ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング 番外編)   作:アズマケイ

16 / 105
サカズキと藤虎

2年前に起きた頂上戦争の戦場となったマリンフォードは壊滅的な被害を受けた。それは長く正義の拠点であったが世界政府はさらに激化する海賊時代に備えより強固な要塞を築いた。新世界の入り口に位置する新たな正義の砦の完成である。

 

旧海軍本部のマリンフォードは、城下町のように海兵とその家族が暮らす街がセットになっていた。新海軍本部があるニューマリンフォードは、元々海軍支部「G1」があった場所だけに、街は見当たらない。ここは新世界、危険も多いこの場所にいくら海兵といえども家族を連れてくる事はしなかった。

 

実際に楽園時代すら七武海前のウィーブルが襲撃したことで家族を殺された海兵達もいる。ウィーブルが七武海入りし、海軍は生物兵器や人間兵器を使用することが義務化された。その軋轢に苦しむ海兵の受け入れ口として機能している海賊遊撃隊を日夜活動している海兵学校時代の恩師ゼファーへの配慮なのかもしれない。

 

 

新たな海軍本部ニューマリンフォードの外観を見ると、1番に目を引くのは海軍のシンボルマークである「M」を模した巨大なモニュメントがある。この「M」は「MARINE(海軍)」の頭文字と、かもめの姿を模したシンボルマークだ。その頂点の部分に見張り台があり、物見櫓的な監視台の役割を果たしている。旧海軍本部で言うと4つの岩柱の上に建っているモノと同等の役割を果たしている。

 

そして外観も大きな違いがある。形の印象で言うと「四角」から「円形」に、見た目の印象で言うと、「城下街」風の作りから 如何にも「要塞」といった形に変わっている。これも、新世界の猛者達と戦うための変化の一つであり、四皇やホーミングへの答えでもある。

 

城の大きさを基準にして比較してみると、旧海軍本部より一回り二回りほど大きくなっている。

旧海軍本部の居住区あたりまで含めて大体同じ規模感になる。周りの船と比較するとそこに備え付けられている大砲の類が相当デカく強力なもの。この地に海賊が踏み込む事はほぼ無いだろうが、それが不可能に思えるほどの火力を備えている印象を受けるはずだ。

 

あとは、新海軍本部ニューマリンフォードの裏にはシャボンが発生し上に立ち昇っている。

コレは、レッドラインの上にあるマリージョアに登る為に必要なモノ。シャボンの力を利用し上昇する「ボンドラ」と言う乗り物があるのだ。

「ヤルキマンマングローブ」が植えてあってシャボンを発生させている。ちなみにこれはG1支部の裏手にもあるから「違い」ではない。

 

この新しい海軍本部の元帥室にて。

 

 

「......てえと、天夜叉はいよいよあっしらに失望したんで?」

 

「失望?あの男は生まれた瞬間から世界を信じたことは一度もありゃあせん」

 

「じゃあなんで、これがここにあるんで?北の国の孤児が大成して秩序側になったってのに、今だに四皇カイドウに脅されて、今までの努力でようやく得られた名声や安全地帯を一気に失う立場だってのに、あっしらは何もできてやしねえ。危険なシマ渡らせてるんだ。助けてくれってのに、15年も世界政府は無視し続ける。七武海になってもダメ、あの天竜人の傀儡になってもダメ。世界で一番大切な家族のために、本気でロックス再来目論んで、四皇カイドウと組んでまで秩序を完全崩壊させようとした大好きな師匠止めた功績を持ってしてもダメとなりゃあ、そりゃあもう失望しかないでしょう」

 

サカズキ元帥はできることなら、天夜叉ドフラミンゴの機密しかない経歴について今すぐにでも仁義ある正義に叩きつけたい衝動にかられるが堪えた。元天竜人。だれにも見せない片目。ガープ中将とホーミングの縁になったきっかけ。いえるわけがない。口にした瞬間に仁義を掲げる藤虎は間違いなく離反する。今の海軍には絶対に必要な戦力なのにだ。

 

サカズキは喉元まででかかったそれを全て飲み込んだ。それは天夜叉が思想犯ロックスかぶれのホーミングから英才教育されたと思われる、建前を守れないなら死を選ぶ行動方針に感化されたことを意味するからだ。

 

サカズキ元帥は海賊が嫌いだ。海賊が不倶戴天の敵レベルで嫌い抜いていながら、その海賊と手を組んだホーミングに2年前、絶対的正義の矛盾について真正面から突きつけられた苦い経験がそうさせた。

 

サカズキ元帥は、32年前、海軍に入隊。ボルサリーノとは同期。共にゼファーの教え子となる。

 

中将時代の22年前、バスターコールにより召集されて考古学の聖地である西の海オハラに侵攻する。 当時の階級は「中将」。

 

