アルベルト君と教室に入ると、かなり注目をあびてしまった。
アルベルト君はマフィアのボスのようなと見た目だから仕方ないか。
話してみると気さく良い奴のようだった。
教室には妙に殺気立った龍園が座っていた。
ある程度、クラスごとにバスの時間を調整したのか、何人かバスで見かけた奴がいるな。
バスでの殺伐とした空気を思い出したのか、絶望した表情の生徒がちらほら見える。
心中は察するが、実力主義を謳う学園だ。あきらめてもらうしかないだろう。
・・・
俺たちは自分たちの席を探すことにした。
龍園は、廊下側か。あいつの近くじゃなければ、どこでもよいさ。
フラグを立てている気もしないな?と考えていたが、心配は杞憂だったらしく、
俺は、窓際の後ろから2番目。アルベルトは真ん中の一番後ろだ。
「席もまぁ近いな。またな。アルベルト君。」
「・・・・・・・・・・・・・」
・・・・多分、友好的な漢なんだろう。
俺は自席に座ったが、特にすることもないので本を読みながら時間を過ごすことにした。
・・・
「『すべてがFになる』ですか?」
本を読んでいると、思いがけず、隣の席の女生徒が声をかけてきた。
「ん・・・?ああ、今はまっているんだ。知ってるんか?」
声をかけられるとは思っていなかったため、少しおどろきながら、返答すると、その女生徒は身を乗り出して、目を輝かせた。
「素晴らしいチョイスです。見かけによらず、本好きとお見受けしましたがいかがでしょう?」
何かスイッチが入ってしまったのか?その女生徒はぐいぐい近寄ってくる。
ってか、よく見ると、すごい美少女だな。
銀髪のロングヘアでぽわぽわした不思議な雰囲気。少女のようなあどけなさを残した整った顔立ち。なんか、シャンプーの良い匂いがして、ドキドキしてしまう。
「あ、ああ、読書は俺の数少ない趣味なんだぜ。特にミステリーが好きでよぉ。作者と読者の騙しあいのような感じが好きなんだ。きれいに騙された時の感覚は一度味わうと、なかなかやめられなくてな。」
「わかります!!ほかにもVシリーズは読みましたか?海外の作品とかはどうでしょう。興味があればいくつかおすすめをお貸ししますがいかがですか!?」
最初は失礼じゃないか、この子?とも少し思ったが、天然みたいだ。
本の話になると興奮して周りがみえなくなるタイプなんだろうな。
椅子をくっつけて、食い気味で俺の手を握りながら、話しかけてくるので距離が近い。
周りの視線も集まってちょっと居心地が悪くなった。
俺の困ってる顔を見てニヤニヤしている龍園の顔を見てると、無性に殴りたくなるな。
「わりぃ、もう少し離れてくれるとありがたいんだが。」
俺の困った様子に、少女も気づいたようで、あわてて手を放してあやまってくる。
「すみません。本好きの方に会えたのがうれしくなってしまいつい。。。」
女の子は、恥ずかしくなったのか、うつむいて顔が赤くなってしまった。
「別にそんな気にしてねぇよ。俺も今まで、周りに本好きがいなかったからよぉ、新鮮な気持ちだぜ。」
なんせ、中学時代は、漫画しか読まないやつばかりだったし、銀もバイク本しか読まなかったからな。
「私は椎名ひよりと申します。ひよりと呼んでください。」
「俺は、筒井正宗。正宗でいいぜ。よろしくな。ひより。」
その後、俺たちはお互いの好きな本の話で盛り上がった。
好きな本について語り合うのがこんなに楽しいとは。
この学園に入学してよかったぜ。
そうこうしているうちに、担任と思われる男が教室にはいってきたため、雑談を中断した。
・・・
「皆さんおはようございます。」
教室に入ってきた教師はメガネをかけた狡猾そうな感じの男だった。
「・・・全員揃っているようですね。新入生の皆さん、入学おめでとうございます。私はこのCクラスの担任となりました坂上数馬と申します。担当は数学です。」
龍園が暴れたときに、この教師では止めれそうにないな。
この教師よりは、アルベルト君と協力した方が見込みがありそうだ。
「この学校には学年ごとのクラス替えは基本的にありません。卒業までの3年間、私が担任となりますのでよろしくお願いします」
基本的にはクラス替えがない?
おいおい、クラスの一部の生徒がストレスで胃に穴が空きそうだ。吐いたりしないよな?
まぁ、龍園はともかく、アルベルト君は見かけによらず、やさしい男のようだから、安心して良いと思うぜ。
っというか、バスで俺や龍園が近くに座ってしまったせいで、アルベルト君に友達ができなくなるとかだとかわいそうだな。
その後、坂上からこの学校のシステムの説明が続く。
「それから、ポイントは毎月1日に自動的に振り込まれることになっています。あなた達全員には入学時の実力が評価されて10万ポイントが支給されています。このポイントは、1ポイント1円ほどの価値と認識していただいて結構です。」
10万ポイントと聞いて、教室がざわめき立つ。
高校生には多すぎる金額であるため無理はない。
入学しただけで10万か。この学校すごいな!!
その後も説明は続くが、俺の頭には入ってこなかった。
「・・・学校はいじめ問題には厳しいので注意してください。何か質問はありますか?」
スッっと手を挙げたのは、ひよりと龍園だった。
「では、龍園君からどうぞ。」
「来月はいくらポイントがはいる?」
クラスのほとんどの奴は質問の意図が分かっておらず、きょとんとしている。
俺も似たような顔をしていることだろう。
坂上はうれしそうに回答する。
「この学校は実力によって評価されます。今はここまでしか回答できません。」
実力がなければ、高校生のおこずかい程度のポイントしか入らないってことか?
