起きたら茜ちゃん!   作:丹碧のブルーメ

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ダブルミーニングのサブタイトル作れたの、六話以来です。


三十六話『似たような存在』

昔からの家族と、新しい家族が言い合いしてる。

わたしは依然としてどっちに着けばいいのか、全く分からなかった。それはわたし以外も同じようで、ずん姉さますらもオロオロしている。

 

「言っておきますけれど、アタシが今まで会ってきた何十〜何百体のロボット達。

全員が例外なく、東北家をここに閉じこめようという考えを持っていましたわ!」

「それはきっと、イタコさんの会ってきたロボットが皆ここのロボットだからや……葵はちゃう、違うから平気!!」

「──きっと貴女も騙されているのですわ。」

「ウチは知ってて葵と一緒におるんや!!」

 

身内と身内が言い争っているのを見るのは、あまり気分の良いものじゃない。それに葵姉さまがロボットだったという事実だって、全然受け入れられていない。

 

なんなんですか、どうしてこんなことに…

色んなことが重なって、おかしくなってしまいそう。

 

「っ……ぐすっ…」

 

あれ。下に水滴がポタポタって……

──あぁ。わたし今、泣いてるのか。ダメだ、思うように自分の心をコントロール出来ない。

 

「大丈夫…?」

「……あおい、ねえさま…??」

 

──どうして。

わたしの背中をさすって慰めてくれる葵姉さまの手は、冷たいけれど。

それでもたしかに、たしかにわたしを思いやってくれる心が伝わってきた。この人はロボットのはずなのに……血の通ってない存在のはずなのに。

なのにそんな存在にさすられて、どうしてこんなに温かい気持ちになるんだろう。

 

「……!きりたん。

私ね、信じてみようと思うの。」

「ずん姉さま──信じるって…」

「葵さんを!!良いロボットだっているって!」

 

…そうだ、ここまでの道中。

何度も葵姉さまの“人”らしいところを見てきた。

趣味に共感してくれたり、仲直りの為に協力してくれたり、虫をやっつけてくれたり。

 

果たしてそんな事、悪いロボットがするだろうか?

否、するわけない。

 

落ち着いてきた頭で、わたしはこう結論付けた。

ずん姉さまの考えと同じだ。

 

 

体以外、人間と何も変わりない。わたし達と似たような存在なんだ。茜姉さまだって言っていた。悪いロボットもいれば……

良いロボットだって──いる!!!

 

「わたしもっ、わたしだって信じます!!」

「…ふふ、嬉しいよきりたん。」

 

隣で笑ってる、今も人にしか見えない彼女を。

良いロボットであり、わたしの最高の姉の内の一人を。

信じてみようと思った。

 

「一時はどうなる事かと……丸く収まって良かったです。」

「あはは、ゆかりさん……。

まだ丸く収まってませんよ??イタコさんの説得が残っています。」

 

落ち着いたら周りがハッキリ見えてきた。そして一歩引いたとこで行われてる、二人の会話を聞いてハッとする。

そうだ、タコ姉さまの説得がまだだった。

 

今は茜姉さまだけで説得しているようだけれど、そこにわたし達が加わればどうだろう??

……長く生活を共にしてきたわたし達も一緒であれば、こちらの言い分もきっと聞いてくれるはず。

 

「せやから、葵は!!」

「ダメなものはダメですわ!」

 

言い合いを続けている茜姉さまに加勢する。

この人の妹は悪いロボットじゃない。それを教えてあげなきゃ。覚悟を決めて、タコ姉さまの方へ声を掛ける。

 

「タコ姉さま!!聞いてください!」

「……きりちゃん?」

 

少しでも伝わればいい、分かってもらえばいい。

良いロボットだって居るんだって。

 

「わたしは今、泣いてる所を葵姉さまに慰められました。

その前にも何度も助けられています、どうか信用してあげて欲しいです!」

「きりたんの言ってることは本当なの!

私達のお墨付きで葵さんは良いロボットだよ!!」

 

ずん姉さまもこちらの意図を察したのか、すかさず便乗してくれた。

これならきっと……!!

