強者に好かれ弱者に嫌われるスキルをもって転生した少年   作:三つ眼の荒木

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いつも誤字修正をしていただきありがとうございます。
書き終わった後はとりあえず投稿し、音声読み上げを聞いて確認しているため漢字のミスが多いかもしれません。

セカイ視点→フレデリカ視点→シルドアウト視点です。

少し長めです。


#9 D級冒険者の実力

 

 北の門から歩いて10分。

 

 テントと露店が建てられており、少なくない数の冒険者と商人が賑わいを見せていた。

 

 そして、その中心にあるのは窓一つない石煉瓦でできた建物。

 分厚い鉄扉の脇には衛兵が二人立っており、この建物の異質さをより際立たせている。

 

 ここはダンジョンの入り口だ。

 

 俺は入り口から少し離れた所で、ニューソードのパーティメンバーを待っていた。

 

 俺が彼らのパーティに所属してから1週間がたった。

 つまり、ダンジョンで魔獣の討伐を始めてから1週間たったことになる。

 

 間に休憩日もあったため、毎日ダンジョンに潜っているわけではないが、ようやく緊張もほぐれてきた。

 

 ここ一週間はダンジョンに入ったら常に緊張していた。

 

 魔獣と戦うのはダンジョンが初めてだ。

 当然、どんな風に襲ってくるのか全く分からない。

 そんな正体の分からない敵と命のやり取りをし、俺はかなり神経をすり減らした。

 

 戦う訓練はカインさんやビルキさん、衛兵の人たちと何度もしていた。

 しかし、彼らは俺を殺す気はなかったし、俺もまた彼らを殺す気はなかった。

 

 実戦と訓練は違うことを思い知らされた。

 

 そして、生物を殺すということに俺は慣れていなかった。

 

 ダンジョンにはゴブリンと言う魔獣がいる。

 130㎝程度の小柄な人型の魔獣だ。

 

 緑色の肌をしており髪や体毛はない。鼻は高く眼が小さい醜悪な顔をしている。細い腕で力は弱く、お腹がすこし出ていた。

 二足歩行はするが知能は低く、叫び声を上げるだけで言葉は一切話さない。

 全く人間のように見えない。

 

 まさしく魔獣だった。

 

 しかし、初めてゴブリンと戦った時、俺は殺すことを躊躇った。

 ゴブリンから襲い掛かってきたため、同情はしていない。正当防衛のため殺す理由もある。

 

 しかし、ただ生物を殺すということに、心が拒絶反応を起こしたのだ。

 

 その後、俺はシルドアウトによって槍を押されゴブリンの命を奪った。

 

 悲しくも嬉しくもない。恐怖も興奮もない。快も不快もなかった。

 あったのは焦燥感と責任感。

 

 一つの命を奪ったという事実が俺の心に重くのしかかった。

 

 俺はこの一週間で何度も魔獣を殺した。

 今も魔獣を殺すことは慣れていない。

 

 しかし、生き物を殺す覚悟はついてきた。

 

 俺は遠くを見ていると、ニューソードの3人がこっちに向かって歩いてきているのが見えた。

 ウルフが俺に気づいた。

 

「お、セカイは今日も早いな」

 

「おはよう、リーダー。シルドアウトやフレデリカもおはよう」

「ああ。おはよう!」

「おはよー。またせてごめんね。ウルフが全く来なくて起しに行ってたの」

 

 3人は俺と違うところで待ち合わせをしていたようだ。

 

 俺だけが現地集合だった。

 

 ……いや、でもこれは俺がはぶられているのではなくて、彼らが特別仲良しなのだ。

 彼らは幼馴染らしく家も近所で、子供のころから冒険者になる約束をしていたらしい。

 

 そんな仲に、急に同い年の後輩が入ってきたら、そりゃあ扱いに困るだろう。

 

 だから、これくらいの距離が今の俺たちにとって適切な距離だ。

 

 ダンジョン攻略後の打ち上げにも呼ばれてないけど、決してはぶられてるわけじゃない。

 ……そう思いたい。

 

「じゃあ全員揃ったし早速行くか!」

「うん。でもその前に一つ確認していい?」

「なんだ?」

 

「今日は11階層から攻略するんだよね」

 

「ああ、そうだ。楽しみだな!」

 

 ウルフはにかっと笑った。

 

「ありがとう。一応確認しときたかっだけ」

 

 そう。今日攻略するのは11階層。

 D級以上の冒険者パーティが推奨されている階層だ。

 

 というのもD級から増える依頼には、11階層以降しか出ない魔獣の素材回収があるからだ。

 

