1年最後の戦いは始まった。
クラス同士で5種目の競技を決め、対決する試験か。
「司令塔は俺がやる。文句あるか?」
放課後になると俺は司令塔に名乗り出た。
「龍園氏、負けたら退学となると、プロテクトポイントを持つ椎名氏が司令塔の方が良いのではないでしょうか?」
金田が思いとどまるように進言した。
「この程度の試験で負けるようなら俺はそれまでだ。おまえらは1教科だけでいい。得意な教科をひたすら磨け。俺たちの相手は一之瀬クラスだ。全クラスで合意が取れている。相手は優等生だが1教科だけなら勝算はあるだろう。あとは俺が勝たせてやる。」
らしくないことを言ってるなと思う。
一度はこの学園を去ることも考えたが今は覚悟が変わったのだろうか。
綾小路清隆。あの男に負けっぱなしで去ることの不満。
そして、ひよりや正宗は綾小路に本気で勝つべく動き出している。
駒に勝手に動かれて心が動いたか?
俺は綾小路との再戦を本当に望んでいるのか?
未練がなければ適当な人選で負けることもできるだろう。
だが、本当に再戦を望んでいるのであれば、必死で生き残ろうとするだろう。
俺はその結果が見たいと思った。
・・・
その後、久しぶりにカラオケで作戦会議を開くことになった。
「金田。おまえは一之瀬クラスをどう評価する?」
「そうですね。クラスの結束力が非常に高い。能力も平均以上。総合戦では驚異的なクラスです。」
そうだな。一点特化で非社交的な俺らとは対照的なクラスだ。
「ひより。てめえはどうだ?」
「確かに結束力が高く、仲睦まじいうらやましいクラスですね。しかし、平均的に優れているだけの、特別な脅威をもたない、単なる仲良しクラス、かと。」
「あんた、優しげな顔してえぐい分析するわね。。。」
伊吹が若干引き気味でひよりをみている。
だが、やはりひよりの視点は面白い。確実に本質を見抜いているからだ。
「正宗。おまえはどう分析する。」
「一之瀬次第のクラスだな。他人を傷つけないことを信条としているうちは脅威じゃねえ。だが、その縛りを捨てれば、ひよりと同等の脅威となると思うぜ。」
ある程度全員の意見を聞いてから俺も自分の意見を言う。
「そうだな。俺から見れば、Bクラスの最大の欠点は一之瀬、いやリーダーが不在な点だ。」
「ちょっと待って、一之瀬がリーダーでしょ?どうみても。」
「一之瀬も神崎もリーダー向きじゃねぇ。リーダーを支える参謀向けだ。あれをリーダーに据えるくらいなら、葛城の方がよっぽどましだ。」
たしかに一之瀬は素晴らしい人格者かもしれない。しかし、有能な指導者とは思えねえ。
そもそも完全なる『善』というものを信じていない。
悪意を持って他人を傷つけることはよくある話だし予測もつく。
しかし、自分が『善』だとか『正義』だと信じているやつが、平気で他人を踏み潰す。
こっちの方がよっぽどたちが悪いと考えているからだ。
「しかし、全てがアベレージ以下の我々では勝てる見込みが少ないのでは?」
「確かにな。勝つことは現実的ではない。」
「そんなに差があるんですか?」
石崎が絶望するように悲鳴を上げる。
「だが、やり方を工夫すれば勝率が跳ね上がる。当日はこの試験をぶち込むぞ。」
そう言って俺は競技を記載した紙をテーブルに投げる。
その紙には、空手、柔道、ボクシング・・・・といった格闘技がならんでいた。
「ちょっと、うちのクラスは力自慢が多いとはいえ、全員じゃない。必要人数は変える必要があるのよ?」
「関係ねぇよ。必要人数なんてものにこだわるな。」
「なるほど。物は考えようっということですね。勝ち抜き戦なら1人で問題ない。。。」
「そうだ。あとは一之瀬クラスが選んだ種目をどれだけ奪えるかだ。真面目ちゃんのクラスだ。得意科目のテストで来るだろう。」
「私と椎名氏が1年間勉強会を継続してきた成果がでれば、1つくらいは勝てるでしょう。」
金田君がメガネを挙げながら自信を示す。
「あとは、この下剤を飲ませれば試験当日に体調を崩す奴が続出するだろう。」
「おい、龍園。しょーもない策はやめろ。」
チッ、また正宗が余計なことを言い出したか。
こいつは馬鹿だ。7割がた役に立たねえゴミみたいな意見を言う。
だが、たまに核心をついてきやがる。
緑保留なら無視するが、赤保留なら無視できないような感覚だ。
絶妙の割合だからたちが悪い。
「馬鹿は引っ込んでろ、俺は勝つためならなんだってやってやる。」
「私も正宗君と同じ意見です。証拠が残り、訴えられたら終わり。証拠がなくても疑惑が残ります。このような脇の甘い策では、到底綾小路君の相手になりません。」
ひよりの援護射撃もあり、苛立つ気持ちを抑え、二人を睨みつけながらも一考した。
一之瀬たちは訴えたりはしないだろう。だが、綾小路はどうだ?
