起きたら茜ちゃん!   作:丹碧のブルーメ

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ショッピングモールに行くとついつい目移りしてしまって、結果的に買いすぎたりとかしちゃいません?
目指せ、無駄遣いのプロ!!


二十六話『つかの間の休息』

キャンピングカー、もといゆかり号(笑)で東北地方に向かうことになったわたし達。

今の所旅は順調そのもので、とても快適な物になっている。

 

「お姉ちゃん、キャンピングカーって結構快適だね。」

「せやな〜、ゆかりさんの運転が上手いのも関係してそうやけど。」

 

ちなみに茜ちゃんの言う通り、運転手は我らがゆかりさんだ。さすがのドライビングテクニック。ガタガタとは無縁だ。ちなみに過去に聞いた話だと、本人曰く車やヘリだけでは飽き足らず、船や飛行機まで乗れるらしい。

 

つまり乗り物ならゆかりさんになんでもござれ、ということなのだろう。

茜ちゃん達の前でもリーダー気取りしてるだけのことはある。 ゆかりさんはわたしが今までずっと心の支えにしてきた存在でもあり、こういう時はすごく頼りになるのだ。二人もいつかはこの安心感を感じて欲しいなぁ。

自分の事じゃないのに、なんだか誇らしい。

 

「ですって。褒められてますよ??良かったですねゆかりさん♪」

「どうもです。うへ。うへへへ。

 

ここだけ聞くと一見なんでも出来そうに見えちゃうけれど、たまに抜けているところもあるのがゆかりさん。でも、だからこそ。そういうところをカバーすることこそがわたしの役割だと思っている。

 

これがわたしの存在意義……とまでは行かないけれど。

それに近い認識だ。

 

ゆかりさんのように頭が良かったり機械のプロフェッショナルというわけでもなく、茜ちゃんみたいに身体能力が凄かったり特殊能力があるということもない。

かといって葵ちゃんが見せた銃の扱いや、冷静な判断ができるか?と言われたらあそこまでやれる訳でもなく。

 

……でも、わたしはわたしで何かやれる事があるはずだと思っている。足でまといにならないように、極力頑張ろう。

 

そんなわたしの意気込みを感じ取られてしまったのか、ゆかりさんが「そろそろ休憩を取りましょうか」と言ったことで、とあるショッピングモールの駐車場に車を止めることになった。理由を聞いた所、車を動かし始めて五時間ほど経ったので一度休憩を挟みたい、とのことらしい。

良かった、わたしに気遣って停めることになったわけではなさそうで安心だ。

 

──後、寄った先で買いたいものもあるのだとか。

 

 

 

さてさて。

目立たないように各々ウィッグも装着したところで、休憩先のショッピングモールで買う物のおさらいだ。

 

「お、あかりちゃんはいつもとは別の髪型のウィッグにしたんやな?」

「ですです。ちなみにこれ、実はわたしがそこそこ前にしていた髪型と同じでもあるんですよ。」

 

「ええやん!似合っとるでー!!」

「ちょっと雰囲気変わったけど、これはこれでいい感じだね。」

「……昔を思い出しますね。」

 

「あはは、ありがとです。」

 

べた褒めじゃないですかヤダー。まあ家族に容姿を褒められるって言うのは、悪い気はしないけど。

……話が逸れた。

 

 

買いたい物の内の片方は電気ケトル。

このキャンピングカーにはペットボトルやカップ麺こそ積まれているものの、肝心のお湯を沸かすものが無かった。なのでそれを買っておきたいらしい。

 

もう片方はお布団。

キャンピングカーの布団は今までは既存の分で足りていたものの、今は姉妹が家族になったので新たに二枚確保しておきたいらしい。確かに、家はいつ家族が増えてもいいように布団もすっごく多めにあったけれど、こっちはそんなことは無かった。

 

 

そんでもって、手早く済ませちゃおうという事で二手に分かれてモールを練り歩くことになった。

後は二手に別れる際のメンバー選びだが……

 

「んー。今日は私、ゆかりさんと組みたい気分かなぁ。」

 

「なっ!?」「え゙──」

 

おっと、ここで問題発生。わたしとゆかりさんに、衝撃走る。

この耳が捉えてしまった。聞き間違いじゃないならば、今確かに葵ちゃんがゆかりさんと組みたいって…!?

