起きたら茜ちゃん!   作:丹碧のブルーメ

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新章突入!!!
これからも起きたら茜ちゃん!をよろしくお願いします。


ユカリある場所へ
二十五話『目指すは東北』


あれから一週間が経ち、ようやくウチら姉妹はこの家に慣れてきつつあった。今日は初めてのお出かけということで、姉妹で洗面台へ向かって身だしなみを整えあっている。

 

「ここのお風呂はほんと広くていいよね。」

 

「ウチらの家より他のも全体的に大きい気がするで…」

 

ちなみに現在片手間で話している話題は、ここ洗面所の隣の大きめのスペース。お風呂場についてだ。前の家のお風呂だって、二人で入ってもまだまだスペースがあるゆとりのある広さではあった。でもここは、それ以上。

なんと言うかもう──大浴場だ。

 

「こんだけ広いお風呂場でもいつかは賑わうようになるんだろうね。」

「ゆかりさんの話がほんまならまだまだ家族は増えるわけやしな……。」

 

他にも、どの部屋も基本的に広かったりする。

その上、数だってとても多いようで。四人家族の今でもすごく広く感じるくらいだ。ようやく今の家に住み慣れてきたウチらだけど、正直全部の部屋を把握しているかと聞かれたら……ちょっと怪しい。

 

この家は元からこれだけ広かったのだろうか?もしそうなら、ウチら姉妹との格差が激しいように感じるが。

 

──もしかすると、何人も家族が増えても大丈夫なようにゆかりさん達が改築したのかもしれない。

この家は山の中に造られているわけだから、部屋を造ることだって普通の家よりよっぽど大変そうなものなのに。よくここまで広くできるなと感心する。

 

「ちなみに葵は前の環境と今、どっちが好きなん??」

 

ふと、葵にとってここの環境はどうなんだろう?と思ったので率直に聞いてみることに。ずっとあの家で暮らしていたから、何かしら思うところがあるのではないだろうか。特に葵は前の生活がすごく気に入っていたようだし、それも含めて考えると…?

 

「どっちも好きだけど、私は今の方が好きかも。

家族の皆でワイワイできるし、()()()()()()()()()()ここにあるからね。」

 

だが、そんな心配は杞憂に終わった。妹が楽しそうならお姉ちゃん冥利に尽きる。

 

「そか!葵が楽しそうにしてくれて嬉しいで。これからは自由やし、皆で色んなとこ見に行こな〜!!」

 

そう言いながらお互いの身だしなみに問題がないことを確認する。

ちなみに、皆というのは勿論ゆかりさん達も入れてだ。何しろ今は、四人でひとつの家族になったわけだから。

 

「もちろん。それに見に行くって言えば…」

 

「あっ!茜ちゃん葵ちゃん、ここにいましたか……ちょっといいですかね??」

 

「なんやー?」「ちょっといいよ。」

 

二人で話していると、脳内で思い浮かべてた人物の片割れがやってきた。何かを抱えながら。

どうやらウチらに用事があるらしい。

 

「いよいよ9時から出発するわけですけど、準備は大丈夫そうですかね??」

 

「ん、バッチリやで。」

「というか私達、今は配信とかもしてないわけだし……別にいつでもOKだったんだよ?」

 

事の始まりは数日前の夜の食卓まで遡る。

 

◆❖◇◇❖◆

 

家族になってからは機関の仕事が無くなったので、ウチら家族は皆のんびりグータラし放題。

 

「「「「いただきます。」」」」

 

その日も何事もなく一日が後半に差し掛かり、いつも通り食卓を家族で囲んでの夕ご飯の時間がやってきていた。

 

ちなみに、こっちに来てからの食事は毎回ゆかりさんが作ってくれるのをいただいている。てっきり現代ではきちんとした料理はあまり味わえないものだと思っていたが……この家の様子を見るにそんなことは無い様子で、しっかりとした料理を毎日食べさせてもらっている。

携帯食料ばかり食べていた、以前の家や機関の頃とは偉い違いだ。アレも味等は様々だし飽きも来なくて中々いいが、やっぱり本物の料理には劣る。

 

「今日の夕ご飯はお鍋なんやなぁ。」

 

「これってたしか……秋田の郷土料理だっけ?美味しそう…でもやけど注意だね。」

 

この料理の名前は、とあるキャラクターを連想してしまう。ウチら家族のモチーフと同じ……VOICEROIDのキャラを。

 

そう、この日の晩餐はきりたんぽ鍋。

葵の言う通り秋田の郷土料理だそうで──おいしい!きりたんぽがモチモチだ。鶏がらのだし汁に入れて煮込んであるようで、その美味しい香りが鼻を突き抜ける。

ふと、隣を見ると…

 

「はむッ!もぐもぐっ…お、おいひぃ〜!!」

 

