この数ヶ月は力を入れて設定資料のようなものを作り、本格的に物語に整合性を持たせるようにして再構成!!してきました。それでもガバがあったら、ごめんなさい。
ちなみに物語の主軸は前回にてやっと揃った彼女達、この四名を中心に動きます。今後は四人以外にも色んなキャラが出てくると思いますが、その章だけのゲストのような扱いになると考えていただければなーと。(一部例外あり)
それでは、どうぞ!!
「とうちゃーく!お待たせしました。」
「おけです!目的地につきましたよ皆さん!長い時間のフライトお疲れ様でした。」
あれから暫くして、どうやら一行は機関から無事脱出し終え“目的地”とやらに着いたようだ。……しかしヘリの窓から外を見渡すと、見える景色は何処も彼処も木で生い茂っていてた。おまけに傾斜がかかっている。
一言で言い表すなら、山。大自然。
ちなみにちょうど秋なので紅葉シーズン。
葵はその目に映る壮観な景色を窓越しに不思議そうな顔で見下ろし、茜も《前の知識》には紅葉の情報こそあれど…実際に見るのは初めてなので思わず口元が綻ぶ。
「…………ええ景色やな…。
ここが目的地なん?なんかピクニックにどうですか、って感じの大自然やな。」
「そうでしょうそうでしょう!!」
あそこから脱出し終えて移動した先が、まさか山の中だなんて。姉妹が共通して思った感情は『意外』だった。たしかに茜は妹に外の世界を見せたいとは思っていたが。まさかこんな直ぐにチャンスが来るとは。
楽しみやなぁと声を掛けてくる姉に相槌を打ちながらも、何かここに来た理由があるのかと疑問に思い、葵はあかりに質問を投げかけた。
「ねえあかりさん、たしかに綺麗な光景だけど
……景色を見せたいからここに着陸するってわけじゃないでしょ?」
「もちろん。話はあとです、とりあえず降りますよ!準備をお願いしますね。」
しかしそんな質問も軽々と濁されてしまう。どうやら降りた先に見せたいものがあるそうで…。
不思議に思いながらもヘリのドアを開け、その地に足を着けた。
「おぉ〜、これがあれやな。大自然ってやつやな?」
「ふふ、お姉ちゃん楽しそう。」
降りた一行は改めて見渡す限りの紅葉を眺め、マイナスイオンに包まれる。空気が美味しいとはまさにこの事。
葵もこれには感動して……いや、それよりもその自然を見る姉の表情に癒されていた。
「あはは、楽しそうなのは二人ともですね。それじゃあ移動しますからついてきてください!」
「その前にちょっと待っててくださいね??ヘリの位置を動かして隠さないと…」
そんな姉妹の案内役を勤めようとするあかりに待ったをかけたゆかりは、ヘリを隠すためにもう一度飛んで位置調整を行ってくるそうで。
どうやらこれが長くなりそうなので先に3人を下ろしたようだ。
「んー?このヘリを動かしたいんやな??」
「そんな感じです。近くにいると轟音鳴るし土も舞うかもなので、できるだけ離れて待っ…」
「や、その必要は無いで。」
そう言うと茜はヘリに近づいていく。今度は待ったを掛けられた側になったゆかりは、不思議そうな表情でそれを見る。葵も何をするのか検討がつかない様子だ。
一方あかりは「あ、たしかにヘリくらい茜ちゃんなら…」とつぶやき、どこか納得のいった様子。
「よーし行くで!せーのっ、ふぬぬぅ…」
そんな可愛らしい力の入れ方をしながらヘリの下の方に手をくっつかせ、何やら力む茜。そんな彼女の姿に何をしているのかとあかり以外の二人(と言っても片方はロボットだが)が声を掛けようとすると…
ヘリが、唐突に浮いた。
否、茜が持ち上げたようだ。
この人、可愛らしい力の入れ方をするが。やってることは決して可愛くなかった。
「…わーお。お姉ちゃんすごい、こんな力あったんだ。」
「……あかりちゃんに話だけは聞いてましたけど、これ程とは…!」
一人の少女が、なんか知らないけどヘリを持ち上げた。
そんな現実味のない光景に、二人は…とくにゆかりは、ただただ驚くばかり。
「あはは、そんなびっくりしちゃって!
