強者に好かれ弱者に嫌われるスキルをもって転生した少年   作:三つ眼の荒木

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4000件もお気に入りしていただきありがとうございます。

今回は視点が多く変わるため分かりにくいですが
セカイ視点→各先輩冒険者視点→セカイ視点→受付嬢視点
となっております。

長めです。


#8 先輩冒険者の印象

 

「EE級昇格おめでとうございます!

 E級は実質お試し期間みたいなものなのでEE級からは立派な冒険者ですよ!」

 

 リアシーさんがパチパチと拍手をする。

 

「ありがとうございます。リアシーさんのおかげですよ」

 

 俺はお礼を言った。

 EE級に昇格できたのは間違いなく彼女の補助があってこそだった。

 

 最近のリアシーさんは俺と普通に接してくれている。

 

 依頼と関係ない話題もふられないし、露骨なボディタッチも減った。ここ数日はストーキングもされてない。

 そのため俺の中での彼女の印象は怖い人から変な人に代わっていた。

 

 ……念のため警戒は解かないけど。

 

「こちらこそありがとうございます。

 さて、早速ですけどEE級について説明させていただきますね。

 EE級から変わることは3つです。

 

 受注できる依頼の増加。

 魔獣との戦闘許可。

 新人冒険者育成制度です。

 

 それぞれ説明させていただきますね」

 

 俺は鞄からメモ帳を出す。

 異世界に来てメモを取ることが増えた気がする。

 

「まず、受注できる依頼の増加と魔獣との戦闘許可について説明しますね。

 EE級からは魔獣との戦闘が解禁され、魔獣の素材回収依頼が増えます。

 

 と言っても始まりの街付近には魔獣はほとんどいません。

 この街は勇者の加護によって守られており、迷い込んできた魔獣も巡回している衛兵が駆除しているためです。

 

 そのため、魔獣は冒険者ギルドが管理しているダンジョンで倒してもらいます」

 

 ダンジョン!

 テンションが上がる響きだ。

 

「EE級が受注できる依頼は、一日ダンジョンに潜れば大抵終わらせられます。

 依頼期間も3日間程度が多いため、運悪く素材回収ができなくても次の日に挑戦できます」

 

「なるほど。ダンジョンについてもっと詳しく教えてくれませんか」

 

「私も教えたいのですができません。

 教えられない理由を説明するためにも新人冒険者育成制度について説明しますね。

 

 新人冒険者育成制度は、EE級の冒険者をD級以上の冒険者パーティに所属させ

 先輩冒険者に新人冒険者を育成してもらう制度です。

 

 セカイさんも私たちが紹介するパーティに入ってもらいたいと思います。

 

 そして先輩冒険者の最初の仕事が新人をダンジョンに連れていき、ダンジョンについて教えることです。

 よってダンジョンについては先輩冒険者の方々に聞いてください」

 

 そんな制度があるのか。

 しかし、新人としてはとてもありがたい制度だった。

 

 俺には冒険者の知り合いが一人もいない。

 他の冒険者と話す理由もなかったし、ちょっと怖くて話しかけることができなかった。

 

 カインさんが言うには今の俺に必要なのは『仲間』らしい。

 先輩冒険者の仲間に俺はなれるだろうか。

 

「そのパーティってどんな方々ですか?」

 

「……最近D級に昇格した注目のパーティです。

 全員、セカイさんと同じく15歳の才能ある若者ですよ」

 

 同じ年齢。つまり同級生だ!

 

 歳が同じ人と会うのはこの世界に来て初めてだ。

 

 俺は少し緊張すると同時にワクワクしていた。

 

 異世界に来る前の気持ちを思い出す。

 仲間どころか友達ができるかもしれない。

 

「パーティ名は『ニューソード』です。

 そろそろ、ギルドの外で待っているため挨拶に行ってくださいね」

 

「え?!今からですか」

 

 リアシーさんは頷く。

 

 急な話だ。

 全く準備していなかった。

 

 上手く自己紹介できるだろうか。

 

「説明は以上です。何がご質問はありますか?」

 

「特にないです。ありがとうございました」

 

「……何かトラブルがあったらすぐに私に言ってくださいね」

 

 俺は彼女にお辞儀をして急いでギルドの外に出る。

 先輩方を待たせるわけにはいかないからだ。

 