「質問は以上ですか?では、椎名さん、どうぞ。」
ひよりはすっと立ち上がった。なんか立ち上がり方が洗練されているようで、椅子を引く音も全然聞こえなかった。どこかのお嬢様なのか?
「実力の測定は個人でしょうか?それともクラス単位でしょうか?」
坂上は驚いたようだ。クラスの奴のほとんどは置いてきぼりだな。
しかし、ひよりはめちゃくちゃ頭がいいみたいだな。
さっきの説明を聞いて、どうしてこの疑問に行き着いたのかさっぱりわからねぇ。
「それも今はお答えできません」
答えられない、か。それ自体が、ヒントだともいえるが、なんとも不親切な学校だな。
自分で調べるしかないようだ。
「他にはありませんね?・・・。では、1時間後の入学式に遅れないようにお願いします」
そういって坂上は教室をでていった。
大金を手に入れたクラスが、浮かれて教室が騒がしくなった。
どうやって調べようか考えていたら、
「おい。てめえはどこまで気づいてやがる?」
龍園が話しかけてきた。
「・・・ほとんどわかっていない。」
「いいから答えろ」
そうだな。わざわざ俺の席まで出向いてきたんだ。
考えを述べるくらい返すのが礼儀だろう。
「Sシステムには裏がある。そのことに気づいているのは、あそこのメガネ君とひよりと、龍園くらいか。お前らの質問で見えたのは、来月からのポイントは実力次第。実力はクラス単位で判定される可能性がある。ポイントで買えないものはないから、無駄遣いする余裕はない。このくらいだな。」
俺は理解できた内容だけ口にする。
「クックック、おまえとは仲良くできそうだなぁ?親友?」
及第点は貰えたようだ。
気持ち悪いことを言いながら、龍園は携帯を俺に投げよこす。
「いちいち出歩くのも面倒だ。俺の連絡先を登録しておけ。」
まさか、高校で一番最初に連絡先を交換するのが龍園とはな。
慣れない手つきで連絡先を登録して、携帯を龍園に投げ返した。
満足したのか、龍園は教壇に歩いていき、何を思ったのか黒板を勢いよく叩いた。
「おい。おまえら。このクラスは俺が仕切る。文句がある奴は名乗り出ろ。」
教室がピリピリした空気で満ちる。
龍園のせいで、せっかく友達になった、ひよりに嫌われてしまうのでは?、と思ってちらっと横を見ると、読書に夢中で、龍園やまわりの喧噪にまったく興味がないようだった。
・・・この娘は、このクラスのキーマンになるかもしれないな。
そんなことを考えていると、
「ふざけんじゃねぇ。わけわからない質問したと思ったら、クラスを仕切るだと?俺より弱い奴に従う気はないぜ。」
まぁまぁガタイのいい奴がでてくる。
他にも、文句があるやつが10人程度いるようだ。
「質問の意図が分からないやつは論外。と言いたいところだが、いいぜ。相手になってやる。文句がある奴は放課後に残れ。残らなかった奴は、あとから文句言うなよ」
龍園は楽しそうに笑いながら教室を出て行った。
なんか、うん。教室の雰囲気が最悪だな。
龍園と同類扱いされているのか、俺にも悪意のある視線が飛んでくる。
考えるのも面倒だから、ひよりに倣って本の続きを見るか。
・・・・
つまらない入学式が終わり、放課後になった。
龍園は10人くらいつれて、どこかにいくようだ。
校舎裏でバトルロイヤルでもする気なんかね?
ちょっと参加したいなぁ。アルベルト君とやりあったら楽しそうだなぁ。
でも、高校からは平和に暮らすんだった。
関わったらバイオレンス確定になるため回避しよう。
クラスの掌握は龍園がすることだろう。
仮にも中学時代に、俺や銀と渡り合った男だ。
このクラスをまとめ上げることくらい、なんなくやり遂げるだろう。
俺の実力は、中学時代何度もやりあったこともあり、だいたい把握されているから興味もないだろうし、逆もしかりだ。
龍園は、1対1の喧嘩では俺や宝泉にはかなわない。
しかし、1対1にこだわる男ではないし、勝つためには手段を選ばず、不意打ちやだまし討ちのたぐいの、相手の裏をかく戦略が凄惨すぎて、すすんで敵には回したくないタイプだ。
帰り支度をしながら、ひよりに声をかける。
「なぁ、個人かクラスか確かめる方法ってあるんかよ?」
ひよりはゆっくりこちらに顔を向けて、あごに手をあてて考えるポーズをする。
可愛すぎる!
「・・・上級生の教室をのぞけば、わかるかもしれませんね。」
少し考えてひよりが答える。
ん?なんで上級生の教室みたらわかるんだ??よくわかんねぇ。
「じゃあ、一緒に上級生の教室みにいこうぜ?」
ひよりはあまり乗り気ではなかったらしい。
「すみません。上級生の教室に興味がないですね。」
困ったぜ。目的も不明な俺がいっても徒労で終わることだろう。
ダメもとで提案してみる。
「お礼に帰りに好きな本をプレ」
「行きましょう!」
即答して、ひよりは立ち上がった。
最後までしゃべらせてもらえなかった。
やばい。この娘ツボにはまりそうだ。
タイトルからもわかる通り、ひよりルートしか考えていないです!
原作を読んでいる前提で、長い説明などはカットカットカットで行くことにしました。
次回は上級生の教室。っといえばあの人の登場ですね。