 ニューソードも、D級用の依頼を初めて受ける。

 

 ここ一週間は俺がダンジョンに慣れるため、1~10階層までの依頼しか受けていなかった。

 

 つまり、俺も彼等も初めての階層、初めての魔獣だ。

 

 俺達は衛兵に冒険者証を見せダンジョンの中に入った。

 

 入ると目に付くのは、部屋の中心にある巨大な魔石と奥にある階段だ。

 階段は1階層に続いているが、今回用事があるのは巨大な魔石の方だ。

 

 この魔石には転移の魔法が付与されていて、魔石に向かって宣言することでダンジョンの11階層、21階層の入り口に転移することができる。同様の魔石が各階層にあり1階層にも戻ることができるようになっている。

 

 この場にいる全員が初めて使う。

 

 俺たちはそれぞれ魔石に触れ、せーので声をそろえて宣言した。

 

「「「「【転移(テレポート)、11階層】」」」」

 

 次の瞬間、体の中で何かが駆け巡る感覚がした。

 

 ダンジョンの風景は特に変わっていない。

 しかし、魔石の形が先ほどまでと違い、周りにいた冒険者がいなくなっている。

 

 無事、11階層に転移されたようだった。

 

「よし、みんないるな。フレデリカ、いつもの頼む」

「オッケー!【光よ、周囲を照らせ。光球(ライトボール)】」

 

 フレデリカが魔法を詠唱すると頭上に光の玉が現れる。

 

 ダンジョンは、なぜか火が消えない松明が壁にかけられているため明るい方だが、見やすくするためいつも彼女が魔法で周囲を照らしている。

 

「よし!じゃあ予定通り俺とシルドアウトが先頭で、フレデリカとセカイは後ろだ。

 セカイは自分の身を守ることだけ考えろよ。フレデリカはこう見えてオーク並みに力があるからな。

 近接戦闘はセカイより強いぞ」

「誰がオークよ!」

 

 フレデリカがウルフの耳を引っ張る。

 

「いてて!でもフレデリカの母ちゃんから聞いたぞ。体重計にのって悲鳴をあげて――「あーあー!新人の前で何を言ってるのよ!」

「はいはい、お前ら。そろそろ行くぞ。

 セカイも分かったな。お前はまだEE級だ。俺達を守るなんて思いあがるなよ」

 

「うん。最低限、自分の身は自分で守るよ」

 

 いつもの光景だ。

 

 すこし緊張がほぐれた気がする

 

 と言っても緊張しているのは俺だけのようだが。

 

 俺たちは11階層の攻略を始める。

 

 俺は歩きながら周囲を警戒する。

 そして、合間を見ながらメモ帳をだし、歩いてきた道から地図を書いていた。

 

 一方、彼らはというと……

 

「11階層の魔獣は手応えがあるといいな!」

「ほんとウルフってバトルジャンキーよね。戦いしか頭にないの?」

「この前、余ったソーセージを誰が食うか戦って決めようと言い出した時は肝が冷えたぞ」

「だからあの時は違うって――」

 

 ――楽しく談笑していた。

 

 いや、分からない。

 D級にもなれば談笑しながら警戒するなんて簡単なのかもしれない。

 

 しかし、この一週間の彼らの行動をみてそうとは思えなかった。

 

 彼らは周囲を警戒しない。

 持ち物も武器と水とポーションを一本ずつ。あとは帰還用の魔石だけ。

 出てくる魔獣についても調べないし、地図も一切書いていなかった。

 

 今も、いつの間にかフレデリカがウルフとシルドアウトの間に入って歩いているため、俺だけが彼らの後ろを歩くようになっている。

 最初に指示した並びじゃなくなっていた。

 

 俺は他の冒険者について詳しくない。

 

 しかし、流石に分かる。

 

 彼らはダンジョンをなめている。なめくさっている。

 

 それでも彼らがD級になれた理由があった。

 それは――

 

 と思ったところで前から魔獣が歩いてきているのが見えた。

 

 俺はメモ帳をポーチに入れ槍を両手で持つ。

 

「おい、集中しろ。魔獣だ」

「本当だ。それじゃあいっちょ戦うかー」

 

 シルドアウトが遅れて彼らに魔獣の存在を知らせた。

 ウルフの反応的にやっぱり警戒はしていなかったようだ。

 

 フレデリカは後ろに下がり元の配置となる。

 

 俺は魔獣を見る。

 

 豚のような顔。太った体。身長は俺達と同じくらいある。

 先ほど少し名前が出ていたオークだ。

 

