起きたら茜ちゃん!   作:丹碧のブルーメ

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※この作品はフィクションです。もし現実で夜中に知らない人が訪問してきても、決して迎え入れないでください。

え?当たり前?余計なお世話?そう……


三十一話『怪しいものじゃないんです』

突如夜中にやってきた、変わった髪色をした二名のお客様。こんな時間にきりたん以外が家に用事なんて、ビックリしちゃった。でも身内以外では見たこと無い髪色の来客二名に、なにかシンパシーを感じずにはいられない。

本人達曰く「客ではなく〜」とのことだけど、来客は来客でしょ?

 

内容までは聞き取れなかったけど、さっききりたんと仲良く会話してる声が家の中まで聞こえてきてた。だからきっと、この人達は悪い人じゃないんだと思う。

もしかしたら……きりたんの友達だったりするのかな?ずっと友達が居なかったあの子についにできたのかな──離れられないように、早速我が家の虜にしなくちゃ!!

 

「外寒かったでしょー?はい、こ・れ。」

「これは...!わざわざご丁寧にどうも!!」

 

そう判断した私──東北ずん子はすぐさま二人を家の中に招き入れ、お近づきの印にと特製ずんだ餅(とお茶)を二人に振る舞うことにした。

 

「ずんだ餅、いただきますね。」

「このお餅はずん──えっ、知ってるの??私が知らない間に有名になってたなんて、嬉しい!!」

 

嬉しすぎて、思わず手と手を合わせて喜んじゃった。

もしかしたらお昼のお客さんのご家族の人だったり……するのかな?家族からずんだ餅の話を聞いて、また人づてにずんだ餅が広まって……そうだったら嬉しいな、なんて思いながら来客二名の話を聞く。

 

 

「──ってことで、端的に言うとずん子さんも“家族”になりませんか?ってお誘いです。先に断りを入れておくと、怪しい宗教勧誘じゃないですよ??」

パクパク!!これ美味しいれふ!!」

 

ずんだ餅にはまだ手を付けずに“家族”についてと、私が置かれてた状況の説明に集中する紫髪の方、ゆかりさん。

そしてそんな彼女とは正反対に、ずんだ餅を美味しそうに頬張って、説明を隣に任せてただただ味の感想を伝えてくれる白髪の方、あかりさん。

 

改めてまじまじと見るとこの二人、なんだかとってもお似合い。

もしやわたしもこの人達の家族になったら、気の合う人ができたりしちゃうのかな??

 

……それはそれとして、あかりさんがずんだ餅の良さを分かってくれたみたいなのですぐさま反応を返しておく。この子は良く食べるみたいだし、いいリピーターになってくれそうだ。

振舞った甲斐が有るというもの。

 

「でしょう?!ずんだ餅は最高の食べ物なの!!

──で、えっと〜……ゆかりさん、だっけ??貴女の話、すごい信じ難い話だけど…」

 

にしても、こんな急なタイミングで押しかけてきて、いきなり突拍子も無い話をするってことは……もしかして、もしかするのかな??

話を聞く感じ、初対面なのにホントにわたしにきりたん、イタコ姉さまのことだって詳しく知ってるみたいだし、信憑性があるように思えてきた。

会ったことなかったのになんでも当てられちゃったら、ね??

 

此処を離れてこの二人(話を聞く限り他にもいるみたいだけど)の家族になるってことは、この山から解放されると同時に──住み慣れた我が家から離れなければいけないということ。たしかに私はちっちゃい頃から『大都会で売って売って、ゆくゆくはずんだ餅の美味しさを全国的に広めたい!』なんて夢があったけど……このずっと住んでるお家バイバイは、ちょっとなぁって思う。

うーん。

 

 

きりたんはもうこの話聞いたのかな──そういえば、きりたんは?

 

二人を迎え入れた時に声が聞こえたのに、まだ外にいるのかな。そう思って注意深く外に聞き耳を立ててみると、何やら騒いでる声が聞こえてくる。

あの子が、楽しそうに騒いでる声!聞くのは何年ぶりだろう??

 

「き、きりたんが……はしゃいでる声がする…!」

 

「わたしの家族二人──茜ちゃん、葵ちゃんとゲームして遊んでるみたいですね。」

 

「もちもちおいひぃ……ごくん。

ちなみにきりたんちゃんにさっきの話をしたところ、家族になりたいって言ってくれましたよ!!」

 

──そっか、きりたんはこの人達の家族になりたいんだ。私がこの誘いを断っちゃったら、きりたんはどっちについてくんだろう……考えたくないなぁ。

にしても大人びちゃってすっかり笑わなくなったと思ってたけど、きりたんも楽しいことがあればやっぱり笑うんだ。

 

なんならここまで楽しそうな声を聞くのは、初めてかも?

