強者に好かれ弱者に嫌われるスキルをもって転生した少年   作:三つ眼の荒木

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難産な回でした。
頭の中に構成はあるのに言語化が難しかったです。
すこし言い回しなどが不自然なところがあるかもしれません。

また、ダンジョン探索は結構設定を決めて途中までしっかり書いていたのですが
だれるのですべてカットすることにしました。
そのため逆に話のテンポが少し早いかもしれません。


#10 強敵の邂逅

 

「タンクだと?」

 

 シルドアウトが聞き返す。

 

「うん。それが一番適切だと思う」

「タンクってなんだ?」

 

 ウルフはタンクについて全く知らないようだった。

 ほかのメンバーは知っていたようで、ウルフに説明する。

 

「タンクは盾役だ。敵の注意をひき盾で味方を守る役割だ」

「なるほど。セカイが急に大盾を持ってきた理由はそういうことか」

 

 ウルフが俺が持ってきた大盾に視線を移す。

 

「うん。もしタンクになったらこの盾を使おうと思ってね。実は一週間前から訓練所で練習してたんだ」

「もしかしてもう買ったの?」

 

 フレデリカが焦った声で聞いてきた。

 

「いや、流石にそんなお金はないよ。

 実は俺は衛兵長のカインさんにお世話になってて。だから頼み込んで警備隊の大盾を貸してもらった」

 

 カインさんを説得するのもなかなかに大変だった。

 体がまだ弱い俺にタンクは無理だと一蹴され、なかなかタンクになる許可が下りなかった。

 

 しかし魔獣を引き付ける体質と自動で展開される【氷盾(アイスシールド)】の話をすると、下手に今のままより守りを固めてタンクをした方が安全だという結論になり、大盾で防ぐ訓練をしてくれたのだ。

 

 そして、訓練所で使っている大盾と防具を貸してもらう約束も取り付けた。

 勿論秘密裏にだが。

 

 シルドアウトが真剣な顔で俺に質問する。

 

「セカイ、お前がタンクになりたい理由はなんだ?

 今の俺たちの戦い方が悪いと思っているのか?」

 

 俺は何と答えたらいいかわからず悩む。しかし、正直の答えることにした。

 

「答え方が難しいんだけど、今のニューソードの戦い方は悪いと思っている」

「ほう。EE級のお前がD級の俺達に文句か?」

「誤解しないでほしい。悪いのはそのEE級の俺だよ。ニューソードの皆は悪くない。

 今のニューソード、つまり俺が入った後のニューソードの戦い方が悪いと思っている」

 

 シルドアウトの機嫌が悪くなりそうだったので、すぐに言葉を訂正する。

 

「続けろ」

「俺が仮メンバーとして加入して以降、より具体的に言うなら俺が11階層で襲われて以降、皆はいつも通り戦えないでいる。

 速い魔獣が後方の俺を襲うようになって動きが予測しづらいこと、そして皆が俺を守ろうと警戒していつもの動きができていないことが原因だ。

 だから、俺がタンクとして囮になることで戦いやすくする。

 ただそれだけだよ」

 

 シルドアウトが苦虫を嚙み潰したような顔をした。

 思うところはあるのだろう。

 

「でもそれじゃ意味なくない?

 折角私たちが守ろうとしてるのにセカイが前に出て積極的に攻撃を受けちゃったら」

 

 フレデリカが異議を唱えた。

 俺は答える。

 

「大丈夫だよ。怪我をしないように訓練したし、【氷盾(アイスシールド)】だってある。

 むしろ防具を固めていない今の方が危険かもしれない。

 それに俺もEE級だけど冒険者だ。多少のけがは覚悟はしてるよ」

 

「そう言われたら言い返せないけどさー」

 

 フレデリカが黙ると沈黙が訪れる。

 破ったのはリーダーのウルフだった。

 

「セカイ、俺は難しい話は分からねぇ。

 だけどな、お前が俺たちのために沢山考えてくれていることは知っている。だからセカイの本当の気持ちを教えてくれ」

 

 ウルフは真っすぐ俺の顔を見て言った。

 俺も彼の眼を見て答える。

 

「嘘じゃない。俺は皆の迷惑になりたくないんだ」

「ああ、嘘じゃないんだろうな。でも本音でもない。

 俺はタンクって何かを聞いたときセカイらしくないなって思ったんだ。

 セカイの戦闘スタイルは回避をするか、素早く魔獣を仕留めることでけがを負わないようにするスタイルだったはずだ。

 そのタンクってやつは今までのスタイルとあまりにも変わりすぎている。

 どうしてタンクにこだわるんだ?」

 

「そっちの方が効率的だからだよ。

 俺がタンクをしなくても魔獣は俺を狙う。だったら前に出て囮になったほうが速く倒せて効率的だと思わない?」

 

「そう、それだ。なんで効率を求めるんだ?

