少しずつ物語が動きだす感じがでますよね。
5月になった。
このころには、龍園がほぼクラスを掌握し、独裁体制がしかれつつあった。
アルベルト君も3回ほど龍園とやりあったようだが、根負けして配下についたようだ。
「みなさん、おはようございます。これより朝のホームルームを始めます。」
いつものように坂上がホームルームを開始する。
「おい。ポイントが8万ほどしか入っていない。説明はあるのか?」
質問したのは龍園だ。みんなが聞きたがっていたことを率先して聞いてくるありがたい奴だ。
「はい。しかし、説明の前にこれを見ていただいた方が早いでしょう。」
そういって、坂上は、手に持っていた紙を黒板にはった
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A:940
B:650
C:820
D:0
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「この学校では、クラスの成績がポイントに反映されます。入学祝として各クラスに1000cpが割り当てられました。・・・・・・・・」
長々とSシステムの説明が続く。要は、減点方式で、1000cpから色々減らされた結果ということだ。
だいたいひよりの想定通りだな。
Aクラスはすごいな。素行の良い奴が多いかつ、そうそうにSシステムに気づいた奴がいるんだろう。
Cクラスも割と早い段階から手を打ったが、龍園が遅刻したりして、あえてポイントの減少を観察していたからな。
それにしても、Dクラスの0ポイントは圧巻だな。
Sシステムに誰も疑問を持たなかったか。
いや、40人もいれば、1人くらいは気づくか?
0ポイントであることを逆手にとって、減らないcpを引き換えに、戦略を考えると面白そうではあるな。
「そして旧Bクラスのクラスポイントを抜いたあなたたちは、今日からBクラスへと昇格になります。歴代のCクラスの中でも群を抜いて優秀な成績です。今後とも励んでいただきたい。」
歴代のCクラスか。
俺と龍園が同じクラスだった時点でうさん臭さは感じていたが、最初のクラス分けは何か意図的な分け方があるんだろうか。
俺や龍園をはじめとし、素行が悪い者がこのクラスに多すぎるようだ。
その後も坂上の説明は続く。要約すると、
・希望の就職がかなうのは、Aクラスのみの特典である。
・赤点は退学
・クラスの移動には2000万ppが必要
ということだ。
中間テストは3週間後か。
入学して数か月で退学になったら、宝泉に笑われるな。
先日の小テストの結果、
上位のひよりと金田君以外は、勉強が苦手な奴が多いようだ。
ホームルームが終わると、俺達新Bクラスはざわついていた。
Bクラスに昇進したことよりも、Aクラスしか卒業後の恩恵がないこと。
そして、赤点を危惧する者が多いみたいだ。
龍園は教壇に上がった。
「お前らに指示を出す。今後、クラスのppは椎名に集めるぞ。クラス競争において、ppは必要不可欠だ。一人3万ppを送信しておけ。それと、学力に自信がない奴は、3週間みっちり勉強をしろ。今から呼ぶ奴はこのあとカラオケ屋にこい。金田、石崎、伊吹、アルベルト、椎名、正宗。以上だ。」
言いたいことだけ言って、さっさと教室を出て行ってしまった。そのあとを、石崎が追って出ていく。
一部の生徒は、ポイントの徴収に難色を示しているようでもあったが、金田が必要性を補足することで理解を示したようだ。
「ひより。一緒に行こうぜ。」
俺たちはいつものように二人で教室を出る。
「・・・争いはあまり気乗りしませんね。無視しても面倒に巻き込まれそうなのでお付き合いしますが。。。」
ん?おれは気になってひよりに尋ねる。
「ひよりは、クラス戦に関わりたくないのか?」
「そうですね。Aクラスに昇格することに特に興味はないです。私は本さえ読めれば良いので。正宗君はAクラスの特典に関心がありますか?」
「俺も特典には大して興味ないな。将来は自分の力で叶えるもんだしよぉ。でも、平和すぎても退屈しちまうしよぉ、Aクラスは狙うぜ。」
ひよりは少し悲しそうな顔をした。
「そう・・・ですか。私はあまりお役に立てそうにありません。」
本当に争いごとが苦手なんだろう。龍園クラスに配属されたのがかわいそうだな。
「ひより。2,3年の絶望したDクラスを見ただろ?俺は、3年間をあんな無気力な状態ですごしたくないし、ひよりにも楽しく過ごしてもらいたいんだ。龍園なんかはどうでもいいが、俺に力を貸してくれよ?俺にはひよりが必要なんだ。」
俺はまっすぐひよりの目を見てお願いした。
ひよりは少し困ったように顔を背けながら返事をする。
「そうですね。。。私も初めてできたお友達の正宗君には楽しく過ごしていただきたいです。わかりました、お役に立てるか自信はありませんが、私もできることをしようと思います。」
自信はないといったが、ひよりには常人にはない力がある。
ひよりがやる気をだせば、ほとんどの戦いで勝てるのではないか?不思議とそう感じた。