 オークは9階層から出ていたため、初めての魔獣ではない。

 俺も戦ったことがあるが、1体でも十分強かった。

 

 それが4体。そのうち2体は素手で2体は古びた剣を持っている。

 

 オークは俺達を見つけると叫び声を上げて走りだした。

 

 一方、ウルフは呑気に屈伸をした後手首と足首を回していた。

 

「よし!」

 

 次の瞬間、ウルフはオークたちに向かって駆け出した。

 否、それは跳ぶといった方が正しい。

 

 前方に向かって跳ぶことでたった2歩で5m以上あった距離をつめる。

 

 そして素手のオークの腹に一瞬で拳を3発叩き込んだ。

 オークは呻き倒れこみそうになるが、ウルフはさらに距離をつめ強烈な右ストレートをオークの顔にくらわした。

 オークは後ろに大きく吹き飛ぶ。

 

 しかし、ウルフの後ろで一体のオークが剣を振りかぶっていた。

 

「リーダー、危ない!」

 

 俺は咄嗟に声をあげた。

 

「分かってる……よっ!」

 

 ウルフは回転しながら剣に向かって蹴りをした。剣は足甲にはじかれると同時に、オークの体勢もよろめく。

 彼はさらにもう一回転しながら跳ぶ。そして強烈な後ろ蹴りを剣を持つオークの顔に叩き込んだ。

 

 文字通りオークの顔がとんだ。

 

 ウルフは着地するとその場で構える。

 

「これが我流風蹴拳。回転後方蹴撃だ!!!」

 

「誰に向かって言ってんだ」

 

 追いついたシルドアウトがつっこみを入れる。

 

 シルドアウトに向かって残ったオークが襲い掛かった。

 素手のオークは彼を殴ろうとするが、彼は少し後ずさり体を横に向けることで避ける。

 そして手にもつロングソードで素手のオークの首を斬りつけ、その後もう一体のオークに向かって突きを放つ。

 

 残ったオークは何をすることもなく、首に剣が突き刺さり絶命した。

 

「もう!二人だけでずるいよ。私の出番なかったじゃん」

「ははは。ならフレデリカも前で戦うことだな」

「本当に出てやろうかな」

 

 ウルフは近接戦闘職。シルドアウトも盾を持っているが同様に戦闘職だ。

 フレデリカは一応、補助魔法は覚えているらしいがダンジョンでは基本かけないらしい。

 つまり、遠距離での戦闘職だ。

 

 ニューソードは全員アタッカーの構成になっている。

 戦い方もさっきみたいに、正面からのごり押しだ。

 

 ゲームとかならバランスが悪く感じる構成だ。

 回復職が欲しくなるが、彼らはパーティメンバーを増やす気はないらしい。

 

 しかし、それでもどうにかしてしまう膂力が彼等にはある。

 

 これが彼らがD級になれた理由。

 

 至って単純だ。

 

 強いから。

 

 俺が苦戦する相手も難なく倒していた。

 俺とは体のスペックが違う。

 

 10階層までの魔獣は敵じゃない。

 

 これだけ楽勝ならあれだけ何も用意していないのも頷ける。

 彼らにとってダンジョンは、俺にとっての訓練所のようなものなのだろう。

 

 命の危険がない場所なんだ。

 

 

 

 

 私の出番がないままにオークを撃退した私たちは、11階層の奥へと進んでいた。

 

 私は隣で歩く新人のセカイを見る。

 

 セカイは周囲を見渡し警戒しているようだった。

 そして時折、紙を取り出し地図を作成していた。

 

 真面目な子だ。

 

 幼馴染の二人は大雑把な性格なので地図を取ろうなんて思いもしなかった。

 最初の方は誰も道を覚えてなくて迷ったりしたな。

 

 あれがあって帰還用の魔石は高くても買うようにしたんだっけ。

 

 5カ月くらい前のことだけど、遠い昔のように私は思い出していた。

 

 すると、彼が紙をポーチに入れ槍を両手で持ち直した。

 

「魔獣が出たぞ。依頼のやつだ」

 

 シルドアウトが魔獣を知らせる。

 私も杖を構えて戦闘の体勢を取る。

 

 依頼の魔獣ということは初めて戦う魔獣だ。

 

 魔獣の数は4体。黒色の狼のような魔獣だった。

 

 4体の魔獣は私たちに向かって走ってくる。

 8階層にいた狼のやつより速い!

