起きたら茜ちゃん!   作:丹碧のブルーメ

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近未来的な建物、憧れますよね。ああいう建物が当たり前になる未来もそのうち来るのでしょうか?


十二話『衝撃がいっぱい』

「こんな上の階にあるんやな。」

 

「盗まれたらまずいものは大体上か地下ですよ。」

 

あれから一通り施設を紹介し終えた後、わたし達は葵さんが保管されているロボット格納庫までやってきた。

ここを最後に紹介することにしたのには、ちゃんと理由がある。

 

モチベーションの元になる部分だからだ、茜ちゃんには“ここから妹を解放するために動く”と強い信念を持ってもらわなければならないから。

 

「……ここに葵が……」

 

「なんかシリアスな雰囲気醸し出してますけど、さっきまではしゃぎすぎて皆に迷惑してましたよね?」

 

ジト目でさっきまでの行動を思い返して言葉にすると、茜ちゃんはビクッと震えて気まずそうにし始めた。

 

というのも……茜ちゃんにとって初めて見るものばかりだったのか、紹介してる時はずっと楽しそうに周りを見て回っていて──まあそこまでは良かったのだけれど。

今まで人目が無かった生活をしていた反動か、茜ちゃんが人目を気にせずはしゃぎすぎてしまって……結果として周りに馴染む筈の隊員服でも、かなり目立ってしまっていたのだ。そしてそんな目立っている茜ちゃんが部外者だとバレないように、必死に周りの仲間に誤魔化したのはわたし。

尻拭いをする羽目になったのは、わたし!

そしておまけに……

 

「わたし忘れませんからね。

『研修の子のお世話できるなら他の子も見てくれ』って、茜ちゃんのせいで今後は後輩の面倒押し付けられるようになったの。」

 

「そ、それはほんまごめん……見るもの全部、初めてやったから……」

 

研修の子として茜ちゃんのことは誤魔化したので、今後は後輩の子を任されることになってしまったのだ。

 

けどそれも……仕方が無いので許してあげようとは思う。わたしも初めての時はあそこまででは無かったけれど、興奮したことに変わりは無いし。

 

技術が発展した今でも、ここまで変わった建物はそうあるまい。時代がしばらく前だったら所謂「近未来的な建物」と言われていたような外観だ。勿論、室内も。

 

先進的な装飾の数々や映像が宙に浮いている光景は何度見ても見飽きない物で。

光が多く差し込む、開放的なガラス屋根で包まれている室内はわたし達の気分をリラックスしてくれていて。

そしてこの建物自体のスタイリッシュな外見デザインは、きっと外に行き交う人々の目を奪っていることだろう。

 

茜ちゃんはその数々の設備に大興奮していた。気持ちはわかるよ、うん。

ましてや茜ちゃんは今まであの部屋にずっと軟禁されていた子だ。あんな反応しても仕方ないだろう。

 

さすが、今国が総出で「正義の機関です!」と持ち上げてるだけはある。

個人が持てる技術が増えた昨今、自分達で色々と、ラインを超えてまで作ってしまう“悪ーいサイエンティスト”さんが増えたのだ。

 

だからその対策で始まった、それ等取り締まるこの機関への国の力の入れようは……それはもう凄かった。建物全体が馬鹿みたいにお金をかけて作られているのだ。

 

勿論必然的に人員も殆どプロ。普通の人間は入れない、いわゆるエリートの仕事というやつになっている。

わたしも相方が作ってくれた偽装の履歴書が無かったら、絶対入れていない。

本当にあの人には感謝しかない。

 

「まあ許します。実際この施設ほんとすごいですからね、あんな風に『なんやこれなんやこれー!見てあかりちゃん!!』ってなっても仕方な…」

 

「わーっ!わーっ!掘り返さんといてぇー!!」

 

少し茜ちゃんの発言を弄ってスッキリしたので、話を戻すとしよう。赤い顔して必死に止めて来ている彼女は、本当に揶揄い甲斐があって面白い。

 

「──さて、この『ロボット格納庫』には下級の隊員の人は入ることができません。」

 

「なんかシリアスな顔して話しとるけど、さっきまでウチのこと真似て小馬鹿にしとったよね??」

 

…………はて、なんの事やら。

 

「……なので幾つかのミッションをわたしと共にこなして、中級隊員になってもらう必要があります。」

 

「seyana……」

 

あ、目が死んでる。

掘り返すのやめてあげたんだから許して欲しい。こうやって茜ちゃんを無視して説明し始めても。

 

「中級隊員ならロボットの管理は一応任せられますからね。整備するとか言って適当に入れるようになります。勿論わたしは上級隊員で…」

「ならあかりちゃんがさっさと葵を出してくれればええんやないのー?」

 

あ、この子大前提を忘れている。

聡明な子だと思ったけれど、葵さんが絡むと少し急かしてしまったりする性格なのだろうか?