 ギルドの扉を開け外に出ると多くの通行人が目に入った。

 周囲を見渡していると、道の反対側で談笑していた男子の一人と目が合った。

 

 おそらく同じくらいの年齢だ。

 

 彼と談笑している男女も俺の方を見る。

 そして近づいてきた。

 

 最初に目が合った彼が話しかけてくれた。

 

「EE級のセカイか?」

「はい。『ニューソード』の方々でしょうか」

 

「ああ。新人冒険者育成制度でお前を受け入れることになった。

 俺がリーダーのウルフだ。俺のことはリーダーって呼べよ」

 

 と言い、ウルフは俺の体を全身隈なく見渡した。

 

 俺も彼の姿をみる。

 

 赤みがかった茶髪のショートヘアでいかにもスポーツ少年って感じだった。

 背は自分と同じくらいで胸は皮鎧を装備しており、腕に手甲を、足には足甲をつけている。

 所々見える肌の部分は筋肉質で体が引き締まっていることが予測できた。

 

「ふーん。そんな顔だったんだな。なんだかさえない顔だな」

「え、はい。すみません?」

 

「マイさんに期待されてるからって調子に乗るなよ!

 それに、俺だってこの前マイさんに褒められたんだからな!」

 

 マイさん。ああ、リアシーさんか。

 まぁ、マイさんは優しいしそりゃあ褒めてくれるんじゃないだろうか。

 

「良かったですね?」

 

「それに、ご飯も一緒に食ったこともある――「はいはい。その話恥ずかしいからやめてよね。ただ近くの席に座ってただけでしょ!」

 

 隣に立つ女子が口をはさみ、彼の耳を引っ張った。

 ウルフはいててとうめいている。

 

 もう一人の男子がため息をつき自己紹介を始めた。

 

「俺の名はシルドアウト。見ての通り剣士だ。はじめに言っておく。俺達は弱い奴はいらない。俺たちの足を引っ張るなよ」

 

 シルドアウトはそういうと黙った。背は俺より少し高い。

 茶髪でマッシュの髪型だ。目は髪で隠れて良く見えないが鋭い目つきをしていた。

 背には高さが50㎝ほどの盾を背負っており、腰にはロングソードがかけられてある。

 

 次にさっきリーダーの耳を引っ張った少女が自己紹介を始める。

 

「私はフレデリカ。魔法士よ。よろしく」

 

 金髪のロングヘアー。背は自分より低い。

 薄紫色のローブに身を包んでおり、手には魔法士用の杖を持っていた。

 

 彼女は続けて言う。

 

「シルドアウトは言い方が悪いけど、私も同意見かな。

 私たちは幼馴染でE級のころからパーティを組んでるの。だから私達自身は新人冒険者育成制度を受けていないわ。それでもたった半年でD級になれた。

 君の実力を私は知らないけど、私たちは本気で上を目指しているから。本気でついてきてね」

 

 ニューソードのメンバーからはあまり良く思われていないようだった。

 少なくとも快く歓迎されてはいない。

 

「自分はセカイ・アライといいます。槍使いです。

 冒険者になってまだ2週間ほどで先輩方と比べたらまだまだ弱いですが、必死についていきます。

 よろしくお願いします」

 

 俺は深々と頭を下げる。

 辺りが沈黙に包まれた。

 

「お、おう。よろしくな。頭上げていいぞ」

 

 俺は頭を上げる。

 3人とも俺を見る目が少し変わっていた。

 ウルフが俺に話しかける。

 

「セカイ、お前いくつだ?」

「15歳です。」

「そうか、俺も15だ。だけどお前は新人冒険者だ。だから基本的に俺たちの言うことには従え。分かったな」

「はい」

 

「よし、一つ目の命令だ。敬語禁止!

