強者に好かれ弱者に嫌われるスキルをもって転生した少年 作:三つ眼の荒木
感想も全て読んでおります。返信も少しずつですが返していきたいと思っております。
評価、感想をいただけると書くモチベーションになります。
さて、プロローグが終わり物語が本格的に動き始めます。
ようやく一人目のヒロインをだせました。
なお、本作は主人公の無双は予定しておりません。
多少強くはなりますがヒロイン達と比べれば微々たるものです。
ご了承のほどよろしくお願いいたします。
カインさんから冒険者になれと言われた翌日。
冒険者ギルドの前に俺は立っていた。
冒険者ギルド。
ここから俺の冒険が始まるんだ。
俺は意を決して扉を開け中に入る。
中には人がまばらにいた。思っていたより多くない。
掲示板の前で紙を眺めている人、立ち机で談笑する人、そして中央のカウンターに座っている人。
おそらく中央のカウンターに座っている人に話しかければいいだろう。
「すみません。冒険者になりたいんですが……」
受付嬢は綺麗なお姉さんだった。
耳が横に長くとんがっている。
「冒険者登録ですね。初めてですか?」
「はい」
お姉さんは笑顔で応対してくれる。
優しそうな人だ。
「用意いたしますのでこの紙のあいている欄を記入しお待ちください」
俺は紙を渡された。
名前は――セカイ・アライ
年は――15歳。
希望役職は――希望役職?
「すみません。この希望役職って何ですか?」
「そこは将来自分がどういう戦闘職になりたいか書くところですね。
例えば、戦士や魔法士、狩人、神官などですね」
なるほど。俺は戦闘訓練を思い出す。
基本的に槍の鍛錬をしているため戦士だろう。将来的にはハルバードを使いたいが。
「なるほど。自分の場合は戦士ですかね」
俺は戦士と記入する。
「えっ!」
すると受付嬢のお姉さんの驚いた声が聞こえた。
何か問題があったのだろうか?
「どうかしましたか?」
「いえ。魔法の才能がありそうだったのでてっきり魔法士かと」
「はぁ……」
彼女は良く分からないことを言って俺をじっと見つめていた。
もしかして褒めてくれたのだろうか。
魔法の才能か……
帰ったらカインさんに聞いてみよう。
「書けました」
そう言い顔を上げると、彼女はまだ俺をじっと見つめていた。
しかし、その顔に先ほどの笑顔はない。表情が一切なかった。
先ほどまでと違う雰囲気に、一瞬恐怖を覚え体が震える。
すると彼女の顔に笑顔が戻った。
「ありがとうございます。冒険証を発行しますね。その前にセカイさんはどこまで冒険者ギルドについて知っていますか?」
「すみません。全く知らないです……」
「承知しました。
まず冒険者の仕事はあちらにある掲示板に張られてある依頼をこなすことです。
依頼は薬草の採集から魔獣の討伐など様々な種類があります。
そして依頼を受けるにあたって重要になるのが冒険者ランクです。
冒険者ランクは大まかに分けてE級、D級、C級、B級、A級、S級の6つです。
セカイさんは初めてということもありE級からスタートしていただきます。
また、各ランクの中でも3つに実力が分けられます。
それぞれE級、EE級、EEE級と実績や実力によって文字の数が増えていきます。
様々な依頼をこなし実力がつけば自ずとEEE級になるでしょう。するとD級に上がるための昇級試験を受けていただくことができます。その試験に合格すると晴れてD級冒険者です。D級冒険者でも同様に実績と実力を積むとDDD級となり試験を受けられます。基本的にこれがA級まで繰り返されます。
勿論、試験を受けるのは任意です。しかしランクが上がると受けれる依頼も増えていき、より高価な報酬の依頼を受けることができるようになります。
何かご質問はありますか?」
「いえ、とくにありません」
「分かりました。次は禁則事項について――」
その後も俺はお姉さんから冒険者ギルドについて話を聞いた。
そして一通りの説明が終わった後、木のプレートが渡された。
プレートには俺の名前とE級冒険者であることが書かれてある。
「これでセカイさんは冒険者となりました。最後に確認のためお顔を見せてください」
俺はずっとフードを被ったままだったことを思い出す。
しまった。室内ではフードも被らないほうが良いだろう。
「あ、すみません」
俺はフードを外し顔を見せる。
彼女は俺の顔をじっと見つめた。1分間も。
長くないだろうか、とも思ったが顔を覚えようとしているのかもしれない。
冒険者ギルドにも多くの人がいるだろうし、受付嬢だったら顔と名前を覚えておく必要があるだろう。
「ありがとうございます。明日お話があるためもう一度来てください」
彼女は笑顔でそう言った。
俺は会釈をし冒険者ギルドから出る。
はれて今日から冒険者だ!
