強者に好かれ弱者に嫌われるスキルをもって転生した少年   作:三つ眼の荒木

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多くの評価、感想ありがとうございます。
書くモチベーションになっております。
感想は全て読んでおります。少しずつですが返信していきたいです。

また、次話からは投稿ペースが落ちると思います。
2~3日に1話ペースで投稿していくつもりです。
気長にお待ちいただけますと幸いです。


#7 ギルドマスターの作戦

 

 カインさんから武器を買ってもらった翌日。

 

 俺は冒険者ギルドに訪れ、初めての依頼についてリアシーさんから説明を受けていた。

 

「Eランクは基本的に薬草採取クエストしかできません。

 北の門から出た先にある森で採取してきてください。

 基本的に魔獣は出ないと思いますが警戒はしてくださいね。

 念のため最初の依頼は私と一緒に行きましょうか?」

 

 それはちょっと恥ずかしい気がする。

 

「大丈夫です。

 あと薬草の見た目とかを教えてくれませんか?」

 

 リアシーさんは少し残念そうな顔をした。

 

「薬草の見た目や効果については薬草辞典にのっています。

 薬草辞典は2階にある冒険者用資料室にありますので依頼の前に読んでおいてくださいね。

 また魔獣の詳細について書かれた本や今後の依頼に関する本もありますので積極的に活用してください」

 

 本?!

 本があるのか。

 

「ありがとうございます!失礼します」

 

 俺は急いで2階へと上がる。

 そこには資料室と書かれた部屋があった。

 

 ノックをして資料室に入ると、そこには小さな本棚と机や椅子が置かれてある。

 人は誰もいなかった。

 

 本棚には30冊程度の本が置かれてある。

 

 薬草辞典。

 魔獣辞典。

 魔力操作概論。

 

 魅力的な名前の本が沢山置いてある。

 

 全部読もう。絶対に。

 

 俺はこの世界について知らないことが多すぎる。

 一般常識はカインさんから教えてもらったが、地理や魔法については全く知らない。

 

 俺は早速薬草辞典を読み始めた。

 

 その日から俺の生活は少し変わった。

 

 午前中に薬草採取の依頼をこなし、午後からは資料室で本を読むか訓練所で鍛錬をする充実した日々を送っていた。

 

「あら、セカイさん。奇遇ですね」

 

 彼女以外は。

 

 ポーションの値段を把握するため、訓練所に行く途中道具屋に寄ったのだがまた(・・)リアシーさんに出会った。

 

 今週で7回目だ。

 

 一日2回のペースで彼女と偶然(・・)出会っている。

 勿論冒険者ギルドで会うときはカウントしていない。

 

 最初は少しうれしかった。

 綺麗なお姉さんと会えるのだから。

 

 しかし毎日出会うと流石におかしいと気づく。

 

 休日に行く先々で計5回もあった時はついに恐怖が勝った。

 

 そんな彼女はポーションに関するうんちく話を話していた。俺は適当に相槌を打ちながら冷や汗をかく。

 話すことが為になる話なのも謎なんだよなぁ。

 

 俺はその後適当に話を切り上げて訓練所に行く。

 訓練を終え、家でカインさんに彼女のことについて相談した。

 

 リアシーさんはストーカーかもしれない。

 自意識過剰だったら良いのだが。

 

 ちなみに勇者の安らぎ亭は、いつも座る席の隣に彼女が毎回座っているようになったため最近行くのをやめている。

 

「何が目的なんでしょうか」

 

「分からないな。けどストーキングされているのは間違いないだろ」

 

 俺はため息をつく。

 まさか異世界でストーカーに悩まされるとは思ってもいなかった。

 

「言うまでもないが気をつけろよ」

 

「それは彼女がハーフエルフだからですか?

 それともストーカーだからですか?」

 

「それもあるが、元A級冒険者ってのも引っかかる。

 A級が化け物だって話はこの前にしたよな」

 

「はい」

 

「実力が化け物ってのもそうだがな。

 A級は倫理観が少しおかしいんだ」

 

「倫理観ですか?」

 

「ああ。A級は戦闘の天才だ。

 しかし、決して楽してA級になれたわけじゃない。

 常人には耐えられないような鍛錬、修羅場を乗り越えてA級になってるやつがほとんどだ。

 どこかぶっとんでる奴しかA級にはなれないんだよ。

 だからハーフエルフの嬢ちゃんがセカイをストーキングするのも、彼女にとっては普通のことなのかもしれない」

 

 リアシーさんがカインさんより強いと知った時はすごく驚いた。

 全くそうには見えない。

 

 確かに良く見ると筋肉は引き締まっているけど、体格はカインさんの方が大きいし。

 

 そんな彼女も俺が想像もつかないような鍛錬をしていたのだろうか。

 

