ニコニコが(数週間前になりますが)帰ってきたので、おまけにこの小説も帰ってきました!
今回の話は所謂「一方その頃」ってやつです、故に久しぶりの出番のキャラが出てきます!!
……忘れられてないといいですけど。
足のリハビリのやり方は覚えた、恩人の名前も聞いた。
ならもうここに用はないと言わんばかりに、最近使えるようになった能力“テレポーテーション”で機関から颯爽と脱出した茶髪の幼い少女、アイ。(と、ついでにクロスケ)
「ふぁ〜あ。おはよークロスケ…ってまだ寝てるか。」
彼女の朝はいつも野外から始まる。
脱出してからというもの、1人と1匹は毎日毎日行く宛てもなくフラフラと歩いていた。とりあえず機関から遠い場所へと歩く!という曖昧な目的で、それはもうフラフラと。
そうして辿り着いた先は、ちょっとした河川敷。
正確に言うと、川の右岸と左岸を繋ぐ橋の下。言ってしまえば、どこにでもあるような場所。だが雨風をしのげて水分も確保出来る橋の下は、住処を持たない者達には魅力的に見え……いつの間にか自然と定住するような形になってしまっていた。
これが野外から朝が始まる理由だ。
こんなホームレスみたいな──というか、ホームレスそのものの場所に暮らしている彼女。
何も、この生活を続けたくてやっている訳ではない。
この現状は幼い頭ながらも必死に考えた結果だ。
警察へと駆け込んだら、おそらく機関へと逆戻り。
だからと言って子供の安全を確保してくれるような他の場所を宛にすると、今度はクロスケと共に行けないだろう。
なので、
……とは言え幸いな事に、昼間に別行動しているクロスケが何処からか果実を見つけてくるから食料に困ることは無いし、寝る時だってこれまたクロスケの大きな体に巻かれるようにして寝ることで、モフモフの布団に近い寝床も獲得している。
どうやらこの妙な生物のお陰で、一定の生活水準は確保出来ているらしい。
ノソノソと布団──ではなくクロスケの体から離れると、川の水を手ですくって水分補給。「ぷはーっ」っと飲み終えると、やることが無いので今日も今日とてアイはボーッとしながら考えに耽り始める。
内容は、あの日自分を救ってくれた人間についてだ。
「お姉さん…“茜”お姉さん。」
琴葉茜はアイにとって、いわば魔法で自分のピンチを救ってくれた救世主。恩を感じずには居られない存在なわけだが……それだけでは無い。
「……やっぱりお姉さんとアタシ、何か似ている?」
それは何度も思ったこと。だが……
歳?声??髪色???どれも合致しない。
何が似ているか分からない。思いつく限り似たところなんてどこにも無いはずなのに、何故かシンパシーを感じている様子。そんな調子で琴葉茜の事ばかり考えていると、やがて彼女はひとつのことに気付く。
「あの人のことを考えるだけで安心する、まるで…」
“家族”みたい──アイはそう思った。
想像のつかない存在だったはずだ。
何故なら、自分の記憶があるのは施設に収容されていた時からで……それ以前の記憶はなかったから。
ようするに、アイは記憶喪失だった。
自分が何者なのかわからず、記憶があるのは施設での日々からで。思い出せる一番前の記憶からでも、共に収容されていた生き物──クロスケと知り合ったとこからだ。
そこからの記憶だって、その“ワード”は一切ない。
妙な研究の実験台に何度もされ。
触手でおかしくなったクロスケと戦わされ。
茜に助けられ施設から脱し、今度は機関に保護された。
最近目覚めた能力を使って、今度は機関からも脱して今に至るわけで………。
そう、やはり記憶の中に“家族”なんてワードは一切出てこなかった。
なのにも関わらず、恩人を思い出して何故か自分が知らないはずの“家族の安心感”を感じるというのはおかしな話だ。
その安心感を知っている時点でそれは、経験済みということになる。
仮に、あり得るとするならば──
「アタシにも昔……お姉さんのような家族が居た、のかな?」
そんな結論に至った。
考えに耽るだけと言っても、何度も何度も繰り返すと時折新しい発見をするものだ。
実際彼女は今日、かつての記憶に一歩近づいた。
◆❖◇◇❖◆
秋田県の田舎の方に住んでいる人間から複数件。
「立ち入り禁止の山の方角から焦げ臭い匂いが」
やら
「建物が倒壊したかのような大きい音が」
との通報を受けたことによって、これは警察では手に余ると機関の精鋭達がその山へと朝方に立ち入った。立ち入ったのだが……。
