起きたら茜ちゃん!   作:丹碧のブルーメ

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ガチ感謝です、読者さんいつもありがとうございます!!これについては活動報告の方で詳しく話しています、よければどうぞ。

それと……今日はゆかりさん&あかりちゃんの誕生日です!!!おめでとう!おめでとう!おめでたい事ばっかり起きてますね。


三十話『“初めて”に触れる』

不自然に立ち入りを禁じられた山に侵入し、早速目的の人物の内の一人と遭遇したゆかり一行。

無事その人物──東北きりたんの説得に成功し、今は彼女の道案内で同じような状況に置かれているであろうきりたんの姉二人を、妹同様ここから助け出すべく動いていた。

 

「はい、ここですここ。ここがわたしの家です。

タコ姉さまは現在この家ではなく少し離れたところに住んでいるので、まずはこっちにいるずん姉さまから説得しましょう!──えっと、皆さん。お願いしますね。」

 

しかし、この中なら今から会いに行く東北ずん子と一番親しいであろうきりたんは、その様子を見るに説得に参加してくれそうにない。

 

「ええっ!?きりたんは掛け合ってくれへんの??」

「そりゃ勿論説得したいですよ?!!

でもその、あの、実はわたし……外に行こうとした時に引き止めてきたずん姉さまに、怒鳴って出てきちゃって。だから会いにくいといいますか、ね。」

 

そう言いながら、申し訳なさそうに目を下に向けるきりたん。

説得の場に参加出来ない理由というのは、まあ随分と可愛らしいものだった。四人は、見かけの年齢よりずっと大人びている(と言っても急にテンションが高くなることはあるが)きりたんにしては珍しい、子供らしい話を聞いて少しほんわかした気持ちになる。

 

「なるほどなぁ。気まずいやつや。」

「きっと、こんな夜道にきりたんが行くから心配してたんじゃない??きりたんのお姉さんいい人じゃん。」

 

“姉”という存在に何かと趣を置いている葵の中で、まだ見ぬきりたんの姉、東北ずん子への評価が上がった。

私のお姉ちゃんほどではないだろうけど、いい姉ではないか、と。

 

「そうかもしれません、けど!!

わたしはこの夜道の探検が最近の楽しみなんですよ?それを止められて、ムカッと来ちゃったんです!今からすぐ帰って謝るのも気まずいですし……」

 

「ならここは一つ!説得はわたし……達だけで行きましょう!」

「え?達?」

 

そう言って胸を張るゆかり…と嫌な予感がしたあかり。

そんな彼女達に対して、進んで言ってくれるなんて頼りになる人達だ!ときりたんは思ったのだが……実はこれもゆかりの計算のうちだったりする。これから家族の中でマスコット枠になるであろう、きりたんからの信用を勝ち取る為の一手だ。出会ってすぐなのにも関わらず、妹キャラ同士ということできりたんとの仲が深くなってしまったライバル、葵との差を縮めるために頑張っている。

……なぜか一方的に葵を意識して、頑張っている。

 

「すいません、わたしの姉さまのことなのに……ゆかりさんって頼りになるんですね。」

「いいんですよ、うへへ

──というわけで説得はわたしとあかりちゃんで。茜ちゃん、葵ちゃんの二人はきりたんちゃんと外で待っててください。」

 

ただし、頑張ると言ってもあかりを巻きこんでだが。

 

「やっぱり説得行くのはわたしも……なんですね。」

「い、嫌ですか??」

「そんな捨てられた子犬みたいな顔で見なくても!?わかりましたよ、行きますよ行きます。」

「ふっふっふ、そう言ってくれると思ってました。」

 

ライバル(?)との差を縮めるために奮闘することになったゆかり、おまけに巻き込まれたあかりはずん子の説得に。

「気まずいから今は姉と会いたくない」というきりたんの見守りで、琴葉姉妹は外で待機……と、それぞれ役割ごとに別れることになった。

 

「きりたんちゃんはわたし達が戻ってくるまでに謝罪の言葉、考えておいてくださいね。」

 

「ぅ、はい……そちらもずん姉さまの説得、頑張ってくださいね。」

「がんばってなー。」

「不審者だと思われないようにね?」

 

「はい勿論!あっ、でもその前に……。」

 

待機組に応援されるゆかりであったが、どうやらまだ少し話すべきことが残っていたようだ。行く直前で思い出したのか、振り返ると茜に近づき、耳打ちする。

 

茜ちゃん、よければきりたんちゃんに“アレ”をやらせてあげてください。

「……アレ?