☆
暇だ。
冒険者ギルドの受付嬢になり早10年。
念願のスローライフを手に入れた私は退屈していた。
来る日も来る日も事務、対応、書類整理。
同じことの繰り返しだ。
刺激が足りない。
確かに私はスローライフを望んでいた。
命懸けの戦闘、薄汚い貴族の対応に辟易していたからだ。
しかし、当時想定していたスローライフと今の生活は明確な違いがある。
結婚だ。結婚していないのだ。
当初の予定では安全な始まりの街で楽しい新婚生活をおくるはずだった。
まさか結婚どころか恋人もできないとは思ってもいなかった。
決して出会いがないわけではない。
ありがたい話ではあるけれど私は多くの人にアプローチされる。
しかし良いなと思う人が一人もいなかった。
「はー。良い男いないかしら」
小さな声で呟く。しかし隣の席に座る同僚は聞き逃さなかったようだ。
「マイは理想が高すぎるのよ。始まりの街にマイより強い人なんてそれこそギルドマスターくらいしかいないわよ」
「別に強い必要なんてないわよ。私のセンサーにビビッと来ればいいの」
「お得意のエルフセンサー?」
「ええ。私にもエルフの血が流れてるんだって最近になって思うわ」
エルフセンサーと揶揄しているものは、エルフ間で有名な迷信だ。
エルフは長寿の代わりに子をなしにくい。
毎日営みを行っても100年子供をなさないなんてざらにあるらしい。
しかし、血の相性によっては子をなしやすい相手がいるそうだ。
エルフはそんな血の相性の良い相手と出会うと直感的に
そう、迷信。
そんな機能は実際にはない。
あればもっとエルフが繁栄しているはずだ。
真実はただの言い訳だ。
エルフが人を拉致する言い訳。
迷信だと分かっていても半分しか流れていない血を憎く思う。
つまり私が結婚できない理由はクソおやじのせいだ。という不毛な結論に達しているとギルドの扉が開いた。
私は切り替えて受付嬢モードになる。
入ってきたのは白いローブを着た少年だった。
あのローブ……認識阻害が付与されてる。
私は警戒度を上げ目に魔力を集中させる。
すると彼を回るように動く2つの魔力の塊が見えた。
懐かしい。
あれは魔力操作の修行だ。私も子供のころよくやった。
ある段階になると無意識にしちゃうんだよね。
私は彼に親近感を覚える。
魔力の操作も淀みないため実力としてはC~B級だろうか?
わざわざここに来るなんて珍しい。
そう思うと少年はカウンターまで来て私に話しかけてきた。
「すみません。冒険者登録できますか?」
「冒険者登録ですね。初めてですか?」
「はい」
まさかの用事は冒険者登録だった。
実力者だろうに珍しい。他の国からきたのだろうか。
「用意いたしますのでこの紙のあいている欄を記入しお待ちください」
少年は言われた通り紙に書いていく。
綺麗な字だ。
15歳の少年はセカイさんというらしい。
「すみません。この希望役職って何ですか?」
「そこは将来自分がどういう戦闘職になりたいか書くところですね。
例えば、戦士や魔法士、狩人、神官などですね」
まぁ彼なら魔法士だろう。そう思い彼が記入するのを眺めていると
「なるほど。自分の場合は戦士ですかね」
と言い、戦士と記入した。
「えっ!」
私は思わず声に出して驚く。
こんなに魔力操作の練習をしているのに戦士?
もしかして私と同じ魔法戦士だろうか。
「どうかしましたか?」
「いえ。魔法の才能がありそうだったのでてっきり魔法士かと」
「はぁ……」
セカイさんはあまりピンときていないようだった。
私は怪訝に思い再び目に魔力を集中させる。
今度は彼をじっくりと観察した。
すると彼を囲うように動く魔力の質の違いに気が付いた。
これは彼の魔力ではない。
いや、人が作り出せる魔力ではない。
自然が作り出した混じりけの無い純粋な魔力。
精霊だ。
彼自身の魔力はほとんどない。
そして精霊の魔力が彼と一体になるよう纏わりついていたので、てっきり彼が魔力操作をしていると勘違いしたようだ。
私はさらにじっくりと観察する。
2つの魔力の塊はそれぞれ違う魔力の質をしている。
つまり彼は2種類の精霊を連れていることになる。
ヒューマンにしか見えない彼がだ。
何者だ。
すると精霊の動きに変化があった。
私が見えていることに気が付いたようだ。
精霊は彼の前に移動すると私に話しかける。
私はハーフエルフであるため精霊の声を完全に聞くことができない。
しかし、何を伝えたいかは理解できた。
『『森の民の血を引く少女よ』』
『我は癒し』
『我は水』
『『彼の者を守護するもの也』』
『汝に忠告す』
『決して害すること勿れ』
『『彼の者に危機が訪れし時、死をもって制裁す』』
私は戦慄する。
ここまで敵意を持った精霊と会うのは初めてだ。
相当彼に入れ込んでいるのだろう。
そして当の本人は聞こえている様子はない。
いたって普通のヒューマンだった。
精霊の愛し子とでも言うべきだろうか。
精霊2人程度に後れは取らないが敵対しないほうがいいだろう。
ここは精霊の森の近くだ。
私一人の失態で森の精霊全てが敵対なんてたまった物じゃない。
全くとんでもない子がやってきた。
しかし、同時にワクワクしている自分もいた。
退屈なこの街に刺激がやってきた。
私はその後、慎重に対応をした。
本当に初めての冒険者だった彼に冒険者ギルドのシステムの説明をする。
そして最後に冒険者証を渡した。
「これでセカイさんは冒険者となりました。最後に確認のためお顔を見せてください」
私は認識阻害がかかっているフードの存在を思い出した。
精霊ばかりに気を取られ彼自身を観察できていない。
今も彼がぼやけて見えて上手く認識できないが、顔は絶対に覚えておく必要がある。
私の生活に刺激を与えてくれる大型新人の顔は。
「あ、すみません」
そう言うとセカイさんはフードに手をかける。
天使があらわれた。
目が離せない。
動悸が激しい。
息ができない。
生まれて40年。一度も動かなかったエルフセンサーが激しく稼働していた。
【ステータス】
名前:マイ・リアシー
種族:ハーフエルフ
レベル:162
印象:好印象→恋慕
体力:1517
攻撃:3103
防御:999
俊敏:3714
魔力:1872
聖力:51
気力:2006
備考:始まりの街冒険者ギルドの受付嬢。ギルドマスターとは幼馴染。