 さっきからむず痒くてしょうがねぇ。

 同い年なんだからそんな畏まらなくていいぞ」

 

 俺は呆気にとられた。

 

「え?でも先輩ですし……」

「いやいや、そういうのいいから。

 というか、さっきからお前少しキモいぞ。

 俺の友達でそんな敬語使える奴いねぇよ……」

 

 3人とも大きく頷いていた。

 

「それとも、早速先輩の命令を無視するのか」

 

「わ、わかった」

 

 俺は口がどもる

 良く考えればこの世界に来てずっと敬語を使っていた。

 

 ウルフは俺に向かって手を差し出す。

 

「俺たちは『ニューソード』。

 よく覚えておけよ。いつの日かS級冒険者になるパーティだ。

 1カ月間よろしくな!」

 

 俺は手を握り握手をする。

 

「よろしく」

 

 悪い人じゃなさそうだ。

 それに、しっかりと上を目指す将来に期待を持てるパーティだった。

 

 俺も彼らについていき多くを学んでいこう。

 

 握手を終えると、ウルフは拳で手をパンと叩いた。

 

「よし!じゃあ早速ダンジョンに行くぞ!」

 

 急なダンジョン出発に俺は驚く。

 まだ何もダンジョンについて知らない。

 

「え、ごめん。まだダンジョン用の装備じゃないんだけど……」

「ん?まぁ、武器もってるしいけるだろ」

 

 ウルフはあっけらかんと言った。

 

「いや、道具とか……」

「大丈夫だよ。適当に魔獣を何体か狩って帰るだけだし」

 

 フレデリカがのびをしながら言う。

 

「俺、魔獣と戦ったことなくて……」

「大丈夫だ。弱い魔獣だし怪我もしない」

 

 彼らは俺の実力が一目見ただけて分かったのだろうか。

 俺の強さを期待してくれるのはありがたいけど……

 

 まさか自身が大丈夫だから俺も大丈夫だと思っているわけじゃないよね?

 

 ダンジョンへ向かう途中、俺はフレデリカに質問する。

 

「ダンジョンにはいつもどんな道具を持って行ってるか教えてくれない?」

 

 彼女は口に指を持っていきながら考えた後に、思い出したかのように答えた。

 

「ポーションとか、水とか、それくらいかなぁ?」

「使っているポーション見せてくれない?何を買えばいいか迷ってて」

 

「今持ってないや」

 

「え?」

 

 ダンジョンに行くのに?

 もしかして本当に武器だけしかみんな持ってないのか?

 

 俺はみんなの装備を確認する。

 リュックは誰も背負っていない。

 ポーチのようなものさえ見えない。

 

「多分緑色の一番安い奴だったよ」

 

 大丈夫だろうか。このパーティ。

 

 最初感じていた期待は一瞬で崩れ去り、不安しか残っていなかった。

 

 

 

 

 俺は新人冒険者を連れダンジョンの第一層にやってきていた。

 

 はっきり言って、俺は新人冒険者であるセカイのことが気に食わない。

 

 なぜなら、受付嬢のマイさんが彼に恋をしているという噂が流れているからだ。

 ありえない話だ。

 

 元高ランク冒険者であるマイさんが、ただの新人冒険者に恋をするわけがない。

 

 そう思っていた。彼女の笑顔を見るまでは。

 

 偶然、街中でマイさんを見かけた。

 彼女は白いローブを着た少年と楽しく談笑をしていた。

 

 その時の笑顔が、俺に向ける笑顔とは全く違っていた。

 半年前、彼女の笑顔に一目惚れした俺が言うから間違いない。

 

 マイさんが彼に恋をしているかは分からない。

 だけど、俺には向けていない感情を彼に向けていることは間違いなかった。

 

 すると、セカイが俺に話しかけていた。

 

「リーダー。ダンジョンの第一層ってどんな魔獣が出るか教えてくれない?」

 

 当然俺はそんな彼の質問に答えない―――なんてことはしない。

 

 確かに彼は気に食わない。

 しかし、だからと言って彼と仲良くならないわけではない。

 

 それはそれ、これはこれだ。

 

 彼は新人冒険者で俺は先輩だ。

 俺はどんな奴にだろうと良い先輩でありたい。

 

 それに、たとえ1カ月であろうと彼は俺たちのパーティメンバーだ。

 メンバーに信頼されないリーダーなんて、リーダー失格だろう。

 

 そのためにはまず、俺から彼を信頼する努力をするべきだ。

 俺は彼の質問に答える。

 

「緑の子供っぽいやつと犬っぽい奴だ」

「え?」

「だから、緑の子供っぽい奴と犬っぽい奴だ」

 

「あ、うん。じゃあ、第一層の地図とかってある?」

「ない」

「え?」

「安心しろ。ちゃんと道は覚えてあるぜ。真っすぐ行って右に曲がって左に曲がってもう一回右だ」

「ありがとう……」

 

 これで彼からの信頼度は爆上がりだろう。

 それに、もし彼に良いところを見せたら、そのことをマイさんに話してくれるかもしれない。

 

 なんだか楽しみになってきた!