こちらの策を逆手に取るくらいあの男ならやってくるだろう。
「・・・いいだろう。お前の言うことも一理ある。正宗は、空手で20人勝ち抜き戦だ。そして、アルベルトは柔道で19人勝ち抜き戦だ。優しいBクラスは、男をこの競技に出すだろう。こっちは正宗とアルベルト以外は成績の悪い奴で固める。気合で勝てよ。」
空手と柔道のどちらかが選ばれる可能性は90%以上だ。
レバブルを引けるなら、賭けとしては十分すぎるだろう。
「いいぜ。俺の意見を飲んだんだ。こっちも、期待通りの働きをしてやるぜ。」
正宗も俺のやりたいことは理解しているようだな。
・・・
試験は「坂柳VS綾小路」「一之瀬VS龍園」となった。
坂柳も退学を賭けて司令塔をやるようだ。
こいつもクレイジーな奴だな。
一之瀬は自分が負けるとは考えていないようだ。
自信と余裕が見える。
いいだろう。相手になってやるさ。
・・・
「2戦目はBクラスの勝利とする。」
真嶋先生の結果発表を受けて一之瀬はホッと安堵する。
「よかったじゃねえか。一之瀬。立て続けにBクラスの種目が選ばれたお陰だな。」
「・・・そうだね。」
2戦ともBクラスの種目であったが、1勝1敗の状況となっている
一之瀬は、序盤から追い詰められて焦っているな。
俺は、1戦目の化学から金田やひよりをはじめとした成績優秀者をぶつけて優位に立つことを選んだ。
真嶋による3回戦目の抽選が始まる。
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『空手』
必要人数20人 必要時間50分
ルール:1試合1分のヘッドギア着用。顔面の攻撃はなし。勝ち抜き戦を採用
司令塔:任意の試合を一度だけやり直しすることが可能。
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「今度は俺たちの種目だな。好きな奴で来いよ。」
そう言って俺は、正宗以外は男女関係なく勉強が苦手な生徒で固めた。
一方、一之瀬は温存していた男子20人を投入するようだな。
やはり、一之瀬は男子をこの競技に出すために、テストは女子だけで乗り切るようだった。
そのために、テストの方に最適な人を割り当てることができなかったのだ。
・・・
「クックック、一之瀬、正宗を甘く見てたな。」
龍園君はこちらの心を折るように挑発してくる。
しかし、事実だ。筒井君が運動ができることは知っていたが、空手の実力は正しく理解していなかった。
すでに、1人で17人抜きを果たしている。
始めは柴田君が2人抜きをし、優勢に見えた。
しかし、3番手の筒井君の出番になると一転した。
筒井君がでてからは、Bクラスはほとんど相手にならず再起不能になってしまった。
でも、筒井君は守りが苦手なようで、攻撃は受けており、疲労も蓄積しているみたい。
さすがに17人を相手にして、ふらふらになっている。
そして最後の20人目は神崎君だ。
神崎君は古武術を嗜んでいるようだから、今の筒井君になら勝てるかもしれない。
筒井君さえ倒せば、Cクラスの残りは女子や運動が得意ではなさそうな人がほとんどなので、まだ勝機はあるはず。
しかし、最後の勝負が始ると同時に、筒井君が距離を詰めて、神崎君のみぞおちに拳をあてて勝負がついてしまった。
「あんなにふらふらだったのに・・・。」
やはり力ではCクラスに勝てなかった。悔しい。。。。
「まだわからないのか?正宗には、おまえらが40人で挑んでも勝てないさ。」
まさかと思い、画面を見ると、正宗君はしっかりとした足取りで退場していくところだった。
「そんな・・・。」
私は勘違いしていることに気づいた。
(筒井君は全然本気をだしていなかったんだ!?)