そう言いながら頬っぺに手を当てるあかりちゃん。

ちなみにあかりちゃんはよく食べる。ほんとによく食べる。なので我が家は一度に沢山作れる鍋料理が多いようだ。現に、それを表すかのように彼女に用意された器はとても大きい。

……何処とは言わないが、こういうところが影響してくるのかもしれない。

 

「そう、秋田……その秋田にですね、家族候補らしき情報がありまして。」

 

どうでもいいことを考えていたら、ゆかりさんから大事な話が飛んできた。隣の沢山食べてるあかりちゃんを他所に、その話を聞くことにした。

──きっと、この話をする為だけにきりたんぽ鍋にしたんだろうなぁ。聞かなきゃ。

 

「え、それって…」

「ハムハム!パクパク!」

「…はい、なので今怪しいと…」

「ガツガツ!ズズズズ!!!」

「なるほど……行ってみる価値はありそうやな?」

「アッツ!!!!お水お水ー!」

 

「…取りに行っちゃった。」

 

「──えーと、つまり秋田県の山が何年も?」

 

あかりちゃんのバク食い音で聞こえづらかったので、一度整理するが……

ゆかりさんが機関にいた時に情報を得て、そこからずっと妙だと思いアタリをつけていた場所。東北地方の、秋田県にあるひとつの山とその周辺。

どうやらそこはずっと封鎖されてるらしく、一切人が立ち入ることが許されていないそうで。

 

「はい。妙ですし既視感がありますよね。

人を立ち入らせないようにして、そこで何かを…誰かを幽閉し続ける。これってどこかで聞いた話では無いですか??」

 

「あっ、私達の境遇と同じだね。」

「ほんまや!」

 

「ですです。なのでわたしは、これをマスター関連なのではないかと疑っていてですね……」

 

「ただいまです……あ、ゆかりさんおかわりいいですか??」

 

なるほど。たしかにウチやゆかりさんが以前置かれていた状況等に鑑みると、そこも同じようなやり方でやっていると考えてもいいだろう。

勘違いかもしれないが、それでも行く価値は十分にあるはず。

 

「で、救出しに行くわけやな?そこに囚われてる人を。」

 

「はい、エゴになるかもしれませんが……わたし達と同じ境遇なら家族になれると思いますし。何よりそこでマスターの情報も入手できれば、近づく為の第一歩になります。」

 

そう言いながら片手間であかりちゃんにおかわりをよそるゆかりさん。

 

「おかわりありがとです。……四種の具材を一口でパクッ!んーハーモニー!!!!!!

 

「美味しそうな食べ方するね。……ちょっとお行儀悪いかもだけど。」

 

だが行くとしても秋田だ。ここは東京なので、かなり離れている。今のウチらは暇してるとはいえ、今すぐにとはせずにしっかり日程を決めた方がいいだろう。

 

「ほな少しでも可能性があるなら行こか──せやけど、いつ出発するん??それに合わせてこっちも準備するで。」

 

旅行みたいな感じになるだろうから、しっかり用意もしなければ。何を持ってこうか。

 

「それじゃあ日程ですが……ちょっと準備したいものとかもあるので、この日に…」

 

◆❖◇◇❖◆

 

こうして、今に至る。

つまり……夕ご飯の時に突発的にゆかりさんが思い出して、行くことになった急な旅というわけだ。勿論旅の目的は、家族候補の捜索。そしてあわよくば、マスターの足跡も見つけたいところだ。

 

「荷物もそんなあらへんし!」

「バッチリ。私達は準備完璧だよ?」

 

ちなみに悩んでいた持っていく物については、着替え何着かとスマホ、それとゲーム機くらいとなった。

旅行に行く小学生みたいな荷物だけれど、実際ウチらはゆかりさんにおんぶに抱っこ状態なので他に持っていくものは無い。

 

「本当に完璧ですか?さっきあかりちゃんも忘れてたんですよ??」

 

そういって、持っていた何かをバフッっとウチらに渡してくるジト目のゆかりさん。これは──ウィッグとネットだろうか。

ああ、そういえばニュースであかりちゃんが“裏切り窃盗犯”として取り上げられたから、自衛のために変装するんだった。その際おまけで、ウチらも目立つ髪色だから変装しようってことになっていたはず。

……今思い出した。

 

「も、もちろん覚えてたで!!」

 

「じゃあなんで用意してなかったんですかね?

まさかわざわざ部屋の前に置いてあげてたのに、気づかなかったとか…??」

 

余裕の表情を浮かべて誤魔化すが、ゆかりさんからのジト目は変わらない。もしや、誤魔化せてない?