まあ初めて見たらそうなりますよね。すごいでしょう??茜ちゃんの身体能力にはこれまでも何度も助けられてきたんですよ。」
「な、なるほど……あの話、盛ってなかったんですね……」
ゆかりは何度かあかりから、救った子であり最近は背中も預けているという『新しい相方』──すなわち、琴葉茜の話を聞いていたが…これは想像以上だった。
なんなら盛っていると思っていた話だが、ここにきて事実である可能性が高くなってきている。
理解はしたが、納得はまだできそうにない。
そんなゆかりに茜は問いかける。
「これ、どこまで持ってけばええかな??」
「えっとですねー…」
そうして機関から借りパクしたヘリを無事隠すことに成功し、本来ヘリを隠すのに掛かる予定だった時間がかなり時短され……
「あ。茜ちゃん、ヘリ運ぶ前にやっぱり中で着替えさせてもらっていいですか?」
「そやそや、ウチも着替えたいかも。」
…る前に茜とあかりの二人は機関の服装のままだったので、着替えることになった。可愛げも無く黒で統一されてる上に比較的窮屈で、その上ヘルメットまで。このような服装は極力続けたくないのだろう。
そんな意思を受け取ったのか、はたまた自分も着替えたかったのか。茜はそれに同意して、ヘリを動かすのはほんの少し後になった。
◆❖◇◇❖◆
「でっかい滝やなぁ……」
「お姉ちゃん、お口あんぐりしちゃってる。」
荷物も下ろし終え、山道を登って行く。
そこら中に広がる枯葉ばかりの大地を踏んづけて進む。歩く度にくしゃりと乾いた音が四人分鳴り響き続け、やがて山の中腹辺りでやたら目を引く大滝が見えてきた。
そこで先陣を切って案内役を勤めていたあかりが足を止める。
どうやら、目的地はここらしい。
「ふっふっふ。ここ、よく見ると切り込みがあるのわかりますー??」
「ん、ほんまや……これってなんなん?」
そういって指を刺したのは、大滝の手前の岩。丁度人が腰掛けられそうな、手頃な大きさの岩だ。
「この切り込みに!わたしかゆかりさんのパスポートをシュッとするとっ!!」
言葉通りにパスポートを岩の隙間でスライドさせるあかり。瞬間、水の割れる音が鳴り響いた。
「な、なんや!?」
「お、お姉ちゃん見て。滝が…割れてる……」
妹の指差す方向に茜が目を向けると、なんとその大滝が言葉通り真っ二つに割れていく光景が目に映る。モーゼの海割りならぬ、あかりの滝割りだった。
「さ、入りましょう!!ここがわたし達の家です!」
「足元、濡れてますからね。転ばないように気をつけて。」
「し、信じられへん……!」
「私も口あんぐり案件だよ、こんなの……」
驚きながらも、あかりとゆかりの言葉に従って後ろをついて行くゆく琴葉姉妹。
滝の内側の洞穴を進んで行くと……今度は打って変わって、横を見れば白い壁、上を見ればLEDランプ。下も真っ平らというあからさまな人工の道となり、歩きやすい。
機関の最新の設備と比べても遜色のない、綺麗な通路だ。
そんな様変わりした景色をバックに、あかりが質問してきた。細長い通路だからか、やたら声が響く。
「どうです、中は綺麗でしょう。気に入ってくれましたか?」
「は、はぁ……」
「うん、水漏れとかもなさそうで安心。」
「良かったです!
まぁこれからお二人の家にもなるわけですから、気に入ってくれなきゃ困るんですけどね。」
まだ状況が呑み込めていない困惑気味な姉と、冷静に周りを分析している妹。同じ姉妹でもこうもリアクションが違うのかと、あかりは少し面白く感じながら案内を続ける。
「一分で滝は勝手に閉じますから、閉め忘れの心配もないですよ。それから、家から出る時はこの内側の切り込みをですね…」
「なんか、すごい仕掛けやな!秘密基地って感じや……」
“秘密基地”という言葉を聞いて、あかりはふと思い出す。あの日始めて姉妹にあった日のことを。
「秘密基地と言えば、お二人の家の外観もそんな雰囲気でしたよ?」
「えっ、そうなん??」
「はい、だから茜ちゃん達の家を見た時は『似てる』って思ったんです。隠し方、少し違うけど発想自体がわたしとゆかりさんの家にそっくりだなーって。」
「──作った人物が一緒なのではないかと……わたしは、そう睨んでいます。」
横からズイッと会話に入ってきたゆかりが、ここで地味に大きな話題を持ってきた。それは、茜達とあかり達の家の製作者が同じではないかというもの。
「…そうなんや?」
茜は神妙な面持ちでその話を聞く。
「と言っても自分達でちょくちょく改装を施したりはしてますけどね、住みやすくするために。」
