ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング 番外編)   作:アズマケイ

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王直とロー

「いいか、クソガキ。おれはある非加盟国出身の元奴隷の母親とワノ国で嫌われ抜いてる一族の父親のあいだに望まれないのに生まれてきた私生児なんだ。だから、王直(おうちょく)でいい。さっきいった苗字は二度と口にするなよ。あのババア思い出して殺したくなるからな」

 

そんな出会いから始まった王直は、任侠というローの知らない概念をとても大切にしている男だった。わかりやすくいうと、仁義を重んじ、弱きを助け強きを挫くために体を張る自己犠牲的精神や人の性質を指す語らしい。

 

正しい任侠精神は、正邪の分別と勧善懲悪にあるという。仁侠(じんきょう)、義侠心(ぎきょうしん)、侠気(きょうき)、男気(おとこぎ)などともいう。ここまで言われてようやく理解できたことを思い出す。

 

王直の母方の非加盟国での任侠の歴史は古く、情を施されれば命をかけて恩義を返すことにより義理を果たすという精神を重んじ、法で縛られることを嫌った者が任侠に走ったとされる。

 

その国はそんな人々を3千人雇って国を動かしたとして各国から評価され、特に義理堅い者が王にまで出世したことで知られていた。このため本がたくさん出ており、貧乏ながらも助命をすることが急務とし、そのことで礼を言われることを嫌っていたために名声が高かった男の名がよく売れていた。

 

以後、任侠は庶民の間で地位を得て、権力者の脅威となった。『仁侠』の志を知らずに彼らをヤクザやチンピラなどと勘違いして馬鹿にするが、それは悲しいことだ」と王直はぼやいていた。

 

その非加盟国は広大な面積と複数の言語や民族が存在するので、地方においては法の権威が及ばない。あるいは中央の監視が行き渡らないため人民が地方官僚の暴政に悩むという背景の中、任侠とは庶民の中にあり圧政や無法地帯の馬賊から庶民を守る正義の味方という側面があった。

 

そこから、法に頼らない個人レベルとしての恩に対する義理や義兄弟の忠誠が強調され、賊であっても義賊であることも可能だったという。

 

「フレバンスなら広まらない考え方だな」

 

「あはは、お前、よりによってあのフレバンス生まれなのか。そりゃ、加盟国から非加盟国に転落するより悲惨だな。いきなり滅ぼされたのか、運がねえやつだ」

 

カチンとしたが事実だから仕方なかった。年を聞かれて答えたら、大人だなと言われた。おれがお前の頃ならもう殺してたとさらっと言われた。非加盟国出身のやつはみんなこういうメンタルなんだろうか。ユースタス屋を思い出した。

 

フレバンスなら政治が安定して法治主義が隅々まで行き届いており、反乱などもほとんど長続きしないという状態だ。もし任侠の概念があっても、社会の最下層の人間や非合法の輩の間でしか存在できないという状態だろう。

 

王直のいう任侠という概念は、暴政や海賊がはびこる半無法地帯や非加盟国の中での庶民の正義だ。海軍のかかげる絶対的正義とは真正面からぶつかるから、海賊になる運命と共にある。

 

ドフラミンゴファミリーを思い出した。

 

ドフラミンゴファミリーは、任侠とはかけはなれている。

 

非加盟国で無頼の輩が「相互扶助を目的に自己を組織化した」奴らの元締めを傘下にしている。

 

このような組織は法治国家においても、闇の部分である繁華街、不法移民の潜入ならびに不法就労の仲介、売春、賭博、麻薬、興行、ヤミ金融そして昔なら闇市などの分野で持ちつ持たれつ、あるいは搾取する立場のものとして活動している。

一般市民にたいする暴力行為、恐喝、闇金融による不法な取立て、覚醒剤密売や不法移民に対する人身売買まがいの行為などの任侠と対極に位置する行為を行っている奴らがいる。

 

それでもいいといった人々がいたから、ドフラミンゴファミリーの支配下にある非加盟国はたくさんあるのだ。

 

たぶん、王直の出身国が無法地帯すぎるだけで、少しでも法が届くならドフラミンゴファミリーみたいになるのだろう。

 

「任侠の徒になれたか、おれは」

 

あの日、ローが聞いた覇気通信の最期の言葉にああといえたが、王直には聞こえていただろうか。

 

未来予知よりはよほど立派な最期だと王直は笑っていた。見聞色がろくに使い物にならず、メンタルが死に、海軍の英雄を作り出す舞台装置に利用されたあげくに黒ひげとコビー大佐とおまえに殺されるよりはよほどましだと。

 

さすがに二の句がつげなかったが気にするなと笑われた。どういう状況になったらそんなことになるかわからないが、王直は笑うだけで教えてはくれなかった。

 

王直は全て指示してきた。ローはその通りにするのに必死だった。黒ひげ海賊団が百獣海賊団と組んでハチノスにやっと勝てたところに、ワプワプが発生する瞬間が来る。そのときを見計らって人工悪魔の実とワプワプの実をいれかえた。

 

黒ひげの野郎に血統因子は渡したくないからと王直は自爆を選ぶ。だから逃げた。ウェザリアの気球でにげて、空島ウェザリアでハレダスにワプワプを渡し、そのまま気球で降りた。そして手筈通り麦わら達がくるまで潜水艦で潜伏していたのだ。あれだけ動いたのは後にも先にもあの時だけだろう。

 

自爆は、ダイナ岩の加工品による大爆発だった。SSGからドフラミンゴファミリーを通じて四皇達死ぬわけないのにダイナ岩を死蔵するくらいならもっと有効活用した方がいいって考えてる馬鹿から入手したものを利用して行われた。

 

そしてインペルダウンは完全に崩壊し、一部の囚人や看守たち、幹部クラスの百獣や黒ひげ陣営以外は全滅した

 

ここまで大暴れしたのに、引き際をわかってるから黒ひげ陣営はみんな生き残ってるし、負傷はしてるが致命傷がない。ならば実力主義な王直の部下達も黒ひげを受け入れる。負けたら皆殺しか傘下に入るのが流れだ。

 

とにかくローはマリンフォード頂上戦争の裏側での立役者なのは間違いない。問題はドフラミンゴだけじゃなく海軍側にも一部歪曲しているものの、その活躍がバレているということだ。

なぜかバレていたから、七武海に勧誘された。

 

ドフラミンゴがいうには、海賊王になるための最短ルートだからとハレダスあたりが気を利かせたんだらしい。ドフラミンゴの弟分はさすがだなあと笑っていたそうだ。

 

「あんだけ啖呵きって神の天敵だっていったらそりゃ勘違いされるだろ。いいじゃねえか、有名税だ」

 

全然よくなかった。

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