 別にタンクをしなくても、後ろで防具を固めて自分の身を守るだけでもいいだろ。

 セカイはEE級だし誰も文句はいわねぇよ」

 

 俺は押し黙る。

 ウルフは続けて言った。

 

「でも、セカイはそうしたくないんだよな。

 俺はセカイがこうやって意見を沢山言ってくれてすごく嬉しいし、タンクになってもいいと思っている。

 だから、セカイが何を考えているか教えてほしいんだ」

 

 ウルフは真剣な目で俺を見ていた。

 もっと後で言うつもりだった。

 

 けど、彼がここまで言ってくれたんだ。

 

 俺は意を決して、俺の真意を話し始める。

 

「……俺は残り2週間でダンジョンボスを倒したいと思っている」

 

「ダ、ダンジョンボス?!」

「そんなの2週間で無理よ!」

 

 シルドアウトとフレデリカは驚くが、ウルフだけが笑みを浮かべた。

 

「いや、できる。ニューソードの実力なら苦戦をするかもしれないけど、ダンジョンボスは十分安全に討伐できると思っている。

 ダンジョンボスの情報もギルドの資料室にある魔獣辞典にのっていたよ。

 推奨ランクはDD級~DDD級の鳥型の魔獣だ。

 だけど、スピードは11階層にいるブラックウルフより遅い。

 余裕で追いつき攻撃している皆なら、攻撃を避けることは十分できると思う。

 戦い方は俺がヘイトを稼ぎフレデリカが魔法で撃ち落とせばいい。

 地上戦になったら後は楽勝だ」

 

 シルドアウトが反論する。

 

「ダンジョンボスは倒せるかもしれない。しかしそこまでの道中はどうするんだ?

 今の俺達は1週間たっても11階層の攻略ができていない状況だぞ」

「それも情報屋から地図を買い取ればもっと攻略を早めることができると思う。

 ダンジョンの21階層からの地図を買い、依頼を受けず最短ルートでダンジョン攻略をするんだ」

 

「確かにそうすれば攻略できるかもしれない。だけど依頼を受けないでダンジョン攻略を優先するメリットは何だ?」

「DD級になれる」

 

 俺は間髪入れずに答えた。

 

「DD級に?この前D級に上がったばっかりだぞ」

「うん。普通はそんなすぐにランクは上がらない。

 けどダンジョンボスを初めて撃破したとき、ランクが上がる措置があるんだ。

 それを利用する」

 

「でも確か新人冒険者育成制度中はランクが上がらないんじゃなかったっけ?」

 

 フレデリカが質問する。

 その質問も想定済みだ。

 

「うん、俺のランクはね。でもニューソードの皆は上がるはずだ」

 

 この際だ。

 思っていることは全部言おう。

 

 タンクを断られるどころか嫌われるかもしれないけど、これを伝えない限り俺の未来はない。

 

「この際だからはっきり言うよ。

 皆は情報や事前準備を軽視しすぎている。

 

 もっとダンジョンについて調べてから依頼を受けるべきだと思う。

 

 魔獣の知識やダンジョンの構造についてね。

 21階層以降からは罠が出る。地図や情報がないままで進む今のスタイルは危険だ。

 

 あと、もっと皆はポーションを常備するべきだ。

 帰還用の魔石があるから何とかなると思ってるかもしれないけど、俺達でも敵わない強い魔獣が出た時に今のポーションじゃ即座に傷が癒えないし、1本だけじゃ連戦ができなくなる」

 

「俺達でも敵わない強い魔獣がいるのか?」

 

 シルドアウトは聞き返した。

 その声には慢心というよりは焦りが含まれていた。

 

「うん。ダンジョンボスより強い魔獣の目撃情報もあった。

 オーガっていうC級相当の魔獣だ。

 

 このダンジョンは冒険者ギルドが初心者用に改造したもので、ごくまれに改造前の強い魔獣が出るらしい。

 俺は元C級冒険者の人にいつも訓練してもらっているけど、C級と皆では流石に実力差が大きい。勝つことは難しいと思う」

 

