起きたら茜ちゃん!   作:丹碧のブルーメ

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反抗期りたんって語呂良くないですか?
そう思って自分が初出なんじゃないかと検索をかけてみたら、ニコニコのタグに既に存在してました。さすがすぎる。


二十八話『変化を求めて』

突然だが──わたし、東北きりたんはこの日常に酷く退屈している。

 

理由?そんなの単純明解で、毎日がつまらないからだ。一日の生活を振り返ると、その退屈さがよく分かる。

 

東北家の末っ子として娯楽の少ない田舎──しかもその中でもさらに田舎に入る山の方で産まれ育ったわたしは、毎日毎日起きては自分で朝の支度を全て終わらせることから始まる。別にわたしができている人間という訳では無く、朝は家族が誰も顔を出してくれないから仕方なく、だ。え?親はどうしてるのかって?……親は物心ついた時から居なくて、顔すら分からない。

 

ちなみに次女の“ずん姉さま”は朝からこの家の生業となっているずんだ餅作りに忙しいし、長女の“タコ姉さま”は最近仕事が忙しいらしく、基本家に居ない。

……なのでまぁこればかりはホントに仕方なく、必然的に起きて早々寂しい思いをしながらも学校へ向かうという少し悲しい朝から始まる。

 

 

そして登校となるが、これが地味に大変だ。

なんせ山のそこそこ上の方に校舎があるのだから。

 

特に重い荷物を持ってく日なんかは地獄。山の下の方に住んでるわたしでも辛いものなので、更に下の町に住んでる人達の苦労は簡単に想像できる。

 

そうしてよくやく着いた学校ではどうしているかというと……

周りの低レベルな思考のキッズ共と最低限会話を噛み合わせて、上辺だけの関係を過ごすつまらない時間が始まる。奴ら毎日本当に中身が無い会話ばかりで、驚くほどつまらないんだから仕方ない。なので正直キッズ共に対して関心は殆どない。所謂、どうでもいい存在。

当然、学校生活は面白くもない。

 

ただ……そんなクラスメイトに関心が無いわたしでも気にするくらいに、最近奴らの登校頻度が目に見えて落ちているのが謎だ。これだけは気になっている。

もう()()()()()()()()()()()()()かもしれない。うーん、やつらサボって何かしているのだろうか??それか登校するのが嫌になったか。気持ちはわかりますけどね。──それともまさか、流行りの病とかがあるとか?

あまりそういう話は聞かないけど……。

 

 

話を戻そう。

その面白味ゼロの学校の時間からようやく解放されて、やっと家に帰ってきたとしても……待っているのはいつもいつも、背中に大きなきりたんぽ型の大砲、通称“きりたん砲”を背負わされての的当て訓練だ。

勿論、面白くもな──いや、日々上達してく自分の射撃の腕を実感するのは、まあ悪くはないですけど。

 

ちなみにずん姉さまも射撃訓練に参加しているのだが、あっちはいつも弓で的当てをしていて、軽そうで羨ましい。打つ時のフォームも綺麗だし。

わたしなんてアレだぞ?打つのは背中の大砲だし、発射する時毎度四つん這いなんですが??

 

 

また話が逸れた。

的当ての後は前述した家が生業としている餅作りで余ったり売れ残ったものを夕飯として食べさせられ、そしたらあっという間に一日の終了だ。

美味しいけれど、毎日食べるとさすがに飽きる。

 

……というか、あれを毎日幸せそうに食べ、余裕がある日にはおかわりまでする姉はなんなんですか。

不思議に思う反面──また少しだけ羨ましかったり。

 

何故なら今のわたしには、趣味も楽しみも殆どないから。

だからだろうか、好きなことがしっかりある自分以外の周りの人間がすごく眩しく見える。皆が羨ましい。キッズ共ですら話を齧って聞いている感じ、楽しみはあるっぽいし。本当に自分だけが何も無いみたいだ。

周りと比べて自分が嫌になる。

 

まあ強いて言うなら。

強いて言うならずん姉さまの太もも枕やタコ姉さまの尻尾枕という楽しみ、もとい趣味(?)がある。あるとはいえ……でもこの趣味は残念ながらあまり胸を張って口にできるものじゃない。

なのでようするに、表に出せる趣味や楽しみはこれといってないのだ。

 

一応趣味の一環としては的当てがあるが、あれはやらされているものだし。聞けば家訓?とやらの一つらしい。

なのでノーカンだ。

 

 

 

というわけで。

まとめると、今のわたしは毎日趣味も楽しみも何も無いくっそつまらない生活を送っているというわけで……酷く退屈している理由がわかっていただけたと思う。

なんから不幸自慢に聞こえるレベルじゃないだろうか、これ。

 

このままじゃいけない、なにか変わらないと。

何かがポッカリ欠けているような、そんなスッキリしない気持ち。何か大事なものを忘れてきてしまったような。いつもそんな気持ちを抱えて生きている。それが今のわたしだ。

 

 

だから──これ等が満たされることを求めて、わたしがここから変化できる何かを求めて、今日も余った時間を夜中の探検に使う。

 

この時間だけは、自分だけの時間。

わたしの楽しみを求めて、わたしが行動する。誰かに強いられているわけではない、特別な時間。なんなら、今の楽しみはこれと言えるかも。

 

(今日こそはなにか発見して、このつまらない日常に刺激を……!)

