起きたら茜ちゃん!   作:丹碧のブルーメ

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琴葉姉妹11周年おめでとうごさいます✧︎
なんかこの小説、姉妹ちゃんの誕生日の度にカムバックしてますね??おめでたい日ということでトラブル回の中に姉妹百合シーンをねじ込みました。悔いは無い。


四十三話『流れ着いた先』

船内の会話を小耳に挟みながら、船に揺られてしばらくが経ち……

時刻は深夜。そろそろ眠気もやってきて、夜風に当たりながらも茜はこっくりこっくりと心地よい夢の世界へ誘われていた。しかし「ドォン」と大きな音がやってきて、それに連なるように強い衝撃と揺れが訪れる。

夢の世界へのリンクは早々に断ち切られてしまい、茜は飛び起きた。

 

「っなんや!?今、何が起きたん?!」

「お、お姉ちゃん…見てあれ……」

 

妹の指さす方角を見て、思わずギョッとする。

目線の先にあるものはおそらく目的地としている島──なのはいいのだが、その島がやたらメカメカしい。

 

「……えー…夢、やないよな?」

 

その景色に思わず目を擦るが、何度擦ってもその景色は変わらない。まるで戦艦のよう。いや、そんなレベルを遥かに超えてもはや島全体が武装されている、としか表現のしようがない状態だ。この島はそれほどまでに現実離れした見た目をしている。

武装島、とでも称するしかないだろうか。

 

「っ!?来る!!!」

 

そして、なぜかその島から砲弾がこちらに放たれた。

先程の衝撃も、間違いなくこの砲弾によるものだろう。もちろん敵対した覚えなどないし、ここに来る前に聞いていた噂だって精々、鬼の噂程度だ。こんなの聞いちゃいない。

 

これにはすっかり眠気が吹き飛んだ。しかし眠気は飛んでいっても、砲弾はむしろこちらに落ちてくる。

 

「ひぃいいいいい!?」

 

船体が傾き、一瞬体が浮く。

運良く船に直撃こそしなかったから良いものの、海に落ちたそれによって凄まじい水しぶきと、再び激しい揺れが始まった。これによって大きな波ができ、海水が雨のように降り注いだり、船へと覆い被さるように入ってきたりする。どうやら先程の一発より近くの海面に落ちてしまったようだ。

勿論姉妹はレインコートなど着ていないので、冷たい冷たい海水を直に浴びることになってしまった。

 

「つんっっっめた!!!ひぃいいん!」

「こ、これは……堪えるね…ゴクリ

 

これにはあまりの冷たさに茜はセルフハグ。

一方葵は凍える様子こそ見せないが、それでもやはりなにか我慢しているような表情だ。とはいえ……そんな表情をしつつも冷たさに悶える(可哀想で可愛い)姉の顔を視界から外すことは絶対にしないし、そんな縮こまる姉がバランスを崩さないようにしっかりと支える。視界も意思も体感も、絶対にブレない。

色んな面で優秀な妹なのであった。

 

「大丈夫ですか!?」

「なにが、何が起きたんですか!!」

 

さすがにおかしいと思ったのだろう。

船内でさっきまで談笑していたであろう2人(ゆづきず)も、勢いよくドアを開けて出てきた。何が起きたという問いに葵は再び武装島の方向を指さし、茜は起きたことを話して急いで状況を伝える。

 

「ち、違います……あれはわたし達の目指してた島じゃない!!」

「え、そうなん!?」

「わたし達が目指してたのは、こっち!!」

 

今度はゆかりの指差した方──先程の葵が指差した方角とは反対方向を見やる。

すると、たしかに本当の目的地であろう別の島が見えた。ということは、今攻撃を仕掛けてきたアレは一体なんなのだろうか。もしや機関のマシンかと思いあかりに聞いてみるも、首を横に振られる……心当たりは無いらしい。

つまり、あの武装島は完全なイレギュラーだ。

 

「とりあえず船内へ!外にいるよりマシでしょう!!」

 

ゆかりの言葉に従い中へと戻り、話を再開する。

あの武装してるような島は?なぜ攻撃を仕掛けられた??本当に機関のものでは無いのか???茜達の思いつく限りの疑問を、砲弾を避ける為の操縦に忙しいゆかりに変わってあかりが答えるが……。

 

「そもそも、おかしいんです…。

散々調べた事前調査──まあネットでとはいえ、さんざん衛星写真とかも調べてました。その調査だと目的地の島以外、周辺には島なんてなかったはずで!」

 

となると、島が突然出現した!というそれこそ現実味のない出来事が起きたことになる。

 

「移動する島……そんなことが、有り得るの?潮の満ち干きとかじゃ…」

「それはありえません。あの大きさにあの高さですよ??」

 

葵も思わず訝しむが、実際にアレが動いているとしか考えられない。島のスケール等も加味すると、尚更だ。

 

「あかんあかん!はよ逃げるんやゆかりさん!」

「わかってます!でもこの島、やたらしつこいんですが!!明らかにこちらを狙ってるし近づいて来るんですけどぉ!?!」

 

