嘘企画:仮面ライダーオールズ   作:大島海峡

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「どうかね?」

「右斜め四十五度。写真うつりの完璧な角度かと。大昔で言うところの『バエ』ですな」

 

 主役たる仮面ライダーたちでなく、まず自身の撮影を終えてスタジアムのVIPルームへと戻った総帥、蓮着冷峰(れいほう)に対し、よどみなく央司は答えた。

 

 もっとも、内心では多少の角度のズレなどはさしたる問題ではなかろうと思っている。特に、その礼服はいただけない。

 最後の総理大臣にして初代の総統の愛用していたブランドか知らないが、その詰襟の衣装は、軍服というよりか学生のコスプレのようだ。

 いずれ自分が眼前の父から座を譲り受けた暁には、公務にせよ式典にせよ、この手の悪趣味は改めていこうと心で誓う。

 

「で、我らのニューヒーローたちの様子はどうかね? 補佐官」

 我が子としてでなく役職として、第八代総帥は諮問した。

「すでに緑尾(レギオンズ)キリシャ(アクエリアス)は到着済み。残りの二人も、数分の遅れを生じつつもこちらに向かっているようです。私も、雑務を片付け次第、彼らと合流します」

 

 そう言って央司は、横向きに倒した長細いボトル状のデバイスを手に掴んだ。

 通称『トライバルドライバー』。

 コアクラウンの高いポテンシャルを引き出し、仮面ライダーメイガスとしての装備や動力とする転換器である。

 それに強化アダプタたる『オープナー』を取り付ければ、より安定し、かつより多くのポテンシャルを引き出すことが出来る。

 

「しかし、アンカーズ。あれは問題でしょう。いくら公平さをアピールするための民間からの器用と言っても素人の、それもただのカルト教団の一修道女をライダーとして選ぶなど」

「まぁそう言うな。彼女は『教祖様』の肝煎りの養女でな。その彼女に、どうあっても赤の王冠を使わせろとの要請なのさ。教団の機嫌も多少は取っておかねばならない」

 なにしろ、と手をかざしながら、薄く父は笑った。

「我らの先祖たるかの英雄を、崇めている古くからの同志なのだからな」

「先祖、ですか」

 血の繋がりを我ながら否応なしに感じさせる苦笑とともに、ミネラルウォーターを親へと差し出した。

火野(ひの)家と我らとは、遥か前に縁が切れたものと思っていましたが?」

「それは向こうが勝手に思い込んだだけだ。我が一族にとっても変わらず彼は、富と名声をもたらしてくれる、幸福の神様だよ」

 

 そう言って器の半分以上の水を一気に飲み干して、口元を袖で拭いながら冷峰は言った。

 

「まぁ過去のことよりも、今に目を向けようじゃないか、メイガス」

「……今のことにも、不安が残ります」

「ほう、たとえば」

「この会場の警備体制。やはり、緑尾の抜けた穴が大き過ぎます。彼が『ライダー業』に就くとなれば、今後の治安維持全体にも不安が多少ならずある。実際、数日前にもライダーシステム開発部門へサイバー攻撃が仕掛けられた形跡がありました……治安を守るための政策が逆に情勢を不安定化させては、あまりに本末転倒ではありませんか?」

 

 だが父はそれに対して一つ笑い声を立てた切り。明答などしない。

 黙って従え、もしくは自分で考えろとの暗黙の意向。

 それを汲んで半歩下がり、首を垂れる彼に、

 

「一時的なことだ。いずれライダーの量産化の暁には、彼にはあらためてその部隊の指揮官として、手腕を奮ってもらう」

 

 その言葉の意図するところ、目指すところの先は理解できる。

 そもそも、たかがテロリスト相手にライダー五基の時点で過剰戦力だ。治安維持を大義名分とした、戦力の確保。そしていずれは軍事方面への転用。

 

 それを知り、かつ止めることが出来る立場にあるのは、きっと自分しかいない。

 が、自らを射抜くような父の視線に触れた瞬間、央司の全身は強張った。

 何者にも我が歩みは止めさせぬと言う、覇者の目。

 

「そう怖い顔をするな」

 かと思えば、一転して柔和な笑みを浮かべ、ボトルを置いて立ち上がるや、我が子の肩を叩いた。

 

「あまり細かいことは気にしないことだ。心配をしてくれるのは、父親として嬉しいことではあるが、な?」

「……はい」

 

 別にあんたの命なんか気にもしていない。戦争ごっこがしたければ一人でもしたら良い。

 あんたが、いずれ俺が座ることになるその玉座を巻き込んで消えることを、案じているだけだ。

 

 今、この場にはSPも居らず二人だけ。この手には、目の前の支配者の肉体を粉砕するだけの力を掴んでいる。

 だが、肩にのしかかった重圧を、央司は払い除けられる気がしなかった。

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