ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング 番外編)   作:アズマケイ

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王直とハチノス

王直(おうちょく)は外海でいうフルネームだ。外海の人間達は呼びにくいからか、王直で名前と勘違いしているのか知らないが、どんなに仲良くなってもいつもフルネームでしか呼ばない。ちょっと寂しい。王(おう)は母方の姓で、父方の姓には嫌な思い出しかないから、名乗っているのだとセンゴクは本人から聞いたとがあった。

 

ワノ国の出身なのかと聞いたことがあったが、その手の話題になると露骨に避けようとして嫌がる。深入りすると問答無用で射殺しようとしてくる。母方の姓ばかり名乗るのはそういうことなのだろうとセンゴクはそれ以来聞いてはいない。

 

王直はある非加盟国の生まれを自称する。どこかは教えてくれないが、それが母方の国であり、生まれ故郷なのは間違いない。そこで生まれ育ち、任侠の徒、わかりやすくいうと、弱きを助け強きをくじき、義のためには命も惜しまないといった男らしい気性に富む、そのような生き方に憧れている海賊だった。

 

王直は非加盟国出身の海賊だが、少々経歴が変わっていた。

 

青年期に商人となるがのちに運輸王となるウミットとの熾烈な争いに負け、禁忌とされる密貿易に手を出し、表の世界から永久追放、健全な商売をできなくなった。なぜなら、この世界でそれは世界政府の許可なく海に出る人間、すなわち海賊堕ちを意味していたからだ。

 

王直は最初こそ加盟国を中心に略奪したり、海軍や民間の船を襲って捕虜を奴隷にして売り飛ばしたり、時には身分詐称をするえげつない海賊とみられていた。しかし、その本質が武装した貿易目的の集団が、禁制品を商う密貿易をしたいだけだと理解されると非加盟国出身の海兵からはその捕縛にかかわるとなると露骨に士気が下がるようになった。

 

なにせ世界政府から存在を無視され、海賊に襲われる運命の非加盟国にとりいり、密貿易をしながら支援することで信任を得ていたからだ。今でいう七武海の真似ごとをしていた。

 

そのうち、王直のもとには、非加盟国出身の者達が集まり、民族種族出身問わず訳ありの者達があつまり、実に多国籍な海賊となっていく。世界政府や海軍からの取り締まりや攻撃にあうと、いよいよ海賊集団を組織し、ハチノスを拠点にし、頭目となった。

 

それがハチノスが海賊島と呼ばれる、非加盟国出身者達があつまる海賊達の楽園であり、デービーバックファイトが生まれるような国となるあらましである。

 

そのため、王直は非加盟国出身者の海軍や世界政府の士官には好意的にみる人間は多いが、加盟国出身者の世界政府高官、あるいは海軍上層部からは嫌われていた。なにせ非加盟国には密貿易を手引きして利益を得たい有力者がたくさんいて、その撲滅はなかなか進まなかったからだ。

 

そんな彼がハチノスにいた海賊達にもちかけられた儲け話にのり、ロックス海賊団に入ったと聞いたとき、センゴクは納得しかなかった。たくさんの船員達を養うのに密貿易だけでなく海賊派遣業も初めていた王直だが、いつでも彼は金に困っていた。途方もない儲け話がなんであれ、王直のもつ販路やコネは必ず必要になる。だからロックスが真っ先に声をかけたのは間違いなかったからだ。

 

ゴッドバレーがおこり、なにがあったかは知らないが、ガープと意気投合したのは間違いない。そうでなければ、あれだけ天竜人を嫌い抜いているガープが元天竜人であるホーミングの中に王直をみなければ、ロシナンテを引き取るはずがないからだ。実に奇妙な縁だと思う。未来予知した自分よりもうまくやっているからもういいやと死のうとした男ではなく、生きて欲しかったはずの同一人物がしんだ。運命というやつを信じそうになるくらいには奇妙なことだとセンゴクは思う。

 

それはそれとして、そんな王直を殺してまでハチノスを黒ひげは奪い取った。なにが目的なんだろうかとセンゴクは疑問に思っている。海賊王を目指していると思われるが、ハチノスは拠点にするには、そんなに大事な国とは到底思えないからだ。

 

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