ゆかりが半ギレになりながらも、まるで意志を持っているかのように執拗い武装島から逃げる。必死に船を進ませるが……まったく距離が開かない。むしろ縮まっている。

向こうも動いてる上に、まるで海流の流れが全てあちらに味方していると錯覚するほど悪い。

()()()()()()()()()()()()()()と錯覚するほどだ。

 

「ダ、ダメです……まるで進んでる気がしない。」

 

その時ドォン、とまた大きな音が鳴る。

 

「ゆ、ゆかりさん!また来ます!!砲弾が──」

 

あかりのその言葉が最後まで発せられる前に、天井が壊れ目の前に大きな物体がゴッと落ちてきた。船体が傾くどころでは済まない。再び激しい衝撃が4人を襲う。

砲弾が直撃した──それを認識した瞬間、バキャッと嫌な音を立てながら船が割れる。船が真っ二つだ。

 

 

衝撃により、船の後部ごと2名が吹っ飛ばされてしまった。その瞬間を見ていたあかりは目を見開き、飛ばされてしまった者達の名を叫ぶ。

 

「あ、茜ちゃん!!葵ちゃんっ!!」

「……そんな…!」

 

操舵席にゆかり、彼女をサポートする為に隣にあかりが。

そんな2人を邪魔しないように琴葉姉妹は入口付近に立っていたのだが、運の悪いことにそれがアダとなった。これでは船を半々に分けた時、ちょうど分断されてしまう。まぁこんなの予測しようがないのだが。……直撃しなかっただけマシと考えた方が良いかもしれない。

 

 

とはいえ、もうこの船は使い物にならない。

真っ二つになったモノでは当然もう逃げられず、ただの漂流物になってしまった。対象の破壊を確認したのか、砲撃は止まったが。なんとか船の残骸に掴まった2人は、海流によって徐々に武装島へと流されてゆく。

 

「……茜ちゃん達は無事でしょうか?」

「わかりませんけど、そう信じましょう…。」

 

愕然として、流れとは反対の方向を見つめる。

ゆかりとあかりが見つめる先は、琴葉姉妹が飛ばされていった方向──それは本来行く予定だった目的地の島の方角。自分達がこれからどうなるかも不安だが、それよりも姉妹の無事を祈るばかりだった。

 

「バラバラになっちゃいましたね……船も、わたし達も……」

「いや、上手いこと言ってる場合じゃないです。」

 

◆❖◇◇❖◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザー、ザーと心地いい波の音で目を覚ます

 

 

覚醒する視界と意識。

それと同時に、喉に塩っ辛い感覚を覚え、すぐに吐き出した。

 

「ぅあ…けほっ。うーん……ここは…」

 

意識が回復したので周りを見渡してみると、辺りはまるでリゾートのような景色だった。あれから何時間経ったかわからないが……状況を思うとちょっと憎らしく感じるまでの太陽、青い海、白い砂浜。あのこの自然を見るに武装島ではなさそうだ。

幸か不幸か、目的地の島に流れ着いたらしい。

 

よく見ると船だったと思われる漂流物や緑の海藻、青い海藻なんかも流れ着いていて……というか、この()()()()()って。

ひっくり返してみるとやっぱり──

 

「あ、葵!!大丈夫!?

待っててな、すぐにウチが……えっと、気道確保とえっとえっと…!!!」

 

茜はパニックになり、妹がロボットなのも忘れて溺れた人間に必要な応急処置を行おうとするが……その必要はなさそうだ。

 

「アレだよお姉ちゃん。人工呼吸を今すぐ…」

 

頬を染めキス顔で待機する葵。

一刻を争うようにはとても見えず、元気そうにしている。

 

「あ、葵……もう………ん!

 

そのわざとらしい演技に、茜は呆れながらも念の為人工呼吸をしたのだった。過去に一度妹を失いかけた経験もあって、彼女も気付けば度を超えた心配性になってしまっていたのである。

 

「ありがとうお姉ちゃん……ところでここって。」

「どうやら島に着いたみたいやな、ゆかりさんとあかりちゃんは見当たらへんけど──」

「なら近くに流れ着いてるかも??海沿いを探そっか。」

 

やはり一瞬で元気になった葵と、なんだかんだ心配だったので無事を喜ぶ茜。姉妹ははぐれた2人が別の場所へ流されているのもいざ知らず、再会する為に砂浜を歩き始めるのだった。




・船
登場からたった3話にしてお釈迦になった不憫な存在。
所詮はその辺の漁師が使ってたものなので、特に耐久性が高いとかはなく……砲弾が当たればこうなるのは当たり前。幸いとても浮く素材で作られていたのもあって、壊れても掴まる漂流物くらいにはなった。

・分断
結月ゆかりと紲星あかりは武装島へ、琴葉姉妹は目的地の島へとそれぞれ流されてしまった。果たして合流することができるのだろうか。
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