ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング 番外編) 作:アズマケイ
豪快にドアを開けた王直は、カードゲームに勤しんでいたニューゲートをみつけるとすぐにむかう。
「ニューゲート、今すぐ船長室に来てくれ。ジーベックが呼んでる」
王直に呼ばれたニューゲートは促されるがまま甲板に出て船長室に向かいながら、なぜそこまで急いでいるのか聞いた。
「掃討大会って知ってるか」
「そうとう?なんだそれは」
「知らねえのも無理はねえか。じゃあ教えてやるよ。天竜人が3年に1度非加盟国で行ってる悍ましい大会だ」
それは身の毛のよだつような話だった。
掃討大会と天竜人が呼んでいるその悍ましい大会は3年に1度ごとに会場となる非加盟国が代わる。まずは世界政府が勝手に決めた会場になった非加盟国の王族を皆殺しにして天竜人の所有地にする。そしてその悍ましい狩りは行われるのだ。天竜人が殺してもいい奴隷を非加盟国に解放するのだ。先住民と奴隷が全滅するまで天竜人が彼らを殺しまくり、一番多く殺した者がその年の王者になるというのだ。なお神の騎士団のガーリング聖が今のところ王者の地位を守っており、今年は歴史に消えたはずの一族の末裔の奴隷を誰が殺すかが注目されているという。
その名はバッカニア族。空白の100年に実在したという奴隷解放の神太陽神ニカの生まれだったのではないかと噂されている今となっては生まれながらの奴隷階級が運命付けられている哀れな一族の末裔。
「可哀想にいっかい逃げたのにまた捕まっちまったそうだ」
「悲惨だな」
「脱走したら連帯責任で殺されるからな、いくら子供でも自分まで殺されたらたまらないから相互監視命じられてた誰かが連れ戻したんだろうさ」
「なんだと、子供なのか!?」
「噂じゃあ、まだ子供らしい。ジーベックはまだ巨人族の加入を諦めてねえからな、介入するつもりみたいだ。噂が本当なら巨人の血が流れてるはずだからな、そいつには。なにせ代役のリンリンは巨人族の血は入ってないからな。それに天竜人がマリージョアを出て西の海にいるっていうんだ、絶好のタイミングだ。天竜人を皆殺しにして奴隷と非加盟国を解放できれば、ロックスの悪名はさらに轟くことになるぞ。今年はゴッドバレーで行われるらしいぞ、いくしかねえな」
「ゴッドバレー?」
「西の海にある非加盟国だ。神の谷という名を持つもんだから烏滸がましいとめをつけらちまったようだな、可哀想に」
王直は義憤に駆られているようだった。弱きを助け強きを挫く任侠の徒と呼ばれている王直には到底許せない蛮行だ、無理もないとニューゲートは思った。いつでも王直の頭の中は非加盟国と儲け話しかないのだ。
ノック数回、王直は船長室に入った。
「連れてきたぞ、ジーベック。今回はどんな作戦でいくんだ?」
ジーベックはまあかけろ、とうながしたので、ニューゲートと王直は応接室がわりのソファに座る。
「天竜人を狙う絶好のチャンスなのはもちろんだが、掃討大会では、毎回好成績をおさめた者への景品があるって話だ。珍しい悪魔の実なのか宝石なのか噂は絶えねえが......今回はこいつが狙い目だ。なんせCPが倉庫屋に鑑定依頼をだしてたって話だからな。ゾオン系悪魔の実幻獣種、ウオウオの実!こいつがありゃあ、ロックスはいよいよ世界を狙えるぜ。海賊島の宝を奪った落とし前つけてもらおうじゃねえか!」
「幻獣種っていやあ、仏のセンゴクはたしかヒトヒトの実モデル大仏だったな。あれくらいすげえ能力がえられるのか?」
「ウオウオの実はモデル青龍っていうワノ国に伝わる伝説の聖獣がモチーフらしいぞ。図鑑によれば口から熱風、雷、かまいたちを放つことができ、焔雲(ほむらぐも)を生み出し、雲を渡り歩くように飛行できるらしい」
「ジーベックのヤミヤミを使えば能力の付け替えができるもんな。さらなる強化になるか」
「相手を殺さなきゃいけねえのが難点だが、実が手に入るってんならその必要もねえからな。人間狩りをしにきた天竜人を狩り尽くし、景品の悪魔の実もいただく。やる気になるってもんだろ」
「そうだな」
目の前のテーブルにジーベックがあらかじめ入手したと思われる海図が広げられる。
「今おれ達がいるのはこのあたりだ。カームベルトをつっきって西の海に入る。ゴッドバレーはここだからな、今から向かえば十分間に合うはずだ。深層海流を使えばいい」
「コーディングしないとならないな」
「高くついちまうがウミットんとこに連絡いれてくれるか、王直。あそこが結局は一番だからな」
「わかった」
王直はさっそく電伝虫に手をかける。
「で、だ。ニューゲート、そこにある海図を広げてくれるか。ゴッドバレーの海図だ」
「はやいな、もう持ってるのか」
「昔とった杵柄だ、王直が商人だからほんと助かるぜ。非加盟国の王族達と贔屓になって取引や護衛で信任を得てるってんだから。まともではあるが賢くはねえみたいだな。国の地図や海図なんてトップシークレットの国家機密だろうにあっさりと国外に持ち出すのを許しちまうんだから」
ニューゲートは地図を広げる。神の名を持つ鉱物がとれるから神の谷と名付けられた非加盟国は文字通り巨大な谷が目を引く国だった。