ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング 番外編) 作:アズマケイ
「NEW MADS?」
「せやネン、なんかあるか?ホーミング」
「ジェルマとシーザーですか、なぜ組むんです?」
「そりゃあ、いくら脅してもお前の息子が屈しないからやネン。ある意味当然の流れやろ?」
「あー......」
「まー正直、ウチらも闇のシンジゲートの頂点で物流業界の主がカイドウに屈したら終わりなとこあるし、ありがたいんやけどな」
「カイドウが取引先にすぎないのは後にも先にもドフィだけでしょうしね」
「せやネン、ホンマ。いたわったれよ、父上。頭撫でてもバチあたらんで?」
「もうやりましたよ、ふたりとも」
「そんなん何回でもやったれや、アホやな。つーかもう聞き飽きたって顔しとるネンな、お前。だから前もいうたやろ、ホーミング。お前は身内を大事にするのは周知の事実やて。お前の息子はよーにとる、この業界には向いてへんて正直。やのにそこまでせなあかんのは心底同情するでホンマ」
ニヤニヤしながら闇金王は新たな慈善事業について聞いてきた。初めての流れだ。私が知っている時代が終わったのか、私の死んだ後にきた流れなのかはわからない。ただ、私が望むことはひとつだけだ。
「豪水とESのサンプルを提供するんで、デメリットは無視していいから、いや、むしろ悪化してもいいから、なるべく効能を強化できる毒薬を作ってもらえませんか。まずは敵対する毒がないと、うちの医療チームは成長できる余地がないんでね」
「まーたおぞましいこと、よう考えよるネンなあ、ホーミング。後ろ盾のカイドウがなにしよるかわかっとるやろうに」
「シーザーの得意分野でしょう。そこにクローン技術で世界政府の次に進んでそうなジェルマが組むんだ。世界政府が本格的に人間兵器の最終段階に入る前にこちらも対策を練らなくては」
「はー。ベガパンクから研究データ横流ししてもろとるんなら、ホーミングも作ればいいんちゃうんか、クローン。なんやっけ、セラフィム?」
「うちの息子の血統因子使ってる可能性ある兵器の二番煎じなんかするわけないでしょう」
「すまんすまん、冗談やネン、ホーミング。そこまで怒らんといて欲しいネン。でも素体がルナーリアやろ?これ以上の素体なんてあるか?」
「ルナーリアだからダメなんです。自我を与えないといけないなら、絶対にルナーリアはダメだ」
「なんでやネン。世界政府と抗争続けとるお前んとこやったら、カイドウんとこの部下も納得するんちゃうんか?」
「そんなんじゃないですよ」
「そんなに王直としては可愛いんか、カイドウが。筋金入りやネンな」
「だから違いますって」
私はため息をついた。
ルナーリア。シャボンディ諸島の人身売買オークションのリストにも三つ目族同様記載されておらず、まだ容姿や固有能力といった特徴しか明かされていないが既に絶滅した種族とされており、ビッグ・マムが治める数多の種族が暮らす万国にも彼女の個人的な因縁によってナワバリ内に滞在しない巨人族と並んで存在しない種族。
そのため、現在ルナーリアはたった1人である。 ルナーリア族は絶滅する前は現在マリージョアがある赤い土の大陸に「神の国」を創り暮らしていたと推測され、まだ種族が健在の頃の通り名は神であったとされている。
この特殊な存在は現在世界政府が生き残りがいれば捕縛しようと試みており、もし政府にルナーリア族がいることを知らせるだけで1億ベリーの報奨金を支払うとしている程異例の扱いをしている。
「黒い羽根」「白髪」「褐色の肌」、そして常に背中で噴出し続ける「炎」がこの種族の特徴だ。だから、カイドウの部下はこれらの特徴のうち、白髪と褐色肌を隠すべく黒色のマスクとスーツを着用している。
悪魔の実の能力に頼らず炎を自在に生み出すことができ、拳撃や刀身に炎を纏わせることで攻撃の威力を向上させることができる。 また、炎を光弾のように連続して放つこともできる。
クイーン曰く「あらゆる環境下で生存できる怪物」とのことで、背中の炎が燃えている間はたとえ衝撃の余りクレーターを発生させてしまう蹴りや青龍の頑丈な鱗を斬り裂く斬撃を受けてもダメージを受けないという体質を持つ。
この防御力は悪魔の実の能力で変身した際にも発揮され、動物系古代種の耐久力も加われば一切の傷を負うことはない。
世界政府がルナーリア族を捕らえようとする理由の1つはこの規格外の耐久力の秘密を暴くためであると思われ、事実30年以上前にある人物を捕らえていた際には耐久実験を実施していた。
また、背中の炎が消えると防御力は落ちるもののその代わり技や移動の速度が上がる特徴を持つ。
そのためルナーリア族との戦闘で勝利を収めることは至難の業である。かつて私が王直として本格的に死闘を繰り広げた時は、速度を上げて攻撃を仕掛けてきた瞬間に、ワプワプで視界誘導してから、射程範囲までとびこんでカウンターに最大火力をぶちかます戦法しか使えなかった覚えがある。
「あのですね、渾身の計画を家族の情なんて王直時代の私にとってもっとも縁遠いもので破綻させられて、つくづく私は思い知ったんですよ。愛を含めた欲望ってのはだれも支配も制御もできないんだってことを。だとしたら、信仰ってのもだれにも支配できないはずの欲望なんですよ、きっとね。月の民の信仰を知る者としては、そんなおぞましいことできるわけないじゃないですか」