嘘企画:仮面ライダーオールズ   作:大島海峡

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第一話(という名の単発):ハッピー・バースデイ・俺
(1)


 かつて、とある研究者が言った。

「世界は美しいままに終わらせるべきだと」

 そしてその言葉通り、世界は一度滅びかけた。

 

 だが、人は始めることは容易に出来ても、終わらせることは難しい。

 世界は続く。社会は変容しつつ再形成された。

 

 地上に総人口の八割が消滅してより九十九年。

 この世紀において人類の技術と叡智はその再生に全注された。それがために、ある意味では争いのない、平和な世界だったと言える。

 

 だが平和とは薄明の果実だ。

 甘美の時を過ぎれば腐敗が始まる。

 人口の再増加と共に再燃する、領土や天然資源やエネルギー問題。渦巻く欲望。

 

 先行きに希望を見出せない退嬰の時代、件のイカれた科学者の終末思想が蘇る。

 カルト教団『真理の木』と、その形と名を改めて。

 爆発的に増える信者。彼らによってもたらされる超技術を用いたテロ。

 事態を重く見た政府は、古代錬金術師の残した、かのメダルとは系統を似せつつも異とするアーティファクト『コアクラウン』をもとにライダーシステムを構築。

 官民、自薦他薦を問わずテロや彼らの使役する怪物たちの脅威と立ち向かう戦士を求めた。

 

 その戦士の名は、仮面ライダー。

 かつて人類絶滅を阻止した、救世主の通称。

 

 ~~~

 

 中央都市、希望が丘。

 辺境と較べればはるかに整備されたその区画の大通りを、一台のキッチンカーが走行している。

 自動操縦でゆったりと進む中、振動を極力抑えられた車内で、そのオーナーたる青年は調理にいそしんでいた。

 

 ハッピーバースデーソングを絶えず流し、時折それに節を自らつけて口ずさみながら。

 オーブンからスポンジを取り出し、ふっくらと焼き上がったその出来に両手袋を摩り合わせながら満悦の表情を浮かべ、クリームを片手で引き寄せる。

 段は三層。クリームも三色。

 下層はアボガド、中央はバナナ、そして上層は真っ赤なベリー。

 ヘラでたっぷりとスポンジにコーティングしていく彼だったが、外部はそんな一種異様とも言える様子に関心を向けた様子はない。

 彼らの視線は、ビルの広報パネルなどに映し出された、ニュース映像に注がれていた。

 

〈……繰り返しお伝えいたします。今朝、総統府より第一期仮面ライダーに選ばれた五名が発表されました〉

 

 音楽の合間を縫って聞こえて来たその報道に、絞り器をもっていた青年の手が止まった。

 自動車を停め、車体の横窓を開け放って身を乗り出し、自身もディスプレイを覗き見た。

 

〈まず一人目は、緑尾(みどりお)(そろい)氏。公称・仮面ライダーレギオンズ。現職の保安委員会の連隊長です〉

 まぁ妥当な人選だろう。歳は三十そこそこか。精悍で剛毅な顔つきに、使命感を滾らせて直立敬礼して拝命している様子が流されている。

 

 当然と言ってはそうなのだが、官憲とは常に民衆のウケが悪いもの。加えて普段自分たちを制圧する側の人間とくれば、通行人たちの反応は微妙なものだ。

 

〈二人目は、蓮着(はすぎ)央司(おうじ)氏。仮面ライダーメイガス。蓮着氏は、言わずと知れた総統……〉

 役人が続く。こちらは総統補佐官であり、そして――。

 公言されてはいないものの、ライダーエージェントたちの実質的な指揮官だろう。

 貴種ゆえか、政治家としての武器であるがゆえか。スーツ姿の青年は、若々しく溌剌としていて爽やに意気込みを報道陣に答弁している。

 もっとも、腹の底ではどう考えているのか、知れたものではなかろうが。

 

〈三人目は、土鶴(つちづる)(とおる)。仮面ライダーゲリュオンズ。医療法人財団DATE(デイト)に所属する救命医で、出向というかたちで参加する土鶴さんは、実働部隊としての役割以外にも、他のエージェントの健康・メンタル面のサポートを担当し〉

 ギリシャ神話の巨人の名を冠するコードネームのいかめしさとは裏腹に、いかにも気の弱そうな蓬髪で童顔、骨の細い若者。

 まず自分の健康やメンタルのケアが必要というのが、薄笑いとともに得た青年の見立てである。

 

〈四人目は、キリシャ・ペグパウラー。仮面ライダーアクエリアス。同氏は内定と同時に欧州共同体の駐在武官として先日着任しており、両政府の友好関係を示す象徴として……〉

 小麦色に色づいた肌とは好対照の、透き通った髪質。切れ長の相貌は、理智と気位の高さを饒舌に語る。

 水というよりかは、氷柱の冷たさと鋭さを持つ妙齢の女だ。 

 来日時、さっそく取り囲む報道陣を腕一本で拒む様子の映像が流れるが、とても対等の外交関係に心を砕くような、フレンドリーな所作ではなかった。

 

〈――そして最後の五人目は〉

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