 

日常に退屈しているわたしは今日も刺激を求めて、街灯が少ないこの田舎の夜道を懐中電灯片手に探検するつもりだ。一応、怪しい人にあった時のためにきりたん砲も装備しながら。

 

さあて、今日はどんな発見があるだろうか──

 

「きりたーん?どこ行くの??」

 

玄関で出かける準備をしていたところで後ろから姉に声を掛けられたので、一応報告だけはしておく。別に、見つかっても問題はない。この探検は以前から公認のものだから。

 

「あ、ずん姉さま。ちょっと散歩してきますね。」

 

「また?きりたん早く帰ってくるんだよー??最近凄い頻度で夜に散歩してるけど……。」

 

でも正直な所、極力見つかりたくはなかった。

毎晩出歩いてるせいか、前より怪しまれてしまってる。ほんとに何もやましい事なんか無いのに。面倒だ。

 

「まあ、きりたん砲持っていきますから平気ですよ?ずん姉さまは心配しなくてもいいんです。」

 

「でも、もしかしたら危ない目に遭うんじゃないかとか、変なとこに行ってないかとか心配でね?」

 

まだ、まだ食い下がるか。

ずん姉さまは数少ないわたしが尊敬している人物で、いつも優しい姉なのだが……優しすぎる故に、ちょっとお節介すぎる部分がある。

心配してくれてると言えば聞こえはいいが、生憎今のわたしには必要のないこと。ちょっと首突っ込みすぎだ。

ただのお節介だし、はっきり言うと迷惑に感じてしまっている。

 

「あーいや、ほんとに平気ですってば。

十二時越えるまでには帰ってきますし?別に近所を回って帰ってくるだけですし??」

 

「でもー……あ、そうだ!じゃあついて行ってもいい?いつもどんなとこ行ってるかとか知りたいし…」

 

いや。趣味があって楽しみまである人間には──ずん姉さまには。今のわたしの行動なんかについてくる意味なんて無いし、理解できるはずもない。

そんな想いが自然と表に出てしまったようで、少し強めの口調になってしまった。

 

「う、うるさいですね!!」

 

「え──」

 

ああ、言ってしまった。

少し後悔の念に駆られるが、今更止まらないし止められない。もう勢いに歯止めはかけられず、思っていたことを全部吐いてしまう。

 

「わたしのことなんか放っておいて、大好きなずんだ餅でもずっと作ってたらいいんじゃないですか!?」

 

「っ、きりたん…」

 

やめてほしい、その表情。

そんな目でわたしを見つめないで欲しい。これじゃあまるで、わたしが悪いみたいだ。

 

「……ッ!!行ってきます!」

 

色々限界だったわたしは、姉の顔をもう見なくていいように急いで扉を閉めた。思い切り閉めたせいか、少しでかい音が周囲に響く。

 

「……あーもう…」

 

瞬間、溢れ出す後悔。

ちょっと……言い過ぎてしまったかもしれない。

それでも、やっぱりずん姉さまには探検にあまり着いてきて欲しくない。今は、今だけは自分の時間だから。

 

「行くとしますかね。……はぁ」

 

──脳裏に何度も自分の行動に対する後悔がよぎる。

 

果たして姉にあんな強い言葉をぶつけてまで、この探検をする意味はあるのだろうか?……わたしは、間違ったことをしてるんじゃないか?

後悔しながら吐いたため息は、この虚無な現状を表しているかのようにただただ白かった。

 

もう最悪だ。おまけに今日はいつもより寒い。

まあ今更すぐ戻るわけにも行くまい。こうなったらこの寒さを忘れるくらい、すごい発見をしたいものだ……。

 

 

そんなことを思いながら、わたしは今日も夜の探検を始めるのだった。




・東北きりたん
田舎の山に姉妹で暮らしている、末っ子の少女。
茜やゆかりとは明らかに違う環境で育っているらしく、その環境に本来大好きな趣味になるはずの物が無かったので……結果的に少しグレてしまった。最近は余裕が無いのか、常にピリピリしている。

家族以外の人間には関心を持ったことがないらしい。

※27、28話共に誤字修正しました。報告ありがとうございます!
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