 

 

 

 

 新人冒険者であるセカイが魔獣との戦闘を始める。

 俺たちはその様子を後ろから眺めていた。

 

 彼の実力をはかるため一人でゴブリンと戦ってもらうことにした。

 

 もしもの時は間に入り、彼を守るつもりだ。

 

 彼は自己紹介でいった通り槍を構える。

 対するゴブリンは素手だ。

 

 ゴブリンはこぶしを振り上げ襲い掛かる。

 

 セカイは槍の側面の部分でゴブリンの顔を叩いた。

 

 ゴブリンは横に吹っ飛び転がる。

 

 彼は転がっているゴブリンに向かって槍を構えた。

 しかし、一向にとどめをさそうとしない。

 

「何をしている。とどめをさせ」

「うん、わかった」

 

 ゴブリンは呻いて立ち上がってこない。その間に首に槍の刃先を突きつけた。

 しかし、そこで止まった。

 

 ちっ、腑抜けが。

 

 俺は彼に近づき槍を手で思い切りおした。

 

「あっ」

 

 槍はゴブリンの首を貫く。

 ゴブリンは大量の血を流して絶命した。

 

 俺はゴブリンの耳をナイフでとる。

 

「いいか、こいつらは魔獣だ。

 知性がなく人間を襲う。躊躇するな。躊躇した分俺たちが傷つくからな」

「……ごめん。次からは気を付けるよ」

 

 その後も何度か彼はゴブリンと戦った。

 

 先ほどみたいに躊躇はしなかったが、とどめを刺す時目をそらしていた。

 

 やはり彼は俺たちのパーティに相応しくない。

 

 たかがゴブリンを倒すのに時間をかけすぎだ。

 身体能力が低いのは勿論、魔獣を殺す覚悟もない。

 

 俺なら彼が一体のゴブリンを倒す間に、5体以上倒せただろう。

 

 ただ一つ褒めるとしたら、槍の扱いの正確さだ。

 一体目以降は無駄に相手を傷つけることなく、正確にゴブリンの急所を攻撃していた。

 

 槍の扱いに関してはEE級以上の実力を持っているだろう。

 

 

 

 

 パーティに入ってくる新人冒険者が、憧れの白ローブの少年だと知り私は失望していた。

 

 白いローブは私の実家で売っていた、当時最高級の魔魔道具だ。

 認識阻害と清潔の二つの魔法が付与されており、その効果も強くD級以下にはレジストできないほどだ。

 

 王都などにあってもおかしくない、うちの自慢の品だった。

 

 しかし、高すぎて誰にも売れなかった。

 

 私は店番をしながらいつもそのローブを眺めていた。

 

 綺麗なローブが目立つところにかけられており、お客さんの多くが足を止めそのローブを眺める。そして、その効果と値段に驚き悔しがりながら帰っていくのだ。

 

 まるで私が褒められているかのように嬉しかった。

 

 しかし、5年前誰かがそのローブを買っていった。

 私は店番から外れていたため誰が買ったか分からなかった。

 

 父さんが言うには衛兵の人が買っていったらしい。

 

 私はショックを受けた。

 

 いつもそこにあったローブが無いだけで、1カ月間くらい落ち込んだ。

 そして、同時にどんな人が買っていったか気になった。

 

 しかし、あれだけ高価な品だ。

 

 きっと強い人なんだろう。と子供ながら私は思っていた。

 

 3週間程前、私はそのローブを再び目にした。

 

 白いローブを着た少年が、警備隊の訓練所に入っていくのが見えたのだ。

 

 長年見ていたので見間違えるはずがなかった。

 衛兵が買ったという情報とも会っている。

 

 間違いなくうちのローブだ。

 

 私は嬉しかった。

 

 白いローブを買った人が同じくらいの少年だったからだ。

 あの高価なローブを変えるくらいお金を持っている衛兵の少年。

 

 きっと強いに違いない。

 

