ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング 番外編) 作:アズマケイ
「立法者にしろ、革命家にしろ、平等と自由を同時に約束する者は空想家でなければ山師である」
「山師ってなんだよ」
「鉱山経営者のことだよ、ドフィ。鉱山業は発展すると測量・採鉱・選鉱・精錬などの鉱山技術者、熟練労働者の専業化が進むが、そのなかから指導力、経営力のある者が、山師となって他を率いるようになる。私のよく知る国では、財政を確立するために鉱山を重視した王が山師に特権を与えたのさ。だから、鉱山の構内は一種の治外法権が認められ、殺人者が鉱山に逃げ込んでも役人に渡さなくてもよいことになっていたくらいだ」
「四皇みたいなもんか」
「そうだ。赤髪以外はみんなそっちに落ち着いた。大人になると保守的になるのはそのせいだ。自由と平等じゃなく、平等を求めるようになる。守るものができるからな」
私も含め、ロックス時代の連中は特にそれが顕著だ。前の世界では特に、生まれや育ちの呪縛からは逃れられず、ほぼ全員が家族関係に何かしらの問題を抱えていた。もっとも、それは前の世界だけでいえば、赤髪にもいえた。自由と平等をもとめるために、大人になることを拒否し続けているあの男すら逃れられなかった呪縛だ。
死後、自分の実子を名乗るウィーブルに傘下の息子達を襲われているニューゲート。シフォン、プラリネといった娘達に離反され、暴走で息子を殺しかけたリンリン。実の娘を束縛しようとして壮大な親子喧嘩をしていたカイドウ。
幼くして大事件を引き起こしてしまった義理の娘を守る為とはいえ、長年ほったらかしにした赤髪。
ゴッドバレーを経験した私達は、どうしても平等について考えてしまうことになる。大人になり選ばざるをえなくなったとしても、せめて自分なりの平等を模索していた。選びたかったのだ。
カイドウは「出自、人種に関係無く戦争によって個人の価値は決まり、それこそが真の平等である。」と考えた。
リンリンは「自分と同じ目線であらゆる人種が家族となり、同じ目線で食卓を囲むこと」を目標にした。
赤髪は「この世界に平和や平等なんてものは存在しない」と「平等」そのものを否定するような発言からわかるように、大人になることを拒否しているからそういう言葉がでてくる。もっとも私は赤髪が嫌いだから本懐はよく知らない。そうなんだろうと思っているだけだが。
「そうだな、子供はいい大人に恵まれてしまうと大人になりたいと思ってしまう。そうなれば最後だ、自由と平等を求められなくなる、平等をとるようになる。だから私は怖かった。おまえがいると大人げなくなれなくなる。よき大人になろうとしてしまう。それは、かつて全てを失った私だ」
「......だからわざと態度に出さなかったのかよ、どこをどうみても、アンタなりに、あんだけ家族のこと思ってるのに。初めて会ったばっかの天竜人の家族に」
「天竜人を助けるのはおまえ達が最初じゃないから、そこは問題じゃなかったさ。自由と平等にはそもそも二律背反的な概念だ。空島バロンターミナルとウェザリアを中立地帯にするにはそれしかなかった」
「ドレスローザじゃだめなのか」
「おまえが七武海になって天竜人の傀儡になってやっと守れてる程度の国をか?笑わせるな、170対1でいつでも裏工作できる世界政府に本気になれば消されるだろうに」
「刺客を送られてこない安全な生活が保証されてるし、寝られるようになるだけマシだ。それにおれが最果ての地にいけねえなら、海賊王に世界をぶっこわしてもらうしかねえ。おれの夢はなにひとつ変わっちゃいねえよ。それに父上がいるからいいんだよ、おれは。最悪インペルダウンに逃げ込んで、父上んとこに逃げればいい」
「そうなればいよいよドンキホーテ・ドフラミンゴだな。世界は天夜叉のほんとうの意味を知るわけか」
「フッフッフ、どんだけ周りの奴らが残るか楽しみだ。残ったやつらでドフラミンゴファミリーでもしてやるさ。そん時はいよいよヴェルゴを戻すことになるだろうよ。コラソンは返上になるだろうからな」
「古参連中は残るんじゃないか?」
「まァ、うすうす勘付いてやがるだろうからな。残ってくれたら正直うれしくはある。なんだかんだで今まで着いてきてくれたしな」
「ヴィオラ王女はどうするつもりだ?」
「ギロギロでみやがったら追放するとは伝えてあるからな。嫌ならその程度だろ」
「人間不信が極まってるな......私が父上でほんとうにすまない、ドフィ」
「ほんとだよ、誰のせいだと思ってやがる」
「ガープ中将に身内認定されるためには背水の陣を敷くしかなかった。私にはゴッドバレーの縁しか手札がなかったからな」
「なんの話だ?」
「最初の手紙の話だ。ガープ中将に送った手紙には、ゴッドバレーの機密を書いた。私達が今なお狙われているのはそれもあるだろう。ただの元天竜人を執拗に殺しにくるわけがない。ただ、世界で唯一世界政府が手を出せない安全地帯はガープ中将の故郷であるフーシャ村しかなかったからな」
「......ほんとにあの頃は、頭がイカれてたんだな。矛盾の極みじゃねえか」
「あの頃は不倶戴天の敵を苦しませながらいかに自分を殺す海兵に育てさせるかコビー大佐に最速で会うかしか考えてなかったからな。たまたま本来のホーミングの妻子だけはって願いと一致した。もっとも、私にとっても血反吐を吐く覚悟だったのは事実だ。初めて家族になれたかもしれない子供をスパイにされて自分で殺したことある私が、お前たちをスパイにしてくださいと手紙を書かなきゃならないんだからな。私が手紙に載せた想いはどうあれ、苦渋の決断とガープ中将は受け取ったようだ。そこに迫害に耐えられないし、世界政府に殺されるくらいなら非加盟国ごところしてやるという殺意をみたら腹をくくったそうだ。私はガープ中将を甘く見ていたんだろう。天竜人嫌いのガープ中将なら絶対にロシナンテに海兵としてのイロハはたたきこむが、私がドフィにしたように、わざと愛情向けないで育てると踏んでいた。憎悪抑えるので手一杯だろうとな。まさか私をみたから親友になれるかもしれんなんて思いもしなかった」
「ふたりとも唖然としてたぞ、トーンダイヤル聴き終えた後。本来のアンタが非加盟国まで手を出すのは身内に手を出された時だけだから、非加盟国滅ぼしたのはそういうことだ。アンタ、最初からおれ達を家族としてみてたんじゃねえか。なのに30年も復讐に費やすとかどんな未来見たんだよってなるだろ、なんでわかんねーんだ、ばかなのか?」