 

持ってきてたでしょう?ゆかり号の中でも暇つぶしにやってたアレですよ。

あ、ええで。きりたんの好きな物やと思うし喜んでくれるやろな。

ですです……じゃあ行ってきますね。」

 

そういうと、二人は東北家の玄関に颯爽と……と言うには少し遅いくらいの足取りで向かっていく。まだ覚悟が決まりきっていないらしい。

 

「すーっ、はーっ……」

「ゆかりさん、がんばです!」

 

「……よし、行きます。

すいませーん、ごめんくださーーい!!」

 

少し待つと、警戒のけの字もなく簡単に戸が開かれていく。こんなにあっさり開かれていいのか?と二人はこの家の警戒心の薄さを心配したが……今はむしろ説得しやすくて良いかもしれない、と思い直す。

 

「あ、あれ?こんな時間にお客さん?もう店じまいだよ??」

 

そう言いながら戸を開いたのは勿論、この家の当主であり目的の人物……東北ずん子であった。想定こそしていたものの、やはりそのずん子の美貌故か。ゆかりは思わず心の中で思ったことを口にしてしまう。

 

うへへ、なんて可愛い……じゃなくて。お嬢さん、わたし達は客ではなくこうこうこういう者で──」

「うんうん、とりあえず中で話そっか。寒いでしょ?」

 

ゆかり達が説得を始めた最中、一方外で待機組のきりたん達はというと……

 

「はっ離れましょう離れましょう茜さん葵さん!

ここに居たらずん姉さまの目に入っちゃうかもしれません!ほら!早く!!

 

ずん子の声を聞いて焦った様子のきりたんは、琴葉姉妹を引っ張って、グイグイと強引に場を移動しようと試みていた。その様子を見るに、やはり今は相当会いたくないらしい。

 

「ちょ!腕引っ張らんくてもええって!!」

「ふふ、じゃあ家の横のとこに隠れてよっか。」

 

◆❖◇◇❖◆

 

ゆかり達がずん子をここから解放するために説得してる間、外に残った三人は仲直りする為の算段を立てていた。

 

「よし、ええな??

仲直りのために一番重要なのは、ずばり!!」

 

「……ずばり?」

 

「“素直”になることや!だから悪かったって思ったことを正直に口にして謝るんやで。」

 

「誠意を見せろってことだね、お姉ちゃん。」

 

「なんか怖い言い方やけど、まあそんな感じやな!」

 

その言葉を受けて、きりたんは改めて考え直す。

最近の自分はどうだったのか──思えば、最近はあまり素直になれていなかったように思う。もしもあの時、ずん姉さまに一人の時間が欲しいからと、やんわり同行を断れていたら今頃は……と。謝罪の時以外でも、もう少しわたしは素直になってもいいかもしれない……と。

そう考え直した。

 

「素直になって、誠意を込めて……わかりました!」

 

「えっもうわかったん?!早いなぁ、ほんまに??」

「せっかくだしリハーサルでもする??」

 

「い、いやですよ恥ずかしい……もうなんて謝るかは決めてありますし!!平気です!」

 

積極的に仲直りの協力をしてくれる琴葉姉妹。

しかし、それでもやはり家族のことに介入されまくるのは恥ずかしいのだろう。きりたんはリハーサル無しで、ぶっつけ本番で謝ることとなった。

 

「となるとやる事ないなぁ、ゲームでもしよか?」

 

待ってる間、隙間時間にゲームをすることを提案する茜。しかし……

 

「げーむ?なんですかそれ……?不思議な響き。」

 

きりたんはあまりよくわかっていない様子……だが、その言葉の響きに何処か魅入られたようだ。

 

「──えっ、ほら。ゲームはゲームやで?」

 

そう言って茜はサッと携帯ゲーム機を取り出し見せつけるものの、やはりきりたんは頭に「?」マークを浮かべていた。

 

「なんですかこの……板の左右に丸いのとか十字が付いてるみたいな??」

「お姉ちゃん、もしかしてだけどきりたんはゲーム自体を知らないんじゃない?」

 

それを聞いた茜は、一からゲームを手とり足とり教えることにしたようで……

 

