起きたら茜ちゃん!   作:丹碧のブルーメ

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いざって状況の時にすぐ動けるタイプの方、尊敬します。


八話『冷静な判断』

残念ながらさっきの電撃では意識を狩り取れなかったようで。

 

「いっ…ぃだい゙い゙い゙いいいい!!!!」

 

「なっ!?」

 

少女の悲痛な声が木霊する。ま、不味い。まさかビリビリガンを使って気絶しないなんてことがあるなんて。しかも……大声を出されてしまったのは非常にまずい。

 

「っ!!」

 

急いで2発目の電流を流すと、少女は今度こそ気絶した。

が、この予想外な出来事がまた新たな予想外を呼んでしまったようで……声に反応したように扉が勢いよく開いた。

 

「お姉ちゃん大丈──……あなた、誰?」

 

「!(もう一人!?あの少女の言っていたことは本当だった?)」

 

もっと不味い事になった。装置にはたしかに生命反応は一つと記されていたはずなのに、まさかあの少女の言う通り本当にもう一人いるなんて。

装置の故障だろうか?否、それは無いだろう。この任務の前に全ての機器に正常に使えるようにと、使用テストをされてるはず。

 

だから機器の故障はありえないとして……つまり、扉から出てきたこのもう一人の方の少女は人間では無い? にしては凄惨な表情でこちらを睨んで来るその姿、とても人間味を感じるが。

そして何より──その姿形は、先程気絶させた少女にそっくりだ。違うのは髪色と服、髪飾りの位置くらいか。姉妹なのだろうか?髪の色が真反対の姉妹??

 

「あなた、何者??」

 

「……それは、ちょっと言えませんね…」

 

前述した人間味を感じるという表現。取り消しても良いかもしれない。表情こそ『怒っています、警戒してます』と言った感じだが、その声に震えや勢い等はあまり感じられず、淡々としていて。そう──非常事態なのに、人間にしては落ち着きすぎている。

 

だがこの奇妙な反応は、ひとつの説に当てはめると納得できるものになる。その説はこの子が“アンドロイド”だという説。これなら気絶させる前に少女が言っていた「ロボットやから」発言にも少し納得できる。……最も、ロボットだったのは片方だけだったようだが。

 

やはり少女は何かしら強い洗脳のようなものを受けていたのかもしれないが、とりあえず今はそのことを置いておくとして。目の前のアンドロイド──とりあえずロボット少女とでも呼ぶべきか?こっちをなんとかしなくては。

 

「というか、お姉ちゃんに何をしたの?」

 

「気絶してもらっただけです、死んではいませんよ。」

 

「……よかった…じゃあ次、何が目的?」

 

「……言えません。ただ、抵抗しなければ危害を加えないことを約束します。」

 

ロボット少女からの怒涛の質問攻めにはぐらかしながら答えていく。ここは今度こそ穏便に行きたいところだ。勝手に潜入しておいて、虫のいい話なのはわかっているが。

 

「お姉ちゃんが痛がってた時点で、既に危害は加えられてるんですけど。」

 

「いや、これ以上危害は加えないと…」

 

「それ、スタンガンかな。そんなものを二回も当てるなんて、跡になったらどうしてくれるの?後遺症は無いと言いきれるの?」

 

残念ながら平和的に解決とはいかなそうだ。ここは2人目の少女も気絶させてしまうべきだろうか?正直こちらに殺意を飛ばされまくっていて、気が気でない。

 

「大丈夫です、跡にはなりませんから。後遺症にも。……信じてくれませんか……」

 

「ダメ。信用出来ない。というか、お姉ちゃんがあなたに対して抵抗したの?本当に?」

 

「それは──」

 

「してないでしょ?酷い人。」

 

うぐっ、これは痛いところを突かれた。たしかに少女は抵抗はしていなかった。こっちが勝手に“嘘をついている”と判断して電撃を放ってしまっていた……なので弁明はできない。事実だから。

 

「お姉ちゃんがどんなに痛い思いしたか……あんな痛そうな大声、私だって初めて聞いたよ?許せない。」

 

そう言うとロボット少女は袖の部分から何か黒いものを──ってまずい!!!!

