起きたら茜ちゃん!   作:丹碧のブルーメ

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これで連続投稿最後の三つ目となります。
前の話を見逃している可能性がありますので、前の話(と前々)も是非ご確認あれ。

改めまして、琴葉姉妹お誕生日おめでとうございます!
誕生日に再会させられてよかったです。(ギリギリで連続投稿して無理矢理達成しながら)


十八話『待ちに待った再会』

あれから数日が経って。

回収されたあの化け物はここの施設の自然保護区のような場所の一角で管理……というか、飼育されることになった。

 

化け物──もとい、危害がないことがわかってからヤツに付けられた名前、クロスケ。

クロスケは背中についていたイソギンチャクこと寄生体を剥がされてからは、とても大人しく従順になったそうで。演技じゃなければいいのだが。

ちなみにそのイソギンチャクは今、研究対象になって色々と調べられているそうだ。

 

そういえばクロスケは高級フルーツ……というか、基本的にメロンしか食べないらしい。

それで職員を食費で困らせてるとか、いないとか。

 

おまけに、機関の人間の誰かが芸を仕込もうとしているという噂がある。でもウチは襲われた経験があるので、仮に芸を覚えたとしても絶対に見に行かないと思う。

 

 

そしてもう一人──そう、あの子供だ。

酷い環境で暮らしていた子がよく見せる、精神疾患のようなものは見当たらないそうで。

今はのんびりと、専門のアフターケア担当の人間と足の回復を目指してリハビリしているらしい。

 

ちなみにあの子、名前を“アイ”というそうだ。

ウチに深く感謝してくれているらしい。

……と言ってもこちらとしては成り行きで助けたようなものだし、なんなら助けるのが遅れたせいで足に怪我を負わせてしまったのだけれども。

アフターケア担当の人によると、あの子がウチの名前を知りたがっていたそうなので「『茜』だと教えたってや!」と言っておいた。

 

そんでもってあの時の話を聞くに、あかりちゃんを呼んでくれたのもこの子だったらしい。間接的に助けられていた。痛かったであろう足を引き摺ってでも、助けを呼んでくれたのだ。

……そう、むしろ感謝をしたいのはこちらの方だった。

 

今度会いに行こうかな?なんて思っている。

勿論、感謝を告げに。

 

 

 

だけどあの子に会いに行く前に、誰よりも会いたい相手がいる。今日はあかりちゃんが監視カメラの担当の日。

 

つまり、葵を解放できる日にちなのだから!

葵に会いに行って、狭い格納庫から出してあげる日だ。

 

今日を逃したらあかりちゃんの担当の日は再来週だが、おそらく再来週はもう葵は──……だから、今やるしかない。

 

「あかりちゃん……やるんやな!?今…!ここで!」

『ですです!!勝負は今!!ここで決めます!!』

 

ヤケになってすこしテンションがおかしくなりながらも、携帯端末越しにあかりちゃんに確認をとり間違いがないことを確認する。

 

 

あぁ、今日まで長かった……。

でも中級隊員として、この格納庫の目の前に今立っているということは。

 

そう、もう目的達成は目の前だ。

 

──思えば、ここの機関に来てからは以前の生活では考えられないようなハードスケジュールの日々だった。

でも、そんな激変した生活に耐え続けて来れたのは「今度はウチが葵を助け出したい」という気持ちがあったから。そしてもう一つ、あかりちゃんが手助けしてくれたから。この二つに他ならない。

 

本当に感謝している。

初めて会った人間があかりちゃんで良かった。もし他の人間だったら、こう上手くは行かなかっただろう。

 

ちなみに葵をこの格納庫から出せたら、その後どうするかは……実は詳しく決まっていない。

とりあえずふわっと決まっている事は、あかりちゃんの家に葵をかくまってもらうこと。そしてウチも隊員をやめて一緒に住まわせてもらうことになっている。

 

……が、ここまで来たら隊員として今後もあかりちゃんの手助けをする──というのも悪くないかもしれないと思っている。

それに、こんだけ長くいると他の隊員も声だけで「あっ、この人あの人だ」とわかるようになってきたのだ。

少しだけ、隊員というのも悪くないかな?と思うようになってきている。

 

『さて、作戦を振り返りますよ。格納庫に入ったらわたしが葵さんの番号を伝えるので…』

「覚えとるで、葵は51028番や。」

 

『さ、さすがです……ではまた入ったら通話を掛けてくださいね。』

「ん、ほなまたね。」

 

通話を切り、また別の人と通話を始める。

今度の相手はウチらの上司にあたる人。

 

「あー、もしもし?茜ですけど──」

 

◆❖◇◇❖◆

 

「っはぁー!ほんま緊張した!!」

 

