起きたら茜ちゃん!   作:丹碧のブルーメ

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琴葉姉妹お誕生日おめでとうございます!
記念に三話連続投稿です。おめでとう…おめでとう…


十六話『それでも、何かを信じて』

近付いてきたら身体能力と反射神経でこちらが優位、もし離れて攻撃してきたとしても火で反撃できる。

 

仮に、化け物の択がもうこれ以上無いというのであれば……ほぼこちらの勝ちが確定したと言っても良いようなこの状況。

 

しかし最後までどうなるかわからないのが戦闘というものだ。

さっきは油断して痛い目を見たので、ここは早めに勝負を畳みかけてやるのもいいかもしれない。

 

「ここは一気に距離を詰めて…」

「ま、待って!お姉さん!聞いて欲しいことがある!!」

 

そんな想いが声に出たところで、先程化け物から助けた子 張本人から“ 待った”が出た。こんなギリギリの局面で止めるようなことは、できればやめてほしかったのだけれど…

 

「な、なんや?できるだけ早うして!!」

「あいつ、上のウニョウニョに操られてるんだよ!」

 

けれど、こんないい情報であれば話は別だ。

どうやら話を聞く限り化け物と背中のイソギンチャクみたいなモノは別々の存在であり、片方が操ってこちらに仕向けているらしい。

 

どうしてこの子がそんなことを知っているのかも気になるが、今優先すべきは化け物の上に居座ってるイソギンチャク野郎の討伐だ。あちらに意識を集中させる。

 

「わかったで、ようは繋がってる2匹を引き剥がせば黒い方の動きは止まるんやろ?」

「そう……だと思う。

あいつ、普段はフルーツ食べてるだけのやつだったのに……変なウニョウニョが背中に乗ってからおかしくなったから!」

 

なるほど、様子がおかしくなったのは背中にイソギンチャクが乗ってからだと。口からフルーティーな香りがしたのは、元々肉食獣ではないからだったか。

……いや。牙があるところを見るに、雑食だろうか?

 

にしても人に無害だった生き物を乗っ取って凶暴化させるなんて、なんて恐ろしい。

あの化け物は元々そんな危害がある生き物でもないようだし、尚更ヤツだけをどうにかしたいところだ。

 

「わかったで……ほなウチがあいつをなんとかするから、キミは今度こそ逃げるんやで?」

「う、うん!ウニョウニョ倒すの頑張って!!」

 

そう言って子供は、ここから離れるべく動き始めてくれた。あとはウチがヤツをなんとかすれば、万事解決だ。

 

 

──さて、イソギンチャクを化け物から引き剥がすには、どうしたら?……必死に頭を回転させながら考える。

ヤツだけにダメージを与え続ければ、そのうちくたばって操りの手が止まってくれたりしないだろうか。

 

こう仮定するならば、やはり狙うのは背中のイソギンチャクのみ。向こうも何時までも待ってくれる訳では無い、早めに畳み掛ける!

 

「行くで!イソギンチャク野郎!!」

 

こちらが距離を詰め始めると、化け物はそこそこのスピードで逃げ回り始めた。

先程火傷をさせてから、向こうは積極的に攻めてきていない。そして距離を詰めても離されるところを見るに、もしかしてこちらのことを恐れているのだろうか?

 

「逃げても無駄やっ!!」

 

だが向こうがいくら逃げ回ると言っても、身体能力ではこちらが上。よって無意味だ。

壁まで化け物が移動したところで、ウチはすぐに追いつき退路を塞ぐ。

攻撃を当てるのは、背中──上部に巣食ってるイソギンチャクのみ。睨み付け、狙いを定める。

 

「!」

 

ヤツはこちらの狙いに気付いたのか、雄叫びを上げるとイソギンチャクの周りに触手を張り巡らせ、こちらの攻撃がそこまで通らないようにガードを張ってきた。

だが、それも無意味だ。触手に効くのは何かもう知っている。

 

 

さっきと同じように指先に意識を集中させて、火を作り出す。触手は火傷を負っていたし、それから逃げ続けているので“これ”が苦手なのは明白。

 

「これでっ!どうやっ!熱いやろ!!このっ!」

 

