それからは特に変わったことはなく、金田君の勉強会に参加しているうちに中間テストが近づいてきた。
Dクラスへの過去問は、あのあとすぐに流すことに成功したらしい。
あからさまに渡すと、攻撃の意図が読まれる可能性があるため、バスケ部の間で先輩から過去問をもらうように誘導したようだ。
過去問が噂になってしまうと、石崎たちの耳に入ってしまう可能性があるため、周囲に広めすぎないように仲間内でだけ共有するように動いたらしい。
一方、俺とひよりは過去問を手に入れた功績で、しばらく自由の約束を取り付けたので、毎日を有意義に過ごす。。。はずだった。
「なぁ、ひより。放課後勉強会して、解散後になんでおれだけ勉強しているんだ?」
なぜか、ここ2週間は晩御飯を食べた後に、ひよりは俺の部屋に来て、勉強を強いてくる。
「正宗君、ここ間違っていますよ。赤点を取らないようにしっかり勉強頑張りましょうね。」
そういって、俺が解いた問題の間違いをひよりが指摘する。
「せっかく自由時間を手に入れたんだから、もうちょっとよぉ、コーコーセイらしく遊ぼうぜ。ひより。」
「勉強は高校生の本分です。このクラスで私の友達と呼べるのは正宗君しかいませんので、退学にならないようにしっかり勉強を見てあげます!私に任せてください。」
「はい。。。」
俺はげんなりとした顔でひよりに従うしかなかった。
ひよりは俺の成績を知ると、俺に勉強を教えるのが自分の使命だと錯覚してしまったらしい。
中間テストまでの我慢だ。やってやる。
・・・
ウトウト
俺の首が、船をコギコギカクカクし始めた。
バシッ
ひよりの30センチ物差しが俺の頭に刺さった。
「正宗君?」
ひよりは普段はぽわぽわしているが、実はスパルタ教育らしい。
目が据わってるんですけど。。。
・・・
「正宗君もだいぶ勉強に慣れてきましたね。明日から勉強時間を増やしましょう。」
「・・・」
おれは机に突っ伏して泣いた。
・・・
そして、テストの3日前に龍園が動いた。
「お前ら少し残れ、金田、石崎、おまえらは他クラスに聞かれないようにドア前で待機しろ」
もう、クラスも龍園の態度に慣れてきているらしい。
龍園のおかげでクラスの連中がたくましく成長しているんじゃないか?
「騒がずに聞け。ここに中間テストの過去問がある。例年、最初の中間テストは過去問の通りの内容がほとんど出ることも裏が取れている。」
教室が少しざわついた。成績に不安がある奴が多いからな。希望が見えてきたようだ。
「静かにしろっ!情報を他クラスに流した奴は、今後無事にクラスにいられると思うなよ?ひより、伊吹おまえらはクラスに配布しろ。」
普段、文句が多い伊吹だが、今回は黙って従うようだ。
・・・
「配り終えたな。おまえら、俺についてくれば勝たせてやる。まずは過去問を覚えて赤点を回避しろ。以上だ」
龍園は計画通り、求心力を高めたようだ。
クラス内を暴力でまとめ上げたときは、「こんなリーダーには付いていけない」とクラスの大半の人間が思っていたが、少し支持する人が増えた気がする。
・・・
中間テストは無事に終わった。
翌週、坂上が教室に入ってきて、
「おはようございます。ホームルームを始めます。」
そういって、成績結果を公開する。
どうやら成績は全員に公開する校風らしい。
「みなさんしっかり勉強したようですね。このクラスの退学者はいませんでした。今後とも精進するように。」
過去問のおかげか、平均80点くらいありそうだ。
一番悪かったのはやはり石崎だが、それでも60点以上とれている。
龍園のことは好きではないが、クラスを率いる能力は申し分ないようだな。
そんなことよりも、勉強地獄が終わったことがうれしいぜ。
「ひより。久しぶりにのんびり図書室いこうぜ。」
「そうですね。テストも終わりましたので、お勉強会は晩御飯のあとだけにして、放課後は図書室で楽しみましょう」
え?お勉強するの?
3年間地獄が続くことが確定した。
ひよりさんは、優しく甘やかすだけじゃない。
厳しいこともできるしっかり者さんだと思います。
次回は、ついにあの人たちが登場します。
私が原作で、一番好きな男子生徒です。
キヌガサ×トモセさんは、人の成長を描くのがすごく上手ですよね。