強者に好かれ弱者に嫌われるスキルをもって転生した少年   作:三つ眼の荒木

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マイ(25歳)視点→カイン視点→マイ視点→セカイ視点

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#16 保護者達の思惑

 

 皆が酔いつぶれ賑わいがおさまってくる中、私は一人カウンターで飲む。するとガイルが隣に座り話しかけてきた。

 

「念願のA級になれたって言うのにしけた顔してんなぁ」

「ちょっと考え事してただけよ」

 

 今日は私達のパーティ『バーレスク』がA級に上がったことを祝う宴会だった。

 縁のある冒険者も呼びどんちゃん騒ぎをしたが、朝方にもなり皆は床でつぶれていた。

 

「少しもらうぞ」

 

 彼は私が飲んでいたワインをとりグラスに注ぐ。

 

「テリーとニーナは?」

「最後の樽飲みきって潰れたよ。ニーナは看病。だからこの瓶で最後だ」

「じゃあ大切に飲まないとね」

 

 私はお酒を一口飲む。

 強くなると毒に耐性を持つせいで酒にも酔いにくくなる。

 

 目がさえていた。

 

「何考えてたんだ?」

 

 ガイルはそう聞くと一口飲む。

 私は彼の目を見ずに答える。

 

「目標達成しちゃったからさ、これから何しようかなって」

「おいおい。まだまだ上はあるだろ」

「さらに上を目指すのは違うかな。それに行きたくても無理でしょ」

「まぁな」

 

 沈黙が訪れる。

 彼は私の本心に気づいている。なんとなくそう思った。

 

「本当はね。お母さんのこと考えていたの」

「マイ、母親のことは……」

「もうあれから10年よ。子供だった私も大人になった」

 

 10年間。私たちはこの話を一切しなかった。

 あの日の出来事は私たちを間違いなく大いに変えた。

 当時の話をするとあの日の自分に戻ってしまいそうで話すことができなかった。

 だから、忘れるように冒険者活動にのめり込んだ。

 

 今日しかない。

 話せるのは、あの日から成長するには今日しかない。

 

「母は狂っていた」

 

 ガイルは何も話さない。

 

「でも、それはしょうがないことだと思うわ。

 だってお母さんは父に何十年も監禁されていたんだから。

 まともな精神状態じゃいられなかった。

 父がお母さんに依存しているように、お母さんも父に依存していた」

 

 私は一口飲む。

 そしてガイルの目を見て少し笑った。

 

「それでも私はお母さんのことが好きだし、父——クソ親父は嫌いよ。

 お母さんが私を愛していなくても、お母さんが私に優しくしてくれたのは事実だし、クソ親父が私を殴ったのも事実。これっておかしいことかな」

 

 ガイルは悲しそうな目をして苦笑いをした。

 

「分からないな。俺は誰かを好きになったことなんてないし」

「そっか」

「でも、誰かを好きになるって幸せなんだとは思うよ。

 特にテリーとニーナを見ればな」

 

 私はテリーとニーナを思い出す。

 どちらも2年前にパーティに入ったメンバーだ。

 

「そうね。あの2人には幸せになってほしいわ。

 くっつくまであと何年かかると思う?」

「3年くらいじゃないか?」

「私は5年だと思うわ。24になっても恋人ができなかったら付き合う約束をしているらしいわ」

「なるほど。でも、なんで24なんだ?」

「曰く25になっても恋人がいなかったら行き遅れになるからだそうよ」

「耳が痛いねぇ」

 

 25歳の私たちはくつくつと笑った。

 

「私も恋人作ろうかな」

 

 ガイルは少し驚いた顔をした。

 

「本当に母親(トラウマ)を乗り越えたんだな」

「ええ。いつまでも昔のことを引きずってられないわ。

 それに、A級になるって目標も達成したし、結婚して田舎でゆっくり暮らすのもいいじゃない」

 

 うん。なんとなく言ってみたけど良い気がする。

 結婚。

 

 次の私の目標だ。

 

「結婚か、そうだな。俺もしてみるか」

「なら勝負ね。どちらが早く結婚できるか」

 

 ――乾杯。

 

 翌年、ガイルはあっさりと結婚した。

 冒険者ギルド幹部の娘さんらしい。

 

 私も多くの人とデートしたけれど、恋人になることはなかった。

 1回食事に行って、それっきり。

 

 というのも、私に声をかけてくるような男は碌なやつがいなかった。

 

