起きたら茜ちゃん!   作:丹碧のブルーメ

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お久しぶりです、やりたい事を一通り終わらせたので今週からまた定期的に更新していきます。
待っていてくださった皆様、ありがとうございます!


十九話『まさかの突破口』

 

「──お姉ちゃん、抱き合ってるのは構わないんだけど、このままずっとこうしていて大丈夫なの??」

「あ……」

 

久々の再会でつい嬉しくなってしばらく抱き合ってしまっていたが、大事なのはここからということを忘れてはいけない。危なかった。

しっかりしないと。ウチの目的は葵をここから逃がすことなんだから。

 

「そうやな、ほなとりあえず葵を起動できたことをあかりちゃんに伝えて…」

 

あかりちゃんが言うには、監視カメラの担当をやれるのはたったの15分だけらしい。だから急いでこの後どうするべきか、確認を取らなければ。

タイムリミットまではあと10分も無いかもしれない。

 

……というか普通、監視カメラの交代は何時間置きに〜とかで区切ってするものだと思うのだけれど。なにか事情があるのだろうか?

 

「んん…?お姉ちゃん、あの人と繋がってるんだ?」

「そやで、あかりちゃんはあの日軟禁されてたウチらを助け出してくれたいい人やから大丈夫や!」

 

そして、今回もこの格納庫から葵を救い出そうと手伝ってくれている。脱出に加担したのがバレるかもしれないリスクもあるのに。

それでもウチらのために……ホントに助けて貰ってばかりだし、足を向けて寝られない存在だ。

 

「そう……なんだ?私はあのままあそこでお姉ちゃんと二人で暮らし続けるのもいいと思ってたんだけど。」

「外の世界を知らへんからそんなことが言えるんや、ここから出たら色々見せたるで!!」

 

「外の世界…ふーん……」

 

葵との話が一段落したので、あかりちゃんに再度通話をかける。今日で三度目だ。

 

「もしもーし?葵を起動できたで!後はここから逃げるだけや!」

『おけです!!それじゃあ次は格納庫の一番奥まで移動をお願いします!』

 

今──信頼しているパートナーから、とても脱出の手立てになるとは思えない変な指令を出されてしまった。

聞き間違いの可能性があるので、念の為にもう一度聞いておく。

 

「え…ここから逃げるんやないの?

なのに、格納庫の一番奥まで移動するん??」

「オネエチャン、ダイジョウブナノ?」

 

通話の内容を横で聞いてる葵も、ジト目で確認を取ってきた。ウチ自身、ちょっと心配になってきている。

まさかあかりちゃんに限って、そんな……?

 

『その声は葵さんですね?大丈夫です!

茜ちゃん、二人でわたしを信じて移動をお願いします。あと……着いた後はくれぐれも()()()()()()()()()くださいね、少し壁から離れて待機お願いします!!』

 

「ち、ちょっと待ってや、なんで…?

というか奥行ってたら時間が間に合わなくなってまうで??」

 

そんな、ここで細かく説明してくれないと安心できない。信頼していないわけではないが、このまま時間までに最奥に移動して待っていたら……タイムリミットが来てしまうのではないか?そう思い、少し焦りながら問いかける。

 

『いいんですよ、あと10分でそこまで行けたらわたし達の勝ちですから!』

「え、せやからどうして……」

 

疑問は尽きなくて、頭の中で次になんて言うか考えていていると……先に向こうから雑音混じりの返事が来た。

 

『もうわたしも時間が……というか、わ……はこれから相………リに乗ら……ちゃい………ので、その後………ゅうし……ょう!!ではまた!!!』

「え?ちょっと!雑音が入りまくって何言ってるかわからないんやけど!!」

 

『ツー。ツー。ツー。』

 

急に雑音が入ってきてしまい、後半何を喋っているのか全然聞き取れずに通話が終わってしまう。その会話を邪魔する雑音は一体なんなのかと言うと、ウチにはわからない。

 

ただ、雑音を効果音として表すなら──パタパタというか、バラバラというか……強くて持続的な風切音のように思えた。

 

「え、えぇ……?通話、切れてもうたし……」

「お姉ちゃん……大丈夫これ?」

 

いや、ここまでずっと二人で協力してきて、今更裏切られたりなんてことはありえないはずだ……きっとこの変な指令にも、なにか意味があるはず。

 

ああ、こんなことになるんだったら事前にもっと打ち合わせをしておくんだった。

葵を助けたい一心でトントン拍子で事を進めてしまったウチサイドにも問題があるかもしれない。

 

「あかりちゃんに限って騙してた!なんてことは無いはずや、信じて奥の壁付近まで向かうで?」

「まあ、今はそれ以外ない……のかな。」

 

幸い、最奥までの距離はそこまで離れていない。最奥を“ゴール”と考えるならば、残り時間を考慮しても充分歩いて間に合う距離だ。

そう思い「大丈夫」と言って不安を和らげながら、妹の手を引っ張って目的地へと向かって行く。

 

……そして、心の中で『大丈夫』と自分にも言い聞かせながら。信じて進み続ける。

 