「だから気をつけろよ。

 悪気はなくてもセカイを傷つける可能性だってある」

 

 カインさんはそう話を締めくくった。

 

 次の日、俺は彼女からご飯に誘われた。

 

 決して悪い人じゃない。

 俺を気にかけてくれていることは十分伝わってくる。

 

 しかし、リアシーさんが何をしたいか全く分からない。

 

 俺は彼女を信用しきれないでいる。

 それがすごく申し訳ない。

 

 こんな気持ちでご飯はいけなかった。

 

 適当に理由をつけて俺は申し出を断った。

 

 

 

 

「ははは、振られたねぇ」

 

 一大決心をして言ったデートのお誘いが見事に断られ私が落ち込んでいると、受付の裏にある資料室から声が聞こえた。

 40年間も聞いてきた声だ。

 

 私の幼馴染であり元パーティメンバー。

 そして今はギルドマスターのガイルだ。

 

「なによ。私を嘲笑いにきたの」

「うん。まさか幼馴染が15歳の子供に振られるときがくるなんてね。傑作だよ」

 

 生意気なやつだ。

 普通、ここは仲間として労わる言葉や励ましの言葉をおくるべきだと思う。

 

「あら、良かったわね。じゃあ仕事に戻ったら?」

 

 私は毅然とした態度で追い返そうとする。

 

「おいおい、俺はマイを助けに来たんだよ。なんで振られたか教えてあげようと思ってな」

「結構よ。それに理由なんて簡単よ。まだご飯に行ける程仲良くなれていないんでしょ?」

「それはそうだな。だけど、そのままだとまた断られるぞ」

 

 ガイルはニヤニヤしながら言う。

 私は彼の言葉を無視できなかった。

 

 ガイルは既婚者だ。少なくとも私よりは恋愛に詳しいだろう。

 

「どういうことよ」

「まず誘い方が悪いんだよ。高級な料理店なんて子供には荷が重すぎる」

 

「私が奢るつもりだったわよ?そのこともちゃんと言ったし」

 

「値段じゃなくて、よく知らない女性と高い料理屋に行くこと自体がハードル高いんだよ。

 それにお前は奢られすぎて麻痺しているのかもしれないが、奢られるのは本来精神的に負担なんだ。特に男はな」

 

 知らなかった。

 奢られて喜ばない人はいないだろうと思っていたが、そんな人もいるのか。

 

「まぁこういう時は最初は安い酒場に行くのが無難だよ。

 奢られてもそこまで罪悪感はないし、相手がどうしても割り勘にしたいって言っても財布に優しいだろ?」

「分かったわ!早速行ってくる」

 

「はい駄目ー」

 

 私は立ち上がりセカイ君を追いかけようとするが、ガイルに襟をひょいと掴まれ停止する。

 

「なんでよ。善は急げでしょ」

「恋は盲目だねぇ。お前、ついさっき振られたんだぞ。分かるか?」

 

「う……」

 

「もう一つ、お前の良くないところを言うとな。がっつきすぎなんだよ。多分苦手意識持たれてるぞ」

「でもアプローチってそんなものじゃないの?」

 

 彼はため息をつき私に呆れているようだった。

 

「男ってやつは確かに大人の女性が好きになる時期がある。

 けどそういうのはな、勝手に惚れて告白することなく一人で失恋するもんなんだ。

 

 お前が惚れてアプローチするのとは全く違う。

 いい年した大人が新人冒険者の少年を口説くって

 いい年してビキニアーマーを着ている中堅冒険者みたいなものだぞ」

 

 鳥肌がたった。

 

「う……それは痛いわね」

 

「要はお前が恋愛をするんじゃなくて、彼に恋愛をさせる必要があるってことだ。

 ただしお前の方からアプローチしたら駄目だ」

 

「でも、そんなの上手くいくの?」

 

「まぁ、確かに不安なのも分かる。

 実際大人に恋する子供は少数派だろうし、彼の性格的にも何もしなかったら普通に良い人で終わるだろうな。

 しかし、そんなマイのために作戦を考えてきた」

 

 私は苦い顔をする。

 今までの経験から彼の作戦は意地が悪いものばかりだからだ。

 

 しかし、今は猫の手も借りたい状況。

 

 聞くしかない。

 

「その名も『どしたん?話聞こうか作戦』!」

「『どしたん?話聞こうか作戦』?!」

 

「作戦の概要はこうだ。

 彼が冒険者生活で悩みを感じている時に酒場に誘って相談にのってあげる。

 ただこれだけだ」

 

「たった、それだけ?