しかし、気づくのが遅すぎたようだ。
・・・
2-1になった。
俺に焦りはなく、一方、一之瀬に余裕はなかった。
自クラスの種目を簡単に落としたのが痛すぎたようだな。
「面白いもんだよなぁ。一之瀬。」
機械が次の種目を抽選している間、すっかり口数が減ってしまった一之瀬に声をかける。
「特別試験が始まって、俺達Cクラスと対戦することが決まったとき、おまえらは絶対的優位を感じていたはずだ。だが蓋を開けてみれば天に祈ることしかできねえとはな。クク」
抽選の結果、
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『柔道』
必要人数19人 必要時間50分
ルール:1試合1分。勝ち抜き戦を採用
司令塔:任意の試合を一度だけやり直しすることが可能。
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一之瀬が絶望しているのがよくわかる。
畳みかけるならここだな。
「クックック、これを引いてしまうとはな。お互い、2回目の生徒をだせるようになったな。」
そしてだれを参加させるか選ぶ時になって一之瀬は気づく。
空手で再起不能となった男子の全員が、体調不良でこの試験の続行が難しい状況に陥っていることに。
「正宗はだいぶ手加減してやったみたいだなぁ。俺が中学の時は、病院送りにされて生死をさまよった挙句、一週間はろくに動けなかったがな。今にも吐きそうな顔をしているとはいえ、2,3日あれば復帰できるだろうよ。」
龍園の言う通り、2,3日は安静が必要な生徒がたくさん出てしまっている。
「さあ、だれでも好きな奴を選んでくれよ。こっちはもちろんアルベルトを選択するぜ。」
すっかりしゃべらなくなってしまった一之瀬を無視して俺は19人を選択する。
男子が再起不能となっており、もはや一之瀬に選択肢はなかった。
だれも選ぶことができず時間だけが過ぎていく。
・・・
柔道は一之瀬が選択することができず、真嶋の介入によってBクラスの棄権となった。
「おいおい。時間内に選べなかった場合はランダムに選出されるんだろう?教師が生徒の試験に介入すんのかよ?まさか自分たちで選出もできてない腑抜けた連中のために譲歩してんのか?」
「言葉には気をつけろ。龍園。」
茶柱が注意するが、俺は気にしない。
「俺は教師として『正しい』判断をするだけだ。」
「てめえにとっては『正しい』。俺にとっては『正しくない』。その程度の価値観で、生徒の戦略を邪魔する教師に払う敬意なんてねえよ。一之瀬が立ち直るまで時間稼ぎをするつもりか?さっさと次の試験を続けろよ。無能ども。」
後に、この真嶋の判断は学園としても真嶋にペナルティを与えることになる。
まぁ当然だ。一之瀬以外の全員にトラウマを植え付けるかどうかによって、今後の展開は変わっただろう。
一之瀬クラスは、この競技は棄権となったが、19人をランダムに選ばれたていで試験は続行となった。
しかし、棄権とはいえランダムに19人を使用したことと、20人の男子が体調不良となってしまい、一之瀬のクラスはまともな試験ができる状態ではなかった。
一之瀬も自分のせいで真嶋たちが馬鹿にされ、クラスの状況がボロボロとなったことを目のあたりにして冷静さを失っている。
以降の試験は、ほとんど不戦勝で勝ちを拾った。
正宗は俺の要求を完璧にこなした形になったな。
だが今後、正面から正宗と戦うやつは減るだろう。
結果は6勝1敗で圧勝であった。
この大勝によって、俺たちは250cpという大量のcpを手に入れ、Bクラスに舞い戻ることとなった。
だが、まだ綾小路とやりあうには足りねえ。
あの化け物の想定外の一手をだす必要がある。
しかし、この学園で俺がやることは決まった。
どうやら俺はうだうだ考えすぎていたらしい。
何度負けたっていい。
勝つまで戦うのが俺のやり方だ。
相手が足の悪い女子であろうと、
全てが規格外な化け物であろうと、
やることは同じだ。
真嶋先生の判断は賛否別れそうですね。
1年生編はこれにて完結です。
ここまで読んでいただいて、感想や評価やお気に入りに登録していただいた人たちに感謝します。
書くのも楽しかったですが、みなさんの感想を読むのも楽しかったです。
2年生編も書こうと思っていますし、少し書いているんですが、正直1年生編よりきちんと読み込んでいないのと、二次小説も2年生編は少ないので、理解が浅くグダグダになって途中でやめる気がしています。
なので、先に謝っておきます。
中途半端なものを読むのはちょっと・・・・っていう人はここで終わることを奨めます。