「……作った人物が、一緒…そこに住んでるのが、ゆかりさんにあかりちゃん…」
これが奇妙に感じずにいられるだろうか。茜は《前の知識》でVOICEROIDだったこの4人が、同じ人物が設計したと思われる建物にそれぞれ住んでたという事実を不思議に思い、思考を巡らせる。
が、ストップが入る。
「あのー、なにか考えてるところ悪いですが……立ち話もなんですし、やっぱり後で…」
「ん、それもそうやな。」
この話題を持ってきた本人の言葉によって一時中断されたその話は、茜達の脳の片隅に移動した。気を取り直した一行は奥へと進んでゆく。
そうして進むとやがて扉の前につき、あかりは得意げに話す。
「このドアも勿論鍵付きです。すごいでしょー、わたし達の家は二重の警備によって守られているのですよ!!!」
「わぉ、厳重だね。」
「……まあようするに入口の滝ギミックが珍しいってだけで、他は普通の家って感じです。」
「もー!ゆかりさーん!」
どや顔で“秘密基地”を解説するあかりに、そんなすごくないよと補足を入れるゆかり。そんな微笑ましい二人の駆け引きに思わず姉妹から笑いが漏れる。
そしてあかりは解説を邪魔された腹いせに、ここでひとつ仕掛けることにした。
「……上を見ると、この家のことがよくわかるかも?」
「あかりちゃん!?言わなきゃバレなかったのになんてことを!!」
なにか企んでそうなあかりのその言葉に釣られて、扉の上をよく注視してみる。
そうするとなにやら
“ゆかりん♡ハウス”
との文字が目に入ってきた。
書かれた日から月日が経っているのか、多少薄れてはいるが。
「っっ!!!」「……わーお。」
ゆかりのイメージとはかけ離れたふざけたBARみたいな吊り下ろし式の看板に、茜は笑いが漏れるどころか今にも爆笑しそうだし、葵は信じられないようなものを見た顔で凝視する。
「あはは、してやったり。ちなみにこれわたしが来る前からあるものなんですよ!」
「……これ、わたしが書いた訳ではありませんからね?
これはわたしが友達と協力して家を改装した時に、イタズラで書かれたものですからね??」
「ね?」と赤面したゆかりに念押しされ、あまりの勢いにたじろぎ笑いも引っ込み…目線も引っ込み…納得させられた。
──そうして姉妹が落ち着いたところで、ゆかりは改まって「こほん」とわざとらしい咳をして場を整える。
「改めまして…わたし達の家へようこそ!歓迎します!」
「歓迎しまーす!!」
その声ともに、扉が開かれる。
「ささ、入って入って。」
中は意外にも和風な内装だった。
洋室でしか暮らしてこなかった葵に、ミッションでもこんなとこは一回も来る機会がなかった茜。姉妹は初めて体験するその雰囲気に飲まれ、少したじろぎながらも靴を脱ぎ室内へと足を踏み入れた。
「あ、ありがとうございまーす?でええんかな?」
「お邪魔しますね。」
落ち着く木材の香りと、入口近くだからだろうか?まだ微かに聞こえる滝の音。初めて来たのに何故か心が安心するような、不思議な玄関だった。
「じゃあわたしお茶持ってきますから、とりあえず三人はあっちでお話でもしててくださいな。」
そう言ってゆかりは席を外し、台所に向かっていく。
残された三人は、言われた通りゆかりが指差した先にある食卓のちゃぶ台を囲むことした。
「ゆかりさんの淹れるお茶はとってもおいしいんですよ!さ、座って座って。」
それを聞いて少し期待しながら、姉妹はあかりが置いてくれた座布団に感謝しながら座る。
「私ガソリン以外を飲むのなんて初めて。嬉しいな。」
「あ、そういうのも含めて話したいことだらけやな?ウチら揃うのも初めてやし。」
積もる話は沢山ある。
何から話そうか、そこから考え始める三人であった。
・ヘリの中での着替え
あかりがヘリに乗る前に機関から粗方荷物を持ってきてくれていたので、意外と色んな服が充実していた。と言っても結局茜はいつもの肩出し服を選ぶし、あかりもファッションにそこまで興味は無いので、いつも着回しているパーカーを適当な服の上に羽織ってきた。
……あとで茜は少し寒さを感じて後悔したそうな。(秋に肩出しファッションとか正気ではない。)
※中盤着替えの提案、何やら心の中でお互いすれ違いがあった模様
「(もうわたしは機関の人間じゃないですからね、この服を着る資格はもう………機関の皆さん、今まで長い間…ありがとうございました…。)」
「(あかりちゃんもやっぱりこの服嫌やったんやな…窮屈やもんな、良かった!はやくウチもいつもの服に着替えるとするで!!)」