強者に好かれ弱者に嫌われるスキルをもって転生した少年   作:三つ眼の荒木

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ダンジョン探索は今回で終了です。


#11 仲間の証

 

 オーガが左手を振り上げる。

 俺は大盾を右に構えた。

 

 オーガの拳が盾に上がる瞬間、再び【氷盾(アイスシールド)】が展開するが突破され、オーガの拳と盾がぶつかった。

 俺は設置している地面を起点にし衝撃を受け流そうとする。しかし、完全にいなしきれず体が盾に引っ張られ体勢を崩した。

 

 オーガが追撃を行う直前、フレデリカの詠唱が間に合った。

 

「【魔力よ、彼の者を包み力を増せ。下位物理攻撃上昇(レッサーストレングスアップ)】」

 

 フレデリカがシルドアウトを魔法の力で強化する。

 

「うおおおおお!」

 

 シルドアウトは気の斬撃をオーガに向けとばす。

 

 オーガは直撃し、体に大きな傷が入る。同時に血が流れるがすぐに止まった。

 傷口からは湯気が立ち徐々に傷が塞がっていく。

 

「ちっ!これも効かないのかよ」

 

 シルドアウトが舌打ちをした。

 オーガは雄たけびをあげ、シルドアウトに視線を移す。

 

 俺は体勢を整えナイフを抜いた。

 そして、オーガの足元を斬りつける。

 

 皮一枚程度しか切れないが、オーガの注意を引き付けることはできた。

 

 オーガが再び俺を攻撃しようとした瞬間、横からウルフが飛び蹴りをくらわした。

 オーガは咄嗟に腕でガードする。

 

 俺とウルフはその瞬間にオーガから距離を取った。

 

「セカイ、オーガについて何かわかったか?」

 

「【氷盾(アイスシールド)】が突破される程の高い攻撃力。

 魔法で威力が増したシルドアウトの攻撃も致命傷にならない高い防御力。

 そして軽傷程度ならすぐに治ってしまう治癒力。

 

 ここら辺は魔獣辞典で書いてあった通りだ。

 

 それに加えて、火の魔法に対する耐性が高い。

 他の魔獣に比べ俺へのヘイトが向きにくい。

 

 ってことくらいかな」

 

 なかなか絶望的だ。

 勝てるビジョンが見えない。

 

「リーダー。オーガの治癒が追い付かないほどの破壊力を持つ必殺技とかあったりしない?」

 

「……ある」

 

「あるの?!」

 

「ああ。だけど、あの技は不完全で2秒完全にその場で立ち止まる必要がある。

 それに頭に当たらない限り殺せる自信はない」

 

「頭か……」

 

 問題はオーガが3mを超える巨体だということだ。

 頭に当てること自体が難しい。そんな中でオーガの前で2秒間も立ち止まる必要がある。

 

 オーガの攻撃は規格外だ。

 

 破られることがなかった【氷盾(アイスシールド)】が打ち破られた。

 D級の彼等でも食らったらとんでもないだろう。

 

「オーガの攻撃を食らいながらでも当てる覚悟はある。

 だけど、肝心な頭に当てる方法がない」

 

「要はオーガの頭を下げればいいんだよね」

 

「ああ。そうだけどそんな方法があるのか」

 

「……ある。博打みたいな方法だけどね」

 

 俺はある作戦を思いついた。

 

 すぐにシルドアウトとフレデリカを呼び、オーガからさらに距離を取った。

 俺はその作戦を説明する。

 

「おい!正気か?」

「危険すぎるわ!」

 

 シルドアウトとフレデリカはすぐに反対した。

 

「だけど、もうこれくらいしか希望は残っていない」

「だけど、あまりにも危険すぎる。本当に冗談でもなく死ぬぞ。

 せめて、セカイの役割は俺がする」

 

「そうなると、俺はオーガを攻撃する手段がない。

 別に死ぬ気はないよ。ただ適任なのが俺だっただけだ」

 

「でも、死ぬかもしれないのよ!ウルフも反対よね!」

 

 フレデリカはウルフに同意を求める。

 しかし、ウルフの答えは彼女と違っていた。

 

「何もしなかったら俺達全員が死ぬことになる。

 ただセカイ、できるんだな?」

「うん!俺はタンクを全うする。当然死ぬ気もない」

 

「分かった。俺はその言葉を信じる。 

 シルドアウト、フレデリカ。セカイが覚悟を決めたんだ。

 お前らも覚悟を決めろ」

 