ジュッ!ジュッ!何度も触手に指先を当て、火傷させていく。予想していた通り熱さには弱いようで、火傷した部位の触手が徐々に引っ込み始めた。

 

しかし向こうも勿論抵抗はやめない。

ガードはそのままに、何度も走っては逃げ走っては逃げ、距離を空けてくる。

こちらがスピードでは上のはずだが、こう何回も逃げ回られると流石に疲れが隠せなくなってきた。少し全速力で走ったくらいで息が上がるウチにとって、この追いかけっこは結構ハードだ。

 

しかしそれでもめげずに焼いては追いかけ、焼いては追いかけをしばらく繰り返していると、苦労の甲斐もありイソギンチャクの本体が遂に姿を現した。

もう守る触手は残っていないし、あとは本体を叩くだけだ。

 

「はぁっ、はぁっ……!ここまでやで……!」

 

もうスタミナも残っていないが、それは向こうも同じ。イソギンチャクだって全ての触手に火傷を負って、焼け爛れている。やったのはこちらだが、その姿は痛々しく感じた。

 

でも、今はこいつをどうにかしないと子供もウチも危ないから。

 

そう自分に言い聞かせ、トドメを刺そうと体を動かしヤツの背中に──すなわちイソギンチャクにトドメを刺せる位置に、乗った。

 

「なっ?!」

 

しかし、トドメには至らなかった。

ここに来てヤツはまだ手を残していたようで、イソギンチャクは少し縮むと、その体を凝縮して硬くしたのだ。

 

色も質感も、まるで石のようになっていく。

でも、それでも、この火を出す力があれば。きっと何とかなるはずだ。そう思いまた指先に意識を集中させるが……

 

 

 

 

 

「なんでっ!なんで、何も出ないんや!」

 

いつまで経っても火が指先に灯らなかった。

おかしい。さっきも、上手くいったのに。どうして。

早くしないと、ヤツにトドメを刺せないのに。

 

──ああ、そうこうしているうちに背中から振るい落とされた。最悪だ。

おまけに頭を床にぶつけてしまい、脳が震える。

 

あまりの痛みに体を動かせずにいると、その隙を突かれて今度は逆に相手に有利なポジションを奪われてしまった。

そしてヤツは、勝利の雄叫びを上げる。

 

「……ほんまごめん、あかりちゃん……

ウチ、もうダメかもしれへん……」

 

ゆっくりと顔に迫ってくる、ヤツの怒りと食欲に狂った形相を見ながら、自分の負けを確信した。

 

「葵──助けられへんくて、ごめん。」

 

目を瞑り、涙を流しながら最期に妹のことを思い出し謝罪する。

 

ウチの人生……葵にいつも支えられてもらって。

今度は自分の番だと意気込んでみたはいいものの、結果はこのザマで。

 

あかりちゃんにも葵を助けるのを手伝ってもらってるのに、いつも迷惑を掛けてばかりで。最近やっとサポートできるようになって、足を引っ張らなくなったのに。

火まで使えるようになったから、今後は絶対役に立てると思ってたのに!!

 

まさかこんなところでやられることになるなんて。

……いやだ、こんなところで。

 

「まだ、死ぬ訳にはいかへん……」

 

うん。ダメだ、やっぱり絶対死ねない。

もうヤツの口が、いただきますと言わんばかりにこちらに開かれてるけど。

 

諦めちゃいけない。そうだ、まだ根は折れちゃいない。

 

悲劇のヒロインぶるのは死後の世界でいい。

生きてる今は、まだ最後の最後まで足掻いてやらないと!!!

 

くうぅ、ぐゔゔぅ゙!!

 

ヤツの口が閉じられたら、ウチの身体が上半身半分食べられて。そう、The・ENDだ。

 

だから全力で!残された体力全部使って!

両手でヤツの口が閉じ切らないように抑え続ける!!

ここから挽回なんてできる力は残ってないけれど、それでも。

 

希望は残っていないのに、何かを信じて必死に。




・火を出す能力
意識を集中させた体の部位から、火を出すことが出来る。
しかしこの能力は体内のガソリンが必要不可欠なので、足りていないと使えなくなってしまう。
茜が最後にガソリンを口にしたのは前の家での食事が最後だったので、今回大事なところで火が使えなくなってしまっていた。
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