 

 

「いいえ、騙されているに違いありませんわ。」

「そ、そんな!!どうして信じてくれないんですか!」

 

これでダメだなんて、こんな物分かり悪かったっけ。

……いや、タコ姉さまは相当“ロボット”というものに悪い偏見を持ってるに違いない。でも、出会ってきたロボットが殆ど悪いモノだったなら、そんな偏見を持っても仕方ないのかもしれない。

現に、わたしだってさっきまで偏見を持っていた。

その気持ちはよく分かる。

 

「どうすればええんやろな……」

「何か、何か方法があるはずです…!」

 

困った、一体どうしたら信用してくれるだろうか。

未だ降りることなく、背の高い木の上からこちらに語りかけるタコ姉さまを見ながら考える。

 

あー、早く和解して昔みたいにしっぽ枕させてもらいたい。ずん姉さまの太もも枕とはまた違う良さがあるんですよねアレ。

 

──ん?あんなにしっぽ多かったっけ。

 

「あの、タコ姉さま。」

「なんですの?言っておくけれど、何度言われようとアタシは…」

「いや、そうじゃなくて。

そんなにしっぽ、多かったですっけ??」

「あっ、ホントだ!!きりたんよく気づいたね!」

 

何回もしっぽ枕させてもらってたからわかる。

()()。間違いなくそれがタコ姉さまのしっぽの数だ。だと言うのに、シルエットを見ると何度見ても()()

これはおかしい。

 

「……しっぽは増えることもありますわ。」

「よく見れば、あのしっぽだけ形も少し変なような…」

 

形が歪というか。

普段モフっていたわたしだからわかるのだろうが、ひとつのしっぽにだけ“モフモフ”を一切感じられない。

それに、なんだか細い。

 

「…そ、そんなこと無いですわ。」

「な、なんか変です!!降りてきてその“しっぽ”を見せてください!」

「お断りしますわ。

そちらには近くにロボットがいるというのに…」

「私が近くにいるのが嫌って言うなら、ちょっと離れるよ。」

 

そういって葵姉さまがスタスタとわたし達から距離を取った。これで、タコ姉さまが降りて来たくない理由は無くなったはず。

 

「……」

「…なんで降りてこないんですか?」

 

だというのに、ここまで頑なに降りてこないのはちょっと……いや、だいぶ不自然だ。わたし以外もそう感じてるようで、ずん姉さまもわたしの言葉に続いた。

 

「降りてきてくれないと、私達一足先にこの山から離れちゃうよ??」

「──仕方ないですわね。」

 

そう言ってシュタッと、ようやく降りてきたタコ姉さま。

だが、やっぱり変だ。正面からこちらを見据えない。

角度をつけていてずっとナナメだ。何かを庇うように……いや、隠すようにしている。

 

「正面向いてくださいよ。

久しぶりにしっぽ見せてくださいよ。」

「それは別に今じゃなくてもいい事ですわ?」

 

うーん、怪しい。

向こうは隠し通すつもりだろうけど、斜め立ちなんて隠し方ならこちらにもやりようはあるんですよ。

 

「……しゅばばば!!」

「あっ…」

 

フェイントをかけて見れば、この通り。

あっさり隠していたしっぽが見え……なんですこれ!?

 

「──な、なんですかこれ…!!?

タコ姉さまのしっぽ、一尾だけピンクのミミズみたいなものが集まって形作られてる…」

「くっ……」

 

頑なに降りようとしないで、しっぽを見せたくなかった理由はこれ…?

何かの病気??一体どうすれば???

 

わたしはかつてない状況にオロオロしそうになるが──茜姉さまとあかり姉さまは、心当たりがあるらしく。

 

「──あ、あかりちゃん、あれ……」

「はい、間違いありません!!

化け物…クロスケの背中に着いていたのと似たような触手寄生体……。

人にも寄生するんですか、あの触手は。」

 

化け物とか、寄生体とか。

なんかやたら物騒なワードが聞こえてきたんですが!

 

「いいですか、よく聞いてください。

今のイタコさんは……寄生されています!思考を乗っ取られています!!」

「ってことは…」

「騙されていたのは、私達ってこと!?」

 

「はい、今の彼女の言葉は信じないでください!

わたし達もかつて、同じタイプの寄生体と遭遇したことがある…!!」

 

──ゾッとした。

物分かりが悪いんじゃない。そもそも最初から話し合いの余地なんて無かったんだ。タコ姉さまを偽って、わたし達を離した後……一体、どうするつもりだったんだろう。何が目的だったんだろう。

 

「たしかあのイソギンチャクみたいなのは、体から引き剥がせば元に戻るはずや!」

「話し合いはヤツを引き剥がしてからです!

