ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング 番外編) 作:アズマケイ
ロックスかぶれのホーミングとアラバスタの付き合いは、サー・クロコダイルの失脚に伴うビビのウミット海運への連絡より先に復興支援したいという親書がとどいたことから始まった。
ウミット海運はビビの依頼をうけて空島ウェザリアに話をつけ、長年人工的に操作されてきたアラバスタの天候が自然に戻るにはどれくらいかかるか教えた。それまでは自然な天気を再現するため、空島ウェザリアからウェザーエッグを買い、天気を再現してもらうことで対処した。必要な金の一部はホーミングがビビが儲け話を持ち込んでくれた礼だと負担してくれた。
マリンフォード頂上戦争が勃発し、ホーミングが思想犯になってしまっても、麦わら一味に国を救われたアラバスタは秘密裏に交流を続けていた。
そんなある日のこと。
「海軍にいるうちのロシナンテと天夜叉ドフラミンゴは兄弟みたいなものでしてね。それを知ってか知らずか、世界政府は互いの立場を利用して殺し合いをさせようと目論んでいるようなんです。直接手を出せないとわかったらすぐこれだ」
アラバスタに秘密裏に表敬訪問したホーミングは、そういって憤りをあらわにしていた。コブラ王は戦慄していた。世界政府にとって天竜人が人間になるために、とうとう目の前の男は思想犯にまで堕ちたのは記憶に新しい。ここまで大変な思いをしてもまだ足りないのかと。
「私に手伝えることがあるとは思えんが......」
「ありますよ、貴方がたにだけできることが」
「話だけでも聞かせてもらえるか」
「はい、取引しませんか。新しい豪水の使い方を提案させていただきたいんです」
「豪水の?」
ホーミングはうなずいた。豪水はアラバスタの秘密裏に伝えられてきた秘薬だが、内乱のときに使用したことでその存在が戦場にいた人間にバレてしまっている毒水だ。
飲むと一時の力を得るが、命が削られる水。飲んだ後には、腕にアザができる。アラバスタのツメゲリ部隊が使用した。一気に命(余命)が削られる。また、ツメゲリ部隊は豪水の副作用で吐血して死亡した。
ホーミングがいう取引が思いつかないコブラ王は首を傾げた。
「ツメゲリ隊の皆様のこと、ほんとうにお悔やみ申し上げます。この取引はリュウグウ王国だけのつもりだったのですが、事情がかわりましてね。アラバスタにこちらをさしあげたい」
ホーミングがトランクから出してきたのは、オペオペの実だ。
「16年かかってやっと2つ。そのうちのひとつをさしあげます。あとは医療部門と軍事部門への投資をお約束しましょう。その意味はこちらの図鑑をお読みいただければわかるかと」
豪水の新しい使い方。それはオペオペの奥義で不老の兵士を作り、豪水のデメリットを踏み倒すというとんでもない方法だとコブラ王は気付いた。ただ不死の手術ではない。豪水が寿命をちぢめる水だから踏み倒せるにすぎない。そこだけは要注意ではあるとホーミングはいう。
「天竜人のあいだでは有名な運用方法なんですがね、800年のあいだにアラバスタでは失われてしまった技術も数多にあるのでしょう。そう思ったんです。先人の意思が語り継がれないことほど痛ましいことはありませんから」
「そうなのか......だから秘薬だったのか、豪水は」
「真相はわかりませんが、オペオペで新しい使い方があるのはたしかです。これの成功でドレスローザは攻撃されるし、天夜叉ドフラミンゴ失脚の裏工作が激化してましてね。困っているんです」
ここまでいわれたら、世界で一番大切な家族のためならどこまでも落ちることができる男から持ちかけられる取引など決まり切っていた。
「あなたがたがサー・クロコダイルからどれだけ被害を受けたかは想像にかたくありません。ただ、私はロシナンテと兄弟同然に育った天夜叉ドフラミンゴを見捨てたくはないんですよ。だからお願いしたいんです。次の世界会議で、世界政府になんといわれようが絶対に七武海廃止は提言しないでいただきたい」
よかったら、より強力な秘薬を作りたいからサンプルをくれないかと笑うホーミングに、コブラ王がうなずいてしまったのは、仕方ないのかもしれない。
ちなみに、前の世界ではあれだけドフラミンゴ欲しがってたなあというとんちんかんな理由で、自分が死んだ後に遺言で残す気だったのだが、ドフラミンゴに有効活用してくださいという遺言も全部バレてしばかれたのはいうまでもない。