夜空に煌めけ、ヒーローアカデミア   作:月見月 月魅

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 およそ十年前のことである。

 とある日の、新月で星も見えない暗黒の夜。

 地球全土に満遍なく起きた超大規模停電。

 五分間、地球は闇に染まった。

 そんな僅かな時間のことである。

 正体不明の人型が、一人のヒーローの前に現れた。

 当時まだ二十代だったミッドナイトの目の前に、降り立った。

 

 夜。

 自分の黒髪と同じ色とは思えない、夜空のように透き通るような髪の少年。

 

 ──星が綺麗だね。

 

「……テレパシーの個性?」

 

 少年は口を開かない。

 けれど声のようなものが、ミッドナイトの脳内に響く。

 

 国から明かりが失われ、どこもかしこもパニックに陥っている。

 子供一人にいつまでも構っていられない。

 

 けれどヒーローとしての直感が、或いは一人の女としての勘が、この場につま先を縫いつけた。

 

 ──世界は僕を失った。

 ──夢と現の境界で、夜に代わる闇の中で、みんな眠るんだ。

 

「何を、言っているの?」

 

 ──僕は夜。

 ──原初(はじまり)恐怖(ゆめ)

 

「……奇遇ね。私は真夜中(ミッドナイト)。ヒーローよ」

 

 ──僕は夜さ。

 

 少年は、静かに微笑む。

 その暗い瞳は、天体望遠鏡を覗く子供のように純粋で、遠い何処かを見据えている。

 

 ──僕が、夜なのさ。

 

 真夜中は、夜を見る。

 星空のようなドレスに煌めく、八十八の星座が廻る。

 

 真夜中は、八十八の願いに応えた。

 

「私はミッドナイト。よく眠りなさい、美少年」

 

 夜は眠り、朝が来る。

 五分間の真夜中は終わり、世界は明かりを取り戻した。

 

 

 


 

 

 

 プロフィール

 

 香山(かやま)(よる)

 個性──夜

 年齢──夜

 性別──夜

 出身──夜

 誕生日──1月1日

 好きなもの──睡眠、母、朝

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 かつては夜そのものであった何か。

 夢、恐怖、死の象徴。

 世界がまだ光と闇だけで構成されていた時代に生まれた。

 光と闇は父、母。朝は兄、あるいは姉にあたる。 

 

 そう思い込まされて育った、夜という規格外の個性を持って生まれた子供。それこそが夜という子供の正体。

 とある国の端に位置する密林に住まう、自然を崇拝する小規模宗教組織の信仰対象として、神のように崇められながら育った。そして信者の期待に応えるように、実際に夜として地球のおよそ半分を常に覆いながら、十年以上の時を生きていた。偽りの夜。あるいは第二の夜。夜空として地球を巡り続ける日々は、数十億年を生きたと錯覚させるほどに退屈なものだった。

 そして運命の日。重度の不眠症、寝不足を患っていた夜は精神的な限界を迎え、地球へと降り立った。

 

 18禁ヒーロー、ミッドナイト──香山(かやま)(ねむり)の個性、眠り香を近距離で嗅いでいる間だけ、夜という異形系個性の特性、不眠を超越して眠ることができる。

 十年以上(本人的には数十億年以上)眠ることなく生きてきた夜にとって、睡眠とは至高の極楽。睡眠への(あるいはミッドナイトへの)執着心は薬物中毒者のそれに近い。

 

 服装──夜空のドレス

 夜の普段着であり、寝巻きであり、戦闘服(コスチューム)

 個性によって生成される変幻自在のドレス。その正体は実態を持つだけの夜空そのものである。

 八十八の星座が全面に描かれており、夜空に浮かぶ星々と同様に回り続けている。

 空に埃が積もることがないように、決してこのドレスは汚れず、夜本人も穢れることはない。

 夜はいつもこのドレスだけを身に着けており、下着は履いていない。覗き込んだ時に何が見えるのか、知るものは少ない。

 

 髪色──夜風

 透き通るようで暗い髪は、風のように軽く、変幻自在の長さをもつ。

 

 目の色──夜景

 星空のようにも見える、美しい瞳。

 

 声色──深夜

 夜とは静かなものであり、静かに暮らすべき時間である。

 

 体質──夜寒

 ひんやり冷えていて、抱き締めると心地いい。

 

 性格──十六夜

 かつては十五夜のような性格を求められてきたが、夜は明け、巡るものである。

 どこか欠けていて、しかし丸く掴みどころがない。

 

 

 

 事件の真相

 地球全土が闇に覆われたのも、懐中電灯すらも停電に陥ったのも、全て夜の能力暴走によって引き起こされた。偶然日本に降り立ち、偶然ミッドナイトの前に現れ、眠り香の個性で無力化されなければ、暗黒の時間は五分では済まなかっただろう。

 或いは、ミッドナイトの前に夜が現れたのは、無意識ながらも偶然というわけでもなかったのかもしれない。夜は誰もに訪れるものだ。

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