起きたら茜ちゃん!   作:丹碧のブルーメ

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トレードマーク、いいですよね。


四話『髪飾り』

あれから数ヶ月が経ち、配信に慣れてきた琴葉姉妹は着々と登録者を伸ばしていた。

その人気の勢いは“ロボットの姉妹”という物珍しさもあってか、飛ぶ鳥も落とす勢いと言っていいほど凄まじいスピードであった。

 

他にもプレイングが異常に上手い、というのも注目された理由の一端だと茜は推測している。自分でも驚いてしまうほどに“この体”の反射神経は凄まじく、その反応速度で様々なゲームを楽々最後まで攻略できている。それが結果的に視聴者を惹き付けたのだろう。そしてこのプレイングの上手さは、妹も同様。

 

勿論、二人とも始めて即スーパープレイ!とは行かなかった。当たり前だがゲームは様々なジャンルに分かれているし、その全てが同じ操作方法というわけではないからだ。やり方を覚えるまでは試行錯誤を繰り返し、如何にも普通のプレイング、と言った形。

 

だが少しでも慣れてくると──と言ってもpart1の中盤の時点で即にだが……人が変わったかのようにサクサク進められるようになっていった。「吸収が早い」という言葉では片付けられないくらいに。

そして妹も()()()()()()()()()()()同じタイミングで上達していく。アクションであろうが、格ゲーであろうが、FPSであろうが……ジャンルを問わず、お構いなく。

 

そんなプレイングに慣れてきた姉妹はさながら、プロゲーマーのようで。あまりにも上手くなりすぎて、視聴者の中から「途中からプレイは別の人がやっているのでは?」という疑惑の声まで上がってしまうレベルだ。

無論、そんな疑いの声は手元を写しながらのゲーム配信をしたことで黙らせたが。

 

 

……この異常な成長の早さに茜は何か、強い違和感のようなものを感じていた。当たり前だ。いくらこの世界のロボットが優秀だと言えど、ここまで上手くいっていいものなのか。これではさながら人間の上位互換では?とまで思ってしまう。

 

ゲームというのは言わば、一種のシミュレーション。

それ等を異常に吸収が早い、自分達のようなロボットが楽々クリアしてしまう……気の所為なのかもしれないが、どうしてもこの事実に強い引っ掛かりを覚える。それは自分が元人間だからか、それとも──

 

「お姉ちゃんお姉ちゃん、明日はどんなゲームやろっか?」

「え?んー……そうやなー……」

 

が……そんな考え事も妹の言葉ですっかり頭の隅に追いやられた。そして現実に引き戻され、流れるように思考が“次何をやるか”という話題へと移って行く。

 

「最近はアクションゲーム連発してたやろ?」

「そうだね、アクションばっかり選んでる。私達のプレイングとか……ゲームしてる時のリアクションが好評だし。」

 

初回の配信以来、マスターからの指示は『毎日配信してくれれば何でも構わない』と大まかな指示に変わっていた。

そしてそうなってからは葵がこのチャンネルの視聴者が求めているものを瞬時に分析し、“私達のプレイング”と“私達のリアクション”を見たいがために登録している人間が多いと推察。

結果として、嫌でも反応が増えまくるアクション要素が強いゲームばかり選ぶようになったのだ。

 

 

「……正直、疲れへんか?毎日アクションばっかりって……」

「疲れはしないけど、代わり映えはしないなって思うよ。」

 

どうやらお互いアクションに“マンネリ”を感じていたようだ。それを確認できた茜は言葉を続ける。

 

「せやろ??せやから一旦、ここでほのぼのしたゲームを挟んだ方がええと思うんやけど──」

「いいよ、じゃあそうしよっか。」

 

まだ喋っている途中であったが、その提案に葵は即okを出した。結局のところ、アクション以外ならなんでも良かったのかもしれない。

茜はそんな即答を聞くと「え、さては相当飽きとったな?」と少し意外そうに反応する。

 

「……ただ、お姉ちゃんが自分で選んでくれたのが嬉しかっただけ。

 

「え?」

 

「お姉ちゃんが選んだゲームならどんなゲームでも文句ないよ。」

 

「? そうなんや……?」

 

少し困惑しながらもソフトケースを手に取り、話していた“ほのぼのしたゲーム”のパッケージを見る。そのタイトル名はまさにパッケージの絵をそのままタイトルに起こしたような名前であった。

 

名を『手芸クリエイター』という。 平和そうだった。

このゲームはその名の通り手芸、特に装飾面を凝って作ることが出来るようで、所謂“シミュレーションゲーム”に分類されるもの。

スタッフ達がその脅威的なまでの技術と執念で、今まで難しいとされていた手芸のシミュレーションを完成まで漕ぎ着けたという逸話があるソフトでもある。スタッフ達は手芸部だったに違いない。その完成度は他に類を見ないレベルのものであり、どこまでも“再現性”に趣きが置かれていて……一度手芸をしたことある人が手に取ればその出来栄えに驚き、そして感服するらしい。

 

「手芸クリエイター?」

 

「そう。“現実のように自由自在に作り込める!”って謳い文句が書いとるで。」

 

そう。この作品、なんと“自由度”までも高いらしい。手芸で作れる物ならなんでもゲーム内で作れるというのだから、その可能性は無限大なのだろう。

ゲームだから針で手を刺してしまったりだとか、材料費が嵩むと言った心配も無い。

 

「ふーん…ってことは、私達のこの髪飾りなんかも?」

 

「当然、バッチリ再現できるやろな!」

 