 冒険者はデリカシーがないし、貴族のボンボンはプライドが高い。

 私の顔やA級冒険者という肩書しか見ていない。

 

 そのくせ私より弱い奴ばっかりだ。

 

 そんな内にさらに4年がたってついにテリーとニーナが結婚した。

 そして結婚と同時に冒険者を引退したいと申し出た。

 

 私たちは了承し、これを機にパーティを解散。

 職を失った私に、ガイルが声をかけ私は冒険者ギルドの受付嬢になる。

 

 退屈な日々を過ごして10年がたち――

 

 私は運命の相手(セカイ)と出会った。

 

 

 尋問室に到着するとエルフは自ら椅子に座った。

 しかしその態度は容疑者のものではない。

 

「先に言っておくわ。私があんた達の質問に答えることは何もない」

「はぁ? それが通ると思っているのか」

「ええ、通るわ。私は何もやっていないし、私を答えさせる力があんた達にはない。

 そんなことはどうでもいいの。私がここに来た理由はただ一つ。あんたと話しかったのよ」

 

 エルフは真っ直ぐ俺の目を見つめて話した。

 

「なんで俺と……」

「分かっているでしょ、セカイの保護者さん」

 

 その一言により俺の中で緊張が走る。

 危ない。

 

 彼女のペースにもっていかれるところだった。

 いや、すでに彼女のペースに持っていかれている。

 

「お前に答えることは何もない」

 

 エルフはため息をついた。

 

「勘違いしてほしくないけれど、私はセカイを保護しに来たのよ。

 あんたも分かっているはずよ。セカイがいかに危険かが」

 

 そんなことは始めから分かっている。

 セカイはこの街に来た時から常に危険と隣合わせだ。

 そしてこの女もそんな危険要因の一人に違いない。

 

 俺はあえてとぼける。

 とにかく彼女にセカイの情報を与えることはいけないと考えたからだ。

 

「何のことだかさっぱり分からないな。セカイは俺が保護した普通の少年だ」

「とぼけるのは結構だけど、大体の事情は彼に着いていた精霊から聞いているわ。

 あんたも気づいていたでしょ。彼は水の精霊と癒しの精霊が守っていたの。

 彼が道の真ん中で起きたこと、街に入るとき殴られたこと、あんたに保護されたこと、冒険者になってオーガを倒したこと、すべて知っている。

 そして、ハーフエルフと冒険者ギルドが何か良からぬことを考えていることもね」

 

 やはりセカイには精霊がついていた。

 まさか2人もついているとは思ってもみなかったが。

 

「ハーフエルフに好かれるというのがどれほど危険なことか。ハーフエルフの生い立ちを説明すると――「結構だ、もう十分知っている。エルフがいかれていることは」

 

 エルフは押し黙る。

 

「当然、お前もな」

 

 俺はエルフに牽制した。このエルフがマイ・リアシーと敵対しているのは間違いないだろう。だからといってセカイの味方とは限らない。

 

 エルフはにやりと笑った。

 

「あんたエルフが怖くないのね。それどころか敵対心丸出しで、憎しみすら感じるわ」

 

 見透かす様に俺を見ていた。

 

「私たちを恐れないヒューマンは少ないけどいるにはいる。でも敵意を向けるヒューマンは限られてくる。連れて行かれたんでしょ(・・・・・・・・・・・)

 

 俺は虚を突かれドキリとした。

 

「奥さん?それとも子供?いや、その反応から見るに」

 

 胸が締め付けられるように苦しい。

 

「両方ね――「黙れ!」

 

 我慢できず声を荒げ机を叩く。

 室内で大きな音が反響する。

 

 エルフは毅然とした態度で話をつづけた

 

「御愁傷様。私もいかれた同族には反吐が出るわ。でもね、そんな奴が今セカイを狙ってるかもしれないのよ。事態の深刻さはわかった?」

「そんなことあいつと会った時から危惧している。それにだからと言ってお前がいかれてないとは限らないだろ」

 

 その言葉を聞いた瞬間、エルフの顔が険しくなった。

 

「は?私があのハーフエルフと同じだと言うつもり?次言ったら殺すわよ」

 

 彼女から殺気が漏れ出す。

 彼女なら本当に殺すことができるだろう。言葉の脅しではない。

 

 しかし、すぐに殺気をおさめた。

 殺すメリットがないことに気づいたのだろう。

 

