無人島の試験が終わり、3日がたった。
その間俺は体を動かしたり、ひよりと読書したりしてのんびり過ごしていた。
龍園は負け犬の演技をするように指示を出していたが、クラスは以前より活気があり、仲が深まったグループも多く、無人島の試験を経て、クラスに団結力が芽生えつつあるようだ。
ひよりが言うには、ポイントの結果を見れば、試験の各々クラスの動きもわかる人にはわかるらしい。なら気にする必要もないだろう。
俺は無人島で少し龍園と仲良くなったこともあり、同じ部屋の雰囲気がよくなった。
ちなみにルームメイトは、龍園、石崎、アルベルト、俺という、クラスのはみ出し者を一か所にかき集めた地獄のような部屋だった。
「よぉ正宗。これからアルベルトと筋トレ行くんだけど一緒にいかねぇか?」
石崎君は、いかつい顔に似合わず人懐っこいところがあり、なんか憎めないんだよなぁ。
昨日も3人で筋トレをしている。
「いいぜぇ。俺の力をみせてやんよぉ。」
そんな感じで一緒に筋トレ楽しんでいたら急に船内アナウンスが流れた。
なんでも、非常に重要なメールがきているから携帯を確認しろとかなんとか言っている。
・・・
俺達は着替えて、部屋に戻っていた。
するとクラス全員に龍園からメールが来る。
「試験の内容をきちんと記憶またはメモしろ。説明が終わったらカラオケルームに集合し報告しろ。」
さっそく龍園が動いてくれたか。
「なんか、この学校の試験って、複雑すぎてついていけねぇよな。」
そう言って石崎君が頭をかかえる。
「たしかによぉ。もっとわかりやすい試験にしてくれねぇと困っちまうぜ。」
俺も石崎と同じ考えなので同意する。
「・・・・・・・・・・・・・・」
アルベルトも同じなんだろうか。きっとそうだろう。
・・・
時間になり202に行くと、俺が最後だったようだ。
部屋には時任と矢島がすでにいた。
あー、二人とも無人島で少し話したから心強いな。
俺は黙って椅子に座る。
「はいはーい。みんな揃ったねー?じゃあ、説明始めるよー。」
そう言って説明を始めるのはCクラスの担任である星之宮だ。
説明は、やはりというか複雑だった。
感触としては、「俺向きの試験ではない」ということがわかった。
俺向きの試験に出会ったことはないけどな。
クラスのメンツの顔をみたが、俺と似たり寄ったりで、考えるのをやめたようだ。
・・・
全員の説明が終わった後、カラオケルームでそれぞれの結果を龍園たちが整理した。
「おい。明日の8時に全員集合だ。そこで全員携帯を見せろ。優待者を確認するぞ。今から呼ぶ奴以外は解散しろ。金田、ひより、正宗、以上だ。」
そう言ってお開きになる。俺も残るのか。
正直何もできないと思うが、ひよりのボディーガードだと思うことにしよう。
「ひより、金田、どう考える?」
龍園も俺には期待していないんだろう。よくわかってるじゃないか。
「そうですね。優待者に選ばれたクラスが圧倒的に有利だと思います。だまっているだけでポイントが手に入るのですから。試験を公平に行うためには、各クラス3人の優待者が選ばれると思います。」
金田がメガネを挙げながら説明する。
前々から思っていたが、金田君は説明がうまいよなぁ。
俺にでもわかるように説明できるのは才能だと思う。正直、龍園やひよりは説明がぶっとんでいて理解できないことも多いからな。
「おまえはどうだ?ひより?」
「そうですね。シンキングという試験である以上、ただ優待者を探す試験ではないと思います。おそらく優待者は、法則のようなもので決められて、その法則をつかめば全クラスを当てに行けるのではないでしょうか?」
龍園はひよりの話を吟味しているようだ。
「確かにな。。。金田、ひより、お前らは優待者の法則を見抜け。見抜いたら450ポイントを葛城に売りつけるぞ。そっちは俺がやってやる。」
そう言ってこの場は解散となった。
うん。俺は見事に置いてきぼりだったな。実際役に立てそうにねぇしよ。
・・・・
翌日、8時前に全員がカラオケルームに集まった。
時間通りにメールが届く。
「厳正な調整の結果、あなたは優待者に選ばれませんでした。・・・・」
よかった。俺は優待者じゃないらしい。ポーカーフェイスは苦手だからな。
ポーカーフェイスといえば、Dクラスの綾小路君はどう動くんだろうな。