 私はいつの間にか彼に強いあこがれを抱いていた。

 

 だから、その正体が新人冒険者で、彼の冴えない素顔を見たときとてもがっかりした。

 裏切られた気分だった。

 

 分かっている。これは私の勝手な思い込みだ。

 私が勝手に勘違いしていただけ。

 

 彼は何も悪くない。

 

 でもどうしようもなく思ってしまう。

 彼なんかに買ってもらいたくなかったって。

 

 

 

 

「どうしましたか?いつもと比べて暗い顔をしていますが……」

 

 回収した魔獣の素材を買い取ってもらっていると、リアシーさんから心配された。

 

「え、そうですか。そんなことないと思いますけど」

 

「セカイさん、抱え込むのは良くないですよ。

 新人冒険者育成制度では先輩冒険者とのトラブルも良くあるんです。

 ついつい新人冒険者は我慢して、体を壊したりトラウマを抱えて冒険者を諦めてしまう人もいます」

 

 そんな人もいるのか。

 彼らは決して悪い人じゃなさそうだけど、上手くやっていけるか正直不安だ。

 

 俺は彼らに良く思われていなさそうだった。

 そして俺自身も彼らの冒険者のスタイルに思うところがあったし……

 

「そうなんですね……」

 

「もしよろしければ私が話を聞きましょうか?

 私も昔は冒険者だったんです。先輩としてなにかアドバイスができるかもしれません。

 

 それに大人に相談すれば意外とあっさり解決することもよくあるんですよ」

 

 リアシーさんも冒険者だったのか。

 それに大人に相談……か。

 

「お気遣いありがとうございます。

 だけど、もう少し自分で頑張ってみようと思います」

 

「……分かりました。頑張ってくださいね。

 けど、無理をする前には私に相談してください。絶対ですよ」

 

「はい、ありがとうございます」

 

 俺はお金を受け取り、彼女にお辞儀をしてその場を去った。

 

 

 帰り道、なんで彼女の相談を断ったか考えていた。

 

 異世界に来てわかったことがある。

 

 俺は子供だ。

 子供は多くの大人に頼って生きていたんだ。

 

 この世界に来て俺はカインさんに頼りきりだ。

 ビルキさんも俺の鍛錬に付き合ってくれている。

 リアシーさんはE級の簡単な依頼にもたくさんのアドバイスをくれた。

 

 彼らは何ともないような顔で俺をいつも助けてくれた。

 

 俺にはそんな真似はできないだろう。

 今も自分のことで精いっぱいだ。

 

 俺は彼らに何もできない。

 頼ってばっかり。

 

 けど、それが普通なんだと思う。

 

 彼らは俺を助けることを苦に思っていないから『大人』で

 俺は彼らに頼ることしかできないから『子供』なんだ。

 

 俺は現代にいた時のことを思い出す。

 

 中学2年生の時、母さんとよく喧嘩した。

 すごくイライラしている時に限って、俺を叱ってくるからだ。

 

 そんな後でも、母さんは俺の分までご飯を作ってくれていた。

 

 父さんは母さんと比べて優しかった。

 母さんと喧嘩した後、優しい言葉で俺を諭してくれた。

 

 父さんみたいに優しくなりたいと思えた。

 

 当たり前のように俺は両親の優しさを頼っていた。

 

 俺は子供だ。けど頼ってばっかりじゃいつまでも子供だ。

 

 早く大人になりたい。

 

 彼等みたいな立派な大人に。

 

 

 

 

 私は去っていくセカイ君の後ろ姿を眺めながら考えていた。

 

 作戦は失敗した……けどしょうがないだろう。

 

 今日はまだ1日目だ。

 

 想定通り彼等とは上手くいかなかったようだ。

 思ったより、彼らにとってセカイ君の印象が悪くなさそうだったので焦ったが杞憂だったようだ。

 

 彼らと冒険を続けていくうえで、いつか私に相談してくれるだろう。

 

「作戦は上手くいかなかったようだね」

 

 ガイルが私に話しかけてきた。

 

「分かってるわよ。焦ったりしないわ」

「そうそう。毒らせて出てきたところを罠にかけて討つ。

 いつもの戦法だと思えばいい。

 

 で、彼らをどう思う?」

 

「ニューソードのこと?」

 

「うん。S級を目指しているみたいだけど?」

 

 ガイルは嫌な笑みを浮かべる。

 どうせ、私がなんて答えるかなんて分かってるだろう。

 

「S級が無理なのは当たり前として

 まぁ、いってB~BB級ってところじゃない?