「私が彼に興味を持った理由は風の精霊に頼まれたからよ。ヒューマンのガキが大人に殴られてるってね。勿論始めは助けに行く気はなかったわ。でも多くの精霊が彼の身を心配していた。話ができないどころか、視認さえしてもらえないヒューマンをね。どんな奴か興味を持ったの。そして彼を一目見た途端確信したわ。精霊の愛し子だと」

 

 彼女はセカイに興味を持った理由を話し始める。

 

「不躾に思っていた私の精霊も、彼を見た途端根拠もなく彼は信用できそうだといい始めた。彼は精霊に愛される祝福を授かっている」

 

 祝福。

 それは神の奇跡だ。

 

 信心深い者がもらうと言われる神の恩寵。

 呪いに相反する力だ。

 

「そして彼は私がふとつぶやいたエルフ語を完全に理解し、かつ流暢に話していた。彼曰く二ホンという故郷の言葉ってね。精霊に愛されエルフ語が話される故郷から来た少年。二ホンは遥か昔にエルフが作った国に違いないわ」

 

 エルフ語を話していた。という事実に俺は驚く。

 彼がエルフ語を話せるなんて知らなかったし、話せる素振りもなかった。

 てっきり共通語が故郷の言葉だと思っていた。

 

 彼女の言い分はとても納得するものだった。

 もし、俺がエルフ当人だった場合同じことを考えるだろう。

 

 しかし、彼女の理論には大きな矛盾があった。

 

 それは、精霊に愛される祝福を授かっているという部分だ。

 

 なぜならセカイには呪いがある。セカイは人に嫌われる呪いを持っている。これは間違いないことだ。

 呪いと祝福は両立しない。強力な力を持つ方がもう片方を打ち消すからだ。

 

 エルフはおそらくその呪いについて知らないのだろう。

 

 それに、俺が思うにセカイは精霊だけに好かれている訳じゃない。

 

 ハーフエルフや、俺、ビルキ、ニューソードのメンバー、それにこのエルフ自身に好かれている。

 

 俺は彼の人たらしは才能だと思っていた。しかし、精霊にまで好かれているのなら話が変わってくる。

 何かしらの力が働いていると考えるのが普通だ。

 

 万人から好かれているわけじゃない。分からないが法則性があるように感じる。ある特定の人に好かれ別の人には嫌われる。そんな法則性が。

 

 と思ったが俺は考えるのをやめた。

 

 あるわけがない。祝福と呪いを両立させるような都合の良い力はこの世には存在しない。やはり彼女の推測は的外れで、セカイはある特定の人物に嫌われる呪いを持っているが、本人はとんでもない人たらしで精霊をたらしこんだのだろう。いや、これも十分にあり得ない話だが。

 

 ともかく、エルフはセカイの全てを知っているわけではない。

 ならば、セカイの『他人を強くする力』についても知らないだろう。

 

 もし知った場合、更に執着する可能性もある。

 決して知られてはならない。

 

「セカイに必要なのは仲間って言ったそうね。それに関しては同意するわ。でもその仲間はあんたじゃない。ヒューマンのガキどもでも、ハーフエルフでもない。血の繋がりがある私達よ」

 

 エルフは話を続ける。しかし何も言い返せなかった。

 

「あんたはセカイの保護者に相応しくない。ただそれを言いたかったの」

 

 なぜなら、俺は彼女より弱いから。

 あの時、誰も救えなかったから(・・・・・・・・・・)

 

「それともう一つ。ニューソードへの加入は冒険者ギルドが仕組んだことよ。ヒューマンのガキ共がハーフエルフの傀儡となっていてもおかしくないわ。気を付けることね」

 

 エルフは席から立ちあがる。

 

「言いたいことは言ったし、あんたは何も話すつもりはないみたいだから、帰るわ」

「待て、まだナール殺害の容疑につい――「黙秘、以上よ」

 

 彼女は尋問室から出ようとする。

 咄嗟に肩を掴もうとするが、突如体に衝撃が走り後方の壁へと激突した。

 

「がはっ」

 

 俺は膝をつく。

 ダメージはない。

 しかし、彼女の攻撃に反応すらできなかった。

 

「あら、ごめんなさい。精霊が勝手に吹き飛ばしたみたい。

 セカイの保護者ならそれくらい避けれるかと思ったけど、弱いあんたには無理だったみたいね」

 

 彼女はまるでごみを見るかのように俺を見下す。

 

