夜空に煌めけ、ヒーローアカデミア 作:月見月 月魅
静まり返った教室に、夜は薄く微笑んだ。
新たな環境に浮き足立つ新入生も、全てを見下して踏ん反り返っている新入生も、真面目すぎる同級生に緊迫している新入生も、夜を一目見て呼吸を忘れた。
夜の外見は幼げながらも絶世の美人。加えて、18禁ヒーローを始めとする多くの女性ヒーローから
……というわけではなく、単に子供ながら制服ではなくドレスを着て現れた夜に、脳の処理が追いついていない。
──おはよう。
そして追撃するように、脳内に未知の声のようなものが響き、反射的に何か言おうとした口がまた閉じる。
──うふふ。
──礼儀には礼儀を、挨拶には挨拶を。
──君たちそれでもヒーロー科かい?
「ぐっ……。……至極ごもっともだが君、制服はどうしたんだい?」
雄英高校で三本指に入るであろう真面目気質──飯田天哉は大層悔しそうな顔で、夜に尋ねる。
──夜は着飾らないでこそ夜なのさ。
──夜空に雲が掛かってたら台無しじゃないか。
──それでも彩るなら、それは星々であるべきじゃないかな。
夜は纏うドレスを自慢げに、星々を煌めかせる。
──僕は夜なのさ。
──よろしくね。
「ぼ……、俺は飯田天哉だ、よろしく」
──うふふ。
夜が勝手知ったるように自分の席を探り、席について間もなく、ゆっくりと扉が開く。丁寧というよりは、疲労感の滲んだような、気だるげな動作だ。
「……なに漫才やってるんだ、お前らは」
ついさっき夜を送り込んだ相澤が、呆れたような表情で夜と飯田を見る
──やあ、消太くん。我慢できなかったのかな。
「聞いていられなかっただけだ。そして見慣れすぎて忘れてたが制服どうしたんだお前」
──夜は変わらないから夜なのさ。
夜とは昨日今日の仲ではなく、叩きのめした程度で折れる性根ではないことは身をもって知っている。
「……担任の相澤消太だ。よろしく」
微妙な空気の中で相澤が名乗ると、見計らったようにチャイムが鳴った。通常の予定では十分後に入学式が始まるが、相澤は教師としても大人としても一味違う。
「早速だが、
相澤が担任して入学式や始業式に出られたクラスを、夜は知らない。
相澤が教師として着任してからは恒例行事、入学式をばっくれての個性把握テスト。個性の無い時代より続く身体能力テストをベースとした異能力試験。
夜は話には聞いていたものの、入学式の方に毎年出席していたため、体験どころか見ることすら初めてのことだったりする。
──消太くん。また校長先生に怒られちゃうよ。
「合理化の対価には十分過ぎるくらいだ。いいからお前もさっさと行け」
相澤に体操服の入った袋を押しつけられて、夜も教室を後にした。