 

「あ、葵もついにゆかりさん達と交流深める気になったんやな?お姉ちゃん嬉しいで!!」

 

「ふふ。意外でしょ?私にもそういう気分の時はあるの。」

 

茜さんは姉以外にあまり関心を寄せていなかった妹が動いたことで、とても嬉しそうにしている。

これはもうメンバーがもう決まったようなものだ。ここからメンバーチェンジは、まあないだろう。

 

──というか。

 

「「あ、あの葵ちゃんが?!!」」

 

あの、姉を何よりも優先する葵ちゃんが?!

 

「…そんな驚くことないでしょ……」

 

「ほ、本当に茜ちゃんとじゃなくていいんですね?」

「間違いないですか?正気ですか?熱ですか?故障?」

 

「大丈夫だってば。ふふ、変な二人。」

 

今に限ってはいつもと言うことが違いすぎるので、変なのは葵さんの方ではないだろうか。

絶対わたし以外も思ってるって。

 

「──そ、それじゃあ行くとしますか。

あかりちゃん達は電気ケトル見つけて買っといてくださいね。」

「またねーお姉ちゃん、あかりちゃん。」

 

「は、はい……」

「ほなまた!」

 

──というわけで、わたしは茜ちゃんと家電コーナーへ行くことにした。

 

だが、わたしは変な葵ちゃんに気を取られて、すっかり茜ちゃんの“癖”を忘れていた。

 

「なぁなぁ、あかりちゃん!あれはなんや??」

 

「あっあれはですね…」

 

そう、恐ろしいまでの“癖”を忘れていたのだ。

かつて二人で機関の建物を見て回った時にも経験した、アレ。

 

「これも凄いなぁ!どんな仕組みで出来とるんやろか?」

 

「そ、それ触っちゃダメって書いてありますよ!?

せーみつきかい!精密機械です!!」

 

やっぱりこうなってしまうのか。

逃れられない運命を思い出し、わたしは絶望する。

そう……茜ちゃんは今までほとんど外に出たことがなかった影響なのか、初めて見る物への興味が半端ないのだ。うぅ、機関の建物の中を案内した時を思い出す暴れっぷり。

 

果たしてわたしはこの暴れ馬茜ちゃんを制御することが出来るのでしょうか?

 

「あー!お客様困ります!!」

 

「あっ……あかんわ、つい癖で…」

「あはは…本当にすいません……」

 

これじゃあ折角ウィッグをつけて地味な髪色にしてるのに、すごく目立ってしまう。けれどまあ、茜ちゃんは今まで閉じ込められていた期間も長かったようですし?

だから、これくらいはっちゃけても仕方ない訳で……きっとバチだって当たらないでしょう。

 

それはそれとして、やめさせた方がいいのは間違いないけれど。

 

◆❖◇◇❖◆

 

「珍しいですね??

……まさか、葵ちゃんの方からわたしと一緒に行きたいなんて言い出すなんて。」

 

ゆかりはてっきり、葵が『私はお姉ちゃんと一緒に行きたいかなー。』とか言うんじゃないだろうかと考えていたのだが。その予想は大きく外れ、まさかの自分チョイス。

盛大に混乱していた。

 

一週間共に過ごしたとはいえ、彼女は葵と一対一の機会なんてそうそう無かった。

果たしてわたしはここから葵さんと二人きりの状況で、会話が弾むのだろうか?と、心配までしている。

 

「うん。ここ一週間で確信したんだけどね。

ゆかりさんすっごく機械詳しいでしょ?それも、誰よりもって胸を張れるくらい。」

 

「ま、まさか葵ちゃん……あなた…!?」

 

この子も、機械オタクなのだろうか。

やだどうしよう。何から話そう。

好きな周辺機器?いや、それより好きなメーカーからか?

