ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング 番外編)   作:アズマケイ

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センゴクと王直2

久しぶりにやってきたハチノスからは、ハバン船が姿を消していた。代わりに掲げてあるのはドクロマークである。ハチノスにはもともとドクロの岩があるから違和感はないが、ハバン船があたりを覆い尽くし、八幡大菩薩をかかげたハバン船が威圧してきた時代を知っている私としては、ひとつの時代を終えたみたいで寂しさの方が先にあった。

 

「可愛がってる見習いを拉致した報復に、いつまで経っても襲撃にこないから驚いたぞ、王直」

 

「私を笑いにきましたか、仏のセンゴク」

 

「いや、もともとお前は四皇にすわるより、ハチノスの世話焼きに戻るのは目に見えてた。白ひげがすわるのは意外だが」

 

「よく言いますね、四皇だって新聞連中がいいだしたことじゃないですか」

 

「お前たちのことだと思ってるやつも多いだろう」

 

「そうですね、四皇に座ってる奴らは、ニューゲート以外は全員自分のことだと思っていますよ」

 

「おまえらしいな」

 

「私らしいとは?」

 

「見聞色がつかいものにならないから現役引退して、ウミットの......いや、四皇カイドウの下請けか」

 

「......ロジャー......いや、拳のガープにも......。.....そりゃもう、完膚なきまでに、叩きのめされましたのでね......」

 

「やけに歯にものが挟まったみたいな言い方するじゃないか。そんなに儲け話をごはさんにされたことが悔しいか、王直。島が焦土とかすだけじゃなく、地図の上から消えるなんて、どんだけ暴れたんだおまえらは」

 

「......」

 

「王直?」

 

「......なんでもないですよ、仏のセンゴク。ゴッドバレーにて天竜人とその奴隷達を守るため、たまたまそこに居合わせた拳のガープとロジャーが手を組み、最初にして最強の敵、ロックス海賊団を打ち破った。それだけが真実だ。敗者に語る権利はありませんからね」

 

「お前、ロックス好きじゃなかったか。お前まで口を閉ざすのか、ロックス海賊団のこと。現役引退したと聞いて楽しみにしていたんだが」

 

「カイドウが黒歴史だから喋るなというのでね、私はどうしようもないですよ」

 

「世界政府に拉致されたカイドウを助けようと、ウミットの下請けになる条件で情報得たお前がか?おかげでうちの研究機関は8割が焦土とかしたわけだが」

 

「ハチノスに手を出したらこうなると見せつけないと、また馬鹿なことを世界政府が考えかねないのでね。悪く思わないでくださいよ。とはいえ、肝心の本人が自力で脱出したんだから世話ないですよね、ほんとうに。初めて会ったときは15だから、もう21か。はやいものですね」

 

「......おなじ年だったな」

 

「そうですね、生きていれば貴方が可愛がってる新兵達と同じ年だ」

 

「お前の息子をスパイにしたのは私だった。ほんとうにすまない」

 

「何かと思えばそんなことですか。とっくの昔に知ってましたよ、そんなこと。ごめんなさい、拾って育ててもらった恩を裏切れませんと言われたら、私にはどうしようもありません。その程度でハバンの血の掟の例外はつくれませんからね」

 

「そうか、知ってたか。いつからだ」

 

「あの子と出会う前から知ってましたよ、そんなこと。でも、所詮は私の精神状態と情報収集の精度でブレるのが見聞色の限界だ。覆してきた未来も沢山あった。避けられた悲劇も沢山あった。だからあの時の私はあなたとあの子の絆を超えられると根拠もなく信じていたんです。私があの子と同じ立場だったなら、絶対に無理だとわかっていたはずなんですがね」

 

「......そういえば、私はお前が海賊をやる前のことをよく知らないな」

 

「でしょうね、そんな確固たる記録があるのは加盟国だけだ」

 

「せっかく引退したんだ。ロックス時代を知る世界政府がお前達に手を出すことはできないし、そもそも許可が降りないだろう。せっかくだから教えてくれるか。おれも話すから」

 

「同窓会じゃあるまいし、なんですかそれ」

 

軽く笑った王直はようやく私の知らない時代のことを話してくれたのだった。

 

 

 

 

気が変になりそうだった。おれが世の中に一目で嫌になるというタイプの顔があるとすれば、それが目の前の顔だった。この男は有難い程親切者だ。だが会っていると、憂鬱なほど不快になって来る。遠くから考えると、涙の出るようないいひとなのだけれども、会うとムッとする。この男から見え隠れする仁義ある正義、こいつが一番苦手なのだ。そのナチュラルな上から目線には虫唾が走る。とうとうおれはこの男が好きになれない確信を得るにいたっていた。

 

初めて会ったとき、直感的に「むり」だと思った。「むり」という気持ちが、無意識のうちにすこーんと頭の中で直立していた。茶柱のように不意な直立だったから、逆らう気にもなれなかった。

 

ひどい嫉妬というのは本人と相手の関係性ではなくて、ほとんどの場合単にエネルギーの低さを表すのだ。

 

自分が苛立っていること自体に、苛立ちを感じていた。センゴクの喋り方や態度は、特別にこちらを見下すものではなかったが、その説話を口にするかのような雰囲気が、生理的に、としか言いようがない漠然とした嫌悪感を与えてきた。

 

足の多い昆虫や、けばけばしい色の植物を目撃したのに似た、不快感だ。さらには、さも自分たちのほうが経験豊富だ、長年付き合い友情を育んできたじゃないかと訳知り顔でとうとうと喋る、目の前の男が腹立たしかった。怒りを鎮め、頭に冷静さを取り戻すために呼吸を整える。

 

ゴッドバレーのせいで失ったものか多すぎた。そしておれはおれなりに混乱し、疲れていた。それでもあたかも敗戦部隊を再編成するように、自分の中に残っている集中力を──太鼓もラッパもなしに──ひとつにかき集めた。意識の体勢を立て直し、考えた。

 

ハチノスを守るには、いずれ元帥にすわるこの男との繋がりは絶対に手放せない。ボロを出してはいけない。出会ったときから不倶戴天の敵で嫌い抜いているなど気づかれたら終わりだ。

 

おれは昔話をはじめた。センゴクの昔話はおれが欲しくてたまらないものばかりだった。おれから生まれて初めて家族になれたかもしれないあの子を奪ったその口が語るのか。笑顔が保てたのが正直奇跡だと思う。

 

 

 

(ホーミング)

今思えば、情報規制されて操作されてる以上、仲良くなって話すしかないわけで、それすら色々あって無理な世界となるともうどうしようもなかったんだろう。こっから38年もセンゴクと(一見すると)友情はぐくむことになるんだから、5年ぶりに復活した覇気や見聞殺しの精度が跳ね上がるんだから、塞翁が馬だ。もしかしたら、北の海で仕事したとき、あの近くにあの非加盟国があったんだろうか。極限状態で覇気は成長するのはしってたが、べつに戦場じゃなくても覇気は成長するんだとしれたのはよかったのかもしれない。

 

 

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