 

「お姉ちゃん誤魔化すのヘッタクソでかわいいね。」

 

「あ、葵!?」

 

……とにかくあとは、重要な物は大体彼女任せで、こっちは流れに身を任せるだけだ。

 

「みなさーん!!わたしも準備OKです!」

 

そうこうしているうちに後ろからあかりちゃんのOKも聞こえて来たことだし、これはもうすぐに出発する流れだろう。

実際荷物の最終チェックを終えると、早速家から出発することになった。

 

「これ、外から見たら滝が割れてわたし達が出てきたように見えるんですよ?かっこよくないですか??」

 

無論、残念なことに家の内側からは滝が割れている様子は見れない。一応、正面の部分だけ滝の音が小さくなっているのはわかるので、割れている実感はあるのが救いか。

 

「なんか神様にでもなった気分やな!」

 

「まあ外に見てくれる人はいませんけどね。っていうか見られたら、秘密の入口なのにバレちゃいますし。」

 

ちなみに先導してくれるあかりちゃん曰く「少し山を下る」らしく大移動になった、なのだが──

 

「はっ、はっ……」

 

早々にゆかりさんが息を切らしているように見える。心配だ。

 

「お姉ちゃん、ゆかりさん大丈夫かな…?」

 

妹もその事を心配している。

ここは少し手を貸してあげるとしよう。ゆかりさんはさっき忘れていた物を持ってきてくれていたことだし、ここはさっきの借りを返すってことで。

 

「……荷物、持とか?ウチなんて荷物ほとんど無いさかい、余裕やで??」

 

「すいません、助かります……実はわたしって──」

 

聞けば、元々ゆかりさんはインドア派だという。

なので機関に勤めていた頃も、あかりちゃんとは別部署の“サポート部署”ってところで情報を管理したり指示をしたりする仕事を中心に受け持っていたそうだ。

 

「あ!ほら!!ありましたよ、あかり号です!」

 

「勝手に名前をつけないでください。ゆかり号です。」

 

雑談をしながら山の下の方まで向かうと、ネーミングセンスを疑うような名前のキャンピングカーが停めてあるのが見えてきた。

……一見、捨てられている車のように見えてしまったのは内緒だ。実際数々の傷があるが、これはカモフラージュなのだろうか?

 

そんでもって、どうやらこれで秋田まで行くらしい。東京から秋田までは結構時間もかかるだろうし、スペースがある車なのはリラックスできて助かりそうだ。

ちなみに道中の資金は全て機関に勤めていた時期で稼いだお金だったりする。仮にもエリートのお仕事で働いていたのもあって、懐にはかなり余裕があるらしい。

正確にどれくらい貰っていたのかについては、残念ながら分からない。なぜならウチは初任給を貰う前にやめちゃったから。

 

「ちなみにちゃんと──運転免許、持ってます!!!」

 

「おぉ〜ほんまや!」

 

そう言いながら、どや顔で運転免許を掲げるあかりちゃん。しかし指で隠れてる部分をよく見るとその運転免許には……紫色の髪の人物がプリントされているようだ。

そしてその免許をぶんどるゆかりさん。

 

「わたしのですけどね。」

「あ、あかりちゃんもこういうことするんやな…?」

 

……二人きりで行動してた時はあかりちゃんが大人びて見えていたが、この子はもしかすると家族と一緒の時は内なる自分を解放するタイプなのかもしれない。

 

「あはは…つい……」

 

「──それでは気を取り直して。皆さん、行きますよ!!!」

 

ゆかりさんもゆかりさんですっかりリーダー気分なのか、キャンピングカーの前でポーズなんかとっちゃっている。あ、懐からカメラと自撮り棒を取り出した。

……この人も旅行気分だったりするのかもしれない。

 

「ほら、皆さん揃って撮りますよ。

記念すべき最初の家族写真です、愛しのゆかり号も添えて……」

 

「いいですねー!旅の思い出ってやつ作りますか!!」

 

今から軟禁されているであろう人物を助けるために動くという、いわば機関のミッションと遜色ないことをやるというのに……緊張感の欠片もないが。

けど──こういうのも悪くないかもしれない。緊張感は適度にほぐれた方が上手く行きやすいらしいし。

 

「ええなー!ほら葵、ウチらも行こ?」

「前髪大丈夫かな……」

 

あかりちゃんがノるしウチもノらない理由がないので、ゆかりさんの元へ歩いてく。後ろから葵も髪型を気にしながらついてくる。

 

「いちたすいちは?」

 

「「「にー」」」

 

こうしてマイペースなウチら四人による、マスターに縁があると思われる場所へと赴く旅が始まったのだった。




・ゆかり号
ゆかりの愛車であり、キャンピングカー。
あかりによると、出会う前から既にゆかりが所持していたと言う。その車体にはそこそこ年季が入っているように見えるが……果たしてこれはカモフラージュなのか、否か。

※誤字を修正しました、物語の内容そのものに変更はありません。
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