「でも……」

「死なせたくなかったら俺達がオーガを殺しきるんだ」

「……分かった」

 

 3人とも覚悟を決め作戦通りの配置につく。

 

 シルドアウトとフレデリカはそれぞれ、オーガの左右から5m離れた地点に。

 ウルフはオーガと俺達を円で囲むように走る。

 

 俺はオーガの正面に立ち近づいていった。

 

 そしてオーガの目の前で盾を構えて寝そべった(・・・・・)

 

 オーガは右足を上げて踏み潰そうとする。

 

 そうだよな。

 寝そべった相手に攻撃することは中々ない。

 だから、攻撃も読みやすい。

 

 一番しやすい攻撃が蹴りや踏み潰しだ。

 つまり、その間片足で立つ必要がある。

 

 そこを2人がつく。

 

「【炎よ、槍の形を成し敵を燃やし貫け。火炎槍(フレイムランス)】」

「はっ!」

 

 フレデリカは魔法、シルドアウトが気の斬撃を、オーガの蹴り上げた方ではなく支えてる方の足に目掛けて放つ。

 

 オーガは思わぬ攻撃によろめき尻もちをついた。

 

「リーダー!」

 

「おう!」

 

 尻もちをつくということは、頭がウルフの手の届く範囲にまで下がるということだ。

 

 ウルフがすぐさまオーガに後方に立ち、掌底を後頭部に突き出した。

 2秒間の静寂。しかし、見えないだけで竜巻のように彼の周りで気が流れる。

 

「発勁」

 

 次の瞬間、ウルフが立つ地面に亀裂が走る。

 オーガが後ろを振り返りウルフの存在に気が付いた。

 

 肉が抉れる音が辺りに響く。

 

 オーガの顔の左半分が抉れていた。

 しかし、脳まで達しておらず致命傷には至らなかった。

 

「ちっ!うおおおおおお!」

 

 ウルフは膝でオーガの顔をかちあげ、5発拳を顔面に叩き込んだ後、後ろに跳び距離を取った。

 

「ウガアアアアア!!!!!」

 

 オーガが顔を抑え立ち上がりながら叫ぶ。

 

 俺も立ち上がりオーガから距離を取る。

 そしてウルフの元へと近寄った。

 

「どうだった?」

「避けられた。けどかすっただけであの威力だ!

 当てたら絶対に殺れる」

 

 オーガの顔の左半分は肉が抉れ骨が見えていた。左の眼球もつぶれている。

 

「了解。じゃあもう一度だ」

「……今度こそ俺が絶対に殺しきる。だから死ぬなよ」

 

 ウルフが再び大きく回るように部屋の中を走る。

 

 俺はフレデリカとシルドアウトと目を合わせ頷くと、ウルフを目で追うオーガに向かって走る。

 ナイフでオーガの足に傷をつけ注意を惹く。

 

 そして再び寝そべった。

 

 オーガは俺に気が付くと雄たけびを上げる。

 

 先ほどと比べ明らかに機嫌が悪い。

 

 するとオーガは蹴りを入れるのではなく、俺の前で膝をつきマウントポジションに着いた。

 そうだよな。蹴りはさっきみたいに転ばされる。

 

 なら、最初から膝をつき安定した体勢で殴りたいはず。

 

 これも勿論想定済みだ。

 

 

 後は、このオーガの攻撃を耐えるだけ。

 

 

 オーガの左拳が俺に目掛けて振り下ろされる。

 俺は盾でそれを防ごうとした。

 

 当然のごとく【氷盾(アイスシールド)】が突破される。

 

 拳が当たる直前俺は歯を食いしばった。

 

 衝撃が盾を通して俺に伝わる。

 腕が折れ、挟んであったポーションが割れ、腕が治り、また腕が折れた。

 地面に寝そべっているため、衝撃を受け流すこともできない。

 

 肋骨も何本か折れ、内臓が傷ついたのか俺は口から大量に血を吐く。

 

 朦朧とした意識の中見えたのは2発目を叩きこもうと右手を振り上げたオーガ。

 

 やばい、こりゃ死ぬな。

 

 そう思った瞬間、自分が吐いた血が空中で集まり球体になる。

 

 そして、オーガの右眼に向かって勢いよくとんでいった。

 

 オーガは右目を抑えのけぞる。

 

