強者に好かれ弱者に嫌われるスキルをもって転生した少年   作:三つ眼の荒木

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セカイ視点とマイ視点で時系列が前後します。ご注意ください。


誤字脱字、感想、ありがとうございます。少しずつですが返信していきます。
今回は少し短めです。



#18 第三者の選択肢

 

◯16:12

 

 俺は3日ぶりに冒険者ギルドへ行く。

 ニューソードの皆と会うためだ。

 

 冒険者ギルドへ行くとニューソードのメンバー全員が椅子に座り待っていた。

 3人は俺に気づくと立ち上がる。

 

「「「ごめん」」」

 

 彼らの第一声は謝罪だった。

 俺は思わず動揺する。

 

「え、なにが?」

 

「セカイの気持ちも考えずにエルフ様に従うように言って本当にごめん」

「もっとセカイの気持ちを考えるべきだった」

「セカイは俺たちのためにエルフ様に言い返したのに、俺たちは何も言い返せなかった」

 

 3人が頭を下げる。

 俺はすぐに頭を上げるよう言って、今度は自分が頭を下げた。

 

「むしろ俺こそごめん。皆を危険な目に合わせた。

 エルフがヒューマンにとってどんな存在か知らなくてさ。もっと言い方もあったと思う」

 

 エルフに対する暴言は軽率だった。

 異世界に来てナールさんに殴られて以来、慎重に立ち回ってきた。しかし、最近はカインさんやニューソードのみんなと出会って、強い味方がいると油断していた。

 

 エルフの恐ろしさはカインさんから聞いている。

 殺されてもおかしくなかった。

 

 そんなエルフは昨日から姿を見せていないらしい。

 帰ったとは思えないが、ニューソードのみんなと会うことは許可された。

 

 別れの挨拶は直接言うべきだ。

 

 俺は頭を上げて本題を切り出そうとする。

 

「それで今回皆を集めた理由なんだけど……」

 

 と言ったところで、言葉に詰まる。

 言うべきことは分かっている。でも、どうやって話を切り出すか分からなかった。

 3日間悩んで何度もシミュレーションしたが、彼らを前にすると怖くなって言いだすことができない。

 

「そ、それより先にこの3日で何か特別なことはなかった?

 全く外に出てないし、カインさんも何も言わないから分からなくてさ」

 

 俺は話の論題を変えて、本題を後回しにした。

 これは逃げだ。いつかは言わないといけないことなのだから。

 

 すると、ウルフが他の2人と顔を見合わせる。

 そして小さく頷き、真剣な顔で話し始めた。

 

「俺達で王都に行かないか」

 

 その提案は今の自分にとって一番苦しいものだった。

 

「ギルドマスターが王都のギルドに移ることになったらしい。

 それで、俺達ニューソードが始まりの街の期待の冒険者として選ばれたんだ。

 宣伝とか手伝わないといけないけど、その代わりギルドからバックアップしてもらえるらしい。

 しかし、条件があってニューソードの皆がそろっていることだ。

 俺達はどちらにしろ王都にはいくつもりだった。ただもう少し後でもいいかと思っていたんだが、こんなことがあった今の方がいいなじゃないかと思って」

 

 ウルフは嬉しそうに話している。

 フレデリカもシルドアウトも同様にこの提案を嬉しいことと捉えていた。

 

「セカイも王都には来るよな」

 

 俺は驚いてすぐに答えることができなかった。

 心がぐちゃぐちゃで意見がまとまらない。

 

 でも言わなきゃならない。

 言うんだ。

 

 ごめんって。

 

 カインさんと旅に出るって。

 だから王都には行けないって。

 約束を破ってごめんって。

 

 言うんだ。

 言え。

 

「……ごめん―――」

 

 言え。

 

「―――すぐには答えられない」

「え……」

 

 俺の答えに今度はフレデリカが驚いているようだった。

 

「カインさんが許すか分からないんだ」

「カインさんなら許してくれるって!」

 

 ウルフは俺を説得し続けようとするが、シルドアウトが制止する。

 

「いや、セカイの反応が当然だ。本来、王都に行くことは簡単に決断することじゃない。

 ただこれだけは伝えておく。俺達は冒険者ギルドのバックアップのためにセカイを誘っているわけじゃない。

 セカイと冒険がしたいから誘っているんだ。たとえギルドの勧誘がなくても、いつかはセカイと王都に行きたいと思っていた」

 

 シルドアウト以外の二人も大きく頷く。

 少し前の俺ならすぐにでも了承していただろう。

 むしろ積極的に予定を練っていたかもしれない。

 