滅多に使わない敬語のせいで口に違和感を覚えながらも、無事上司の人から許可を貰って格納庫の中に入ることに成功した。

いつも上との会話はあかりちゃんがやってくれていたから、こういう事にはあまり慣れていない。

 

さてさて、そんないつもお世話になってるあかりちゃんと再度通話を掛けるとしよう。

 

「もしもーし?無事、中に入れたでー!」

『了解です!では作戦の続きを話しますね?』

「ええでー。」

 

 

正直、格納庫から葵を連れて出るまでは簡単だ。

問題は出た後、人目をどう避けるかにある。一体どんな策で葵をこの施設から救い出せば良いのだろうか。

 

『わたしがここのカメラを担当できる時間は15分。その間になんとしても葵さんを起動させて、そこから持ち出してください。』

 

しかし、帰ってきた答えはザックリとしていて、あっという間に説明が終わってしまうものだった。

 

「──え!?15分間しかないん!?

それに帰りは?!ちょっと待…」

 

『色々ありまして!!

でも時間はこれでも十分ですよね?では頑張ってください!!』

 

そうして通話はすぐ切れてしまった。

……たった15分の間に葵を起動してここから持ち出す。できなくは無いが、感動の再会が急ぎ足になりそうで少し残念だ。なにか事情があるのだろうか。

帰りは……なにか、あかりちゃんに手があるのだろうか?とりあえず今は彼女を信じて、葵を探すしかない。

 

「っ!葵……葵……」

 

小走りで左右の番号を確認しながら、奥へ奥へと進んでく。相変わらず狭いし暗い、嫌な印象を受ける格納庫だ。

早く葵をここから出してあげなければ。

 

「──葵!!」

 

見つけた、51028番。

急いで駆け寄る。残り時間は……13分ほどだろうか。

まだ余裕がある時間だが、あまり余裕を持ってはいけないだろう。素早く携帯端末を出し、あかりちゃんとのチャット履歴を遡る。

 

「あったあった、これや。

えーと、なになに?『葵さんの電源をつけるには▶▶▶まず人間のくるぶしに該当する部分を両方とも、同時に強く押し込む必要があります』……なるほど、失礼するでー。」

 

くるぶし。足の付け根辺りにある、ちょっとでっぱった骨。

まさかここがスイッチになってるなんて、奇想天外すぎる。こんなの誰かに教えてもらわなきゃ、絶対にわからないだろう。

 

「ぅーん……あ、お姉ちゃん。」

「あお、い… 葵ぃぃ!!」

 

耳を突き抜ける、懐かしくてとっても可愛らしい声。

自慢の、妹の声。

──ああ、久しぶりにこの声を聞けた。

 

抱き着かずにはいられなかった。

 

「ふふ、お姉ちゃんったらそんな抱き着いて。

でも嬉しいよ、私のこと助けに来てくれたんでしょ?」

「せやで!!……というか、知っとったん?」

 

てっきりずっとスリープ状態で保管されていたから、ここから解放しようとしていた事も、何も分からないとばかり思っていたのだが。

 

「うぅん、あかりさんが来た私達の家に来たあの日。

あの日からずっとスリープ状態だったよ?事情聴取はされたけど、それ以外は何も話してないし、知らされてなかった。」

「だったらどないして、ウチがここに助けに来ることが……?」

 

やはり想定していた通り、葵は何も知らされていなかったようだ。それなら、一体どうして……?

 

「そんなの決まってる。

この狭い空間に来た時から、ずっとお姉ちゃんが来てくれるって信じてたから……わかってたから。だからすぐに状況を理解できたの。」

「それほどまでに、ウチのこと……!」

 

ウチはこの妹を、少し舐めていたのかもしれない。

葵はずっとずっと、この幽閉されていた期間。ウチを──琴葉茜を、信じて待ち続けていたらしい。

 

「うん、だってお姉ちゃん私大好きでしょ?絶対来てくれるって思ってた。」

 

そう言って葵は微笑む。大正解だ。

全てを見透かされているようで、思わず笑ってしまう。

 

「そうやな……うん、そうやな……!

それに、葵もこんなにウチを信じ続けてたなんて……ウチのこと大好きやろ!!」

「ふふ、ピンポーン。お姉ちゃん大好き。」

 

この後数分間、時間のことも忘れてただただ抱き合った。

お互い無事であったことを強く実感して、声も涙も我慢せずに出し切って喜んだ。

 




・アイ
苗字はまだ未公開。わかる人はわかるかも。

性格は優しく、何事にも一生懸命取り掛かる勤勉さも持ち合わせている。

健康診断の結果によると身体年齢は5歳相当。茶髪。
アフターケアを務めている人もこの結果を受けて、慎重にお世話を担当しているようだ。

自分を助けてくれた茜を「お姉さん」と慕っていて、いつか恩を返したいと思っている。もう返したのに。
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