起きたら茜ちゃん!   作:丹碧のブルーメ

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映画のワンシーンみたいに出来たら素敵だなと思い、定期的にアクションシーンを入れています。
それにアクションシーンが刺激になって読者さんを飽きさせないようにできたら、それはとっても嬉しいなって。


二十話『優先順位』

 

「お待たせしました!!」

 

慣れ親しんだ声で聞こえてきたその言葉と共に、バラバラとした風切音が鳴り響く。

 

ここだけ聞いたら状況がよく分からないかもしれないが。

詰まるところその正体は、壊れた壁の向こうからヘリに乗ってこちらに呼びかけるパートナーの姿だった。誰かに運転を任せているのか、飛行中なのにも関わらずドアを開いて手を振っている。

 

「格納庫奥の壁の近くで待ってろって、こういう事やったんやな??」

 

「あかりさん…助けてくれるのはありがたいんだけど、お姉ちゃんがビックリするからこういうやり方はあんまり……」

 

あ、それは恥ずかしいから言わないで欲しかった。

いくら沢山のミッションを経験してきたとはいえ、やっぱり急な爆音にはビックリしてしまう。

 

「あはは…すいません、事前に作戦を最後まで説明しておけばよかったですね。ささ、乗ってください!!」

 

「葵、さっきの話は後でええな?今はヘリ乗って逃げるで!!」

「でもちょっと距離があるよ、乗れるのこれ?」

 

そっか、葵はウチの身体能力がとんでもなかったっていう新事実すら知らないままだ。本当に、あの日のまま。

ならウチが──導いてあげないと。

 

「葵、ウチの手に掴まっとってな?」

 

「……ね、ねえお姉ちゃん、まさかだけど……今から……」

 

何かを察したのか、ちょっと顔色を悪くしながらこちらを伺うように質問してくる葵。

拒まれる前にさっさとヘリにウチと飛び乗ってもらおう。

強引に手を掴んで、髪色だけでなく顔色も青くなった妹にウチは告げた。

 

「ほな行くで?いっせーのっ、でジャンプ!や!!」

 

「嘘でしょ……?」

 

◆❖◇◇❖◆

 

アンドロイド達はかなり上の階の格納庫で厳重保管されている為、仮に奪取するにしても外に運び出すまでが難しい。

──なら空中から直接迎えればいいじゃない。

これは、そんな作戦だった。

 

……ちょっと伝達不足で茜ちゃん達を困惑させちゃったようだけれど。ほぼほぼ成功と言っていいだろう。

 

「はぁ……多分こんな経験したアンドロイド、他にいないよ……」

 

「無事機内に入れたんですからよかったじゃないですか!」

 

まだ顔色が悪いままの息がゼーハーな葵さんを宥めつつ、少し変わった関係の姉妹二人を無事ヘリに乗せられたことを実感し、胸を撫で下ろす。

 

「うん……その、お姉ちゃん……心も身体も強くなったね?私嬉しいよ。」

「それほどでもあるで!!」

 

本当に茜ちゃんは機関の人間になった日を境に、すごく心が強くなったと思う。多分身体の方は……葵さんが知らないだけで、持ち前の身体能力によるものだろうけど。

そんなドヤ顔の茜ちゃんをよそに、葵さんはワンテンポ置いて感謝の言葉を綴ってくれた。

 

「とりあえず……

お姉ちゃん、あかりさん、あとヘリ運転してる方も。あそこから助け出してくれて、本当にありがとうございました。」

 

本人からしたら物凄い速度で物事が動いてるだろうに、ちゃんとすぐにお礼できるなんて。葵さん、結構しっかりしているアンドロイドなのかもしれない。

……その前にしっかり茜ちゃんを褒める辺り、やっぱりあの姉にしてこの妹ありなんだろうなって。うん、お互いの事を大事に思ってるのがこちらにも伝わってくる。

 

「当たり前やで、ウチら姉妹やもん!」

 

思えば、この姉妹を助け出すことになったのはゆかりさんの意向からだ。そのゆかりさんはと言うと、前の座席越しに後頭部しか見えず、表情が確認できないけれど……。

──きっと一番喜んでるのも彼女のはず。

 

「力になれてよかったです。ね、ゆかりさん!!」

 