リーダーをリタイアさせた手腕などから、龍園の一番関心のある生徒らしい。
「よし。ひより、金田は残れ。それ以外は解散しろ。勝手に優待者を指定するなよ。」
そう言って、解散した。
まぁ、俺に法則を見つけれるとは思っていないのでのんびりさせてもらうことにする。
・・・
試験の時間となり、「牛」とかかれたプレートの部屋に入った。
室内には20人くらい座れそうなテーブルと椅子がおいてあり円のように囲んで座る構成のようだ。
すでに何人か座っているが、ある程度クラスで固まっているようだ。俺は時任君の隣に座って雑談をした。
話していると、Dクラスが部屋に入ってきて、騒いでいた。
ちょっと苦手そうなタイプだな。
・・・
『では第1回のディスカッションを開始します』
簡潔で短いアナウンスが流れ試験が開始した。
誰が最初に話すか少しけん制して、誰も話し出さなかったため、俺と時任君や矢島がさっさと自己紹介をして、他のクラスに回すことにした。
全員で自己紹介を回した後、どうやって試験を進めるか話し合いが始まった。
順調に話し合いが進むかと思ったが、Aクラスが突然話し合いを打ち切ってしまった。
「俺達Aクラスは話し合いを持たない。沈黙を保たせてもらう。」
Dクラスの池というやつが色々騒いでいたが結局、Aクラスの連中は部屋の隅に移動してしまった。
もう話すことはなくなったらしい。
正直、みんな何を話せばよいかわからないようなので、各クラスで固まって雑談することになった。
「正宗君は、龍園君やひよりちゃんから作戦は聞いていないの?」
「ああ、なんか作戦っぽいこと言っていたが俺の頭に入ってこなかったんだぜ。」
「えー、だめじゃん。」
そんな身のない話をしながら1時間が過ぎ、解散となった。
・・・
夕方ごろ龍園から呼び出しを受け、カラオケルームに入った。
「そろったな。始めるぞ。」
カラオケルームには龍園、金田、ひより、俺がそろった。
「今回の試験の優待者の法則を、金田とひよりが解いた。これが結果だ。」
そう言って結果の紙を俺に見せる。
まじかよ。金田とひよりはさすがだなぁ。
このクラスちょっと強すぎるんじゃねぇか?
「ただし、これは法則が当てはまったというだけであって、確実とは言えません。」
ひよりが一言断る。
ほぼこの法則で間違いないと思うが、絶対ではないよな。
「あと二人ほど、答えを見つけて確証を得たいところですね。」
金田が補足する。
しかし、どうやったら二人みつけるなんてできるんかねぇ?
「葛城を使ってはったりをかますぞ。おそらく優待者をあてれば多少は表情にでるだろう。その反応を見てあたっていれば、そのまま9人の優待者を売りつける。」
「龍園君一ついいでしょうか?」
ひよりは考えながら発言する。
「なんだ?言ってみろよ。ひより。」
龍園もなんだかんだひよりのことは認めているようだな。
「その話し合いに金田君を同席させていただけないでしょうか?そして代わりに、Aからも二人で来ていただいて2対2で話し合いをしましょう。」
ふむふむ。まぁ、龍園一人に任せるよりも金田君がいた方が安心だな。
少なくても殴り合いにはならねえだろうな。
「・・・葛城が誰かを連れてくるとしたら十中八九、戸塚だろうな。そういうことか。」
どういうことだよ?もうツッコミがおいつかねぇよ。
「なるほど。葛城君は慎重な男なので、優待者を突き付けられても顔に出るかどうか怪しいです。しかし、戸塚君はかなり顔に出やすく、お世辞にも交渉に向いていない。そこを狙い撃つんですね。」
やっぱり金田君。おまえは最高だよ。
俺にわかる説明をしてくれるのはお前しかいない。
「クックック、信頼する部下が無能ってのは大変だよなぁ。正宗?」
「うるせぇ。このタイミングで俺を引き合いにだすんじゃねぇよ。」
最近全然クラスの役に立てていないので肩身が狭いぜ。
今の俺にできることは会話の邪魔をしないようにツッコミを入れることだけだ。
そういうわけで、龍園は葛城を呼び出すことになった。
・・・
~~龍園サイド~~
「葛城。無人島以来だな。」
「ああ、無人島の礼がまだだったな。おまえらのおかげで、Dのリーダー当てを、取りやめることができた。状況的にDにリーダーを当てられてしまったようだが、最悪170ポイントで終わっていたところだったんだ。感謝するぞ。」
