ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング 番外編) 作:アズマケイ
「おれだ、ロシー」
海軍本部にて、備品を破壊した始末書に追われていたロシナンテは からっぽになったマグカップを片手に立ち上がる。給湯室には自動化されたコーヒーメーカーがあるため、ようやく事務職の部下に頼まなくてもよくなったばかりだ。集中している時なら破壊しないで済む。給湯室のコーヒーメーカーにマグカップをセットし、ボタンをおす。ナギナギを発動させながら、好みのミルクや砂糖をいれた。
お茶の方が好きだが、大事な報告を受ける時に眠くなってちゃさすがにまずい。
「海」
「霧」
「久しぶりだね、ドリィ。元気そうでなによりだ」
「あァ、何とか生きてる」
「それはよかった。当初の予定通り、軍は動かないはずだよ。第一兵が足りない。もっと厄介なのが動くけど」
「嫌な予感がするが先に報告させてもらえるか。嫌な報告ばっかりで正直気が滅入るんだが」
「はいはい、どうぞ。新時代なんだからSWORDにとっては嫌な時代なのは仕方ないだろ。泣きごといわないの」
「ぜんぶお前の父上のせいだけどな」
「加盟国も非加盟国も平等に強者に蹂躙される世界にしただけだろ。おれ達が今なお受けてる世界の殺意はこんなもんじゃねえよ。だいたい海軍はあの日負けたんだ。秩序の面目が保てたのは七武海と生き残れたおれ達がいたからにすぎない。新時代に敗者にいいわけは不要。甘えたこといってんじゃねえよ」
「わるい......ちょっと八つ当たりしたくなっただけだ。未確認情報だが、あたっちまった。ビッグマムがカイドウと同盟結んでるから赤髪のシャンクスが抑えきれなかったって話、やっぱり本当だったようだ」
「うっそでしょ......ロックス時代から犬猿の仲だって有名だろ、あいつら......。なにがどうなってそうなるんだよ、おかしいだろ......。父上どんな儲け話したらそうなるんだよ......」
「残念ながら軍は潰し合いを期待してたが、もう期待できないだろうな。これから勢力図が大きく変わるぞ。お前の父上が白ひげと組んでるからまだ均衡は保たれてるだろうが。全部予定調和なのが腹立つな......。赤髪が穏健派でほんとうによかった。わからないのは黒ひげだ。また潜伏しやがった。同盟組んでるわけじゃなかったらしい」
「えっ、そうなの?インペルダウンであんだけ派手に暴れたくせに?ワノ国にはもういないんだ?」
「ああ、なにが目的だったか、今調査中だからなんともいえんが......王直を殺したんだ。ハチノスの方かもしれないな」
「ハチノスかァ......」
「おまえの父上は動かないのか?かつては王直として最後まで守りたいほど大事な国だったんだろう?」
「父上曰くロックスでは欲しけりゃ奪い取れが当たり前だったみたいで、黒ひげの大立ち回り聞いたら笑ってた。中立地帯守るので忙しいから気にしてないみたいだ」
「そうか......まあ、お前の父上に動かれると本気で情勢が見通せなくなるからまだマシだが......。それともうひとつの嫌な件はワノ国の都でCP 0を見たことだ」
「うわあ、はやっ」
「おいまて、なんだその反応。まさかそっちでも動きがあったのか?こっちは世界政府と世界の火薬庫状態のワノ国で四皇の誰かと取引してる可能性が浮上したから、思考が止まってたばかりなんだが?また精神と時の部屋に行きたくなる報告だけはやめてくれよ?」
「いや、こっちはまだましだよ」
「こっち?」
「ほら、闇のシンジゲート経由だと兄上通じて父上にもバレちゃうじゃん?だからカイドウの窓口化してる黒炭オロチと直接なんらかの取引の交渉をしてるって世間話を空島バロンターミナルでしてるみたいでね。それじゃないかな?
カイドウがバックに着いてるから、オロチは世界政府の対応を恐れずに強気でいけるから、無理難題を叩きつけられ交渉は難航してるらしいけど」
「そうか、こっちに気づかれたわけじゃないならマシか......いけるなら世界政府とカイドウの今後がわかるな。調べてみる」
「おれからの報告聞いてからそれいってね」
「ああ、そうだったな。なんだ、そのもっと厄介なのって」
「世界政府にドリィがそこにいるのがバレた」
「え゛」
「死ぬ気で頑張って、ドリィ。今の兄上は父上を止められたから、もう懸念材料はおれとローだけになっちゃってる。だからこその最大限の譲歩なんだろうけど異例中の異例だよ、いつもなら事後報告の天竜人の傀儡としての任務を明かしてくるのは。ドレスローザを守るためだ、本気でくるよ兄上は」
「......天夜叉......そうか......世界政府はおまえらを殺し合いさせたいわけか......。マリンフォードだとあれだけ頼りになったのにな......」
「しかたないよ、おれが入隊してからの運命らしいから」
「そうか......じゃあ、ワノ国は荒れるな」
「大荒れだよ。仕掛けてくる前に離脱してね、ドリィ。スパイは情報持ってかえってくるのが最重要だ、死んだら失格だよ。命は大事にね」
「わかってる。ところで今どこにいるんだ、お前?」
「給湯室だけど」
「集中してると壊さないからバレるぞ、そのうち。場所かえろ」
「えええ、無茶いうなよ。ただでさえ無駄休憩多いってにらまれてんのに!」
「ドジっ子ロシーならだれも思わないだろ」
「そーだけどさあ!前々から思ってたけど、おれ、お前の命の恩人なの忘れてない?あの日ローくらいだって勘違いするほどひどかったお前保護したのおれだよ?」
「31歳に昇進抜かれる37歳が悪い。くやしかったら少将より上いけ」
「ちくしょう、ぐうのねもでねえ」
少しして互いに笑いがもれた。