「じゃあせっかくやしやってみよか、絶対気にいるで!まずここが電源ボタン!」

「うわっ眩しっ!!」

 

そうしてしばらくやらせていると、配信してた頃の琴葉姉妹も顔負けのスピードで上手くなっていくきりたん。

それを見ている二人は驚きを隠せない。

 

「面白いじゃないですか!ここを、こうっ!!」

「……ウチが二回死んだステージを、一発で……?」

 

琴葉姉妹は失敗を重ねて段々上手くなっていったのに対し、きりたんは操作を一通り理解しただけで1度もつまづかずにサクサクと進んでいく。

 

「なるほど。こいつはここが弱いとっ!!」

「お姉ちゃんと協力してやっと倒したボスを、ひとりであっという間に……??」

 

その進めるスピードは、さながらタイムアタックのようで……どうやら、ゲームセンスは琴葉姉妹よりも上のようだった。

そうして一通り1面のステージを終わらせると、きりたんはふと呟く。

 

「ふー、めっちゃ面白いですねこれ!!最高!!」

 

「せやろ?ハマってまうやろーこれ。」

 

「はい……めっちゃハマりました、ゲーム…!!こんなに心から楽しいのは生まれて初めてかも……」

 

「わーお、そんなになんだ。」

 

強い満足感を覚えたのか、きりたんは出会ってから一番のいい笑顔──もといホクホク顔をしていた。

 

「というか、さっきから変な匂いがしません?これもゲームの影響ですか??」

「いや、ゲームから匂いは出えへん……あ。」

 

言われてなにかに気づいたのか、茜は急に慌て出す。

そう、変な匂いというのはガソリンの匂いであった。茜がきりたんに近づいて教えていたため、しばらく前に飲んだガソリンの匂いがきりたんにまで届いてしまったのだ。

 

「あ、あー!なんか水を飲みたい気分やなぁ!!」

 

「(お姉ちゃん今頃気にし始めたんだ。)」

 

「水ですか?井戸ならそこですよー。」

 

水を飲みたい気分……ということにして匂いを消す為に急遽水を飲むことにした茜。なのだが、どうやら現代の方法で水は取れそうにないようで。

 

「へっ……井戸から水汲むん!?」

 

「?……?? 当たり前じゃないですか。」

 

「ど、どうやって水汲めばええの??」

 

「え……?」

 

というわけで井戸から水を汲むのに苦戦する茜と、先程とは打って変わって教える側に回ったきりたん。

そんな彼女達を見ながら、葵はボソッと一言こぼす。

 

「やっぱりこの山、時間が昔で止まってるみたい。」

 

これは葵が脳裏でずっと考えていたことだ。

ここに来るまでの道、街灯がゼロ。ここまでは田舎あるあるだ。しかしきりたんの家だという民家は、古い日本家屋のよう。これは今の時代ほとんど見られない。そしておまけにきりたん本人は、ゲームという近代文明を知らなかったと来た。トドメにこの井戸の存在である。

もう、間違いなさそうだ。

 

「きりたんをこんな環境に置くなんて、そりゃ退屈に思われても仕方ないよ……ん?」

 

考え事をしていると、葵の耳に一瞬カサカサと茂みから音が聞こえてきた。が、音はすぐに離れていく。

 

「……?野生動物かなんかかな…??まあいいや。」

 

しかしそんなことは気にせず、視線を茜の初めての井戸水汲み上げ作業に戻す葵。可愛い姉のシャッターチャンスは、如何なる時も見逃してはならないのだ。

 

そうして葵が興味を失った、カサカサと近づく音。

その音は、一匹だけのものではなかった。音は、離れたのではなく迂回して後ろに回っていた。音は、家の裏手に着くと……障子を破って中へと入っていった。

 

不幸にも茜は井戸水の汲み上げ作業に集中、きりたんは今度はわたしがと教えるのに夢中、葵はそんな二人を内蔵カメラで撮るのに忙しい。

 

音の原因達が東北家にこっそりと侵入していくのを、残念なことに全員が見逃してしまったのだった。

 

 




・東北家
その見た目は古い日本の家、そのもの。
ほとんど木製の素材で構成されていて、勿論床だって畳である。料理するならキッチンではなく釜戸だし、水が欲しいなら井戸だ。勿論、こんな環境にゲームなんてあるはずも無く、実際ここに住んでるきりたんは存在すら知らなかった。

※文脈修正しました
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