それは丁度東北三姉妹を救出し終え、
……ようするにもう、機関の人間達が来た頃には既に事が全て終わった後だったのだ。
なので戦いの痕跡しか発見できず、おめおめととんぼ返りするような形であっさりと帰還。とは言っても無駄な徒労に終わった訳ではなく、ある程度の収穫はあった。
翌日、その収穫──もとい、持ち帰った物々の解析が始まった。
しかし順調とは行かないようで。
「見つかったのは破壊されたロボットと思しき数々の残骸、役割を終えたかのように機能停止した多数のロボット達。
そして……固まって動かない触手寄生体。」
「あの量、解析終わるの何日後だ?応援はまだか??」
「とりあえずこの寄生体の解析から始めますけど…。
はぁ。こんな時、あの人がいれば解析ももっと早く進んだのに……って、あの人はもう居ないんだった。」
ただでさえ
機関の人間達は揃いも揃って無理をし疲弊して、本来の実力を発揮出来ずにいた。皆が皆、気分があの日から落ち込んだままなのだ。
勿論、そのような状態では解析作業も満足に進まない。
「代わりになるような、とまでは言いませんけど……応援の人、頑張ってくれるといいですね。」
なのでそんな状況を見かねた司令が、助っ人を要請したらしいのだが……。
遅い。遅すぎる。各々しびれを切らしていた。
「遅いし、期待するだけ無駄でしょう。」
「連絡によるともうじき来るはずなんだが…姿が見えんな。なんせ西からの助っ人だ、この土地には慣れていないのだろう。」
機関には、東日本支部と西日本支部がある。
あかり達がかつて活躍していたのもここ、東日本支部だ。そして助っ人とやらは、どうやら西日本支部から来るらしい。
「はぁ……そもそも、そんな道に迷うような人間が役に立つわけ…」
「腕は確かとの事だ、サポートだけではなく実戦経験も豊富。西が東より好成績を収めているのは知っているだろ?」
「知ってるけど……まさか??」
「そのまさかだ、今回来る助っ人はその好成績に多大に貢献している人物らしい。」
「なんかそれ噂で聞いたことある、確か“神速の──」
そんな応援に来る助っ人の話題一色で、作業の手が全然進んでない解析室に1人の来客がやってきた。 ドアを開く音が木霊する。彼女は入ってすぐに目に入ったその体たらくを見ると…。
大きな声を上げた。
「……機関の人間達がなんですかこのザマは!
こんなんで、国民の期待に応えられるのですか?」
その発言で、少し空気が変わる。
彼女は言ってることこそキツいもの、明るく聞き取りやすい凛とした声をしていて。まるでニュースキャスターにでも居そうな──というか。
「あ、貴女は確か!ニュースキャスターの??」
「はい、セイカと申します。」
テレビを見ていれば1度は見た事があるであろう、有名な番組でニュースキャスターをしているセイカという人物だった。
「悪いが、ここは関係者以外立ち入り禁止という形を取らせてもらっている……お引き取り願いたい。」
「いえ、私は関係者ですよ?応援に来たんです。」
とは言うものの、やはり外部の者は外部の者。
そう判断しこの部屋から離れてもらうべく、説得を始める機関のメンバー達だったが……
「……応援って、でも貴女はニュースキャスター…」
「兼、西日本支部の戦闘部隊リーダーもやってます──とはいえサポートも全然行けますが…まぁ色々やれます!よろしくお願いしますね。」
どうやら、本当に関係者のようだ。
「は、はぁ……。よろしくお願いします。」
「私が来たからには!東も西と同じような好成績を収める、機関と名乗るに相応しい職場にしてみせますよ。」
頼り甲斐のある発言をしながら「おまかせあれ」と言わんばかりの笑顔を向けるセイカ。
そのニュースキャスターに選ばれるのにも納得してしまうような美貌から放たれる笑顔に、周囲は動揺が隠せないが──笑顔だけではない。
なにより彼女がした、その発言に動揺していた。
「っていうか──西の戦闘部隊リーダーって言えば、すごい戦い方で敵組織をたった1人で壊滅させちゃったこともあるという……あの?神速の??」
「“神速のセイカ”が応援に来てくれるとは!なんて心強い!!」
そう言って一気に持て持て囃しながら握手を求めてくる機関の面々に丁寧に返しながらも、セイカはほんのり顔を赤らめながらその通り名を拒んだ。
「……その通り名みたいなやつ、恥ずかしいのでやめてくれると助かります。