 

 しかし、あの程度の速さならウルフとシルドアウトの敵じゃないだろう。

 

 そう思っていたが、魔獣は彼等二人の横を通り過ぎた。

 

「なにっ!」

「しまった!」

 

 予想外の出来事だ。

 今までこんなことはなかった。

 

 私は杖で殴れるようにしながら詠唱を開始する。

 使うのはいつもの火の魔法だ。

 

 しかしここでさらに想定外のことが起こる。

 

 魔獣達全員がセカイに向かって走っていた。

 セカイはEE級冒険者だ。4匹全員に対処できるとは思えない。

 

 私は急いで詠唱を完成させる。

 

「【火よ、槍の形を成し敵を貫け。火槍(ファイアランス)】」

 

 槍状の火が一匹の魔獣を貫いた。

 

 リーダーのウルフも急いで追いかけ、一匹に蹴りを入れ吹き飛ばす。

 

 私はセカイの方を見る。

 

 セカイは狼に向かって槍を突き刺す。

 胸に刺さり一匹は倒すことができた。

 

 しかし、このままではもう一匹の攻撃は対処ができない。

 

 EE級の彼は体が弱い。

 大けがを負う可能性がある。

 

 先輩としてそんな目に合わせるわけにはいかない。

 

 私は杖を狼に向かって放り投げる。

 

 当たったところで死にはしないが、よろけさせることくらいはできるはずだ。

 

 しかし、私の杖は空を切り魔獣に当たることはなかった。

 

 最悪だ。

 

 魔獣の牙や爪が無慈悲にも彼の体を切り裂く――ことはなかった。

 

 

 ガキンという音と共に魔獣ははじかれのけぞった。

 

 

 魔獣は追いついたウルフによって蹴り上げられ、そのまま殴られ壁に叩きつけられる。

 起き上がってこないため死んだみたいだ。

 

「セカイ!怪我は無いか!」

「……うん。大丈夫」

「よかった~」

 

 ウルフは彼の体を触って確認する。

 どこも痛がっておらず怪我もなさそうだったため安堵しその場に座り込んだ。

 

 吹き飛ばされた魔獣にとどめをさしていたシルドアウトが駆け寄ってくる。

 

「何かにはじかれたみたいだったが、フレデリカの魔法が間に合ったのか?」

「……ううん。私じゃない」

 

「セカイ、もしかして魔法が使えるのか?

 それともそのローブの効果とか?」

 

「ローブは違うよ。あれは私の家で売ってたやつだけど、そんな魔法は付与されていなかった」

「俺も魔法は使ってないよ。使い方も知らない」

 

 私は見ていた。

 

 槍は刺さったままで、彼が攻撃を防ぐ手段は何もなかったはずだ。

 しかし、魔獣の攻撃が当たる直前、何かが空中に出現して彼を守ったのだ。

 

 疑問に思っていると私は彼の周りで何かが落ちているのを発見する。

 

 私はそれを拾い上げた。

 

「氷?」

 

 

 

 

 11階層を潜り始めて1週間、セカイがパーティメンバーになり2週間がたった。

 

 俺達はセカイに呼ばれ冒険者ギルドの休憩スペースに集まっていた。

 

 俺が来た時にはウルフとフレデリカはすでに集まっていた。

 セカイはまだみたいだ。珍しい。

 

 俺は彼らの対面に座った。

 

「お、シルドアウトも着いたか」

「セカイはまだか。珍しいな」

「ねー。それにしてもセカイも言うようになったよね。先輩冒険者を休日に呼び寄せるなんてさ」

「確かにな!誘われた時すごく気を使ってたけどな!」

 

 二人がセカイの話で盛り上がる。

 

 2週間もたてば彼の人となりは分かってきた。

 彼は真面目で臆病、EE級のため体もまだ弱い。

 しかし、槍捌きや咄嗟の判断力と行動力は目を見張るところがある。

 

 良い冒険者になるだろう。

 

「待たせてごめん」

 

 するとセカイが来て俺の隣に座った。

 

 セカイの背には見慣れない大盾があった。

 

「セカイ、その盾どうしたんだ?」

 

「これは後で説明するよ。今日呼んだのはニューソードの皆に提案があるからなんだ」

 

「提案?」

 

「うん。今俺はニューソードに所属しているけどあくまで仮のメンバー。

 それに新人冒険者だから提案なんてする立場じゃないのは分かってる。

 

 でも、今の現状に俺は納得していないんだ。

 皆に迷惑をかけている今の現状に。だから、俺なりにこのパーティが良くなる方法を考えてみた。

 