 その瞬間をニューソードの二人は見逃さなかった。

 

 フレデリカとシルドアウトが遠くからオーガに攻撃する。

 しかし、先ほどと違いフレデリカは【火矢(ファイアアロー)】を、シルドアウトは気の斬撃でも突きの斬撃を、オーガの耳に目掛けて放った。

 

 クリーンヒットし、オーガは倒れる。しかしすぐに立ち上が―――れなかった。

 

 オーガは立ち上がろうとするが、体を地面にこすりつけ動くだけで、立ち上がれる気配はない。

 

「終わりだ」

 

 ウルフの掌底がオーガの顔の目の前にセットされる。

 しかし、両目が潰れ立ち上がれないオーガは気づく様子がない。

 

「発勁!!!」

 

 気の奔流がオーガの頭に叩きつけられる。

 オーガは顔面が抉れ地面に倒れる。

 ピクリとも動かない。

 

 眼、耳、鼻、口、全てから血を流して絶命していた。

 

「セカイ!」

 

 俺はウルフからポーションを飲まされる。

 念のために買っていた高いポーションで、すぐに内臓が治癒されていく。

 

 俺は再度血を吐くと何とか体を起こした。

 

 腕も胸も痛い。

 けど、アドレナリンが出ているのか意識ははっきりしていた。

 

「な、ないす、りーだー」

 

「セカイ、大丈夫か?!」

「ひとまず生きてるよ。両腕が2回も折れたけど」

「良かった~」

「よくはねーよ」

 

 ウルフは泣きそうな顔だった。

 

 遠くにいた残りのメンバーが走ってくる。

 

「セカイ大丈夫?」

「大丈夫か!」

 

「うん、とりあえずはね。二人共よかったよ。耳に直撃だった」

 

 もしオーガがマウントポジションを取り俺を殴ってきたら頭が下がる。

 その時は、二人には耳を狙うように指示していた。

 

 正確には耳の奥。三半規管だ。

 

 もし、俺が気絶してタンクができなくても倒せるようにするためだった。

 

 といってもそんな奥まで攻撃が当たる保証もないし、オーガの生態が人間と同じとも限らない。

 完全な博打だったが、上手くいったようだった。

 

「セカイ、魔石が使えるようになっている」

「早く帰って医者にみてもらうぞ」

 

 ボスを倒すと魔石が使えるようになっていた。

 

「うん」

 

 俺は魔石を取り出す。

 

 魔石を使う直前、ボス部屋の奥を見た。

 そこには新たに扉ができていた。

 

 もう、死にかけるのは勘弁だ。

 

「「「「【転移(テレポート)、1階層】」」」」

 

 体の中に魔力がめぐる感覚と共に意識を手放した。

 

 

 

 

 目が覚める。

 知らない天井だ。

 

 俺は体を起こし周囲を確認する。

 

 ふかふかのベッドで眠っていたようだ。

 ベッドのわきには椅子と机。机の上には果物が置かれてある。

 

 明らかに病室だった。

 

 というか、異世界でもお見舞いに果物もってくるんだ……

 

 すると病室の扉が開く。

 そこにいたのは鼻歌を歌う私服姿のリアシーさんだった。

 

「あ、おはようございま―――「セカイさん!!良かったー!!」

 

 リアシーさんは泣きそうな顔で俺に抱き着いてきた。

 というか、すぐに泣き始めた。

 

「あ、あの――「心配したんですよ!オーガと戦って病院に運ばれたって聞いたときは!」

 

 リアシーさんが俺の胸に顔を押し付けてくる。

 すこし息が荒い気がする。それほど心配してくれていたのか。

 

「ごめんなさい」

「言いましたよね!無理する前に私に相談してって!」

「はい、言ってました」

「じゃあ、何で無理をしたんですか!」

 

 彼女は俺の胸で泣きながら説教してきた。

 まるで拗ねた子供のようだった。

 

「……ごめんなさい」

 

 俺は謝ることしかできなかった。

 10分ほど抱き着かれながら説教されると、ようやくリアシーさんは俺から離れる。

 

 そして、真面目な顔になると彼女は頭を下げた。

 

「この度は誠に申し訳ございませんでした」

 

 彼女は冒険者ギルドの代表者として俺に謝罪をする。

 