 さっきみたいに断られるんじゃないの?」

 

「嫌われてさえいなければ大丈夫なはずだ。 

 重要なのはあくまで冒険者ギルドの関係者として相談に乗ってあげること。

 下手に女の部分を見せるなよ。

 人は悩んでいる時、隙ができやすい。

 そこにつけこんで好感度を稼ぎつつ、お酒に酔わせてあわよくばをねらうシンプル且つ古からある作戦だ」

 

「シンプル且つ古からある作戦……」

 

 彼が考えたわけではないのなら期待ができる。

 それにあわよくばもあるとは……って。

 

「彼は15歳よ!お酒は飲ませられないわ!」

 

「ばれない、ばれない。

 15歳くらいならちょっと誘えばすぐに飲んでくれるんじゃないか。

 誘うのが嫌なら離席している間にこっそり入れ替えるのでもいいし」

 

「まぁ、それならいいけど……」

 

 私がお酒を飲ませるのはいけないが、彼が間違って飲む分には構わないはずだ。

 意外といい作戦かもしれない。

 

「気に入ってくれたかい?」

 

「うん。ありがとう。使わせてもらうわ」

「そっか。それは良かった。じゃあ彼には苦しんでもらわないとね」

 

「え?」

 

「だってそうだろう。君に悩みを相談させるためには彼は存分に悩んでもらわないといけない

 なにか間違ったことを言っているかい?」

 

 私は彼を睨みつける。

 

「本当にいい性格してるわね」

「ありがとう」

 

 私の皮肉は通じなかったようだ。

 40年間の付き合いで私は慣れたが、彼はちょっと性格が悪い。

 

「彼についての報告書は俺も見たよ。

 セカイ・アライ君。興味深い人物だな。

 

 精霊の森からきて衛兵長に保護される。

 2人の精霊を連れているが知覚はしていない。

 そしてマイから惚れられる。

 

 どの話も嘘みたいな人物だ」

 

「あいつら……」

 

 私は盗賊ギルドの残党を思い出す。

 約束を守らずギルドマスターに報告したようだ

 

「おいおい、彼らを恨むなよ。

 俺にばれたのはむしろお前が原因だ。

 

 盗賊ギルドの残党が衛兵長にばれただろ?

 あのままだったらヤバかったんだからな。警備隊にいる奴から報告が来たから気づけたが」

 

「う……ごめん」

 

「いつも思うがマイはC級を侮りすぎだ。

 まぁ、その件はいい。ちゃんと記憶を消しておいたから大丈夫だ

 

 ともかくセカイ君はなかなか面白い。

 その中でも一番面白いのはこれだけいろんな人に好かれながら、他の冒険者からの評判は軒並み悪いところだ。

 十中八九お前がひいきしているせいだな」

 

 それは私も不憫に思っている。

 冒険者たちからの彼の評判は最悪だ。

 

「そこでだ。彼はそろそろEE級に上がるだろ?

 新人冒険者育成制度を適用させよう。

 安心してほしい。

 どこに所属させるかはもう決めてある。

 これ以外にないパーティだよ」

 

 新人冒険者育成制度。

 

 2年前から行っている始まりの街冒険者ギルド独自の制度だ。

 

 D級以上の冒険者パーティにEE級の冒険者を所属させるものだ。

 D級冒険者は冒険者生活にも慣れてきて慢心しやすい。

 

 そこに新人冒険者を所属させ緊張感を持たせる。

 

 EE級の新人冒険者は先輩冒険者から冒険者のいろはを学びつつ、多くの冒険者パーティとコネクションができる。相性が良かった場合はそのままパーティに誘われることもあった。

 

 先輩新人どちらもが成長する良い制度だ。

 

 しかし、彼の場合は多くの先輩冒険者から良く思われていない。

 場合によってはいじめられるだろうし、苦しい思いをするだろう。

 

「最初からそれが狙いだったのね」

 

「なんのことだか。

 はい、これがそのパーティ」

 

 私はガイルから渡された冒険者の情報が載った書類を見る。

 私は目を見開いた。

 

「ご存じの通り、最近D級になった今注目のパーティだ。

 記録も更新して慢心しまくりだろう」

 

 そう。彼らは始まりの街冒険者ギルドD級昇格年齢最年少(・・・)記録をこの前更新した。

 まだ15歳(・・)の少年少女で構成されたパーティ。

 

「そんな時に、受付嬢にひいきされて昇格したいけ好かない後輩が、パーティに入ってきたらどう思うだろうねぇ」

 

 最悪だ。

 彼は同年齢の先輩にいじめられることになる。

 

 そして、その悩みを聞いて慰めてあげるのが大人の私だ。

 

 彼の言う通りこれ以外にない最高のパーティに違いなかった。

 

 




【ステータス】

名前:ガイル
種族:ヒューマン
レベル:251

印象:興味

体力:1489
攻撃:1015
防御:1178
俊敏:1501
魔力:4017
聖力:2501
気力:1034

備考:

始まりの街冒険者ギルドのギルドマスター。
元A級冒険者の支援術師。
性格がすごく悪い。
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