やるゲームが決まり、配信する時間ももう決まっている。ソフトは勿論既に家にある。そう、もう今日の配信内容は決まった。

“次何をやるか”問題は終わったようなものだ。

 

となると、配信するまでの間暇になる。そして暇潰しトークの内容は茜の中で既にもう決まっていた。

先程の話題にも出てきた一つ、髪飾り。

以前からこの髪飾りに関して気になっていたことがある茜にとって、今は質問するにはうってつけのタイミングだったのだ。

 

「そいえばその髪飾り、葵はいつも付けとるよね?」

 

「うん。大事な物だからね。」

 

自分は《前の知識》の琴葉茜に寄せるため、配信の時──もとい、視聴者の目に触れる時はこの髪飾りをつけているが……オフの時は大抵の場合外している。結構でかいし、二本垂らしている組紐の部分が結構邪魔になることが多いからだ。

 

しかし、それに比べてどうだろう?

葵は滅多に外さない。外すのはお風呂の時くらいであり、寝る時ですらこの髪飾りを常につけているのだ。これにはなにか意味があるんじゃないか?と茜は常々思っていた。

 

「大事な物?もしかしてウチもあんまり外さない方がええんか?」

 

「んー……出来ればつけてて欲しいかなぁ。勿論自由にしてもらって構わないけど。」

 

なるほど、これは姉妹で同じようにする必要がある訳では無いと。では何故このずっと付けておくには鬱陶しい髪飾りをいついかなる時も付け続けているのか。

気になることはとことん追求するのが茜のスタンスなのだ。姉妹なのもあってか、その問い詰めの勢いに容赦は無かった。

 

「そう?なんで大事なん?どーしてずっと付けとるん??」

 

まだ誰も知らないであろう謎を解き明かすその気分は、さながら未知の大地を探検する冒険家。そんなテンションが上がっている茜の怒涛の質問攻めに、葵は困ったように頬を掻き──やがて時間を置いて答えた。

 

「なんでって──私にとって体の一部みたいなものだから、常につけておかないと安心できない……って言えば納得してくれる?」

 

この返答を聞いても茜はやはり納得できない。

が、琴葉茜は考えた。珍しく顎に手なんて添えながら、必死に頭を回して考察した。

そして……やがて自分の中で、予想ではあるが結論に辿り着いたのだ。茜はこの“葵が髪飾りを極力外したがらない現象”を所謂キャラクターとしての性なんじゃないか、と結論付けた。

 

「どうかな?お姉ちゃん?」

 

例えば《前の知識》で知っているキャラクターの中にも、帽子やバンダナ、髪飾り等様々だが……頭に何かを付けているキャラが複数いる。

それらのキャラは揃いも揃ってそれがトレードマークになってるため、あまり外すことは無い。そして大抵の場合そういう物にはいつも付けている理由が“設定”されているのだ。

 

「おねちゃ聞いてる??」

 

だが琴葉葵の場合、元は音声合成ソフトであることからそこまでの“設定”がそもそも考えられていないのだ。けれども葵は無意識下でもキャラクターとしてのトレードマークを保つために、髪飾りはつけていたいはず。しかし理由がない。もしくは分からない。

 

「あれ、お姉ちゃんちょっとー?」

 

ようするに……髪飾りを付ける必要があるにも関わらず、その理由は葵自身も理解していない。

この“矛盾”こそが葵の返答の遅れの答えなのではないか?と、そう仮定したのだ。

 

「……お姉ちゃん……」

「!!──葵どしたんや?」

 

どうやら思考の海に入りすぎて妹の声が届いていかったようで、茜が気づいた頃には葵は既に涙目になっていた。

それも仕方の無いことで、茜が隣の妹を放って髪飾りの考察をしている間に……目の前で何度も手を振ったり、茜の体を揺すったりして呼び掛けていた。

 

それだけしてもずっと無視されてしまっては、葵のメンタルにも当然来るものがある。大好きな姉にスルーされ続けるという悲しみ、涙が込み上げてくるのも仕方の無いことであった。

 

「葵ごめんなー?お姉ちゃんちょっと考え事しとって──」

 

「イイヨイイヨ、ゼンゼンキニシテナイカラ」

 

「あの、ほんまに……ごめん……」

 

そして、この日から戒めとして茜も髪飾りを極力ずっと付けるようになった。そして髪飾りに強い思い入れができた。──最も、こうなったのは罪悪感からだが。

何でこうなったかはともかく、姉が髪飾りを常に着けるようになって葵は嬉しそうにしていたそうな。

 

 

ちなみに余談だが……この『手芸クリエイター』での配信はそのゲーム性から必然的に作業配信となってしまい、アクションの多い琴葉姉妹のチャンネルの中だと地味な枠となった。そんな一見地味に見える枠だったが、コアなファンには概ね好評のようで。

 

今までに類を見ないレベルで真剣に取り組んで、お揃いの髪飾りを作ったことで視聴者からは「仲の良さが伝わってきて良し!」と、数あるアーカイブの中でも特に評価されているらしい。

 




・琴葉姉妹の配信
基本的にワイワイしていて騒がしい配信となる。
主に茜が盛り上げ担当。葵は後方彼氏面して静かにしてたり、解説に徹することが多い。(が、茜がやられるとやった相手を親の仇のように本気で殺りにいく)

様々なジャンルに手を出してるが、どれもあっという間にハイレベルになるので視聴者にとってはそこも見所。毎日配信なので、たまに配信が休みになると視聴者からすごく心配されてたりする。


※“同じ操作方法”の「同じ」が抜けていたので追加修正しました。他に変更点はありません。
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