「そうか……」

 

 シルドアウトは再び黙った。

 

「今までのニューソードの冒険スタイルを否定しているわけじゃない。

 実際、皆は強くてすぐにD級になったんだと思う。

 

 だけど、このままDD級を目指すのはすごくもったいない。

 

 皆の強さならもっと速くもっと上を目指せるはずなんだ。

 S級になるんならこんなところで燻っていられないはずだ」

 

 再び沈黙が訪れる。

 

 言い過ぎた。たかがEE級の俺が行っても説得力がないだろう。けど、俺がこのパーティでやっていくためにはいつかは言わないといけないことだった。

 

 謝ろうと思った時ウルフが口を開いた。

 

「セカイ、ありがとな」

 

「え?」

 

「俺達のことをそこまで考えてくれてるとは思ってなかった。

 お前は本気で俺達に向き合ってくれている。

 だけど、ならお前のメリットは何なんだ?

 セカイの言う通りにすれば俺達はDD級に上がるかもしれない。

 でもセカイは上がらないんだろ」

 

 俺は正直に言った。

 

「俺は……ニューソードの、皆の仲間になりたいんだ」

 

 カインさんの言葉を思い出す。

 信頼できる仲間を見つけるために俺は冒険者になった。

 

「でもEE級の俺を仲間にするメリットがない。

 だから皆の手助けをしてDD級に昇格することで、俺の有用性を示したいと思ったんだ」

 

 彼らこそ信頼できる仲間だ。

 だけど、俺が信頼できるだけじゃだめだ。

 俺自身も信頼されないといけない。

 

「そのためには今のままじゃダメなんだ。

 皆に守られている限り俺は絶対に仮メンバーの新人だ。俺はそれが嫌だ。

 俺は皆と対等になりたいんだ」

 

 俺は彼等と冒険したい。

 

「だから俺はタンクになりたい。タンクになって皆を守りたい」

 

 俺は心の中で思っていたことを全て彼らに話した。

 

「もしかしたら、もう皆の返答は決まっているのかもしれない。

 でも新人冒険者育成制度の期間が終わるまで待ってほしい。

 俺は結果を示したい」

 

 ウルフは笑顔でうなずいた。

 俺も少し笑い言葉を続ける。

 

「それにもう一つ理由がある

 リーダー、誕生日はいつ?」

「え?確かあとだいたい3週間後だな」

 

「うん。つまり今はまだ15歳なんだよね。

 そして、このダンジョンボスを倒した冒険者の最年少年齢記録が16歳なんだ。

 外から来たB級冒険者パーティが一日で攻略したらしい。

 また更新したくない?最年少記録」

 

 

☆

 

 

「ウルフ!シャークロウタイガー3体だ」

「ああ。セカイ、頼んだぞ」

「うん!」

 

 奥から虎型の魔獣が3体走ってくる。

 セカイが大盾を構え、私たちの前に立った。

 

 私はその間に魔法の詠唱を開始する。

 

「【魔力よ、彼の者を包み衝撃から防げ。下位物理防御上昇(レッサープロテクションアップ)】」

 

 私はセカイに防御力が上昇する魔法をかける。

 セカイは3体の魔獣に盾でぶつかった。

 

 盾を地面に深くさしよろけそうになりながらもなんとか堪える。

 

「セカイ、ナイス!」

「もう少し堪えろよ!」

 

 その隙に横からウルフとシルドアウトが魔獣に攻撃をする。

 魔獣はあっさりと討伐できた。

 

 セカイが私たちを説得してから5日がたった。

 

 あの後満場一致でセカイがタンクになることを受け入れ、私たちの戦闘スタイルを見直すことにした。

 といっても単純だ。

 

 セカイが引きつけ、ウルフとシルドアウトが横から攻撃する。

 私は状況に応じて、セカイに補助魔法をかけるか魔獣に攻撃魔法を放つ。

 

 たったこれだけだ。

 

 しかし圧倒的に戦いやすく戦闘時間も短くなった。

 

「リーダー、ナイス!」

「セカイも良かったぞ!」

 

 セカイはリーダーとハイタッチをした。

 

 シルドアウトも後ろで手を上げ準備をしていたが、気づかれず歩き始める。

 機会を逃したシルドアウトは不自然に上がった手をすぐに下ろす。

 

 私はその様子がおかしくて後ろから笑っていると、彼が気づいたようで睨んできた。

 私は口元を手でおさえる。

 