島から出港した歴史の本文の研究に関係がない島民が乗っていた避難船に対し、「万が一あの船に学者が一人でも潜んでいたら 今回の犠牲の全てがムダになる…!!」 「“悪”は可能性から根絶やしにせねばならん!!!」という理由で砲撃を指示し、撃沈させた。

 

クザンやサウロはサカズキの行動を非難したが、「バスターコール」は標的と定めた地域にいる人間全てを抹殺することが認められている為、サカズキは罪には問われない。そもそも歴史の本文の研究が禁止されている公的な理由は、世界を完全崩壊させる古代兵器の復活を意味するからだ。少なくてもあの日、サカズキ元帥は本気で信じていたから実行したのだ。今でも後悔していない。

 

クザンとサウロが余計なことをしたせいで、ロビンが生き残り、オハラの全てがエルバフにあるまでは知らない。

 

バスターコールを巡るサカズキの行いにはクザンや海軍を脱退していたサウロも戦慄し、以降、クザンは海軍の掲げる「正義」の在り方に疑念を抱くようになり、意図的にロビンを逃がす手引きを行った。

 

ただ、あの時オハラを皆殺しにできなかった後悔はずっとサカズキにはある。

 

海軍が守るべき市民に人権がなく、強者にだけ願えば再起が与えられるおぞましい新時代が到来してしまったのだ。非加盟国だけでなく加盟国まで大海賊時代の犠牲者となり、歴史の本文を研究するための奴隷という新たなる価値を生んだ今、なおさら。

 

「徹底的な正義」を掲げ、『人間は正しくなけりゃあ生きる価値なし』をモットーに、苛烈かつ過激に正義を貫く硬骨漢である彼は、人一倍苦悩していた。

 

「悪」は可能性から根絶やしにすべきと考えており、たとえ相手が一般市民であろうとそれが悪を残す可能性があったり、味方の海兵であろうと敵前逃亡や海兵にふさわしくない、などとみなせば容赦なく始末してきた。

 

敵前逃亡した兵士を始末した件に関しては戦場に戻るよう注意を促したにもかかわらず、志願兵であり部隊の指揮官でもある将校クラスの海兵が戦場において敵前逃亡という重罪を犯した挙句、警告を無視しその場で言い訳を始めたのに対して処分を下したにすぎないためサカズキ側に非は無い。

その苛烈な正義に相応しい執念と実力の持ち主であることは、マリンフォード頂上戦争では重傷を何度も追いながらも終戦まで戦い続け、生き残ったことが証明している。

 

あまりにも過激極まるその思想と言動は、かつての同僚であるクザンをも戦慄させ、ボルサリーノが「どっちつかずの正義」という思想に行き着く一因ともなった。

 

実際、オハラでのバスターコールでのサカズキの行動を目の当たりにし、サウロが「これが正義のやることか!?」とクザンを攻め立てるも、「あの馬鹿ほど行きすぎるつもりはねぇ!」と強く反論している。

 

また、シーザー・クラウンは自分の実験を非道だと周囲から非難された際に「今の元帥センゴクは考えが甘いが…大将赤犬ならおれの兵器を欲しがるハズだ!!!」とサカズキを引き合いに出して正当化していたらしい。

 

その噂を聞いた時、サカズキは何も知らない部外者のくせにと今すぐにでも殺してやりたいと思った。サカズキだって人間だ、おのれのかかげる正義を行使できるのは大将まで。元帥から上になると世界政府や世界、海軍の矛盾に突き当たり、苦しむ羽目になっているのだ。

 

それに気づいてくれたから、クザンはSWORDにいってくれた。秘密裏に彼らはすでに和解しているのだ。

 

実際、見解が相違すれば部下や仲間さえも即座に殺す過激な性格ではあるが、海軍には彼の思想に賛同する者や彼を慕うものは多く、逆に彼を嫌う者は少ない。

 

荒くれ者が海に集う大海賊時代では、新時代を迎えた世界では尚のこと、彼の「徹底的な正義」が必要である。

 

一方で、「世界政府に属する海軍が正義であり続ける為なら都合の悪い真実は徹底的に揉み消す」「正義を保つ為には少数を犠牲にしても良い」という信条を持っているのも事実である。 何が悪いのだ。海軍は世界政府の機関だ。非加盟国を守りたいなら海賊か革命軍になるしかないのだ。その瞬間からサカズキの殲滅対象になるだけで。

 

今のサカズキにとっては、必要悪として扱われている王下七武海によって生じている犠牲もその信条に法った物に過ぎない。大将時代には本気で願っていた七武海の制度の撤廃は絶対にダメだ、世界の均衡を破りかねないというセンゴクの方針の正しさを嫌というほど思い知っていた。