気軽にセイカとお呼びください。」
“神速のセイカ”の噂。
西日本支部の戦闘部隊リーダーであり、とてつもないスピードで戦場を駆け抜け、あっという間に敵を一網打尽──蝶のように舞い蜂のように刺すという。
その戦い方からこの名がついたのだとか。近年では珍しい近距離武器専門の戦い方をする人物でもあるらしい。
そんな彼女が応援の助っ人だったのだ。
頼もしい限りだが、この助っ人を良く思わない者も居ないわけではなかった。
「何が神速よ、遅れた癖に。」
「お、おい!!お前失礼だぞ!」
「でも…」
「遅れたのはすいません、一仕事してきたものですから。」
そう言ってドサッとセイカから手渡された紙束の内容。
恐る恐る確認してみると……
「え──う、嘘!!これって面倒だから後回しにしてたロボット達の…解析データ?!もう終わったって言うの??」
「えぇ、なので後やることは触手寄生体の解析だけですね。」
「……」
実力で黙らされてしまった。
「……や、やるじゃない。」
「セイカさん。その力、是非お貸しいただきたい。」
「元よりそのつもりです、任せてください。」
──やる事なす事、全てが人間技じゃない。
その頭脳、その美貌、そして何よりそのスピード。そのあまりのハイスペックぶりは機関の面々にとって少し不気味に映るものの、同時に安心感を得られるものだった。
何故ならそれは、かつて機関に居たあの2人を想起させるものだったから。
「ところで解析されたロボットの映像メモリに映っている人物──彼女達は。」
「……この顔…尖兵のあかりに、新人ちゃん…?」
「というかこんな髪色してたわけ?!仲間だった頃はヘルメットに隠れてたから気づかなかったわ……」
「中には見知らぬ顔もいるようだが。
それよりこの面子、機関から失踪したメンバーが揃いも揃って何故ここに?」
「──西が私なら東はあかり。
とも聞いたものですが……失踪してからの彼女は何故こんな所でこんな真似を…とにかく、残念です。」
冷静な言葉選びの割に、その声色には怒りが含まれていた。力を持つ者の機嫌が悪いと、それだけで周囲にプレッシャーがかかるものだ。
彼女を和ます為に、周囲は急いで別の話題を振る。
「そ、そういえば!触手寄生体の解析もしないと!!」
「……そうでしたね。
とりあえず今のこの状態は所謂“仮死状態”と見てよいかと、生命反応はまだ感じられます故。」
「にしても似ているな。前に捕獲された同種族と思しき研究対象との関連性が気になる。」
「前に捕獲された研究対象?それは今どこに??」
「はい、前もこのような触手寄生体は見つかっていてですね。今は研究対象としてAエリアの研究棟に…」
「行きましょう、場所を教えてください。」
思い立ったら即行動。
それがセイカの理念だった。スピードが早いのは戦場での話だけではないようだ。
「いやいや、アポ無しで今直ぐにという訳には…」
「権限で何とかします。早く行きますよ!」
「…スピード感がありすぎるというのも困りものだな……」
「な ん か 言 い ま し た ?」
「い、いえ……」
守銭奴が居なくなった矢先、次に来たのはじゃじゃ馬娘。
相当優秀な助っ人ではあるものの、彼女が加わったとて機関の面々の苦労が和らぐことは……ザンネンながら無さそうだ。
・アイ②
苗字は未だに未公開。わかる人にはバレてそう。
保護してくれた機関から脱したのは、施設に囚われていた頃のトラウマと帰省本能が合わさった結果。しかし記憶喪失な為、脱したところで帰る家が分からないという本末転倒に終わった……。
現在はクロスケと橋の下暮らし。
秋の川は冷たい。
・セイカ
同じく苗字は未公開。
とっくにご存知なんだろ…?
前(24話)から存在こそ匂わされていたものの、本格参戦が遅れに遅れ……やっっと名前ありで出られた人。お待たせしました。ニュースキャスターと西の戦闘部隊リーダーを兼任している。
彼女1人のお陰で西ばかり好成績を収めているので、最近落ち気味の東もなんとかしてくれと応援に呼ばれた。
何かとスピードを有する。
スピードトーク!スピード解析!スピード戦闘!スピードアポ無し突撃!
この小説にもそのスピード感を分けて欲しい。
“神速のセイカ”とも呼ばれるが、本人はその通り名を恥ずかしがっている様子。
ここだけの話、“尖兵のあかり”がシンプルに感じて羨ましく思っている。そんな羨ましい通り名を持つあかりが失踪した為、ご立腹。