運転に集中してるのか、それとも話の輪に入れないのか……あの人のことだからやっぱり後者なんだろうなぁと思いながら、自然に輪に入れるように促してやる。

 

っ…そ、そうですね…よかったです…無事で……

「え、その声……!?」

 

ああ、もう。

茜ちゃんがゆかりさんの声を聞いてビックリしている。きっと想像以上に声が小さくて驚かれてしまってるんじゃなかろうか、これ。

 

「ゆかりさん、声が小さいですよ。」

 

……この人は初対面の人にはいつもこれだ。

と言っても、慣れたら普通に話してくれるようにはなるのだけれど。

 

「っ、よかったです!無事で!!!」

「──ゆかりさんって言うんやな?ウチからも感謝するで、ありがとう。」

 

「……いえいえ。」

 

にしても。

そもそも普段も『極力人に会いたくないから』って現場に赴くことがないサポート班に属しているのに、こんなヘリまで用意してわざわざ姉妹二人を救い出すなんて。

 

ゆかりさんなりに相当入れ込んでるに違いない。

一体この姉妹の何が彼女をそんなにさせるのか、わたしにはあまりわからない。

 

 

たしかにこの姉妹のことを色々知った今だからこそ、わたしは心から救えてよかったと思えているけど。

ゆかりさんは初対面の時からまるでかけがえのない存在であるかのように、とっても心配していたし。

 

……どうしてだろう。

 

 

 

 

 

──まさか、美少女姉妹だからとか?

ゆかりさんのことだから、少し有り得るかも……。

 

あかりちゃんなんか失礼なこと考えてます?

 

「ちょっとええか?

……相方さんって前から話で聞いとったけど、もしかして今ヘリ運転してるこの人が?」

「そうですね、わたしの相方のゆかりさんです!」

 

ちょっと何かボソッて聞こえた気もするが、気にせず茜ちゃんの質問にわたしは答える。

 

 

 

「え──そ、そうなんか……」

 

「……??」

 

そういえばわたしの相方の名前がゆかりさんだということ、茜ちゃんにはまだ伝えていなかった。今まで「相方」呼びで済んでたから教える機会がなかった。

 

それは申し訳なく思う。

とはいえ、そんなフリーズして眼をカッ開いて驚くような名前だろうか?彼女はまるでその名前に()()()()()()()()()()()()()()……そんな表情で固まってしまった。

 

「……その、茜さん?大丈夫ですか?」

 

「茜ちゃんどうしました?何か、気になることでも??」

 

前の座席で操縦に集中してるはずのゆかりさんも、すぐにその変化に気づいた。

やっぱりこの人は結構勘が鋭いから恐ろしい。その勘に助けられることもあるから、実情を考えるとなんとも言えないのだけれど。

 

「い──いや、なんでもないで。

そういえば、壁爆破なんてしちゃって大丈夫なん?犯人がバレたらやばい事なるやろ??」

 

話の話題は茜ちゃんによって滑るように別の話題へと移される。

 

「あ、もうこの施設に来ることは無いので大丈夫ですよ。」

 

……そういえばその件もまだ話していなかった。

この作戦が始まる前から終始彼女がやたら危惧してくれていたこと、それは『この作戦を終えたらわたしの仕事上の立場が危うくなるのでは無いか』というもの。

なのでここでキッパリ答えてあげる。もうここに来るとは無いと、しっかり伝えてあげなければ。

 

「え?」

「ですから、ここに来ることはもう無いので大丈夫です。なんならもうわたしのお仕事は今日で終わりなので…」

 

 

 

「……えぇえええぇぇぇえええ!?」

「オネエチャン、ミミモトデオオゴエヤメテ?」

 

あ、めっちゃ驚いてらっしゃる……妹一番の彼女が隣にいる妹に配慮を忘れるほどに。

こうなることを見越して、事前に事を伝えておいた方が良かったかもしれない。

 

「せ、せやけど!