 

ただ、それはマリンフォード頂上戦争時点で海兵をしていた人間だけが理解できる世界の真理であった。

 

王下七武海を巡っては、非加盟国と世界政府の密約により、事実上身売りしてきたに等しい世界徴兵で新しい大将となった藤虎とは真正面から対立している。藤虎もマリンフォード頂上戦争の本懐を理解しているし、解釈も間違いなくあっている。ただ、納得できないから対立するのだ。サカズキも覚えがありすぎる反発だった。

 

王下七武海は世界政府に非加盟国に対して海賊行為を認められている。その非加盟国出身の藤虎にとっては、七武海の暴虐による犠牲になった人々になった事がねェから分かんねェんだとよく切れている。

 

わからないわけないだろう、とサカズキは内心思っている。サカズキだって過去に海賊に関する深すぎる因縁があり、海軍に入ったのだから。

 

しかし、喧嘩はダメだ、上司と部下だから示しがつかなくなる。藤虎と仲良くなるために喧嘩をするのは元帥の座はアンタの方が相応しいと決闘すらしなかったクザンに合わせる顔がなくなる。

 

実際、サカズキは元帥となった後は、海賊殲滅のため、海軍本部を新世界側に移設。更に戦力補強の為に世界徴兵を行い、化け物の称される程の実力者2名を海軍に引き入れ、軍全体の指揮を執る。

 

しかし天竜人に振り回されたり、新大将の2人や同じ世界政府に属するCP‐0のロブ・ルッチがそれぞれ自分の考えを優先して命令を受け入れないなど、先任のセンゴク以上の「中間管理職」的な苦労する羽目になっている。 部下達の気持ちもわかるから尚のこと苦労していた。

 

 

藤虎が見ているのはトーンダイヤル。世界政府のサカズキ元帥より上の立場の何者かと天夜叉が話をする一部始終が記録されていた。

 

「失望じゃないなら、なんでこんなものを天夜叉はアンタに渡したんで?あの天夜叉が天竜人の傀儡になるときはいつも事後報告だったはずでしょう」

 

 

 

 

 

「わしの話を聞いてから反発せんか、藤虎!」

 

サカズキ元帥は一喝した。

 

天夜叉ドフラミンゴの狙いは、誤報を出すことで、一時的にでも七武海から離脱して、自由に動くためだ。あくまで誤報、すぐに訂正が入る。

 

四皇カイドウとの取引をやめない、カイドウを敵に回さない。それと七武海も辞めない、海軍を敵に回さない。海軍と七武海のメンツも潰さない。両方を可能にする狙いがある。ドフラミンゴができるギリギリの譲歩がこのトーンダイヤルなのだ。

 

さらに取引に応じたフリをして、対立しているフリをしてパンクハザードに入り込んでいる弟分のローの手引きで同盟関係がある麦わら一味を、わざとパンクハザードにひきこむ。あのシーザーとジェルマが我が物顔で占拠しているパンクハザードにだ。

 

「失敗したらどうなるんです......」

 

「そりゃあ、天夜叉ドフラミンゴが全ての首謀者にでっちあげられて、インペルダウン行きに決まっとるじゃろがい。新しくなったインペルダウンは、少なくてもカイドウからも世界政府からも守ってはくれるはずじゃからな」

 

藤虎は天を仰いだ。

 

カイドウを敵に回すか、七武海を辞め海軍を敵に回すかを選ばなくてはならないという流れだ。天夜叉ドフラミンゴとしては、大手を振って大好きな父親と合流できるわけだから、ずっとインペルダウン行きになる気はないはずだが、さておき。

 

「あっしらが七武海嫌いなの知って?」

 

「それか、世界政府が近々七武海潰しそうな動きでも掴んだか、わしにもわからん」

 

「そこまでしないとならないって、天夜叉は何したっていうんです?」

 

「しらん」

天夜叉ドフラミンゴが自分が裏で動いて情報操作などしていないことを、海軍にアピールするためなのはたしかだ。「オレは何も知らないぞ」といいたいのだ。本来なら海軍の上層部さえも騙して、天竜人の傀儡として行うべき任務だ。天竜人との取引は海軍には秘密が暗黙の了解なのにやぶったのだ。その意味はなにか。

 

「SWORDが潰されかねん......か。天夜叉が消す前に離脱させろと」

 

どうみても、ガープが所属していて、実弟がいる世界政府の認可なしで四皇に挑めるSWORDの隊長がこれから起こる時代のうねりのどさくさで天竜人の傀儡である天夜叉ドフラミンゴに殺されるといいたいのだ。なにせカイドウの下にはSWORDの隊長が潜入している。

 

「失敗したらいよいよ失望されるのはたしかじゃな」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。