 

 

瞬間、押し寄せてくる銃弾の雨!

発砲音が何度も、間隔をおかずに連続して鳴り響いた。

 

幸い全部スレスレで当たらなかったものの、これはおそらく威嚇射撃。わざとスレスレを狙ってきたと考えて間違いない……!

恐ろしい形相でこちらを睨んできているが、なにより恐ろしいのはその精度と状況判断能力。銃を隠し持っていた上に、まさか一瞬でこんな的確な位置に銃弾を撃ってくるなんて。

 

そもそも普通威嚇射撃というのは上に向けて撃ったり、下に向けて撃ったりするのが普通だ。

なのにこんなスレスレを狙ってきたということは、それだけ相手が射撃の腕に自信があるということ。

 

……相手がその気なら、わたしの反射神経を持ってしても避けられなかったであろう、完璧な不意打ち。「不意打ちしてやる」という意識を一切こちらに勘づかれない、ロボットだからこそできる恐ろしい芸当だ。

 

「何でここに来たの?目的は?……言わないと、今度こそ当てちゃうかも。」

 

「っ……」

 

そう言いロボット少女は銃口をこちらに向けて歩いてくる。

目標を聞いてきている。脅しを添えて。

 

 

──だが、わたしはこれでも機関の人間の一人だ。

 

よく寝坊するし、お給料は必要以上にせびるし、集まりで食べ放題行った時なんかは……食べすぎて皆に迷惑も掛けるけど。

 

それでも、こんなわたしでも、この仕事に“誇り”を持っている!

 

たとえ自分の命を天秤に掛けられても、ミッションの内容や目的、ましてや所属組織等は決して教えられない。仮に言ったら、わたしのせいで後から来る支援部隊が状況的に不利になってしまう可能性もある。

だからわたしは、絶対に目的を言うわけにはいかないのだ。

 

「い、言えませんっ……!!」

 

「そう? それじゃあ──」

 

……今から銃を握ろうとしても、さっきの銃さばきを見るに、おそらく少しでもそういった素振りを見せた瞬間撃たれてしまうだろう。抵抗はできない。

 

つまり。ここからわたしが生き残る方法は、無いと言っていい。

 

自分の死を確信して下を向き、目を瞑る。

近づいてくる。ロボット少女が一歩一歩、こちらに歩んでくる音がする。

やり残したことが沢山あるのに。死というものは、こんなにも唐突に訪れるものなのか。

 

「うぅ……」

 

「……」

 

最期に思い浮かべるのは、わたしの相方であり、恩人であり、大切な人。

 

わたしを地獄のような環境から救ってくれて、この仕事を紹介してくれて、今生きている理由にもなっている人。

本人には聞こえていないだろうけど。無事に帰れないことと、もう一緒に居られないことを謝罪する。

 

「あぁ……ごめんなさい……ゆかりさん……」

 

「…………え?」

 

思い残すことは沢山あるけど、今まで何度か仲間の死も見てきた。ただその仲間達の方に行くだけだと思えば、幾分か心が楽になる。

一足先に向こうに行ってますね、ゆかりさん。

 

「……」

 

「待って、今なんて…」

 

「……?」

 

いつまでも訪れない死に違和感を抱いていると、ロボット少女が問いかけてくる。さっきのわたしの発言に何か引っ掛かりを覚えたようだ。

 

「一応確認するけど、あなたの名前は?」

 

「……言わなきゃダメですか?なんでそんなこと…」

 

今から殺す相手の名前なんて聞いて、なんの意味があるのだろうか?わからない。

 

「じゃあせめて顔を見せて。そのヘルメットも外して。」

 

「……?」

 

なぜこんな要求をしてくるのか、理由が微塵もわからない。

だがいいだろう。もうじき支援部隊も到着するはずだし、それまでの時間稼ぎだと思って自分の顔くらいなら晒してやる。

そう思いながら、わたしはマスクを外しヘルメットも脱いだ。

 

「……はい、これでいいですか?でもこんな要求して何に──って近い近い!近いですよ!!」

 

