「姉さん、嫉妬していたんでしょ?」
愛しい声が、私に意地悪をしてくる。カーテンから漏れる冷たい光に照らされた、私よりも濃い色の鹿毛を見上げて、思わず目を伏せた。
ラスカルの心臓は、とても穏やかに脈打っていて、それが、むしろ私の鼓動をはやめていく。私の匂いしかしなかった布団は、すでに懐かしい匂いに侵されて、混ざり合って私の鼻腔をつついて、余計に胸の高鳴りを駆り立てる。
妹の肩越し、暗闇のベールの向こうには、まだ荷解きが済んでいない段ボールの影が見える。
「姉さん」
ラスカルは、昔からたまに、こうして私をいじめるのだ。
仕返しに、手を回したラスカルのお腹を、少しキツく抱きしめる。すべらかなうなじが近づいて、私の吐息が当たったからか、モゾモゾと布団の擦れる音が、秒針が静寂を刻む部屋に鳴る。
「姉さんは、私を独り占めしたいのね」
何故、私の妹は、こんなにも私のことを知っているのだろうか。
眠気といじらしさの混じった声で、表情の窺い知れない声で、
「いいよ」
ラスカルは、最も簡単に、そんな甘言を私に嘯いてくる。
背中を向けている妹の顔を見ようとしても、くたっと力なく横たわる耳が見えるだけ。
「姉さんがそう望むのなら、いいよ。ずっと姉さんのそばにいてあげる。もう姉さんだけしか見ない」
艶かしく、月明かりに照らされる耳がピクリと動く。
ああ、この子は、私がそう望めばそうするんだろう。自惚れではない。実感からそう言える。
では、そうする?
私のために、ラスカルを私という檻に閉じ込めて愛でる?
なんて、魅力的な___
「……姉さん」
そんな沸騰した思考は、他ならぬラスカルの声でたち消えて、同時に、両手の力も緩んだ。
すると、ラスカルの強張った肩も緩んで脱力する。
私が強く掴んで離さなかったから、ラスカルは今、苦しんだのだ。
「そんなことできないわ」
恐ろしい。危ない。一瞬でも良かれと感じた私が。
「するわけない」
また、強く握ろうとしている私の手を抑えながら、私は強く宣言する。
……でも、今のは抗議してもいいんじゃないのか? 完全に誘惑してきていたじゃないか。私が誘惑に打ち勝てたのは奇跡だとわかっているのだろうか、この可愛い妹は。
ささやかな抵抗として、私はこのまま寝ることにした。これは私の一方的な拘束というわけじゃないからセーフだ。セーフ。
「そう」
それきり、ラスカルは口を閉じて、小さく寝息を立て始める。
……
「……」
まどろみ始めたからだろうか。
それとも、チクタクと無機質に鳴る秒針の音が、嫌に気になるからだろうか。
久しぶりに、ラスカルを間近で感じているからだろうか。
すー、すー、と、ラスカルはとっくに眠りについているんだろう。この子は、一度眠り始めたらなかなか起きない。
だから、私は安心して、それを口に出せた。
「……ラスカルは、わたしに嫉妬してくれる?」
……
やっぱり、これはまどろみが見せた、謂れのない不安だろう。
スズカさんの同室
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スペちゃぁぁぁん!!!!!
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ラスカル