 できれば最後まで聞いてほしいし、何か意見があるならどんどん言ってほしい。

 それに、これはあくまで提案で最終的な決断は皆に任せるつもりだ。

 そしてその決断に文句は言うつもりはないよ」

 

 ウルフとフレデリカは大きく頷く。

 セカイが俺の方を見た。俺も小さくうなずいた。

 

「ありがとう。まず今の現状を説明するね。

 

 今、俺達は11階層からなかなか進めないでいる。

 それは俺が原因だ。正確に言うなら俺の魔獣を引き付ける体質(・・・・・・・・・・)が原因」

 

 俺は初めて11階層の魔獣と戦った時のことを思い出す。

 

 魔獣が俺とウルフの横を通り過ぎ、全員がセカイに襲い掛かった。

 俺達を通り過ぎ後方を狙うなんてことは今までになかった。

 

 その後も、11階層で黒狼の魔獣に出会うと、一目散にセカイを狙っていた。

 

 最初はこの魔獣が特別でセカイを狙っていたと思っていたが違った。

 

 セカイが特別だった。

 

 依頼完了後、1階層の弱い魔獣でとある検証をした。

 

 前方に俺と、ウルフ。後方にフレデリカとセカイの並びになりゴブリンと戦う。

 しかし、俺達からは何もしない。

 

 この状態でゴブリンは誰を狙うかという検証だ。

 

 ゴブリンは俺達を見つけると走ってきた。

 そして俺とウルフを通り過ぎセカイに襲い掛かった。

 

 俺達はできうる限り全ての魔獣で検証したが、結果は同じだった。

 

 このことからセカイは魔獣を引き付ける体質であると結論付けたのだ。

 

「なんでこんな体質なのかは分からない。

 だけど、そのせいで魔獣が想定外の動きをして上手く戦えないでいるのが現状だ。

 

 そしてもう一つ。俺を守る謎の力だ。

 

 俺が攻撃され当たりそうになると、氷の結界が発動して守ってくれる。

 これは氷の魔法なんだよね?」

 

 フレデリカが答える。

 

「うん。正確には水の魔法で【氷盾(アイスシールド)】に近いね。

 でも、こんなピンポイントに【氷盾(アイスシールド)】を発生させるのは相当な高等技術だよ」

 

「もちろん、俺はそんな高等技術はできない。

 どころか、魔法すら使うことができない。見たことある魔法はフレデリカ以外だったら、小さな火をだす生活魔法くらいだ」

 

 嘘をついているように見えない。

 実際嘘ではないのだろう。

 

 魔法を杖なしの無詠唱で発生させることは非常に難しいはずだ。

 さらにそんな高等技術を彼ができるとは思えない。

 

「ただ一つ言えるのは、この【氷盾(アイスシールド)】は、攻撃が受けそうになったら発動し、今の所360度いかなる攻撃も防いでいることだ」

 

 この検証をする時、彼の正気を疑った。

 

 複数のゴブリンにわざと殴られると言ったのだ。

 

 どれだけゴブリンが弱くても彼はEE級だ。もし【氷盾(アイスシールド)】が発生しなければ怪我をするだろう。

 

 しかし、彼はそれを覚悟で検証をした。

 

 臆病なのか度胸があるのか、分からない奴だった。

 

「この二つの原因は全く分からない。資料室の本も全て読んで調べたけどそれらしいことはかかれていなかった。

 

 けど、この体質と不思議な力を持っていることを前提としてある提案を皆にしたいと思う」

 

 ようやくセカイは本題を切り出した。

 

 

「俺はタンクになりたい」

 

 




【各キャラクターのセカイに対する一言反応集】

衛兵長「真面目で素直な可愛いやつ。もし息子が生きてたらこんな感じだったのかな……」

姉弟子「手間がかかる弟弟子。でも良い子」

風の精霊「大丈夫かな……もうすぐ説得できそうだから待っててね!」

水の精霊「魔獣からは私が守る!」

癒しの精霊「寝ている間に体を癒してあげるのが最近の生きがい」

歌の精霊「彼の物語を歌にすれば、私は精霊界のアイドルになれるのでは?」

純血エルフ「そんなに言うなら……一目くらい見てあげようかしら」

リーダー「賢い!最近仲良くなってきて嬉しい」

先輩冒険者剣士「おもしれー新人」

先輩冒険者女子「魔獣から狙われて謎の力で守られている……いったい何者?」

ギルドマスター「……」(暗黒微笑)

暴力とそこそこの権力を兼ね備えた倫理観がバグっている恋愛経験なしアラフォーハーフエルフ受付嬢「すき」

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