ヘルメットを外した瞬間凄まじい勢いでロボット少女が距離を詰めてきた。その表情にはさっきまでの殺意や怖さは微塵も感じられない。

 

この顔、それにこの髪…やっぱり…。

 

そしてわたしの顔を食い入るように見つめながら、何かボヤいている。なにか注目する要素があるだろうか?ニキビとかも無いはずだし、となると……

──ははーん、さてはわたしの美貌に見惚れてしまったのだろう。人に恋をするとは、罪なアンドロイドだ。

 

声を聞いた時まさかとは思ったけど……。

 

「な、なになになんですか?」

 

「あなた、悪い人じゃない。」

 

「……はぁ。どうも。」

 

どうやら、こんなことで事態は丸く収まったらしい。

人の顔を見て善悪判断するなんて、随分面食いなロボット少女ではないか。さっきは人間味が無いなんて思ってたけど、また訂正しようかな。

 

「それに──信用できる。ここに来た理由も教えなくて結構。」

 

「え、いいんですか?わたしはあなた達からすれば、一応『夜中に突然来た不法侵入者』に他ならないんですけども……」

 

「もういいの。……私はお姉ちゃんが心配だから、念の為お姉ちゃんの傍に行ってる。」

 

「わ、わかりました……」

 

なぜ助かったのか、なぜあんなことで??

疑問は尽きないし脈にも落ちないが、とりあえず自由が確保されたので探索を始めようと思う。

 

“やつ”が残した遺産。

それを探すのがわたしの任務だけど──

 

ふと、後ろを振り返って先程対峙した姉妹を見てみる。そこには姉の容態を心配そうに覗き込む妹の姿が。思い返してみれば、なんて酷いことをしてしまったんだろう。

 

ビリビリガンに殺傷能力が無いとはいえ、二回も電撃を打ち込んでしまったのだ。起きるまである程度時間が掛かってしまうかもしれない。

そう考えると、尚更いたたまれなかった。

 

これは殺意を向けられても仕方ないな……と思いながらも、同時に目線の先の姉妹の美しさを再び認識する。

 

髪の色以外瓜二つな姉妹。気絶している姉のために、妹が膝枕をしている。

 

美しかった。ただただ、綺麗な光景。

 

膝枕をしながらも、姉の胸に手を当てずっと心拍音を聞いてるらしい。これだけでこんなに絵になるものなのか。

後ろから照らされてる月光のバックライトが後光に見え、まるで宗教画か何かのようだ。こんなの魅入らずにはいられない。

 

「……?家の中“探索”しないの?」

 

「あ、します……そいえば、仲間を呼んでもいいですか?探索するなら一人だと埒が開きませんし。勿論危害は加えません。」

 

「どうぞ、お好きに。」

 

見惚れていたら宗教画を構成している片割れに指摘されてしまった。そうだった、探索の続きをしないと。

……でも、もしかしたら…いや──もしかしなくても、“やつ”が残した遺産というのは、研究データ等ではなく、あの姉妹なのかもしれない。

 

まぁそれでも他に何か見つかるかもしれないので、探索をするというミッション内容に変更はない。

 

問題も解決したことだし、この建物を徹底的に探索する為に支援部隊の皆を呼ぶとしよう。安全も呼び掛けて。

そう思い、入る前に切って以来の通信を再開する。

 

「あー、あー、聞こえます?こちら──」

 

よかった。わたしは今日も生きて帰れそうですよ、ゆかりさん。

 

──この時は大きな出来事の後で疲れていたのか、ロボット少女のおかしな言動に気づけなかった。気づくのはしばらく後になる。

 

一体どうしてこの時「“探索”しないの?」と聞けたのだろうか。何故そのこと知っているのか?先程まで情報を聞き出そうとしていたのに。おかしい。

 

だってわたしの目的は、まだ言っていなかったはずなのに。




・服の袖
いつも琴葉姉妹が着ている例の服の袖部分。
このでかい袖をうまく使えば、相対している相手に見えないように何かを忍ばせたり、隠し持つことができなくもない。

不意打ちには最適。
こんな物騒な使い方するのは多分この小説だけ。


※「髪の色以外瓜二つな〜」辺りの文章を修正しました。他に変更点はありません。

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