皆でイタコさんを助けますよ!!」

 

なるほど。

どうやらタコ姉さまの思考を奪っているあの触手をなんとかすれば、元のタコ姉さまに戻るらしい。

 

「……バレてしまった、んですわね。」

「タコ姉さまの真似をしないでください!!」

 

無駄にソックリな喋り方をする乗っ取り犯を、キッと睨みつける。

にしても……偽物だとわかればわかるほど、このソックリの演技が不気味だ。もしあかり姉さま達が教えてくれなかったら、きっと「変わったしっぽが生えたんですね」で終わってたかもしれない。

妙には思えど、まず間違いなく騙されていた。

 

わたしは臨戦態勢を取り、視界の中心に乗っ取られているタコ姉さまを見ながらも……視界の片隅に映るゆかり姉さまの奇妙なジェスチャーを見逃さないようにする。

 

くっつけている人差し指と人差し指を、水平に横に広げて…その後広げた指で円を作り。

口の動きは……「あおえ、あおえ」…?

 

 

──カゴメ、カゴメってことですねこれ!!

なるほど。さっきキッズ共がしてきた戦法そのものだ。多数が、少数を包囲して数の暴力でどうにかする。たしかに今この状況なら、有効すぎる戦い方だ。

あの時と違うのは、わたし達が囲っている側ということか。

 

「っし……完璧っ。いいですか!

今、こちらは完全にアナタを包囲しています!!」

「…いつの間に……でも、こんなノロノロしてて大丈夫なんですの??」

「ア、アナタに勝ち目はありません!

大人しくイタコさんを解放しなさい!!」

 

なんでだろう、囲まれてこうしてゆかりさんに勝ち目が無いことを告げられているのに……まだ向こうに余裕があるように見えるような。

 

「そちらがノロノロしてる間に、こちらの準備は終わってしまいましたわ。」

「準備……??」

 

準備と聞いて、周囲を見回してみるも何も見当たらず……いや、なんか風が生暖かいような…お化けが出る前フリのお約束みたいな……

──待って、お化け?

 

ま、まずい!!

 

 

「…全員、捕まえましたわ。

勝ち目が無いのはそちらだったようですわね。」

 

気づいた時には、既にいつの間にか背後にいた霊に捕まってしまい、わたし達は一切身動きをとれなくされてしまった。

これは絶対タコ姉さまの能力の、幽霊を呼び寄せる力だろう。まさかこんな使い方もできたなんて…。

 

一応抵抗してみるが、霊の癖に無駄に力が強くとてもじゃないが離れられそうにない。

 

「はあぁぁぁぁっ!!!」

「っ?!」

 

けど、茜姉さまは違った。

さっきの戦いと同じように火を手から出すことで、霊に抵抗して拘束から逃れることが出来たみたいだ。

 

「貴女……他とは違うようですわね。」

 

茜姉さま、たしかにさっきも凄い戦いぶりだった。

火を手(正確には指?)から出して、ロボット共にまとめて大ダメージを与えちゃうなんて。

そして今回も。

火の力を使って、一人だけ危機から脱してわたし達を救おうとしてくれている。まるであの時やらせてもらった“ゲーム”の主人公みたいだ。

 

「きりたん。

ウチな──お姉ちゃんな、イタコさんを元に戻す。

一人でもあんなイソギンチャク、絶対引き離してみせるで。」

「イソギンチャクだなんて、心外ですわ。

貴女も()()()と同じようなものでしょうに。」

 

同じような存在、ってどういうことだろう。

たしかに“姉”という存在同士ではあるだろうけど……って、タコ姉さまに寄生してる触手が言ってる言葉なんだから、そのことではないか。となると、なんのことを言ってるのかわたしにはわからなかった。

それは茜姉さまも同じようだ。

 

()()が、お前と同じようなもの…??

色以外共通点無いやろ。」

「自覚無し、なんですの?

……まあいいです、行きますわよ!」

「っ絶対負けへんから!見とってな、きりたん!!」

 

そう言われても、見てるだけじゃダメだ…

わたしだって助けになりたい。一緒にタコ姉さまを救い出したい。体の身動きが取れないけど、なにかわたしにできることを探さないと。

そう思って力むも、やはり体の身動きは一切とれず……

動くのなんて、頭のアクセサリーくらいで──あ、これなら。




・触手寄生体
普通の生物でない事は確か。ピンク色をしている。
寄生して宿主の体の主導権を奪う生き物で、その様子を見るに高い知能を有しているようだ。宿主の記憶を見ることも可能らしく、今回の個体は乗っ取られる前の宿主そっくりの演技をして騙してきた。
だが欠点もあるようで、それは触手を完全にはしまい込めず一部を露出して、空気に触れていないといけないというもの。
これのおかげで人からするとかなり見抜きやすい。

ちなみにクロスケに寄生していた個体と、今回イタコに寄生している個体は言うまでもなく別個体。
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