 

同志の予感がして、ゆかりはさっきとは打って変わって、今にも踊り出しそうなくらい元気になった。なったのだが……

 

「…ソーイウコト。だから、一緒に機械製品に関するトークでもしようと思って。」

 

「う、嬉しいです!わたし…」

 

トークに花を咲かせようとしたところで、残酷な事実が葵の口から発せられた。

 

「──って言うのは建前で。

私ってほら、所謂ロボット……アンドロイドじゃん??だから、メンテナンスとか頼めそうかなって。そういう話したくて…」

 

「アッハイ。」

 

納得した。

なるほど、それならばわたしを選ぶのが最適解だ、と。

ゆかりの舞い上がっていた心も平常心に戻り、緊張も和らいだので、葵に騙された事にちょっと悔しさこそ感じているものの……ここから先は普通に話せそうであった。

 

ちなみに葵はからかってるつもりではなく、リラックスして話を聞けるようにあえてネタに走っていたのだが…ゆかりがそれを知る由もない。

 

「でも別に、こういう話ならいつでも……」

「いや、お姉ちゃんとかあかりちゃんの前だと言いづらいことがあってね……」

 

したい話はどうやら葵曰く「他二人には言いづらいこと」らしい。

ゆかりの脳内に様々な可能性がよぎる。

 

「え……なんですか?実はパーツに欠品があるとか?」

 

「いや、そういうわけじゃなくて。

ちょっとこの“髪飾り”の機能について、話しておきたいことがあってね──もしもの時のために。……ちなみにこれはお姉ちゃんにも話してないことだよ?」

 

「……もしもの時、ですか。なにやら重要そうですね?場所を変えましょう。」

 

真剣な話になりそうなので、ゆかりは一旦買い物を止め、少しの間フードコートの席に座りながら、葵と対談することにした。

 

幸いにも時刻はお昼でもなく夕方でもない時間帯と言ったところ。フードコートにはほとんど他のお客さんの姿は見えず、じっくりと話ができそうだった。

 

◆❖◇◇❖◆

 

「電気ケトル、無事買えましたね。」

 

「せやなー。それとは別に“これ”、ウチらの独断で買ってもたけどええんかな?」

 

無事に商品を買えたわたし達は、一通りモールを見て回ってる途中にいい物を見つけちゃったので、ついでに購入していた。お金も別に余っているし役立ちそうなものなので、ゆかりさんもこのくらいなら後でOKしてくれるはず。

少々季節外れだが……“これ”は茜ちゃんと相性がすごく良いはずだ。ただの道具でも、使い方次第ではとても強大な兵器になる。

 

「いいんですよ。茜ちゃんの戦力強化だと思えば。」

 

「せやろか…あ、とりあえず袖の内側につけとく感じでええんよな?」

 

「ですです!!」

 

かつて葵さんが銃を袖の内側に忍ばせていたのを見て着想を得たわたしは、茜ちゃんにも似たようなことをさせることにした。アレとは少し異なるけど。

 

「それなら戦闘することになった時、葵さんみたいに相手の意表をつけそうです!」

 

「たしかにこれ、考えてみたら凶悪やな……そいえば、葵達の買い物は終わったんやろか?」

 

そろそろあの珍しいコンビも布団を買い終えた頃だろうか?でもちょっと大きいし、まだ時間かかるかな……ん?あのフードコートの奥の方の人影、あれはもしや──

 

「あっ、噂をすれば葵達発見や!」

 

だが、その様子を見るに……これは恐らく……

 

 

「か、買い物終わってないのに…寛いでます?」

 

「「あっ…」」

 

結局、この後にわたし達とサボり組二人を含めたいつものメンバーで布団を買いに行ったのだった。




・“これ”
何かはまだ秘密。でも割とすぐに使う機会は来るかも?
“これ”は誰もが日常的に使っている道具の一つ。ただ、今は少々季節外れかもしれない。茜の能力と組み合わせることで恐ろしい秘密兵器にもなるということで、あかりの提案で買った商品。


・ウィッグ
あかり以外は各々自分の髪型と同じ物にしたウィッグをつけているので、さほど印象は変わらない。変化としては、髪の色を目立たないように変化を加えているくらいに留まっている。
あかりのみニュースで姿が割れてしまっているので、髪型を以前の物(『紲星あかり 蕾』で検索したら出てくる、あかりの前髪を姫カットにして三つ編みを片方解いたような髪型)に似せたウィッグをしたようだ。

……ここだけの話、飛び抜けた容姿はそこまで変わらない為普通に目立っているようだ。尚本人達は隠せたと思い込んでいる為、問題無しの模様。
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