姉として少し不甲斐ない気持ちになりながらも、楽しそうにお友達──この人達の家族らしい人二人とげえむっていう遊び(?)で盛り上がってる声が聞こえてきて嬉しかった。

 

「きりたんがあんなに楽しそうな声を上げるなんて……貴女達の言う“家族”って素敵なものなんだね。」

 

「えっあっ……はい!!そうなんですよ!!!」

 

「うわゆかりさん、さてはゲームの功績を家族の功績にすり替える気ですね…?」

「しーーーっ……」

 

……私もこの人達の家族になってついて行っちゃおうかな??幸いずんだ餅は向こうでも作れるだろうし、きりたんも乗り気みたいだし──なにより、あんなに退屈してたきりたんがあんなに楽しそうにしてる。

 

 

「うん、決めた!決めちゃった!!

私、その“家族”の一員になろうと思う!!!」

 

「え──マジですか。え?ほんとに??」

 

ズズズ……いいんですか?こんなあっさり。」

 

二人してキョトンとした顔でこっちを見つめてくるけど、こちらとしてはもう決まったこと。早速ここを離れる準備を始めなきゃ。きりたんの分もしてあげよっと。

趣味がない子だから荷物が少なく済んでありがたい。

 

「いいのいいの!じゃあ私荷造りしてくるね〜。」

「ずん子さんっておっとりしてるのに行動は結構早いんですね。」

「そうかな??まー、物事はできるだけ早い方が良いって言うからね。」

 

そう言って座布団から立った私は、荷袋を入れてあるタンスのある部屋に移動しようとして──ふと、嫌な音が聞こえて振り返る。

今、バリ、バリバリッて音が……?

 

音が聞こえた部屋に駆けつけると、何やら様子がおかしい。この部屋の障子、こんなに破れてたっけ……??

 

「え、なにこれ……?しかも、こんな大きい穴!!何ヶ所も!!」

 

なんなの?犯人は誰??

直す手間が大変だから、基本的に私もきりたんも障子を破るなんてマネはしない。来客二人もずっと同じ部屋だから、離れた部屋の障子を破るなんてありえない。それなら一体誰が……いや、なにが……??

障子に開けられた穴は、よく見れば前に野良猫に穴を空けられた時よりも大きいような……。

 

「?? どうしたんですか?」

 

「何かあっ──ひいいぃ!?!天井!天井!!」

 

遅れて来たゆかりさんの声を聞いて天井を見やると、そこに居たのは複数体の……でかい虫!?初めて見るスゴく大きい甲虫、ここまで大きいと虫慣れしてても気持ち悪い!!!にしてもこんな単眼の()()()()()()()()()()()()の虫は初めて。

今までこんな事無かったのに。

 

一体どうして……って、考えてる場合じゃなさそう。

 

気付かれたと察知したデカ虫達のうち、一匹が一番距離が近かったこちらに狙いを定めて飛んで来た!!

 

普段から家訓に習って訓練してたからか、私はサッと避けることで間一髪攻撃から間逃れられた。けどこのままじゃまずい。防戦一方だ......それに、あれは心臓に良くない。飛んできた瞬間ゾワッてする。

 

次に飛び掛られる前にと、急いで襖を閉める。

これでとりあえず、あの部屋から虫がこちらに来ることは無いと思う。このまま大人しく出て行ってくれればいいけど……はぁ。せめて使い慣れた武器があれば応戦──あ、ずんだアローはさっきの部屋だった。策が尽きちゃった。

 

それにちょっとまずいかも?

やつら虫のくせに頭がいいのか、襖をこじ開けようとしてくる。すかさず襖を抑えようとしたら、先にあかりさんが止める役を買って出てくれた。

 

「っわたしが抑えてます、二人は急いで外に居る茜ちゃん達を呼んできてください!彼女達なら絶対コイツら倒せますから!!」

 

そう言って止める役割を進んで引き受けてくれたあかりさんの片手には、電気を発するカラクリが!

初めて見る物に興奮して、思わず質問した。

 

「あかりさん、それなあに!?かっこいいね!」

 

「い、言ってる場合ですかぁ?!早く行って!!」

 

あらら、怒られちゃった。

 

「……ずん子さんって結構肝座ってます?」

 

「自分では思わないけどそうなのかな??さ、急ご急ご!」

 

あのカラクリだってビリビリしててなんか強そうだけど、相手は三匹もいるデカ虫。そして奴らいつこじ開けてくるか分からない。あのカラクリで倒せるとは限らないし、この隙に彼女の言葉通り、助けを呼びに行かないと……!!

 

 

 

 




・東北ずん子
ほんわかした雰囲気を持つ、きりたんのお姉さま。
少しマイペースな所も。

ずんだ餅が大好きで、この美味しさを全国に広めたいと思っている。ちなみにずんだ餅作りと弓矢の腕前は、努力で掴み取ったものらしい。
姉妹二人を大切に思っていて、例を挙げるときりたんには鬱陶しがられるほど過保護だし、離れているイタコには毎週手紙を欠かさなかったりと……その強い姉妹愛が伺える。


※一部表現を修正、物語の内容に変更はありません
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