嵐が止んだ。
いつの間にか自分たちを襲っていた怪物たちの消滅を悟った群衆たちは、そして事を傍観していたライダー候補者たちは、中心に立つ彼を注視する。
乱入し、ただ一人で強引にこの襲撃を収束させた仮面の戦士は何を想い、何を語るかと。
その青年は、両手を掲げてみせた。
降参のポーズか。否、変身自体はまだ解く様子はない。
自身の頭上で、手を打ち鳴らす。しきりに、何度も、こちらに何かを促すように。
「え、なに?」
「そういう、演出だったの?」
「ばか、んなワケあるか。ヤミーは実物だったろ」
「ていうか、六人目?」
人々は囁き合いながらも、彼が何を求めているか、なんとなしに察しはついた。
忘我したままに、誰かが合わせて手を打ち鳴らした。さらにそれにつられて別の誰かが手を鳴らす。
互いに互いの音をつなぐように、拍手が重なり、連なり、やがて重層な音曲となって彼を囲む。場所柄も相まって、ふだんスタジアムで行われたライブのように。演目をやり遂げた劇団に贈るかのように。
ひとしきりそれを担当した仮面ライダーは、突き上げた手をくるりと翻し、拳を握る。
そのワンアクションで、催眠にかかったかのように拍手は止み、静寂が訪れた。
場が、完全に彼に掌握されていた。
「偽りの、仮面ライダーたちよ」
と、自身を囲む本来の装着者たちを見回しながら、
「今日はめでたいお誕生日。だがそれはお前らのじゃない。何しろお前たちは、未だライダーではないんだからな」
それぞれの立ち位置で五人の顔色が変わり、その表情は険しいものになる。
確かに自分たちは変身できなかった。だがやるべきことをしたはずだ。しようとしたはずだ。
そのことを、その存在を、根底からこの男に全否定される謂れはなかったはずだ。
この、途中から横槍で殴り込んできて、周囲の状況などまるでお構いなしに自由に暴れるだけだった、このアウトローには。
「Out of Law Side。体制の外側に在る自由の守護者。それが俺の名。仮面ライダーオールズ」
あらためて自らの音声でもってそう名乗った彼は、誰もが青ざめるような大言壮語を吐いた。
「そしてこの俺こそが救世主――いや、オーズを継ぐべき仮面ライダーだ」
突き上げた腕が、ゆっくりと胸の高さまで下がっていく。相対して睨む紅い修道女に、見えはしないがマスクの奥でその青年は、確実に笑っていた。
そして情と熱を込めて、その仮面ライダーは言い放った。
「ハッピーバースデー、俺!」