていたが、他人から見れば良い孝行息子だったのだろうか?
ともあれ、たまげていた私に、神は褒美を与えると宣った。なんでも申せと言った。
そこで、私はふと脳裏によぎったものがあった。そう、よく見ていたウマ娘の二次創作。所謂転生ものと呼ばれるそれと、まるで状況がそっくりでは無いか。
今考えてみれば、神が
そう、俺はその時、酔っ払いの雄叫びの如く、こう言ったのだ。
「ウマ娘のスズカになりたい!!!!」
体に重力を感じた。目を開くと、見知らぬ木造の天井が霞んで見える。目を下にやると、どうやらベッドに寝かしつけられているようである。
ふと、手を握れることに気づいて、その手が、少し前の俺と違って、小さく柔らかいことに気づいて、嗅ぎなれない匂いを感じて、私はその瞬間、全身がぶるりと震える感動を覚えた。初めて感極まるというものを知った。
確信を得たのは、その時、頭の上ではためいた耳の感覚だった。
なれた。私は、サイレンススズカになれた____
そう
ひょっこりと、緑色のメンコが視界の隅に現れた。
「んしょ、よいしょー!」
おかしい。なぜなら、聞いたことのある声。私が発声するはずの声がして、ベッドがギシギシと軋んだからだ。
私は目を疑った。
顔立ちは幼く、あどけない。しかし、知っている。私はこの顔を知っている。見紛うはずがない。
「ラスカル! 目が覚めたのねっ!」
硬直した私にまたがって、きゃっきゃっと嬉しそうにはにかんだ少女は、間違いなくサイレンススズカその人だったのだ。
スズカさんの同室
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スペちゃぁぁぁん!!!!!
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ラスカル