「時間はまだある。ゆっくり考えてくれ」

 

 ニューソードのメンバーは席を立ち去っていく。

 俺は座ったままその場に残った。

 

 苦悩、後悔、惨めさ。様々な思いが心を縛り、動くことができなかった。

 

 言えなかった。

 

 言えるわけがなかった。

 

 

〇23:15

 

「マイさんにそんな過去があったなんて……」

 

 セカイ君は目から涙をこぼす。

 私は慌ててハンカチを出し頬を伝う彼の涙を拭いた。

 

「セカイ君は泣かなくていいんだよ。あの時の私が悪いんだから」

「でも、ひどすぎます!マイさんにそんなこと言うなんて!」

 

 すると、彼は私に球に抱き着いてきた。

 

「セ、セカイ君?!どうしたの急に?」

「俺が代わりに愛します。マイさんのことを。だから、そんな悲しい顔をしないでください」

「セカイ君……」

 

 セカイ君は私を強く強く抱きしめる。

 私はそんな彼を優しく抱き返した。

 

 どれほど抱き合っていただろうか。彼は私を抱く力を弱めてこう言った。

 

「マイさんの綺麗な顔を見せてください」

 

 私は少しかがみ同じ目線にして彼をじっと見つめた。

 すると、次の瞬間彼の顔が近づき唇に何かが触れた。

 

「えっ……」

 

 私が呆気に取られていると、彼は顔を赤らめて言う。

 

「俺の気持ちです。マイさんは俺のことどう思っていますか?

 俺がしたみたいに言葉じゃなくて行動で示してください」

 

 私は彼をベッドに優しく運ぶ。そしてゆっくりとキスをした。

 

「マイさん。俺、初めてなので優しくしてほしいです……」

「マイさんなんて他人行儀に言わなくていいの。マイって呼んで」

 

 私は彼の衣服を一枚ずつ脱がしていく。

 そして上半身が裸になった彼の体に優しく口づけをした。

 

 彼は気持ちいのか目をつぶりながら私の名前を声に出す。

 

「マイ…マイ……マイ……」

 

 そして私は彼のズボンに手をかけ――――――「マイ!マイ!いるんだろ!開けろ!!」

 

 ドンドンと扉を叩く音と共に名前を呼ばれ、私は現実世界に引き戻された。

 私は舌打ちをしてベッドから降りる。

 

 そこらへんに落ちていた下着とズボンを着て扉を開けた。

 

「なによ」

 

 扉を開けるとそこにはガイルが立っていた。

 

「お前居るならさっさと―――って臭いぞ、お前」

「いきなりきておいて失礼なやつね」

 

 私は自身の体を匂う。

 そんなに臭いだろうか。

 

「で、なによ。こんな時間に」

 

 時刻は深夜。いつもならまだ眠っている時間だ。

 

「急にっていうかお前、なんで来ないんだ」

「来ないってどこによ」

「ギルドにだよ」

「今から行くつもりだったのよ」

 

 私はイライラしながら答える。早く続き(・・)をしたいのに。

 

「いったい今まで何してたんだ?」

 

 私は答えづらい質問に詰まる。

 まさかセカイ君を思って盛っていましたなんて言えるはずもない。

 

「その……寝てたのよ」

「3日間もか?てっきり計画を優先して裏で動いていたと思っていたが何もしていないし……」

 

 え?

 

「3日間?」

 

 私は思わず聞き返す。ガイルはなぜ私が聞き返したかも分かっていないようだった。

 ガイルは噓をついていない。

 

 気持ち良すぎて時間を忘れてヤっていたってこと?

 

「……まさか時間の感覚がなかったのか」

 

 ガイルは私の部屋を玄関の隙間から覗く。

 そして私が3日間も何をしていたのか気付いた様子だった。

 

 私は恥ずかしくてどうにかなりそうだった。

 しかし、ガイルの顔は引きつっている。

 

「ごめん。私も計画通り動くから……」

「いや、いい。マイは何もするな」

 

 ガイルの目は異常者を見る目だった。

 

「いいな。何もするな、絶対に」

「でも……」

「この計画は絶対に失敗できないんだ。今のお前は冷静じゃない。

 それに王都にさえ彼を連れて行けばどうとでも隠蔽できる。だから今は大人しくしてろ」

 

 彼は私の肩を掴む。

 

「絶対だ。絶対に彼と会おうとするな。実行は2日後だ。あと2日我慢しろ。いいな」

「彼と……会う?」

「どうせ今あっても臭くて嫌われるぞ。だから変なことはするなよ」

 