ちょっとムスッとした顔で聞いてくる茜ちゃんの唇に、待ったと言わんばかりに人差し指をスっと寄せる。

 

「話したじゃないですか、監視カメラがあるって。わたし一人じゃどうにもなりません。」

 

「あ、せやったな……

ほな、時々話に出てくるあかりちゃんの“相方さん”に手伝ってもらうっていうのはどうやろか?その人もここに務めとるんやろ?」

 

「ダメです、あの人は部署が違います。

だからここに入ることができないんですよ……異動願いをするにしても、今から動くんじゃ葵さんが消されてしまうのが先でしょうし。」

 

だから結局はわたし達でやるしかないのだ。

他に道はない。その事を理解したのか、茜ちゃんも腹を括ったようで顔付きが真剣になった。

 

「……そういうことならやっぱりウチが頑張らなあかんよな。絶対中級隊員になってみせるで。」

 

「その意気です。

できるだけ早く中級になるには、結構な数のミッションこなさなきゃですからね。一緒にがんばりましょう!」

 

大丈夫、彼女の反射神経はデザイナーベイビーとして生まれた経由があるから、かなり凄まじいはず。きっと力になってくれるし、足を引っ張らないと信じている。

少し天然なとこも、わたしがフォローしてあげれば何とかなるだろう。

 

「頑張るで!!

でもウチ、その前に葵に会いたいんやけど……。上級のあかりちゃんと一緒にならウチもこの中に入れへんかな?」

 

「一応可能ですけど、監視カメラの目があります。見るだけになりますよ。」

 

「それでもええから。」とお願いされてしまったので、電話で上の人間に確認をとる。

 

「すいません、あかりですけど──」

 

◆❖◇◇❖◆

 

「葵さんを起動する許可は降りなかったから、ほんとに見るだけですよ。あくまで口実は他のロボの整備です。」

 

「わかっとるって。」

 

電話での許可やパスを介してようやく中に入ると、茜ちゃんは素直に驚いてくれていた。

 

「にしても、すっごい厳重なんやな……それにとてつもない数のロボットや……」

 

「当然です。

元々悪いサイエンティストの所に置かれていたロボット達ですからね!また悪用されないようにと、厳重に保管されてます。」

 

如何にも機械といった風貌のロボットや、葵さんのような人間そっくりのアンドロイド等、保管されているロボットの種類は多種多様だ。

 

すべて一定の距離を置いて、間仕切りで区切られて全員スリープモードで格納されている。

 

「なんか、可哀想やな……ここは窓も無いし、そもそも皆利用されてただけなんやろ?」

 

「それでも人間からすれば、犯罪に加担したロボットってだけで恐怖の対象なんですよ。この扱いはしょうがないんです。」

 

ずっと葵さんと暮らしてきた茜ちゃんにとっては、あまりいい光景では無いかもしれない。正直わたしも好きではない。

 

けれど、もっと酷い例なんて探せば幾らでもある。

葵さんの場合は素直に従ってくれたからいいものの、過去には暴れて手がつけられず、仕方なく破壊されたロボットを何回も見てきた。

こうなってる状態でも、全然マシな方なのだ。

 

と、説明を続けていると茜ちゃんが途中で声を上げた。どうやら目的の物が見つかったらしい。

 

「あ、葵!おった!!

『51028番、基本的に人間に友好的だが、初対面の際に隊員に向けて発砲したため厳重保管。情報をすべて抜き取り次第破壊予定』……?」

 

「ね、言ったでしょう。わたし達が早くしないとどうなるかわかんないんですよ…」

 

「あ、まだなんか書いてあるで。えっと……

『見た目が非常に愛くるしいので、尋問する際は注意。絆されて肩入れしないように』……」

 

「──まあ可愛いですからね、彼女。機関でも破壊に反対する声は既に結構出てたりします。」

 

「そうなんや?ふふ、ウチの妹はええ子でかわええから当然やな。」

 

あらかわいい、ちょっと誇らしげだ。

しかしその誇らしげにしていた顔も葵さんの姿の全貌を見て徐々に変わっていく。

 

「あ、葵の後ろからしっぽみたいに充電の線が生えとる……」

「今時の機械は充電式がメインですしね。

茜ちゃんは見た事なかったんですか?充電の線、中にしまってあったみたいですよ。」

 

と、自分で言っておいて後からハッとする。

たしか茜ちゃんはロボットだと思い込むためにガソリンを飲まされていて、葵さんも一緒に飲んでいたはず。

 

「おかしない?葵って充電でも良かったのに、ガソリン飲んでたんや?」

「茜ちゃんが自分をロボットだと思い込む為の過程に、その行為が必要だったんですかね?

それかなにか、他にも茜ちゃんにガソリンを飲ませてた理由があるんじゃ……」

「なんやろ?他に……理由……」

 

考えていても仕方無いし、長くここで立ち止まっていると怪しく思われてしまう。いくら可愛いアンドロイドが目の前にいても、ずっと立ち止まっていては流石に不審に思われるだろう。

 

「さ、整備するロボットの方に行きますよ。

──葵さんを救う覚悟は決まりましたか?」

「う、うん!

ちょっと気になることもあるんやけど……葵の姿を見て、説明書きを見て、早く救わなあかんって思ったで。」

 

覚悟がより深く決まった茜ちゃんの口から発せられた発言は、前よりも決意がひしひしと伝わってきた。

 

──そしてその後に「変な目で見てるかもしれない人からも救わなあかん」と言っていたので、思わずわたしは吹き出してしまった。

 

 




・機関の人間
なるまでが非常に困難な仕事でありながら、その殉職率は高い。
しかしそれでも目指す者が後を絶たないのは……政府のメディアによる推し具合と、そのお給料の高さが理由に他ならない。正義感でこれを目指す人間も少なくない。

ちなみに最近だと、現場に向かわなくてもいい“サポート部署”が大人気。

※一部内容修正。読みやすくする為の修正なので、物語の内容には影響しません。
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