「今回、ニューソードの皆さんとセカイさんが迷い込んだ場所は、本来冒険者ギルドが管理しておくべき場所でした。

 あのダンジョンは新人でも安全に探索ができるよう、どこでも帰還用の魔石を使用できるよう改修したものでした。しかし、この度セカイさんが見つけたボス部屋は未発見の部屋で、改修前の仕様となっておりました。

 そのため魔石が使用できずセカイさんは怪我を負う結果となってしまいました。

 冒険者ギルドを代表し謝罪いたします。申し訳ございませんでした」

 

 なるほど。

 本来ボス部屋は帰還用の魔石を使うことができないのか。 

 それを冒険者ギルドができるようにしていたけど、俺達が見つけたのは未発見の部屋だったから帰還用の魔石が発動しなかった。

 

 その後も、リアシーさんから今後の対応について説明された。

 

 医療費は冒険者ギルドが全て出すこと。

 今回の一件は内密に処理したいため、ギルドランクが上がらないこと。

 その代わり多額の謝礼金、という名の示談金が支払われること。

 

 ギルドランクが上がらないことには思うところがあったが、そこら辺の話は全てカインさんが仕切ったらしい。

 なら俺が出る幕じゃないだろう。

 

 そして何より一番驚いたことは、あの戦いから1週間がたっていたことだ。

 

「えっ!1週間も寝てたんですか」

「はい。そのため、新人冒険者育成制度の期間は終了しました。

 現在、セカイさんはニューソードのメンバーではございません」

「そうですか……」

 

 俺は有言実行できなかったことになる。

 最大限努力してできなかったなら諦めも着く。

 

 しかし、1週間眠ったままで何もできなかったとなるとやるせなかった。

 そして、その原因も己の慢心が引き起こしたことだ。

 悔しさがこみあげてくる。

 

 必死に謝罪するリアシーさんを何とか宥め、彼女に帰ってもらった。

 

 一人になり俺はこれからのことを考えていた。

 彼らと会った時、何というべきかだ。

 

 しかし、考える間もなく病室の扉が勢い良く開かれた。

 

「セカイ!目が覚めたって本当か!」

「あ、リーダー、おはよう。シルドアウトとフレデリカもおはよう」

「おはよう――って体は大丈夫か?」

「うん。どこも痛くないよ。腕も普通に動かせるし」

「良かったー」

 

 3人とも走ってきたのか息が切れた様子だった。

 

 そして、息を整えると3人とも頭を下げる。

 

「ごめん!あの時俺がボス部屋に入ろうとしなければこんなことにはならなかった」

「セカイじゃなくて本来は俺がするべき役割だった。すまない」

「私もごめん!結局あの時私は何もできなかった」

 

 俺は慌ててフォローする。

 

「皆が謝ることなんてないよ!

 今俺は生きてるし、あの時は俺がタンクをするのがベストだったはずだ。

 それに、皆がいなかったらオーガを倒すことはできなかったしね」

 

 そして、俺も彼らに頭を下げる。

 

「俺こそごめん。

 魔石があると慢心してボス部屋に入ったのは俺の責任だと思う。

 それに結局宣言通りDD級になれなかった」

 

 俺は目を閉じて彼らの言葉を待つ。

 どんな返答も受け止める覚悟をする。

 

 しかし、帰ってきたのは意外な返事だった。

 

「セカイの責任じゃない。

 それに、まだあと俺の誕生日まで1週間あるしな」

「そうだな、俺達はオーガも倒したんだ。ダンジョンボスなんて楽勝だろう」

「むしろ今ダンジョンボス倒したら、私達だけじゃなくてセカイの冒険者ランクも上がるからラッキーじゃない?」

 

 彼らは俺を励ますだけでなく、今後の予定まで話していた。

 まるで俺がニューソードの一員かのように。

 

「それって、つまり、俺はまだこのパーティに居ていいってこと?」

「何言ってんだ、当たり前だよ。だって俺達は『仲間』だろ」

 

 ウルフが手を前に出す。

 俺は泣きそうになりながら答えた。

 

「うん!」

 

 俺はウルフの手をつかみ握手をする。

 

 異世界に来て2カ月。俺は初めての仲間ができた。

 





【ステータス変化】

名前:ウルフ
種族:ヒューマン
レベル:49→52

印象:嫉妬→友情


名前:シルドアウト
種族:ヒューマン
レベル:45→52

印象:侮蔑→友情


名前:フレデリカ
種族:ヒューマン
レベル:42→52

印象:失望→友情
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