 彼は何度も念押しするように、私に何もするなと言った。

 彼の必死の形相にただ頷くことしかできない。

 

 ガイルが去ったあと私はあることを考えていた。

 

 3日間もセカイ君と会っていない。

 彼は優しいからきっと心配しているだろう。

 

 でもこの臭いじゃ嫌われちゃう。

 私は臭いを落とすためシャワー室へと向かった。

 

 

〇16:58

 

 俺は呆然としながら街中をさまよい歩く。

 考えているようで心の中では何も考えてられなかった。

 

 どちらかを選ぶなんてできるわけがない。

 今のこの状況にただただ絶望していた。

 

「セカイ・アライ!」

 

 後方から自分の名前を叫ばれ俺は振り返る。

 そして声の主を見て思わず名前を呟く。

 

「ヤヨイ・キサラギ……」

 

 醜い言い争いをした相手。

 俺が今、要注意すべきエルフだった。

 

 俺はすぐにその場から離れようと別方向に歩き始めるが、彼女は目に留まらぬ速さで追い越す。

 そして目の前に立たれ進行の邪魔をされる。

 

「貴方と話すことはありません。失礼します」

「待ちなさい」

 横から通り過ごそうとするが、行き先をふさがれる。

 あの時とは違って、今は冷静だ。

 

 俺は落ち着いて彼女に話しかけた。

 

「あの時、エルフを悪く言ったことは謝ります。すみませんでした」

「あらそう。許してあげる。でも今話したいことは別にあるわ」

「興味ないです」

 

 俺は即座に彼女の話を断るが、彼女は気にせず話し始める。

 

「セカイ、あんたは王都に行くべきでもないし、あの男と国から出るべきでもない」

 

 なぜ、そのことを知っている。

 俺は驚きを隠せず彼女の顔を見た。

 

 彼女の顔を冷静に見るのは初めてだった。

 黒髪に緑色の目。目は鋭く鼻は高い。外国人の整った顔立ちだ。

 髪型はポニーテールでうなじが少しだけ見える。

 

 美しいという言葉が誰よりも似合うと思った。

 

 だからこそ俺は彼女を不気味に思った。

 俺は彼女について何も知らない。しかし、彼女は俺についてあまりにも知りすぎている。

 顔、種族、強さ、何もかも違う異質な存在が俺に注目していることに納得がいかない。

 

「あんたがついていくべき人物は私。そして行くべき場所は私たちの故郷『セカイジュノシンメ』よ」

 

 ありえない。

 俺は確かに悩んでいる。ニューソードの皆かカインさん、どちらを選ぶか。

 答えのない選択に。

 

 しかし、俺の大切な人たちを罵倒した彼女に着いていくことだけは決してない。

 

「結構です。貴方に付いていく理由が俺にはないです」

 

 俺は彼女を追いこそうとする。

 今度は邪魔をされず横を通り過ぎることができた。

 

「『セカイジュノシンメ』はエルフ達が住まう小さな里よ。そして――」

 

 俺は彼女を無視する。

 カインさんから注意もされていたし、これ以上話しても良いことはない。

 

「――かつて勇者が異世界へと旅立った場所」

 

 足を止めざるを得なかった。

 




【ステータス】

名前:トーム
種族:嵐の精霊
レベル:53

印象:好感

攻撃:822
防御:274
俊敏:2390
魔力:4533
聖力:0
気力:0

備考:ヤヨイ・キサラギに従属している精霊。風と雷を操る。


名前:バン
種族:火炎の精霊
レベル:48

印象:好感

攻撃:1490
防御:222
俊敏:781
魔力:4326
聖力:0
気力:0

備考:ヤヨイ・キサラギに従属している精霊。爆発魔法が得意。炎の精霊から進化した。


名前:バリバリ
種族:空間の精霊
レベル:45

印象:好感

攻撃:298
防御:2891
俊敏:345
魔力:3897
聖力:0
気力:0

備考:ヤヨイ・キサラギに従属している精霊。結界術を得意とする。


名前:ルフラ
種族:自然の精霊
レベル:11

印象:好感

攻撃:319
防御:387
俊敏:321
魔力:1529
聖力:0
気力:0

備考:ヤヨイ・キサラギに従属している精霊。草木の精霊から進化したばかり。


名前:ワード
種族:言葉の精霊
レベル:8

印象:好感

攻撃:51
防御:43
俊敏:89
魔力:691
聖力:0
気力:0

備考:ヤヨイ・キサラギが初めて契約した精霊。あらゆる言語の翻訳が可能。また、他人の嘘や悪意を視覚的に捉えることができる。
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