「ありがとう、ひより。龍園のやり方は敵を作りすぎることになるからよぉ。ひよりには、可能な限り恨みを減らすように修正してほしいんだ。」
「ずいぶん龍園君のことを知っているんですね?入学する以前からの知り合いだったのでしょうか?」
ああ、そういえば、ひよりとは一緒に行動することが多かったが、中学の話はしたことがなかったな。
「いや。近所の中学で、龍園とは敵対関係だったんだ。お互いやんちゃしててな。喧嘩の強さではうちに分があったんだが、龍園の戦略がなかなか人の裏をかく奇策や、使えるものは何でも使う狡猾なやり方で。互いに大きな被害をだしたまま決着がつかず、両校にトラウマを植え付けてしまったんだ。」
簡単な説明であったがひよりは納得したようだ。
「他クラスに龍園君がいるのと、自分のクラスに龍園君がいるのはどっちが良いですか?」
そんなことを話しているうちに、カラオケ屋に到着した。
石崎が、案内役をしているようだ。
ドアを開けると、どうやら俺たちが最後だったらしい。
「そろったか。今後の方針を話すぞ。さっさと座れ。」
相変わらずえらそうな態度であったが、俺とひよりはおとなしくソファーに座る。
「石崎、おまえはドアの外で見張ってろ。金田、おまえは、今後のクラス戦をどう見る?」
金田は待っていたとばかりに、メガネを押し上げながら説明を始める。
「そうですね。この学園はcpで順位を決めるために、ppをうまく活用する。そのような試験が今後始まると思います。我々のクラスは、武闘派が多いようなので、テストの成績では分が悪いですが、体力を使った試験で、相手を出し抜いて大きな勝ちを拾っていく必要があるかと。」
龍園は満足したようで、今度はひよりに話を振ってくる。
「なるほど、椎名。お前はどうだ」
「そうですね。金田君の言っていた戦略は王道で、頭脳戦か体力戦かの違いはありますが、他の3クラスも似たり寄ったりの戦略になると思います。」
「クックック、お前は違うと?」
龍園は面白そうに先を促してくる。
「cpの争奪戦は他クラスに丸投げし、cpを取引材料にして、ppを他クラスから引き出し、加えて試験を有利に進めてはどうでしょうか。」
「ちょっと、cpを稼がないとクラス戦に勝てないじゃないの。上位の成績をとるためにcpを犠牲にするなんて意味が分からないわ」
思い付きで発言するタイプなのか、伊吹が横やりを入れてくる。
「そうですね。しかし、cpは目に見える分、序盤から集めるのはリスクがありますし、他クラスとの競争率も高いです。例えば、Aクラスが1500cpで、飛びぬけた状態になった場合、金田君ならどうしますか?」
金田はppの有用性を考えているようだ。
「当然、他の3クラスで協力してAクラスを包囲しますね・・・。なるほど、cpを稼がせて、意図的にその状況を作り出し、裏で目に見えないppを引き出す。興味深いですね。」
ふむふむ。金田君の翻訳はわかりやすいな。
「それに、cpを稼いでAクラスで卒業できるのは、学年の1/4だけです。Aクラスの可能性を残すことは当たり前ですが、クラスでppを2億ポイント稼げばどうでしょうか?」
金田は頭の中でそろばんをはじく。
「10人はAクラスに移動できる。つまり、クラス内の1/4を救えるわけですね。」
「そうです。それに、ppは考え方次第で強力な力になります。それはこの1か月、ppが使える境界線を探っていた龍園君も気づいているでしょう?」
傑作だ。と言わんばかりに龍園は声を上げて笑った。
「俺の意図に気づいていたか?安心しろ、だいたいの把握は終わって、次の段階に進むところだ。」
龍園の瞳が怪しく光る。
こいつ、問題を起こす気だな。犯罪行為に及ばないと良いんだが。
「今後のことはだいたいいいだろう。まずは、中間テストだな。金田、椎名、おまえらは、馬鹿どもに勉強を教えてやれ。」
「わかりました。椎名氏。クラスを二人で分担しましょう。」
金田はさっそく勉強方法を考え始める。
「龍園くん。少し良いでしょうか?」
ひよりがためらいがちに龍園に話しかける。
「あぁ?おまえに拒否権はないぞ?」
「勉強を教えることはわかりました。それとは別に、この前の小テストについて、極端に難易度の高く不自然な問題が混ざっているように思いました。学校側の手違いでない前提であれば、テストを解くカギは過去問かもしれません。それ以外だと、ポイントを使った戦略でしょうか。」
室内にいた全員が驚いた。
なるほど。問題の難易度は俺には難しい以上はわからなかったが、ひよりのような成績上位者には不自然な問題にみえたのか。
俺は携帯を使って、さっそく、堀北君にメールを送ることにする。
「やるじゃねぇか、ひより。正直おまえはクラス競争にやる気をださないと見くびっていたぜ。このクラスでまともに考えることができるのは、ひよりと金田ぐらいしかいねぇ。報酬はだすからしっかり働けよ。」
報酬ねぇ。まぁ、やる気を引き出す一番わかりやすいものだからな。
「正宗。おまえは、Cクラスの連中にかたっぱしから喧嘩吹っ掛けてこい。ただし、先に手を挙げるなよ。」
何言ってるんだ、こいつ。
急に喧嘩吹っ掛けてこいとか、頭が沸いているんじゃないか?