葛城がのんきに礼を言ってくる。本当は坂柳派がリーダーをリークしてきたから、指名すれば120ポイントだったんだがな。
正宗にそんな頭はない以上、ひよりの考えだろう。
そしてその結果が今につながっているのだから、ひよりのことは認めるしかないな。
俺とは別の視点と考えを持ち、物怖じしない性格でひるまず意見を出してくる。
クラスで唯一の替えがきかない、守る価値のあるやつだ。
「すみません。葛城さん。俺がリーダーを見抜かれたばかりに。。。」
戸塚は反省しているようだ。どう見抜かれたのか、リークされたのか知らねえが殊勝なことだ。
「慎重なのもいいが、助言に従ってCのリーダーをあてに行けば+50ポイントだったことも覚えておけよ。ある程度信用されてるとみて今回も取引しようと思ってんだ。」
「確かに一定の信用はした。っが、メリットがない限り取引には応じないぞ。」
そういって葛城はけん制してくる。
「それでいいさ。」
「ふむ。さしずめ、お互いの優待者を教えて、それぞれ指名し合うといったところだろうか?」
呼び出された時点で葛城はある程度こちらの手を予想してきたようだ。
たしかに、法則に気づかなかった場合は、お互いの優待者を当て合うのも考えていた。
「いや、その必要はない。なぜならおまえらの優待者はこの3人だろ?」
そう言って、携帯に入力された3名を葛城と戸塚に見せる。
「どういうことだ?」
3名を見ても葛城は大して動揺することはなかった。
良い反応だ。多少の動揺は見えたが、確信に至れるほどではない。
だが残念だったな。
隣の戸塚にも演技指導をすべきだったな。驚愕した態度を全く隠せていない。
金田とも目配せし、同じ結論であることを確認した。
「クックック、俺たちは『厳正なる調整』にたどり着いた。ここからが取引だ。」
葛城も横の戸塚の態度から隠し切れないと悟ったのだろう。
絡めとられたことを肌で感じ、苦虫を嚙み潰したようこちらを見る。
「何が目的だ?」
「簡単さ。試験の法則及び、BCDの9人分の優待者を教える。見返りに、450万ppと毎月180万ppを追加でもらう。これで、おまえらは圧倒的なcpを手に入れAクラスでの卒業を約束され、俺たちは卒業までに1億近いppが約束される。悪い取引じゃねぇだろ?」
葛城と戸塚は考えている。
ここで取引に応じなければ、Bクラスが300cp以上を手に入れてしまい、おそらくAクラスは-150cpとなってしまうだろう。
そうすれば、AとBは順位が入れ替わり、葛城派の勢力は落ち、坂柳派が台頭することが目に見えている。
残念ながら葛城には選択肢がなく取引に応じるしかなかった。
「わかった。その条件で契約しよう。」
こうしてこの試験は終わりを迎えることになった。
・・・
Aクラスと契約を結んでからは、とんとん拍子に話は進んだ。
答えにたどり着いてしまえばあとはただの消化試合だったようで、面白いことは何もない。
っと思ったらどさくさに紛れて、Dクラスが優待者を当てる珍事件が起きた。
噂によると、高円寺君の気まぐれだとかなんとか。
さらに、Aクラスはメール誤送信もあって、結果4もでてしまったようだ。
龍園いわく坂柳派が葛城落としに動いているとか。
坂柳ってのは敵でも味方でも危ない奴のようだ。葛城君も苦労が絶えないな。。。
龍園は綾小路君と堀北さんを挑発しに行ったらしい。
俺とひよりと金田君は珍しいメンツでご飯をたべていた。
「しかし、Aに情報売らずに、俺らが9人分の優待者当てちまえば圧勝だったんじゃねぇの?」
俺はひよりに聞いてみる。
「ポイントだけ見ればおっしゃる通りです。しかし、私たちのクラスはまだAに上がるべきではありません。それは龍園君もわかっているはずです。」
俺が首をかしげて考えているとひよりが優しく教えてくれる。
「葛城君や一之瀬さんのクラスであれば、Aクラスに君臨して防衛しづつけることができるかもしれませんね。しかし、私たちのクラスは、成績も含めてすべての能力が平均以下です。Aに上がるリスクの認識を持ち、覚悟のある生徒も龍園君と金田君ぐらいです。」
金田君も同意見だったようで会話に参加する。
「『天の時、地の利、人の和』争いで勝つためには、この全てが必要となります。我々は全部が欠けており、勝負になりません。」
いつものわかりやすい金田君はどこにいった!
