スズカになりました。   作:にわとり肉

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覇王と伏兵と半端者

 『ぁぁぁ学生生活終わりましたぁぁぁあ』

 『あの…… 大丈夫ですか?』

 

 彼女の醜態を笑ってしまった負い目もあるし、一人教室の隅でしゃがんで頭を抱えて、紫のグルグル目をぐるぐるさせていた――メイショウドトウに声をかけて、一緒に行動し始めてから数分。

 

 『はーっはっはっは!! カラスが線路に石を置いていたから電車が遅延して、やっとの思いでバスに乗れたと思ったら渋滞!? まるで一物語の主役ッ……! 気に入ったっ! 君をボクの大歌劇の役者として迎えようじゃあないか!!』

 『えええ!? ええ、え、え?』

 『友達になりたいってことだよ、多分』

 『そうとも言う!』

 

 いつのまにか王様が間に入ってきていた。青空にのんびり浮かぶお天道様にも負けない、いや、地上の太陽である彼女に、ドトウは一瞬で焼き尽くされてしまって、もちろん私も焼かれた。完全にテイエムオペラオーの世界に引き込まれたのだ。

 

 『さあキミたち! 共にこのトレセン学園の地に偉大なる最初の足跡をつけに行こうではないかッッッ』

 『えーと、はいいいい!』

 『…… 施設を見て回ろう、ってことね』

 

 姉さんには悪いが、私はこんなに人生を全身全霊で生きている人を見過ごせない。面白いから。

 という訳で、正面玄関から雪崩れ込むウマ娘の流れに乗って、三女神像が見守る玄関前広場に出たオペラオー率いる私たちは、オペラオーのマシンガントークを伴って、トレセン学園の探検を開始したのである。

 

 「ここは、ボクたちが初めて一堂に会した場所……! どうする? ここは走っていくかい?」

 「制服でやる気なの……?」

 

 「絶景じゃあないか、この舞台からの景色はァ……! ドトウ! ラスカル! 今からここで歌劇の練習を____」

 「ひ、日が暮れちゃいますぅぅ〜!!」

 

 「さぁどんどん行こうじゃないか!」

 

 (以下中略)

 

 練習用レース場、ライブ会場、室内プール、体育館、トレーニングルーム、図書館、カフェテリアetc……

 全く、この学園の設備の整い方には驚かされるばかりだった。老朽化のろの文字も見えないし、質も最新鋭。

 選抜レースやファン感謝祭のように、一部敷地が公開される日もあるが、それでは見えてこない部分を見ることができるのは、トレセン学園生ならではだと言えるだろう。

 あと、見知った顔ぶれのウマ娘も見ることができて、思った以上に満足だ。

 

 「これでおそらく全てを踏破できたろうさっ!全く、こんなにも素晴らしい舞台が整えられていて、俄然やる気が漲るとは思わないかい!?」

 「そうだねえ」

 

 そして疲れた。カフェテリアのレンガの柱に下げられた時計を見ると、時刻は三時半を指していた。歩き回った足にオレンジジュースの甘味が沁みる沁みる。

 

 本来なら人が少なく、落ち着いた雰囲気なんだろう筈が、相変わらずテンションの衰えが見えない歌劇王の身振り手振りで壊されているのをよそに、ストローをチューチュー吸っていると、ふと、静かに俯いて、白いアホ毛を揺らしているドトウが視界に映った。

 探検している最中も、そういえばどんどん喋らなくなっていたような。

 

 「ドトウは元気ないね」

 

 声をかけると、ピャッと声と顔を上げた。だが、顕になった表情は曇っている。

 

 「まだ朝のこと引き摺ってるの?」

 「あれはしばらく引き摺りますぅう…… いや、そうじゃなくって」

 

 グルグル目が不安げに揺れて、私、そして、静かになったオペラオーの間を泳いだ。

 そして、彼女が意を決して言った言葉は、

 

 「なんか、むしろ不安になったというか…… こんなに私たちが過ごしやすくって、鍛えられる場所で、勝てなかったらってえ……」

 

 それは、背中が粟立つには十分な言葉。

 

 「何をいう! キミは試験のレースで1着をとっていたろうに!」

 「あれは、まぐれかもしれないじゃないですかぁ…… これからもそうなるなんて」 

 「キミは、ボクの崇高な審美眼に狂いがなければ、ことレースにおいては才気のあるように見えるけどもね。……あと、キミのその謙遜は美点でもあるが、結果をまぐれだなんていうのは良くないな」

 

 そうだ。メイショウドトウというウマ娘は、テイエムオペラオーと鎬を削って、最終的には劇的に勝利を収める。いずれ勝てるのだから。

 先行きの見えない私とは違う。

 

 「オペラオーの言う通りだよ」

 

 そういえば、オペラオーはなんで、私に追い詰められたなんて言ったんだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カフェテリアから出て、寮の中に入ったのは四時ぐらいだった。これから荷解きをしなきゃならないし、あと、同室の人にも挨拶をしなければ。

 受付で鍵を受け取って、部屋番号を眺めながら歩いていた時は、胸のしこりは流されて、初めての寮生活の展望を想像してみたりしていた。

 いや、別にこれが嫌な訳じゃないんだけれども。

 

 「あら、おかえり」

 「……」

 

 姉さんが私の布団を抱きしめて、部屋の真ん中で座り込んでいるのを見て少し狼狽えたのは仕方ないだろう。




 スズカ「待っていたぞ、ラスカルゥゥゥゥゥ!!」
 ラスカル「お前は後!!」
 スズカ「ッ……! ……?」

 お前は後→お前はあと→お前ハート→お前♡

 スズカ「ラスカルぅ……!」フルフルニィ

 アンケート結果は犠牲になった訳ではないです

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スズカさんの同室

  • スペちゃぁぁぁん!!!!!
  • ラスカル
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