「ふざけんじゃねぇ。くだらない命令には従わねぇよ。」
「俺の意図はわかってるんだろう?てめえも働きやがれ」
意図か。。。俺の印象を悪くするとかか?
「何言ってるか全然わかんねぇよ!!俺とひよりは、他クラスとの交渉役として動きたい。Aクラス包囲網も含めて、他クラスとの交渉は今後の試験で必要だろう。そのためには、クラスでの発言力があり、かつ、龍園の支配下にない人間、と他クラスに思わせる必要がある。」
金田や石崎のような龍園に従っている人間では、警戒されて交渉もできないだろう。
「なんだ?てめぇは俺に悪役を押し付けて、自分だけ良い子ぶる気か?」
こいつ、そんなに俺の悪印象を残したいか?
「俺やひよりが何しようが、数か月以内に龍園は学年一の嫌われ者になるから安心しろよ。」
俺の率直な意見に、伊吹がうれしそうに笑っている。
龍園のYESマンが多くてクラスに嫌気がさしていたクチだな。
「クク、違いねえな」
なんせ、龍園はクラス内からもすでに腫物あつかいだ。
「交渉役はひよりがいれば十分だろう。なぜおまえがやる?」
「男女別の試験があるかもしれない。それにひよりでは荒事には向いていない。最低一人ずつ用意させろ。」
この質問は想定内。あらかじめ準備していた答えを言う。
「・・・いいだろう。だが成果をだせ。それが条件だ。」
成果さえ出せばやり方は問わない。龍園のことは好きではないが、リーダーとしてはわかりやすくて良いな。
「その条件でいいぜ。とりあえず、今日は3年生とメシ食うことになったかんよ。過去問はまかせとけよ。準備があるから俺とひよりは先に帰らせてもらうぜ。」
さっき堀北君をメールで誘ったが、付き合ってくれると返信がきていた。
「クックック、いいだろう。」
「行こうぜひより。俺たちは龍園のやり方に従わない人間として距離を置こう。」
そう言って、俺とひよりは先に帰ることした。
・・・
「あの、正宗君。」
「ん?どうした?」
「ありがとうございます。」
帰り道、急にひよりが俺に頭をさげてきた。
「え?なんか、お礼を言われることしたっけ?顔上げてくれよ」
「先ほどの話、私が争いごとが嫌いだと言ったから、クラス抗争から遠ざけてくれたんですよね?」
あー、気づいちゃうか。まぁ、直前に話してたしな。
「んー。ひよりの希望に添えた面もあるけど、龍園にもクラスにもメリットがあると思ってるぜ?ひよりの存在は、龍園の戦略の幅を広げると思うし、龍園の支配にほころびがでたときや、龍園が退学になったときにクラスを立て直せるのはひよりしかいないと思うからな。おそらく、龍園もそのことには気づいていて俺の話に乗ったと思うぜ。」
龍園は荒っぽいやり方を好む傾向にある。
暴力は強力な武器ではあるが、扱いを間違えると暴発して自分たちの身を亡ぼす。
そのリスクは当然把握しているはず。
「さすがに私には荷が重いかと。。。」
絶対にこのクラスを率いないという強い意志を感じるな。もちろん、俺も嫌だ。
「それはともかく、龍園は良くも悪くも成果主義だ。成果がでれば手段は問わない。クラスと離れた位置で交渉役になるためには、がんばって結果をだそうぜ。」
「そうですね。一緒に頑張りましょう。」
ひよりは頑張るポーズを決めて、気合をいれているようだ。
他の女子がやったらむかつきそうだが、ひよりがやるとかわいいから不思議だ。
ふと思いました。
主人公の出番少なそうですね。。。