ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング 番外編)   作:アズマケイ

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クロコダイルとバギー

クロコダイルは機嫌が悪かった。こうなることはわかっていたが機嫌が非常にわるかった。こればかりはどうしようもない。現実と内心が噛み合わないからしかたない。それでも機嫌がわるかった。

 

たとえ、マリンフォード頂上決戦でかつてのような圧倒的な強さをみせた白ひげと一戦交えたとき、互いに時は流れても全く変わっていないのだと確信してにやりと笑ってしまいたくなるくらいには自分の強さを確信できたとしても。

 

白ひげにふたたび挑戦する機会に恵まれ、巡ってくるような時代のうねりに運命を感じても、それはそれ、これはこれだった。

 

インペルダウンから脱獄したばかりのクロコダイルには隠し財産があったが、やりたいことをするには元手に少々不安があった。気に入らないことに七武海がロックスかぶれを捕縛する活躍をみせたことで、七武海の名声はこれ以上ないほど高まっている。

 

だから、闇のシンジゲートを牛耳る天夜叉の地位は不動のものとなった。失脚工作が激化するだろうが、そんなものロックスかぶれが動けばまた粉砕されるに決まっている。

 

万が一七武海から天夜叉が脱退しても、そもそも物流から始まるシンジゲートの仲介役は天夜叉が自分でいちから作り上げたものだ。公認か非公認かの差でしかない。世界政府公認だから得られていた信用度など白ひげが宣言した新時代にはもはやあってないようなものだった。

 

本気で嫌だったが、クロコダイルは七武海制度で合法化されている天夜叉の市場に参入を考えなくてはならなくなった。

 

その矢先、インペルダウンで海賊派遣業を独占していたハチノスの元締めのクソ野郎がようやく死んだ。似たようなロックスかぶれは白ひげと組んでるから海賊王が現れるその日までは表立って動かないはずだ。海賊派遣業の空席にめざといバギーが反応していたからクロコダイルは金を貸したのだ。

 

あのロックスかぶれは、ずっとハチノスのスポンサーをしていた。あのクソ野郎みたいな性格をしていたから、海賊派遣業が案外儲けがでないことを知っているからだろう。同じ海賊派遣業をやるバギーを支援するだろうことはよめていた。バギーがクロコダイルに話した業務形態は聞き覚えがありすぎたからだ。

 

気に入らないのはバギーもロックスかぶれが嫌うミーハーだろうに、なんでスポンサーしてんだという苛立ちからだ。クロコダイルはもちろん、あの四皇に赤髪を執拗に嫌がらせをしたのはインペルダウンの事件からすぐに察することができた。できてしまうくらいには、クロコダイルはハチノスのクソ野郎からルーキー時代から今に至るまで嫌がらせを受け続けてきたのだ。

 

ハチノスのクソ野郎とロックスかぶれは非常に性格が似ていたから意気投合していた。ふたりがひとりになっただけで、クロコダイルへの嫌がらせは半分になっただけだ。

 

もし、あの革命軍の幹部であるエンポリオ・イワンコフとのルーキー時代の因縁がバレたら、一生笑いのネタにされて、白ひげどころではないロックス連中にばら撒かれることになるのだ。

だからロックスかぶれに近づくことすら嫌だったが、もはやどうこういってられなくなってしまった。所詮は地獄の沙汰も金次第なのだ、いつの世も。

 

「......あの野郎、まさか、だからバギーのスポンサーしてんのか......?」

 

疑心暗鬼が極まってるなあ、とダズ・ボーネスは内心思っていたが、賢い彼はなにも言わなかった。人とは馴れ合わない性格ではあるが、クロコダイルに絶対服従が彼の基本方針だった。砂の王クロコダイルは、どうやらルーキー時代から因縁がある海賊が案外多いらしい。

 

バギーからの支払いは順調そのものであり、そのままいけば年内に完済される見通しだ。もちろんクロコダイルはそれを見越してかなり高めに利率を設定したわけだが、バギーは最初こそうげえという顔をしていたが、あの時からすでにロックスかぶれと付き合いがあったのか断りはしなかった。

 

その時から嫌な予感はしていたのだ。

 

バギーの海賊派遣業は、ロックスかぶれ達がスポンサーするから辛うじて回っているのだ。世界政府がそこに目をつけて納付金を天夜叉みたいに跳ね上げないわけがない。そうしたら、火の車だ。ハチノスのクソ野郎がそうだったように副業をしなければならなくなるはずだ。問題はバギーが七武海であり、ハチノスのクソ野郎みたいに四皇の下請けができないことだ。

 

ロックスかぶれが余計なことをする前に、なんとしてもそこに入り込む必要があった。だからあの時、すでに連絡先は交換していたのだ。

 

「おい、バギー。話がある」

 

クロコダイル達がやってきたのは、バギーズデリバリー。王下七武海の海賊”千両道化”バギーが設立し、自らが座長を務める一大組織で、偉大なる航路の後半の海「新世界」、カライ・バリ島のバギー街に本社を置く。 報酬と引き換えに所属する海賊を傭兵として各地に送り込む「海賊派遣組織」である。

 

聞くだけならどう考えても犯罪結社だが、バギーが王下七武海に所属していたため、その部下である海賊全員の懸賞金は免除されており、どこへ行こうと何をしようと、派遣された戦場で堂々と略奪を働こうとも全てが世界政府公認として”合法”となる。

 

バギー海賊団時代よりも遥かに大所帯となっており、バギーや幹部格達は兎も角、その傘下に降っている海賊達はインペルダウンを脱獄した経験もあってか戦力として非常に強力。特にバギーの七武海加入後に加わったと思われるハイルディンを筆頭に在籍していた巨人族5名は、組織最大の稼ぎ頭となっていた。

 

元々、構成員の多くが「億越え」を果たしている数億の賞金首達なので、ある程度は給金や報酬をはずまないと、組織の統制自体が取れない。

 

一方、単純に戦闘のみを専門とはせず、作中で数少ない「印刷技術を有する組織」という大きなアドバンテージを持っている。それに加え「デザイン」「運送」といった分野に通じる人材を抱えている点でも優秀。

 

ただし海軍や世界政府に目を付けられる上に、完全に独占しているドンキホーテファミリーに難癖をつけられない様にする為人身売買にまでは手を出せない。隠れ蓑にはまあまあだった。

 

バギー達は宴会をしているところだった。

 

「よー、クロちゃん!なんかようか?」

 

クロコダイルは舌打ちをした。さいわいロックスかぶれはいなかったが、顔を出しにくるのは目に見えている。やり過ごす方法を考えなくてはならない。

 

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