「ねえお姉ちゃん、聞きたいことがあるんだけどいい?」

「ええで、別にそんな急がなくても間に合いそうやし。」

 

しばらく歩いていると、後ろから遠慮気味に声が掛けられた。

どうやら葵がウチに質問したいことがあるそうだ。暫くの間会っていなかったから、積もる話も山ほどある。

 

正直落ち着いてからゆっくり話したいが……まぁ時間にも思いの外余裕があるし、少しくらいなら話しても問題ないだろうと判断する。

 

「その、あかりさんのことすごく信用してるみたいだけど……それはどうして?」

 

その質問を聞いて葵側からしたらどう見えていたのか、と考え始める。

その答えはやはり、当然の疑問だったんだろうな〜と。

 

葵に会えずに機関の人間として動いてた間本当に色々あったし、葵からしたら急に物事が着々と動いたように見えているはずだし……気になることも多いのだろう。

そのうちの一つに、姉の人間関係の変化があるのは当然か。

 

「んん──今はウチの“仲間”だから、って言えばええかな……?ちょっと難しい質問やな……」

 

会った瞬間こそアレ(問答無用にビリビリガン)だったけれど、今となってはもう信頼に値する人物だ。

 

あの日救ってくれてからは葵の為に共にミッションをこなすようになって……毎日会うような、仕事上のパートナーのような関係になったから?

少し整理出来たのでこれを言葉にして伝えようとしたが、葵から先に言葉が綴られた。

 

 

「仲間ってことは……

やっぱりお姉ちゃんも気づいたんだ??そうだよね、あの顔と声は間違いないもん。」

 

「──え?」

 

思わず聞き返す。会話が──噛み合わない。

葵が何を言っているのか、よくわからなかった。

 

 

「にしてもお姉ちゃん、VOICEROIDの種類知ってたんだね。ごめんね?勝手に全然詳しくないのかと思っちゃってて…」

 

どうしてあかりちゃんの話をしていたのにVOICEROIDの話になったのか、理解できない。

 

「ち、ちょっと待って?何を言うとるの??」

 

VOICEROID。

『前の知識』では音声合成ソフトウェアだったもの。

 

この世界ではウチら姉妹は、それのキャラクターと同じ姿形のアンドロイドとして存在しているので、実在することになる。

……と思いきや、ウチだけ人間だったから実は違ったという、ちょっとややこしい事になっているよくわからない概念で……。

 

 

──そういえば、結局葵は本物のVOICEROIDなのだろうか?ウチ自身、あれから忙しい日々で深く考えたことは無かったけど。

 

「だから、VOICEROID仲間のあかりさんだって気付いたから信頼してるんだよね?って。」

 

葵が言った、『VOICEROID仲間のあかりさん』という言葉に脳内がクエスチョンマークで埋まっていく。

 

「え、えぇ…?」

「……うん…?」

 

葵もこれで伝わらなかったのが予想外なのか、困惑してしている様子。思わずこちらも手も離してしまう。

ちょっと混乱してきた。

 

そういえば、ウチが人間だったこともまだ伝えていない。

……いつ、伝えようか。

 

 

そして会話が途切れたタイミングで、奇しくも格納庫の一番奥まで辿り着いてしまった。

あかりちゃんに言われた通り、少し壁から距離を置きながら次の指令を待っておこう。

 

というか、さっき通話越しに聞こえたあの風切音のような音がリアルでも聞こえてくるような……

 

 

「──あの、お姉ちゃん。話の続きだけど…」

 

いけないいけない、今は妹と話している途中だった。

 

「ちょっと1回整理させてや、気になることが増えてもた。」

 

ワンクッション置いて、対話を再開させてもらおう。

と言っても今度は雑談のようなテンションではなく、真剣な話の雰囲気で。

──お互いなにかすれ違っているように思えるし、軌道修正する必要がありそうだ。

 

そう思い荒らぶっている心の中を整理し落ち着かせ、声をあげようとすると……

 

 

 

 

 

 

瞬間、壁の方向から爆発音が鳴り響いた。

 

「ひぃっ!?」

「な、何今の音……」

 

──なるほど、どうやら壁が爆破されたようだ。

あぁ、近くにいなくてよかった。

 

「まさかやけど、あかりちゃんの作戦って…」

 

そして爆発音が終わった後も聞こえてくるのは、先程から聞こえていたあまりにも強い持続的な風切音。

その音が聞こえてくる方向──つまり、爆破された壁付近を注視していると、見えてきたのは屋外の景色ではなく、まさかの光景だった。

 

 

 

 

 

 




・ロボット格納庫
マッドサイエンティストによって製作、または利用されていたような危険なロボットが保管されている所。葵もかつてあかりに銃口を向けて何度か発砲したことで“危険”と判定され入れられていた。

この格納庫は厳重警備で機関の人間以外場所は知らず、窓もなく階層も最上階近くに位置しているため「ここからロボットを盗み出そう」なんて馬鹿なことを考える人間はいなかった。
……今までは。
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