 あの説得以降リーダーとセカイの仲はさらに良くなった。

 シルドアウトも彼の実力を認め、褒めることが多くなった。

 

 それもそうだろう。

 今の階層は29階層。21階層から攻略を始めたため9階層も進んでいる。

 

 5日で9階層。あり得ない速さだ。

 

 勿論依頼を受けず攻略に集中しているからだけど、これだけの速さで攻略できるのはセカイの情報収集能力あってのものだと思う。

 

 セカイは資料室にある本の内容を全て覚えているだけでなく、受付嬢に紹介してもらったという情報屋から必要な情報を買っているらしい。

 

 そのため罠にかかることもなく順調にダンジョン攻略が進んでいた。

 

「うわぁ!」

「リーダー!だからそこに罠があるから気を付けてって言ったよね!」

 

 前言撤回、罠にかかるのはウルフの馬鹿だけだ。

 

 ウルフは落とし穴のスイッチを押してしまったらしい。

 私は突如現れた人一人分の大きさの穴の中を見ると、ウルフが両壁に手と足をつき体を支えていた。

 底には鋭い槍のようなものが刺さっていたため、あと1m落ちていたら串刺しだっただろう。……まぁウルフにただの槍が刺さるとは思えないけど。

 

 ウルフは底の方を見て上がろうとしない。

 私はウルフに向かって叫んだ。

 

「早く上がってきなさい!ロープ無くても上がれるでしょ!」

 

「ちょっと待ってくれ、落とし穴の底に道がある?」

「道?」

 

 ウルフは槍に当たらないよう器用に落下した。

 そして見えなくなる。

 

「隠し道だ!お宝があるかも!」

「分かった!先に行かないでそこで待ってて!」

 

 セカイがウルフに待機するよう窘める。

 シルドアウトがセカイに話しかける。

 

「どうする。俺が行こうか」

「いや、その間に魔獣が出たら俺とフレデリカじゃ対処が難しい。

 俺が行くよ」

 

 セカイはロープを壁の出っ張りに結び落とし穴を降りていく。

 そして、少し時間がたつと下りてくるよう下から聞こえてきた。

 

 私たちも慎重に落とし穴を降りると、確かに底に横道がのびていた。

 

「これは……」

「隠し道だ!宝箱とかがあるかも!」

 

 リーダーは行く気満々みたいだ。

 私はセカイを見る。

 

 ダンジョン攻略を提案したのはセカイだ。それに一番ダンジョンに詳しいのも。

 セカイは考えている様子だった。

 

「セカイー。行こうぜ!絶対お宝だよ」

「行ってもいいんじゃないか?今の所攻略も順調なんだろ」

 

「そうだね……フレデリカはどう思う?」

 

「うーん、別にいんじゃない。最悪、魔石で帰れるし」

 

 セカイは皆の意見を聞くと目をつぶって悩む。

 

「よし、行こう!ただし危険だと判断したらすぐに魔石で帰還しよう」

 

 無難な選択だった。

 

「よっしゃー!」

 

 私たちは慎重に道の先を進む。

 道は決して広くなく人一人しか通れない。

 

 魔獣が襲ってきたらいつも通り戦えない為、いつも以上に気配を探りながら進んでいった。

 道の先にあった階段を降りるとすこし広い空間にたどり着く。

 

 その空間には大きな石の扉があるだけだ。

 

「ボス部屋だ」

 

 セカイがつぶやく。

 シルドアウトがセカイに聞く。

 

「どうする、帰るか」

「正直帰りたいね。でも……」

 

 私たちはウルフの方を見る。

 ウルフは目を輝かせて準備運動を始めていた。

 

「まぁ、一目見るくらいはいいんじゃないかな。

 正直このことはギルドに報告するべきだし、この隠しボス部屋に何がいるかも重要な情報だろう。

 ただし、俺の知らない魔獣が出た場合はすぐに魔石で帰還しよう」

 

 セカイの提案に皆が頷く。

 私たちは持ち物のチェックをした後、武器を構える。

 ウルフが扉に手をかけ開いた。

 

 扉を開けると何もない空間が広がっていた。

 縦横100m、天井までも10mほどある。

 

 そして中心には一体の魔獣が背を向け座っていた。

 

 私たちは警戒しながら部屋の中に入る。

 

 すると扉が自動的にしまった。

 セカイが警戒しながら扉を開けようとしたがびくともしなかった。

 

「開かない。やっぱりボス部屋の構造に近い」

「つまりあいつを倒せってことだな」

 