「安心しなさい。私はちゃんと彼を説得(・・)して保護するつもりよ。

 それまでに思い出を作っておくことね」

 

 エルフは尋問室から離れる。

 

「くそったれ!」

 

 俺は地面を殴ることしかできなかった。

 

 

 エルフとの言い争いがあった夜、ガイルと私は集まり話し合っていた。

 

「状況は悪くなった」

 

「うん」

 私はあの時のことを思い出していた。

 

「魔力量が俺以上にある。周りにいる精霊はセカイ君に8人、エルフの方に5人だ。

 セカイ君の方はどうでもいい。問題はエルフの方だ。あの魔力量かなりの手練れだぞ」

 

「うん」

 エルフに言われた罵詈雑言ではない。

 

「たった一人でA級パーティと張り合える実力があると考えていいだろう」

 

「うん」

 彼がエルフに反論したときに言ったある言葉だ。

 

「とりあえずセカイ君が彼女の保護を拒否したことは良かった。

 しかしいつ保護という名の拉致をしたっておかしくないわ」

 

「うん」

 『俺はマイさんが好きだ』

 

「そこでだ。俺たちは王都へ行くぞ」

 

「うん」

 確かに彼はそう言った。

 

「勿論、彼もつれていく。正確にはニューソードのメンバーをな」

 

「うん」

 私のことが好きだって。

 

「王都にある本部から新しくできる冒険者育成機関の代表を務めないか声がかかっているんだ。始まりの街冒険者ギルドで多くの優秀な冒険者を育成したと功労としてだ。その時に、ニューソードも期待の新人パーティとして連れていく」

 

「うん」

 そう言われたとき、私の中で何かが変わった。

 

「ここでいつ彼が連れ去られるか分からない生活をおくるよりは、王都に行って彼を囲ってしまった方がいいだろう」

 

「うん」

 胸がドキドキして

 

「マイは嫌がるかもしれないが、こうするしかない」

 

「うん」

 彼のことを考えるだけで心がポカポカして

 

「他人を成長させる彼の能力は強力だ。いつかは勘づかれるだろう。

 そして、誰もが利用しようとするはずだ。しかし、そこに彼の人権があると思うか?

 王家、貴族、ギルド、裏社会の組織も自分達のことしか考えない屑ばかりだ。

 彼らの手にセカイ君を渡すぐらいなら俺達が管理するべきだ」

 

「うん」

 彼がいないとまるで心を締め付けられるように苦しくて

 

「彼の力さえあれば多くのA級冒険者を傀儡にできるだろう。冒険者ギルドを支配したも同然だ。そうすれば俺達を止める者は誰もいない。マイもセカイ君と安心して生活できるはずだ」

 

「うん」

 何かが疼いている。

 

 

「だから、マイ。お前の協力が必要だ――ってさっきから聞いているのか?相槌しかうっていないが」

 

「うん――えっ!ごめん、考え事をしていて聞いてなかった」

 

 私は現実に引き戻される。

 

「……大丈夫か?顔も赤いし動悸も激しいが……」

「大丈夫、大丈夫だから。で、彼を手に入れるために私は何をすればいいの?」

 

 その後もまともにガイルの話を聞くことはできなかった。

 

 今日の私は何かおかしい。

 私は寝ようと寝巻きに着替えた時にあることに気づいた。

 

 濡れている。

 

 私はごくりと唾を飲む。

 

 なら、拭かないと。

 濡れたまま寝たら良くないし。

 

 そういって私は秘部へと手を持っていきーー

 

 25年ぶりの快楽に魅入られた。

 

 

 ステータス。

 

 人の名前、種族、レベル、情報を見ることができる俺だけの能力(スキル)

 

 自宅へと帰る途中多くの人のステータスを俺は見た。

 

 その情報が本当に正しいかは分からない。

 検証する方法も限られてくるし、手伝ってくれる人も少ないだろう。

 

 しかし、もしこの情報が正しいなら。

 

 俺は……なぜこんな力を持っているのだろうか。

 俺はなぜここにいるんだろうか。

 

 

 俺は一体何者なんだ。

 

 





――――――――――

 名前:荒井世界

 種族:人間

 レベル:21

 スキル:【弱憎強蝕】Lv.Max
     【inverse proportion:loves and lover】lv.1
     【適語化】Lv.1
     【ステータス】Lv.1

 備考:異界の神により創造された虚構の記憶を持つ少年。

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