 または、C級の途中で大けがをして脱落ね」

 

 冒険者ランクは強さの基準になっている。

 

 鍛錬や修行、実戦を繰り返すことで魔力や気の総量が増え体が丈夫になっていくのは常識だ。

 冒険者はその現象を『成長』と呼んでいる。

 

 成長の度合いは人によって大きく変わってくる。

 魔力が上がりやすい人がいれば、体が丈夫になりやすい人もおり、種族によっても成長の振れ幅が変わる。

 

 しかし、誰もがその成長が止まる時がくる。

 

 成長が遅くなる、成長の幅が小さくなるとかではない。

 成長が一切しなくなる。

 

 冒険者はその現象を『壁』と呼んでいた。

 

 実際は、完全に成長が止まるわけではない。

 強敵を倒してたり優秀な師のもとで鍛錬を行うことで、再び成長が始まることが多い。

 

 冒険者ランクはヒューマンの『壁』を基準にしている。

 

 冒険者ランクで最も人口が多いのはD級だ。

 これは多くの人がD級からC級までの間に『壁』に躓き成長がとまるからだ。

 

 そしてB級とA級の実力の間には、最も大きな『壁』が存在する。

 

 彼らは若く才能がある。始まりの街のダンジョンはあっさり全て攻略するだろう。

 しかし、活動拠点を都市に移したときに現実を知るはずだ。

 

 B級は珍しいが特別じゃない。

 

 自分たちはただの『才能がある冒険者』に過ぎないのだと。

 

 化物(A級)とは次元が違う。

 

 それ以前に、彼らは慢心しきっているため、拠点を移したとき調子に乗って大けがを負う可能性がある。

 良い師に出会えたら別だろうけど。

 

「俺はそうは思わないな」

 

「もっと低い?でも才能は本物よ」

 

「逆だ。彼らはA級になりうる」

 

「正気?あんな仲良しグループがA級にいくなんて絶対に思えないけど。

 それに私たちがあれくらいの時を思い出しなさいよ。こんなぬるま湯な環境で強くなれるわけがないわ」

 

「俺もそう思っていたよ。今まではね。

 けど、今は違う。今は()がいる。

 と言っても、A級になる可能性が見えた程度だけどね」

 

 幼馴染は悪い笑みを浮かべた。

 良くないことを考えている時の顔だ。

 

「なんでもいいけど、セカイ君は私と結婚する予定だからあのパーティにはいられないわよ」

 

「安心してほしい。

 そこらへんも含めて『作戦』を考えているよ。

 だからマイはちゃんと彼をおとしてくれよ」

 

 40年間の付き合いで分かることもある。

 

 彼は他人が苦しんでいると笑って喜ぶため皆から嫌われている。しかし世渡りが上手なため上層部からは好かれている。自身のためなら平気で犯罪を犯すし、それで誰かが犠牲になっても何とも思わない。

 

 彼は悪い大人だ。

 

 しかし、一度も私を裏切ったことはない。 

 私の信頼する仲間だ。

 

 




【ステータス】

名前:ウルフ
種族:ヒューマン
レベル:49

印象:嫉妬?

体力:201
攻撃:149
防御:111
俊敏:205
魔力:15
聖力:10
気力:138

備考:

D級冒険者パーティ『ニューソード』のリーダー。
拳闘士。惚れやすい。


【ステータス】

名前:シルドアウト
種族:ヒューマン
レベル:45

印象:侮蔑

体力:197
攻撃:186
防御:183
俊敏:42
魔力:14
聖力:11
気力:145

備考:

D級冒険者パーティ『ニューソード』のパーティメンバー。
剣士。甘味が好き。


【ステータス】

名前:フレデリカ
種族:ヒューマン
レベル:42

印象:失望

体力:128
攻撃:203
防御:72
俊敏:30
魔力:251
聖力:51
気力:84

備考:

D級冒険者パーティ『ニューソード』のパーティメンバー。
魔法士。両親を家ではパパ・ママと呼んでいる。
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