 魔獣が立ち上がり振り返る。

 

 3m以上の巨体。筋骨隆々とした体に赤みがかった肌。

 人と同じ体の構造だが、唯一違うのは頭に生えている2本の角だ。

 顔はおそろしくおぞましいものだった。

 私はその特徴に覚えがあった。

 

 セカイの説得の後、自分で調べた時に見たものと同じだ。

 私たちがまだ敵わない魔獣。

 

「オーガだ……」

 

 シルドアウトがつぶやいた。

 皆が呆気に取られているとセカイが肩を軽くたたき指示を出した。

 

「引こう。オーガは戦うにしても万全の態勢で臨むべきだ」

 

「分かった」

「了解」

「私も賛成」

 

 私たちはオーガから即座に距離を取り帰還用の魔石を取り出す。

 

「【転移(テレポート)、1階層】」

 

 しかし、何も反応しない。

 景色が変わることもなかった。

 

「転移できない!」

「俺もだ!」

 

 皆がパニックになる。

 その間にもオーガは私たちに近づいてきていた。

 

「みんな、落ち着いて!ひとまず回避に専念しよう」

 

 幸いなことにオーガの動きは遅かった。

 見て避けることも可能だし、まず動きを予測して距離を取れば近寄ることもない。

 

「みんな、持ってる帰還用の転移魔石を全部試してみて!誰か転移できそうな人はいる?」

 

 私は念のため持っていたもう一つの帰還用の魔石を試す。

 しかし、魔力の動きすら見えない。

 

「俺のは無理だった」

「俺も全滅だ」

「私も駄目……」

 

 セカイは苦い顔をする。

 

「俺も駄目だった……もしかしたらこの部屋は転移魔石が使えないのかもしれない」

「今までそんなことなかったぞ」

 

「うん、非常事態だ。ボス部屋も基本的に転移魔石を使えるはずだった。

 だけど、ここは隠されたボス部屋だ。

 何があっても不思議じゃない」

 

「セカイ、つまり俺達には一つしか道はないってことか?」

「リーダーの言うとおりだよ。倒すしかない、オーガを」

 

 ウルフは手で拳を叩く。

 

「分かりやすくていいな!セカイ、何か作戦はあるか?」

「ない。オーガと戦うつもりはなかった。

 けど、とりあえずオーガの強さを確認する必要がある」

 

「了解。いつも通りいくぞ!」

 

 ウルフは笑っていた。

 私も心を落ち着かせて覚悟を決める。

 

「うん!」

「了解!」

「オッケー!」

 

 セカイが前に出て大盾を構える。

 

 オーガはセカイに目掛けて拳を振るった。

 

 オーガの拳がセカイに当たる瞬間、彼の周りに【氷盾(アイスシールド)】が自動展開される。

 しかし、オーガの拳は止まらなかった。

 

 何かが割れるような音と共に轟音があたりに響く。

 

 セカイが宙に吹っ飛ばされた。

 

 一度も魔獣の攻撃を通さなかった【氷盾(アイスシールド)】が突破された。

 

「「セカイ!」」

 

 私とシルドアウトが彼の名前を叫ぶ。

 セカイは頭を抱えて落下した。

 すぐに起き上がり叫ぶ。

 

「俺は大丈夫!それよりもリーダーを!」

 

 私はオーガの方を見直すとウルフがオーガの懐へと潜り込んでいた。

 一瞬にして腹部に拳を3発叩き込む。

 

 オーガは効いた様子がなく、ウルフに向かってフックをするが彼はその場で回転しギリギリで避けた。

 そしてその勢いで跳び、再び腹部に後ろ蹴りをくらわした。

 

 回転後方蹴撃。

 

 いつもの彼ならそう叫んだだろう攻撃だ。

 

 オークの顔を吹き飛ばすほどの威力を持つ攻撃。

 

 オーガはよろける。

 しかし倒れることはなく即座に反撃した。

 

 ウルフは避けると同時に後ろへ跳びオーガから距離を取る。

 

「やばい、全然効いてない」

 

 ウルフが焦った声で言った。

 




【感想欄で答えた本文で書ききれなかった設定など】

後書きで書くことがネタ切れになったため感想欄で答えた本文で書ききれなかった設定などをまとめました。
疑問に思ったことを感想に書いていただけると、ネタバレにならない範囲で答えています。
物語でもあまり重要な情報でなく量が多いため読みとばして頂いても構いません。


感想:

てかゲームみたいにレベル99がMAXじゃなかったんだ。衛兵長レベル99だから人によってステ差が出る方だと思ったわ

回答:

感想ありがとうございます。

ステータスはレベルにのみ上限があり999レベルが最大となっています。

しかし、レベルアップしにくい『壁』が別に存在します。
特に99から100レベルは非常にレベルアップしにくく、多くの冒険者がここで躓きます。

壁を突破する方法は人によりますが、強敵と戦う、神秘的な体験をする、死から蘇るなど様々な方法があります。

また、ステータス差も別にあります。
種族的に優れている場合、1レベルでもステータスが高いこともありますし
ヒューマンでも鍛錬の方法や育った環境によって成長度合いは変わっていきます。


感想:

勝手にビルキさんを男だと思っていた... 既に認識阻害を掛けられていたのか!?

回答:

感想ありがとうございます。

認識阻害に引っかかってもらい嬉しいです。

ビルキさんは残念ながらヒロインではない為、
過度な期待を持たれないよう名前は武骨な感じで意図的に描写も少なめにしていました。

因みに基本無表情ですが一応ほんの少しだけ顔は動いており
上司兼師匠のカインさんだけが表情の変化に気づいています。


感想:

A級連中は基本ヤベー奴なのは間違いないらしいし、ギルマスはその上さらに性格が悪いって事は書いてあるし、
当人的には幼馴染に対する純然なアドバイスのつもりで、興味が有るからその上で詳細な情報得られれば直良しって感じなのかな。
そんな作戦にドン引きしながらも自身の為に受け入れる辺りがマイさんもA級だなぁ…って感じ

回答:

感想ありがとうございます。

受付嬢マイの少しずれている感じを読み取ってもらい嬉しいです。

因みにギルマスのガイルと受付嬢マイは同門です。
子供の頃はライバルでしたが、ガイルが付与術師の道を進むと決めた時にマイからパーティに誘いました。
また、ガイルは数少ないマイのクソ親父を知っている人物の一人です。


感想:

モンスターは理性がない分、嫌悪感からダイレクトに殺意ぶつけてくる訳か。
種族的に生まれながらの強者っぽい竜に見つかると、問答無用でお持ち帰りされそうだなぁ。
竜って財宝を貯め込む性質がありますし、お寿司。

回答:

感想ありがとうございます。

お宝を溜め込むのは竜あるあるですよね。
果たして、彼らはセカイ君がどのように見えるのでしょうか。楽しみで仕方ありません。まぁ、でもお宝は綺麗に磨いて監禁ーーじゃなくて保管しておかないといけないと作者は思いました。

なお竜は魔獣ではなく魔族という設定です。魔獣の認定は国ごとに違いますが、人と意思疎通が可能かは一つの基準になっています。例えば、ゴブリンは言語を話す事自体が難しく人を襲ってくるため魔獣です。上位種のゴブリンキングは言語を話す能力はあるが、人と意思疎通が不可能なため魔獣に認定されています。知性はあるが意思疎通できない魔獣は強いことが多いです。


感想:

呪いという弱みを逆に強みに変えるか
オート防御は精霊のおかげかな?

回答:

感想ありがとうございます。

オート防御は水の精霊のおかげですね。

実は精霊ごとに得意分野があり、水の精霊は防御、癒しの精霊は回復が得意です。

第二話で風の精霊が水と癒しの二人を残らせたのは、二人が守る事に特化していたからでした。また、二人は受付嬢が何か良くないことを考えている事に勘付いていますが、攻撃が得意ではないため制裁はできていない状況です。


感想:

やっぱりさ、、、ハーメルンには自分と似た複雑な性癖を持つ方っているものですね

回答:

感想ありがとうございます。
同士の方でしょうか。

ハーメルンいいですよね。ニッチな作品が多くて痒いところに手が届きます。
しかし痒みが治るわけではありません。
疼く痒みを抑えるため行き着く先は自給自足です。

私の場合はヤンデレも好きなんですが、思春期の男の子が女性に責められるのが好きで本作を書き始めました。
思春期の男の子ってのが少ないんですよね。

理性的でありたいが感情が制御できない。
性欲はあるけれど性に詳しくはない。
大人ぶるが人生経験が乏しく騙されやすい。

色んな矛盾を抱えた年頃に付け入るよう激重感情持ちお姉さんが関わっていく話が本作となっております。

本作の概要を説明させていただきました。
決して私の性癖暴露ではございません。
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