俺が頭をひねっているとひよりが解説してくれる。
「ふふ。要約すると、ppをためる環境を作り、クラス全体の人を育て、時を待て。ってことですね。仮に今の状態でAクラスに上がっても、数か月後には確実に転落します。」
なるほど。結構大胆に勝ってる気がしていたが、俺たちのクラスはそんなに楽観できる状況ではないのか。
目先しか見えていない俺と違って、二人は先の先まで見通しているようだった。
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A:+150cp,+350万pp
B:+ 0cp,+150万pp
C:- 50cp,+ 50万pp
D:-100cp,+ 50万pp
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今年のCクラスは素晴らしいですね。
ラウンジで一人でワインを飲みながら坂上は考える。
龍園君に椎名さん。そしてこの二人をつなぐ筒井君。
Cクラスの担任になったときは、荒くれ物集団でまとまることはないだろうと思っていたが、当初の予想に反し、クラスはしっかりと機能していた。
その結果、無人島でも船上でも素晴らしい成果を上げている。
龍園君は学校の仕組みの理解もかなり深めているようだ。
戦略も素晴らしく、cpではなくppを稼ぎに行く。
一見、Aクラスが遠ざかっているように見えるが、3年間の長期戦を見すえた深謀は金田君か椎名さんであろう。
そんなことを考えていると真嶋先生が近寄ってきた。
「坂上先生。ご一緒してもいいですか?」
離れた席で、星之宮先生や茶柱先生と飲んでいたらしいが居づらくなったらしい。
「ええ。かまいませんよ。」
誰かと一緒に飲むのもたまには悪くないでしょう。
真嶋先生とは相性が悪く、こんな機会でもないと話すこともなかなかない。
「坂上先生のクラスはすごいですね。色々な意味で。」
真嶋先生は本心であろう。素直にクラスをほめてくれているようだ。
「そうですね。かなり個性の強い生徒がそろっていて、今はきれいに回っているようです。しかし、いずれ壁にぶつかる予感がしますね。龍園君のやり方はクラス内にも反感をためてしまうので。Bクラスの実力が問われるのはその時だと思っています。」
そう、今は順調にいきすぎているが、スタートダッシュを決めただけのこと。
龍園君と金田君と椎名さんの策がみごとにかみ合っており、筒井君がうまく調和を持っているからだろう。だがこの先、龍園君か筒井君のどちらかのバランスが崩れることは想像に難くない。
「そうですね。Aクラスも色々と不穏な芽がありますし。今年のクラス戦はどう転ぶか読みにくいですね。それにしても、AとBの契約は、」
「真嶋先生。生徒の契約を教師が台無しにするわけにはいきませんので・・・」
「そうでした。失礼しました。」
そんなことを話しながら飲んでいると、星之宮先生や茶柱先生も近づいてくる。
「男二人でぇ、飲んでないでぇー、一緒に飲みましょーよーー」
すっかり出来上がっているようで呂律が回っていない。
「おい知恵。もうやめておけ。」
茶柱先生は慣れているようだ。目で謝ってくる。
「はぁ、今年はAクラスもぉ、狙えると思ったのにぃ・・・」
星之宮先生はクラス戦に不満を抱えているようだった。たしかにCクラスは目立った活躍は今のところないようだ。しかし、クラスの仲は断トツでよく、生徒の能力も平均以上。地道に忍耐が必要な試験や、生徒の協力が重要な試験では圧倒的と思われる。
Bクラスは奇策を決めてはいるが、逆に、地力で考えると正攻法ではとてもAやCに太刀打ちできないクラスである。
自分ならどう戦うか少し考えるが、いや、龍園クラスを受け持っているのだ。他クラスを考えても仕方がない。
星之宮先生がベロベロになってきてその場は解散となった。
うまく区切るタイミングの逃してしまったので、長文になってしまいました。
思いついたことをなんでもかんでも詰め込んでしまう悪い癖です。