あんなに仲間を大事にしとったんに!?嘘やろ!?!壁爆破してバイバイ!?」

 

「本当です。今日辞めるからそれまでに一生分稼がなきゃって、がんばってお金を貯めていましたし。」

 

そう。

わたしがやたらお給料を多く請求していた理由は、他の誰よりも早くこの仕事を辞めるからに他ならない。

 

そして、ゆかりさんも機関に居続けたまま繋がりがバレたらヤバいと危惧しているので、同じタイミングでわたし同様『突如失踪』という形で仕事を辞める。それが今日という日だった。

 

 

なんなら、元々この作戦が無くても体にガタがくる前に十分稼いだらやめる予定ではあったし。

それがちょっと早くなっただけだ、なんの問題も無い。

 

「え、えぇ…?たしかにやたらお給料増やすように司令に言うとったけど……ほんまなん?」

 

これからはゆかりさんとわたし、二人して職無しだ。なにか別の職業でも、始めた方がいいだろうか?

 

「お姉ちゃんがこんなにビックリする事なんてそうそうないよ?あかりさんすごい決断したんだね。」

 

全てのモノサシが茜ちゃん基準の葵さん(偏見)も、これには結構意外そうな顔で驚いてくれた。元々予定していたことなのに思ってた以上に反応が多くて、なんだかこっちが変な気分になる。

 

「あはは、どうも?」

「でもよくよく考えたら……私と初めて会った時からずっと肝座ってたよね、あかりさん。」

 

葵さんと初遭遇した時と言えば……あぁ、目的を言わないと頭に銃弾を打たれる!なんていう危ない局面でも、目的を言わなかったことを指してるのだろう。

 

「あの時のあかりさんを見るに、仕事に誇りを持ってそうだったのに。それがこんな風に──壁爆破してバイバイっていうのは……私も少し意外かな。」

 

「うーん、わたしだって思う所はありますよ?」

 

でも、とわたしは続ける。

 

「それ以上にわたし──ゆかりさんがなによりも優先なので。

申し訳ないけれど、機関の皆が困ってもゆかりさんが困りさえしなければいいって言うのがわたしのスタンスです。」

ちょっと…もう……あかりちゃんったら……

 

後頭部しか見えないからわからないけど、わたしにはわかる。絶対今顔赤くなってるなこの人。

 

それはそれとして、やっぱり姉妹二人は驚いているようで──うん、我ながら常人ならば確実に引くような発言をしている……とは思っている。自分の思考が少しおかしいのも理解している。

 

けれどゆかりさんのあの話が本当なら……これから先、この姉妹とは長い付き合いになるのは確定していて。

ならば、自分の内側は早い内からさらけ出しておくのが得策だろうと思い、早めにわたしの考え方を知っておいてほしいと思い全部喋ることにした。

 

 

ただ、後悔がないと言えば嘘になる。

この発言を今した事も、仲間に何も言わずに迷惑をかけるような形でお別れしてしまった事も。

 

 

 

それでも、ちょっと時間を置いてだけれど……まず最初にこの発言に反応してくれたのは葵さん。

 

「いい心意気だと思う、私もお姉ちゃんがなによりも優先だし。」

 

かつて対立した相手が真っ先にこの考え方に共感してくれたのは、なんだか嬉しかった。

 

そういえば葵さんも茜ちゃん第一の人間……というか、アンドロイドだった。こういう所では気が合うのかもしれない。

 

「……たしかに、その気持ちわかるで。

幸い今回の作戦で仲間が死んだとかそういう訳ちゃうし、なんならウチらは救ってもらった立場やし。これ以上は何も言わへん。」

 

続いて茜さんもその言葉を聞いて、少し納得行かなそうにしながらも理解を示してくれる。

 

「ありがとうございます、受け入れてくれて嬉しいですよ」

 

うん、茜ちゃんが優しいことは前から知っていたけど……葵さん含めてすごく優しい姉妹みたいで安心した。

 

こんなわたしを受け入れてくれるなら、ゆかりさんの事もきっと受け入れてくれるだろう。

そしたら後は()()()を話して、同意してもらうだけだ。

 

 

 

 

──よかった。これならゆかりさんが言っていた今後の予定通りになっても、仲良くやっていけそうな気がする。

これからの未来に、期待しか無かった。

 




・茜ちゃんビックリ
勿論、茜が驚いていた理由はゆかりの声の小ささではなく別の理由。どうやら自分含め共通点がある人物が奇しくも4人集まったことに、驚きを隠せなかったようだ。

※編集、アオイチャンお喋りシーンの行がおかしかったので修正
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